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第72話 新たな都

 5月の終盤

 俺達はヘイナスから新しい都に移住を開始した



「それじゃあ、ヘイナスは任せたぞ?」

「はっ! お任せを!」


 俺はヘルドにそう伝える


 ヘイナスはヘルドに任せることにした

 本当はマールをメビルトに任せて、ルーツにヘイナスを任せようと思っていたが……

 ヘルドとサルリラが結婚したんだ

 結婚して1年で引っ越しは大変だろう?


 戦力としてヘルドとサルリラを置いていくのは残念だが……

 まあ、仕方ないよな


 そんな訳で俺達は新たな都に向けて出発した


 ・・・・・・・・


「こうして見ると、迫力あるな……」


 俺は馬車の小窓から外を見る

 馬車の周りには兵達が並走している


「1万の軍勢ですからね」


 レリスが答える


 今、一緒に新しい都に向かっているのは俺とティンク

 オルベリンとレリス

 そして1万の兵だ


 数日後にはアルスとミルムや他の皆もやってくる予定だ


「新しい都……どんな所なんでしょうね?」


 ティンクはワクワクしている


 新しい都はヘイナスから10日程、北に進んだ場所にある


 途中でマールに寄って、一泊してから行く予定だ

 マールからなら北東に4日だ


 さて、移動している間に現在の世界情勢……てか東方の情勢を整理しておこう


 現在の東方大陸の兵力は

 オーシャンが約65,000

 カイナスが約125,000

 パストーレが約70,000


 そして密偵の情報ではカイナスとパストーレはやっぱり同盟を結んだらしい


 そして今月でパストーレとの停戦期間は終了だ

 つまりオーシャンはカイナス・パストーレの2か国に挟まれている状態だ


 オーシャン 65,000

 対

 カイナス・パストーレ 195,000


 うん……はっきり言ってヤバい


 普通ならカイナスかパストーレのご機嫌をとって同盟を結ぶか

 停戦を申し込んで受けてもらうか

 戦力が同じくらいのパストーレを攻めて、カイナスに攻められる前に攻略するかだ


 だが俺はどれもしない

 次の標的はカイナス……そう決めたのだ


 戦力は倍くらい差がある……

 だけど負ける気がしない、てか勝てるから挑むのだ

 そろそろ一手が来ると思うんだけどな……まだかなぁ……来てくれないかな?


「カイト様」

「っと悪い、考え込んでいた……どうした?」

「いえ、ティンク様が……」

「んっ?……あらま」


 俺が右を見ると


「……んん」


 ティンクが船を漕いでいた、寝落ち寸前


「ティンク、眠いなら膝を貸すから……ほら」

「あ、ありがとうございます……んん」


 ティンクが俺の膝に頭を乗せる

 レリスが馬車に積んでいた布をティンクにかける


「はしゃぎすぎたな……」


 俺はティンクの頭を撫でる

 サラサラした髪が心地良い


「あれから3年ですか」

「んっ?」


 レリスが呟く


「いえ、3年前は滅亡寸前だったなって思いまして……それが今では東方を手に入れる寸前まで来ている……ベルドルト様が生きていたら喜んで下さったでしょうね……」

「そうだな……父上なら…………いや、『この程度で満足するな!』くらい言われそうだ」

「確かに……」


 くくっと笑うレリス


 そっか……3年か……俺がカイトになって3年経つんだな……


 この世界での生活も大分慣れたな……カイトの記憶があったから困りはしなかったが……それでも現代との違いに戸惑うことはあったからな


「レリス……」

「はい?」

「これからも宜しく頼む」

「はい、カイト様の為に」


 ・・・・・・・・・


 今回は人数が多いから野営をしながら進んだ

 賊に襲われる心配もないしな

 1万の兵に襲い掛かる賊なんていないだろ?

 もし居ても、オルベリンが瞬殺するだろうがな


 マールでは俺とティンクとレリスと数十名の兵士が城に泊まる

 オルベリンとレルガは野営をした

 オルベリンは年寄りなんだから城に泊まればいいのに……


 そうして新しい都に到着した



「ふむ……」


 レリスが先に降りて安全を確認する


「よっ!」


 次に俺が馬車を降りる


「ほら、ティンク」

「ありがとうございます」


 そして、ティンクの手を取り、ティンクを支えながら降ろす


「さて、都はどんな感じかなっと!」


 俺は振り返る

 ヘイナスより少し大きいくらいだろうなって予想しながら


「うぉぉぉぉ!?」


 そして変な声が出た


「うわぁ……大きいですね……」

「ルスーン殿は……随分と張り切ったようですね……」


 新しい都……てか外壁くらいしか見えないのだが……

 その外壁を見ただけでわかる

 高い、横にも長い

 つまりそれだけ広いと言うことだ……


 門もとても大きく感じる……これ人力で開くのか?


 そう考えていたら……


 ゴゴゴゴ!!


 門がゆっくりと開き始めた……えっ? 誰も押してないよな?

 自動? そんなわけないよな?


「お待ちしておりましたカイト様!」


 門が開くと中からルスーンが誇らしげにやって来た


「ルスーン! こ、これって……」

「都です! いや~ガガルガで内政を色々やっていましたが、都造りは初めてですので! 持てる力を使いきりましたよ!」


 楽しそうなルスーン


「ルスーン殿……聞いてた話より立派では?」

「予算が余りましたので……増築しました♪」


 親指を立てるルスーン

 ひきつってるレリス


「と、取り敢えず入りませんか!?」


 レリスが文句を言う前にティンクが言う

 ナイスだティンク! レリスはこういうのが不快に感じるタイプだからな!

 文句を言う前に結果を見よう!


「坊っちゃん、ワシも同行します」

「レルガは?」

「兵を兵舎に連れていくと……ルスーン、兵舎は何処だ?」

「あ、門の所にいる兵に地図を持たせてますので、それを見てください」


 ……地図?

 都に……地図?


 俺達は都に入った



 ・・・・・・・・・


「うっ!?」


 中に入ってまた変な声が出そうになったが、口を押さえて止める


 いや、待ってくれ!

 デカい! 広い! てか城が見えてるのだが!?


 左を見ても色んな建物!

 右を見ても色んな建物!!

 屋台もあるし! 店も多くある!

 えっ? 別に祭りじゃないよな?


「こ、これはどうなって……」


 俺がルスーンを見ると


「先ずは城に向かいましょう! その方が説明しやすいので! 」


 そう言って前を歩く

 俺達も歩くと……前方に居た民が次々と道を開ける

 なんだろう……昔見た映画のモーセという偉人が海を割ったシーンを思い出す


「あれがカイト様……」

「ケーミストから我等を救って下さった方だ……」

「ありがたやありがたや」


 やめて!? 拝まないで!?

 てか見世物みたいで恥ずかしいんだけど……

 俺は大したことしてないから! やってくれたのは配下の将や兵達だから!!


「ほぉ、城下街を城の南に配置したのか……」


 オルベリンが城を見ながら言う


「えっ? 城の南だけではなく四方に配置しましたが?」


 …………はい?


「ま、待てルスーン!! お、俺の聞き間違いか? 今、四方にって言ったか?」

「はい、言いました」


 ……つまり?


「この街並みは全体の4分の1なのか?」

「そうです」


 …………つまり城の向こう側にもあるの!?


「……カイト様?」


 ええ……ヘイナスの何倍だ? 10倍? 20倍?


「ル、ルスーン……なんでこんなに広いんだ?」


 広すぎるだろ!?


「確かに広いですね、建物も60%くらいが空き家です、しかし此処がこれからオーシャンの首都になるのですよ? 立派にしないと! 人も間違いなく増えますからね!!」


 た、確かに……言ってることはおかしくないが……


「……いや、いい、うん……お前の言うとおりだな」


 限度があるだろって言葉を俺は飲み込んだ


「むっ?」


 オルベリンが立ち止まる


「んっ? どうしました?」


 レリスが聞く


「……いや、気のせいだ」


 どうしたんだ?


 因みにティンクは俺の手を握りながら周りをキョロキョロしていた

 建物が一杯だからな


 ・・・・・・・・


 城に着いた……


「城門は無いのか?」

「ええ、城自体を頑丈に作りましたし、外壁も頑丈にしました、敢えて言うなら……この街が城壁です」


 そう言ってルスーンは立ち止まる


「さて、説明をしますね? 先ずはこの城がこれからのカイト様達のお住みになる城です、都の中心に建てました」


 俺達は城を見上げる……とても高く感じる……階段とか大変じゃない?


「これは……登るのが大変そうだ……」


 呟くレリス

 お前もそう思うか……


「ご安心を! そこはしっかり考えております! 後で中に入った時に説明しますね!」


 そう言ってルスーンは俺達の間を抜けて、今来た道を指差す


「先ずは城から南の地区ですが……ここは主に民の住む住宅街にしました」

「その言い方だと他の三方も何か決めてるのか?」


 俺が言うと


「ご明察!」


 ルスーンは愉快そうに指を立てた


「城から見て東側」


 ルスーンが俺達から見て左を指差す


「こちらは商人街にしました、生活用品や食糧などはこちらで買えます……カイト様がおっしゃっていた商館も此方に建てました」


 次に右を指差す


「西側は職人街にしました、装備品の鍛治や棚とかの道具等は此方で買えます」


 そして城を指差す


「北側は兵の街にしました! 兵の家族はそちらに住ませると良いでしょう!」


 そう言って俺達を見る


「因みに、それぞれの地区に4ヶ所程の兵舎を建てていますので、巡回などもしやすいかと!」


 ほお……完全に分けたのか……それなら流通もスムーズに進むだろうな……

 納品場所があちこちにあるより、近くにある方が商人とかも楽だろうし

 職人達も作業に集中できるだろう……


「ルスーン……お前本当凄いんだな」


 流石内政S


「ありがとうございます! 他にも色々と工夫しております、例えば外壁は3重にしておりまして、2番目の外壁と3番目の外壁の間には兵達の泊まる場所を作っておりますので、兵の交代もスムーズに行えます」


 おお、いいね!


「ほぉ!」


 オルベリンの目が輝く


「オルベリン、見たいなら見て来ていいぞ?」

「よろしいのですか?」

「ああ、兵も巡回しているから護衛は大丈夫だろ」

「ふむ……それでは行って参ります!!」


 オルベリンは走っていった

 元気だな……


「くすっ、オルベリンさん、子供みたいですね」


 笑うティンク


「少年心がくすぐられたのかもな」


 秘密基地みたいなロマンを俺も感じたし……今度見に行こ



「さて、まだ昼過ぎですし……城の前に商人街でも見物しますか?」


 ルスーンが聞いてくる


「そうだな、どんなのがあるのか見てみたい」


 俺達は商人街に向かう



「………………」


 そんな俺達をジッと見ている存在に、俺達は気付いていなかった







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