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第74話 カイトの気持ち

 翌日



 俺はティンクに惚れた


 やっとそれを自覚した


 うん、これは前進したと考えていいはずだ……


 問題は……


「カイトさん? どうしたんですか?」

「い、いや、何でもないぞ!」


 ティンクの顔を直視できない事かな……

 恥ずかしくて見れない……

 なんだよ! 子供じゃないんだからしっかりしろよ俺!


「それにしてもルスーンさんが言ってたこれ凄いですね!」


 ティンクは足下を見る

 俺も足下を見る


 それは鉄板だ

 これはただの鉄板だが……周りに鎖が大量に繋がっている

 この鎖もかなりの長さで作られていて、天井付近と下にある歯車に通されてる

 他にもなんか色々と繋がっていたが……

 簡単に言うとこれは人力のエレベーターだ


 担当の兵数人が各階に居て、指示を出すとエレベーターを動かして俺達を運んでくれる


 各階の意志疎通もエレベーターの側のパイプ……パイプだよねこれ?

 それに話し掛けて確認を取って行っている

 じゃないと乗り降りしてる最中に動いたりするから危ないからな


 因みに重量制限は8人迄だそうだ、使用するのも俺やティンク等の一定の身分の者だけに制限しているそうだ

 それとメイドが料理を運ぶ時とかな



 と言うのも制限をしないと利用者が多過ぎて余計に時間と手間がかかるそうだ


 だから兵達は階段だ


「それにしても……高いな」


 俺は天井を見上げる

 階層は20まであるそうだ……


 ヘイナスは10だったから倍だな

 詳しい説明はまた後で聞こう


 取り敢えず今は1階にある医務室に向かう


 ・・・・・・・


 医者が傷口がちゃんと塞がり始めているのを確認する

 カサブタを剥がさないようにするなら入浴しても良いと言われた


「ちゃんと治るみたいで良かったです!」

「あぁ、そうだな……」


 俺は傷口を撫でる

 カサブタの固い感触


「さて、朝食を済ませよう……何処に行けば良いんだ?」

 俺は首をかしげる


 ヘイナスなら自室にメイドが持ってきてくれたが……ここもか?


「そう言えば聞いていませんでしたね……」


 ティンクもわからないようだ……


 2人で悩んでいたら……


「あ、カイト様、傷は大丈夫ですか?」

「レリス」


 良いタイミングでレリスがやって来た


「医務室からの帰りですよね? お二人とも立ち止まってどうしたのですか?」


 レリスに聞いてみるか


「いや、朝食を何処で食べるか聞いてなくてな、部屋なのか食堂なのか……」

「? どちらでもよろしいのでは? メイドに言えば運んでくれるでしょう?」


 ……あ、そっか……そうだな……なんで悩んでんだ俺は……

 落ち着け、冷静になるんだ……


 ・・・・・・・・


 数日後


 ーーーアルス視点ーーー


『おぉー!!』


 僕達は兄さんから数日遅れで都に到着した

 馬車にミルムとティールとルミルを乗せて

 僕とレムレとユリウス、それとシャルスを含めた5000の兵と一緒に移動した


「聞いてたより立派な都だ……」


 僕は外壁を見上げながら言う

 こんな外壁だったら、籠城戦とか有利そう……


「ルスーンの奴、こんな才能あったのか……」


 ユリウスが見上げながら言う


「都の名前はまだ決まってないみたいですね」


 レムレが言う


「えっ? そうなの?」


 僕が聞くと


「道中にあった案内板に何も書いてありませんでしたからね」


 そう言えばそんなのあったな……


「アルス兄様! 早く入ろう!」


 ミルムが僕の手を引く


「はいはい、でもどうやって開けるんだろ? こんな立派な門」


 ゴゴゴゴ!!


「うわっ!? 動いた!?」


 門が勝手に開く


「へぇ~凄い仕掛けだな」


 ユリウスが感心している


「では僕とルミルは兵の皆さんを連れていきますので、皆さんは先に行ってて下さい」


 レムレが兵に指示を出していたルミルとティールの所に行った


「よし、行こう」


 僕達は都に入った


 ・・・・・・・・


 目の前に見える城に入る


「ひゅ~♪ 城も立派なもんだ!」


 ユリウスが高い天井を見上げて口笛を吹く


「これは凄い……」


 僕も見上げる


 ミルムは城に居たヤンユについていった、多分城の案内をしてもらってるんだろう


「さて、兄さんに到着したって報告しないと……玉座は何処かな?」


「あ、そこのお嬢さん!」


 ユリウスがメイドに玉座の場所を聞く

 こら、お茶の誘いをするんじゃない! メイドも困ってるだろ!


 そして玉座の間に向かう



「おお、豪華……」

「これ……金か?」


 玉座の扉は金色だった……まさか金で作ったの!?

 も、勿体ないと言うか……趣味が悪いと言うか……


「あ、これ塗ってるだけだ」

 コンコンっとユリウスが扉をノックする

 音も木の扉より少し重いくらいだ


 ギィィィ

 玉座の間の扉が開く

 今のノックで向こう側の人が扉を開けてくれたみたいだ


「失礼します! 兄さん!」


 僕は中に入る


「おや、ユリウス様と……えっと」

「……?」


 そこに兄さんの姿は無かった

 見覚えの無い男が玉座に触って何かしていた


「誰だ?」

「アルス様は会ったことなかったんだっけ? アイツがルスーン……久しぶりだなルスーン」

「お久し振りですユリウス様、それと……初めましてアルス様」


 ルスーンが俺達の前に来て礼をする


「ああ、初めまして……何をしていたんだ?」

「玉座の調整ですよ、カイト様が快適に座れるようにしていたのです」


 ふーん……


「兄さんは?」

「カイト様ならレリス殿と一緒に執務室にいらっしゃるかと……何か最近様子がおかしいですが……」


 …………?

 様子がおかしい?


「執務室は何処に?」

「20階にあります」

『にじゅ!?』


 僕とアルスが驚く

 ここは1階……どれだけの階段を登れと言うんだ!?


「ああ、階段を登るのが面倒でしたら……ついてきてください」


 ルスーンが玉座の間を出る

 僕とユリウスはルスーンについていった


 ・・・・・・・・・


「なにこれ?」

 連れていかれたのは鎖がいっぱい繋がってる鉄板の前だ


「一気に上に登ったり下に降りたりする仕掛けです、『エレベーター』とかカイト様は言ってましたね」


 エレベーター?


「取り敢えず使いましょう」


 ルスーンが『エレベーター』の側の管の蓋を開ける


「3名、1階」

 

 そういうと鉄板に乗る


「さあ御二人も」


 言われて僕達も乗る


 すると待機していた兵が数人で歯車を回し始めた


「お、おお! 上がりだした!?」


 ユリウスが驚く……既に5階を過ぎた

 階段より速いな……


 見ると他の階でも兵が歯車を回しているみたいだ……


「もうすぐ着きますよ」


 ルスーンが言うと……


 エレベーターが止まった

 目の前にある壁には20の数字


「さあ、降りますよ」


 言われて僕達は降りる


『確認』


 兵が管に向けてそう言うと……エレベーターを下に降ろした


「あんな風に意志疎通をしないと事故が起きますからね」


 ルスーンが言った


「この先にあるのが執務室です、それと道中に水色の扉がありますから、そこがアルス様の部屋です」


「わかった」

「僕は?」


 ユリウスがルスーンを見る


「ユリウス様の部屋は15階にありますよ、後で案内します」

「頼む!」


 2人の会話が終わったのを確認して僕は歩き始めた


 ・・・・・・・・・


 奥に行くと赤い扉があった……目立つな……



 コンコンとノックをする



『誰ですか?』


 レリスの声


「僕だよ、アルス……それとユリウスも居る」



 ガチャっと扉が開いた


「お疲れ様ですアルス様」


 レリスが迎え入れてくれた


「レリスもお疲れ、兄さんは…………兄さん?」


 僕はレリスと挨拶しながら執務室に入る

 そして兄さんの姿を確認した……なんか項垂れてる


「……あぁ、アルス……」

「兄さん!? どうしたの!? 酷い隈だけど!?」


 顔を上げた兄さんは顔色が悪かった


「ああ、ちょっとな……」


 いやいや、ちょっとって様子じゃないよ!?


「あれどうしたの?」

「まあちょっとね……」


 後ろでユリウスとレリスが話す

 僕は兄さんの前に行く


「なんか病気にかかったの?」

「いや、単純に眠れないだけだ」

「眠れない? 枕が合わないとか?」


 環境が変わったから寝付けないとか?


「いや……そうじゃなくて……」

 兄さんが俯く


「兄さん……何があったの? 悩みなら話してよ……」


 僕は兄さんの頭を撫でて言う


「…………」


 兄さんがチラリと僕を見る


「…………」


 そしてまた俯き……


「……ティンク」


「んっ?」


 ティンクさんがどうしたの?

 そう言えば姿を見てない……まさか彼女に何かあったの!?


「ティンクが愛しくて堪らないんだ……」

「…………はっ?」


 今、僕は心の底から『何を言っているんだ?』って思った


 ・・・・・・・・・


 話を聞いたら、この都に到着してすぐに一悶着があったそうだ

 その後に何だかんだで兄さんはティンクさんへの恋心を自覚したらしい


 それで、ティンクさんの顔をマトモに見れないし

 添い寝の時もドキドキし過ぎて眠れないんだって


「…………兄さん、本気で心配した僕がアホらしいじゃないか!!」


 なんだよ! のろけじゃないか!


「こんな感じで困ってるんですよ」


 レリスが言う


「そんな悩むことなのか?」


 ユリウスが首を傾げる


「悩むことだ……どうしたらいいんだよ!」


 兄さんは机に突っ伏す


「うーん……」


 僕は兄さんを見る

 ベススに行った時は恋をわかってないって言っていた兄さん

 それがやっと恋を自覚したって言うんだ……普通なら前進だよね?


「普通なら告白してみろって言うところだよね?」


 僕はレリスとユリウスに言う


「告白も何ももう夫婦だろ?」


 ユリウスが言う

 そうなんだよね……夫婦なんだよね……しかもずっと添い寝……同衾してる訳だし


「まあ、伝えるのが1番手っ取り早いでしょうね」


 レリスが言う


「緊張して言えねえ……」


 兄さん……


「もう抱いたら良いんじゃないんですか? そのまま勢いで愛を囁けばいい!」


 ユリウスが名案だとばかりに言う


「…………」

「ひぇ……」


 兄さんがユリウスを睨む

 その目は『そんな事できるくらいなら言ってる!!』って言葉が宿っている様に見える


「まあユリウスのは極論ですが……やっぱりティンク様に伝えるのが1番ですよ」


 レリスが兄さんの前に立つ


「てかハッキリ言いますけど、いい加減しっかりしてくれないと困るんですよ、まだこの都の名前も発表してないんですよ? 仕事して下さい」


「それは、本当に悪いと思ってる……」


「アレもやっと返事が来たんですよ? カイナスとの戦も近いのに……」


「えっ? カイナスのやるの?」


 僕がレリスを見る


「えぇ、近々動く手筈です……なのに肝心のカイト様がこうでは……」


 やれやれ、とレリスが頭を振る


「そう……だよな……このままじゃ……」


 兄さんが顔を上げる


「でも……ああ!」


 また項垂れる


「いい加減にしろこのヘタレ!」

「ぐはっ!?」


 そんな兄さんの頭を僕は殴る


「兄さんがそんなんだとティンクさんに愛想を尽かされるよ? 良いの?」

「い、いいわけないだろ!? 彼女を手放したくは無い!!」


 立ち上がる兄さん


「ならさっさと決着(けり)つけなよ! 今夜寝る時にでも!」


 兄さんとティンクさんが確実に二人っきりになるのはその時くらいだ


「……わかった……今夜決着(けり)をつけてやる!!」


 兄さんの目に炎が見えた!

 よし! やる気になったね!!



「……なんで愛を伝えるだけでこうなるんだ?」


 ユリウスが呟いた






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