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第71話 結婚式と成人と偵察と

 焔暦145年 3月


 ヘルドの屋敷で結婚式が行われた

 結婚式っていうかホームパーティーみたいだな


 屋敷に庭に関係者を集めて祝うって感じだ


 ……俺の時と大分違くないか?

 領主と将でこんなに違うか普通?


 因みに呼ばれたのは俺とティンク等の俺の身内

 それとレリスとヤンユ

 後はヘイナスの将とマールからルーツとメビルトが来ていた

 それとヘルドやサルリラが良く面倒を見ている兵が数人ほど兵の代表として来た

 全員が来たら入りきれないからな


 ボゾゾは場所的に参加が難しいらしく、祝いの手紙が贈られてきたそうだ


『おめでとうぅぅぅ!!』


 俺達は乾杯しながら2人の結婚を祝福する


「遂にヘルドも所帯を持ったか……」


 オルベリンが感慨深そうに言う


「そう言えばオルベリン殿は独身でしたね?」


 レリスがオルベリンに言う


「……まあな」


 ほらほらレリス、そういうのは止めなさいっての

 人間、結婚するもしないも自由なんだから、オルベリンはオーシャンに尽くすために敢えて未婚なんだよ!

 ……多分


 俺はヘルドとサルリラを見る

 今2人は……てかヘルドは女性陣からサルリラを泣かせたら許さない的なことを言われている

 サルリラって同性からも好かれてるんだよな


「ヘルドもサルリラも幸せそうだね兄さん」


 アルスが言ってくる


「そうだな、サルリラは長い初恋が実ったんだから嬉しいんだろうしな」

「2人の子供ってどんな子だと思う?」

「絶対にヤンチャな子だな、断言する」


 棒を片手に走り回ってそうだ


「やっぱりそう思うよね」


 …………


「兄さん」

「なんだ?」

「僕もいつか恋をして結婚するのかな?」

「わからんよ、ただ、俺が言えるのは1つだけだ」

「?」

「お前の自由にしていいんだからな?」


 結婚するのもしないのも

 相手がどんな子だろうと、俺は否定しない

 アルスが選んだ子なら信用できるさ


「……うん」


 アルスは嬉しそうに頷いた



 こうして結婚式は終わった

 因みに俺はお祝いとしてペアの食器を送った

 剣とか馬とか色々悩んだけど、実用品が1番だと思ってな


 2人は喜んでくれた

 ヘルドなんか家宝にするとか言ってさ……

 いや、使ってくれよ?


 ・・・・・・・・


 焔暦145年 8月


 玉座の間に将達が集まる


 オルベリン

 ヘルド

 レルガ

 ケーニッヒ

 ティール

 ユリウス


 6人が玉座の前のカーペットを挟んで3人ずつ並んでいる


 そして俺の目の前にはアルス

 アルスの後ろにルミルとレムレが並んでいる


「先ずは昨日も言ったが誕生月……そして成人おめでとう」


 昨日、アルス達の誕生月のパーティーをした

 そして今日はアルスが軍に入隊する


「ありがとうございます」


 アルスが答える


「コホン!」


 さて、堅苦しくなるが……身内でもしっかりとやらないとな!


「アルス・オーシャン! 貴殿を今日から『小隊長』に任命する!」


 アルスは兵と兵長をとばして小隊長からだ

 まあ、コネだな、俺の身内だし……

 領主の身内は最初っからそれなりの地位を与えるのだ

 領主が急に死んだ時にすぐに後を継いだり出来るようにだ

 レリスやオルベリンは『部隊長』か『軍団長』にするべきだと言ってきたが、俺が却下した


 2人の言うとおり、高い地位を与えた方が良いのはわかる

 でもアルスには人を動かす経験も、実際の戦場を戦った経験も無い

 そんな状態で高い地位を与えても、やることの多さに混乱するだけだ

 だから小隊長で経験を積ませる


 実力はあるんだ、アルスならすぐに活躍してくれるさ

 活躍したら出世させる、それでいいのだ


「ルミル、レムレ、前に」

『はい!』


 ルミルとレムレが前に出る

 アルスはレリスと対になるように俺の隣に立っている


「よく、オルベリンの訓練を耐えきった、今のお前達なら戦場で活躍してくれる、俺は期待しているぞ?」

「はい! カイト様の期待に答えてみせます!」

「が、頑張ります!!」


「ああ! 約束通り2人は兵長だ!」


 オルベリン達の話だと……ルミルは近接が得意で、レムレは弓を使っての戦いが得意らしい


 あのオルベリンの訓練をやりきったんだ!

 本当に……うん、凄いな……


 あ、シャルスも参加していたそうだが、アイツはまだ兵士からだ

 別に推薦があったわけでもないし、約束したわけでもないから


 でも、オルベリンの訓練をやりきったんなら……活躍するだろうな……

 活躍したら俺はちゃんと評価するぞ?



 ・・・・・・・・



 焔暦145年 10月


 今、俺は荷馬車に隠れている

 この荷馬車は食糧を大量に積んだ荷馬車だ


 カイナスの村に食糧を配る

 その為の荷馬車だ


 既に何回か実行したが、今回は俺もついていくことにした

 秘密で来たのかって?

 まさか、ちゃんと皆に話したし、護衛としてヘルドが一緒についてきているしな

 何故隠れてるのかって?

 ここはカイナス……つまり他国だ、いや他領地って言うべきか?

 そこに堂々と敵の領主がやって来て良いわけがない


 だから、行商人に扮した兵達の荷馬車に隠れて……こっそりと観察するのだ!


 今回、向かってるのはカイナスの首都ゲルナルの近くにある村だ

 ゲルナルから離れた場所……オーシャン領に近い村は既に移住が完了している

 殆んどの村人が移住してきた……それだけカイナスが嫌だったんだな


 しかしここら辺の村は遠いからな、移住が簡単に出来ないのだ

 だから俺達からやって来た


「ほら、ゆっくり食べろよ?」

「爺さん! 運んでやるから無茶するな!」

「お袋さんにか? ほら、持ってけ!」


 外では飢えた村人達が食糧を受け取っている

 あんなに痩せて……首都の側なのに食糧が無いなんて


「カイナスは今年も不作だったみたいだな……」

「農業を発展させようにも、働く民がろくに動けないでしょうからね」


 ヘルドも外をみて呟く


「……早く何とかしたいが……」

「なんかやってるんでしたよね?」


 ヘルドが俺を見る

 カイナス対策のアレの事だろう

 アレを詳しく知ってるのは俺とレリスとオルベリンの3人だ

 他の皆は俺達が何かやっているって程度だろう


「あぁ、後少し……後少しで俺達も動けるんだ……」


 アレの進行率は90%ってところか……

 最後の一手が足りない

 今はそれを待っている……手遅れになる前に来て欲しい


「そういえばヘルド、サルリラとの生活はどうだ? 結婚してから半年くらい経ってるが?」

「あー、その、夜に凄く甘えてきて……正直俺の体力が持たないですね……若さには勝てないと言うか……」

「はは、サルリラの方が強かったか」


 ……少し聞いてみるか


「なぁヘルド、お前にとってサルリラってどんな存在だ?」

「えっ?」

「どう想ってるんだ?」

「……そうですね……離れたくない、手放したくない、何があっても守りたい……そんな存在ですかね」


 離れたくない

 手放したくない

 守りたい

 か……


「そっか……愛されてるな」

「ええ、愛していますよ」


 それ、サルリラにまた言ってやれ

 そしたら更に甘えてくるぞ?



 ・・・・・・・・


 焔暦145年 12月


 戦が無かったからか……今年は終わるのが早く感じた


「カイトさん?」

「んっ?」

「考え込んでいるみたいですけど、悩みがあるんですか?」

「んー……いや、そんなんじゃないんだ……」


 俺は自室のベッドの上でティンクに膝枕をされている

 膝枕をすると旦那が喜ぶと入れ知恵されたらしい

 ヤンユかな? いやサルリラか?

 まあいい……心地好くて……うん、今回は褒めてやる


 チラリと俺はティンクを見る

 嬉しそうに膝枕をしながら俺の頭を撫でるティンク

 ……キスも額か頬で、営みもしてない俺なのに

 ティンクはこんなにも俺の事を想ってくれている

 そんなティンクを俺は特別に想っている……それなのに未だにこれが恋心なのか理解していない

 煮え切らないって言うか……本当俺って……駄目だな


 離れたくない、手放したくない、守りたい

 以前ヘルドがサルリラに対して思っている事を聞いた


 俺もティンクに対してはそう思っている

 それなのに……なんだろう、こう……ガチッ!とハマるような感じがしない

 何かが足りない、何かが違う

 俺の中でそんな考えが浮かぶ


 ……はぁ

 もう自分でも訳がわからない


 恋愛経験の無さでこんな風になるなんて思わなかった

 元の世界の学校は恋愛についてもある程度教えた方が良いんじゃないか?


「カイトさん、やっぱり悩んでいますね? ため息……さっきからしてますよ?」

「えっ? そうか?」

「その……膝枕……嫌でした?」

「そんなわけない、凄く心地良いよ……このまま眠ってしまいそうだ」

「……眠っても良いんですよ?」

「……そうか?」

「はい、カイトさんお疲れでしょう?……たまにはゆっくり休んでください」

「……じゃあ、お言葉に甘えて……ありがとうティンク」

「いえ、お休みなさいカイトさん」


 チュッ

 ティンクが俺の右頬にキスをした


 ・・・・・・・・・・


 焔暦146年 5月


 それはやって来た


「失礼します!」


 玉座の間にルスーンがやって来たのだ


「ルスーン? どうしたんだ?」


 俺はレリスとの打ち合わせをやめて、突然やって来たルスーンに聞く


「お久しぶりですカイト様」


 ルスーンが俺の前で膝をつく


「ご報告します! 新しい都が完成しました!!」

「……おぉ!? 本当か!」


 賊に襲撃されて完成が見立てより遅れるって聞いていたからビックリしたぞ!


「はい! 今日はその報告にやって参りました!」


 ルスーンの報告では、既に民が移住しており、城も立派なのが完成しているそうだ


「良くやったルスーン!!」


 2年以内に完成してくれたか!

 素敵! 内政の匠!!

 俺は興奮のあまりに玉座から立ち上がる



「でしたらヤンユ達を先に送りますかね」


 レリスが言う


「んっ? 何でだ?」


 俺が聞く


「城は完成しましたが、装飾とかはまだでしょう? ベッドなどの生活用品も揃えなければなりません、ですのでヤンユと数名の使用人……それと兵も送って、城を住める状態にするのですよ」


「あ、そうか……そうだよな……」


 元の世界では自分や友人と一緒にするが……ここは異世界だ

 てか住むところは城だ……普通の家と同じ風に考えたら駄目だな


「よし、ならヤンユ達に指示を出そう」

「では私が指示を出してきます」


 レリスがそう言って玉座の間から出ようとして


「あ、ヘイナスから移住するのですから、ヘイナスを任せる将と新しい都の名前を考えてくださいね?」


 そう言ってから出ていった


「安心しろ、もう両方とも考えてるから」


 俺はそう呟いて玉座に座り直したのだった








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