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第69話 訓練の日々

 カイト達が視察に出てる時

 ヘイナスではオルベリンにより、若者達の訓練が行われていた


 ーーーアルス視点ーーー


「さあ! もう一回駆け上がるのだ!」


「ぜぇ……ぜぇ……う、うぉぉぉぉ!」

「のりゃああああ!!」

「ま、待って下さい!」

「それそれそれそれ!!」


 オルベリンの掛け声で、僕とユリウスとレムレ、それと、最近新兵の訓練を終えて参加してきたシャルスでヤール山を駆け上がる


 ルミルはティールと一緒に離れた所にある滝に打たれている


「お先!」


 シャルスがかなりの速さで走っていく

 4足とかズルくない!?


「ぬぉぉぉぉぉ!!」

「うぉぉぉぉぉ!!」


 僕とユリウスはシャルスに負けたくない一心で全力で走る


「はぁ、はぁ」


 後ろでレムレがフラフラになってる

 当たり前だよね、これもう20往復目だ

 倒れてもおかしくない


「レ、レムレぇ! 頑張れぇ! こ、これが! 最後だぞぉ!」


 多分!


「は、はぃぃ!」


 レムレは答えるとスピードを上げた


 山頂までとか……オルベリンも無茶を言う……


 まあ、そのオルベリンなんか……


「さあさあ! 後半分!」


 後ろ向きに走りながら僕達と並走してるんだけどね!!

 おかしいって絶対!!

 ずっとだよ!? どんな体力してるの!?


 ・・・・・・・


 山頂に到着する


「オイラが1着だぁ!」


 シャルスがバク転しながら喜ぶ

 まだ体力あるの?


「ぜぇ……ぜぇ……」

「し、死ぬ……これ死ぬ……」


 膝をつく僕

 倒れてるユリウス


「つ、着いたぁぁぁ」


 ドサッ!


 レムレが仰向けに倒れる

 凄く苦しそうに呼吸をしている


「ふむ、こんな所だな……」

 オルベリンが懐から砂時計を取り出す


「10分だけ休憩だ、その後は滝行だ」


「やっぱりやるんだ……ルミルちゃんがやらされてるの聞いて予想はしてたけど……12月だよ? 冬だよ? くそ寒いんだけど!?」


 ユリウスが言う


「火照った身体を冷ますには丁度良いだろう?」


 オルベリンが言う


「凍えるって!!」


 叫ぶユリウス


「安心しろ、着替えとタオルは用意してあるからな」

「安心できない!?」


「滝行って何?」


 シャルスがレムレに聞いている


「え? えっと……滝の、下に、入って、げほっ! 滝に、打たれる……い、今無理……」


 レムレは死にかけてる


「ユリウス、レムレ……今は、少しでも休もう……」


 叫ぶな、喋るな、呼吸を整えることに集中するんだ……


「ふむ、では後で迎えに来るからな」


 オルベリンがそう言って飛び降りた


「うぇ!?」


 ユリウスがそれを見て驚く

 シャルスがオルベリンの飛び降りた場所に駆け寄る


「……うわぉ、走ってどっか行った……」


 オルベリン……化物って呼ばれてるけど……こういうところが理由でしょ?


 ・・・・・・・・・


 10分後、オルベリンが崖を登って迎えに来た

 いや、普通に走ってきなよ……


 そして僕達は滝に向かう


「あ、アルス様、お疲れです!」


 ルミルが向こうからティールと一緒にやって来た


「ルミルもお疲れ、滝行どうだった?」

「死ぬかと思いました!!」


 唇が青い……寒かったんだね

 ティールも同じように震えていた


「えっ? ティールもやってたのか?」

 ティールの様子を見てユリウスが言う


「ルミル1人にさせるのはどうかと思いましてね……少し後悔してます……」


「震えているところ悪いが、2人にさっき言ったことを任せた……2時間はあるから休んでから頼むぞ」


 2人にオルベリンが言う

 なんか頼んだのか?


「はい、任せてください!」

「走り込みよりは大分マシですね」


 ルミルとティールが答えた


 何を頼んだんだ?


 ・・・・・・・


 さて、ヤール山の滝に到着した

 僕達は腰にタオルを巻いた姿で滝の前に立つ


「既に寒い!」


 ユリウスが言う


「こ、これからこれに入るんだよね……」


 遠い目をしているレムレ


「おぉぉぉ……」


 呑気に滝を見上げるシャルス

 毛皮があるから寒くなさそうだね……


「さて、では2時間! ゆくぞ!」


 オルベリンが滝の下に立つ

 僕達も滝の下に立いたたたたたたたたた!?


『っ!?』


 僕達4人が滝の下から出る


「痛い!?」

 レムレが頭を押さえる


「冷たい!」

 ユリウスが震える


「み、耳が……」

 耳を押さえるシャルス……頭上にあるもんな


「こ、これは予想よりキツいぞ……」


 僕も呟く


「どうした? もう降参するのか?」


 オルベリンが挑発する


「はい! 滝行の意味がわかりません!」


 ユリウスが手を挙げて言う


「精神修行だ!」


 オルベリンが答える


「何の意味があるの!?」


 ユリウスが抗議する


「ふむ……先ずはユリウス、お前は予想外の事が起こると冷静な判断が出来なくなるだろう?」

「うぐっ!?」

「坊っちゃんに負けたのもそれが大きい、お前はいつでも冷静でいられるようにするべきだ」

「く、くそっ!」


 ユリウスが滝の下に入る


「レムレ」

「ひゃい!」

「お前は集中力を更に研くべきだ、矢を放つ時は集中が重要だからな、お前は更に強くなれるぞ」

「……よし!」


 レムレも滝の下に入る


「アルス様」

 僕か!

「アルス様は己と向き合うべきです、坊っちゃんと自身を比べる時が有るようですからな、アルス様はアルス様、坊っちゃんは坊っちゃんです」

「…………」


 確かに……最近『兄さんならどうするか』とか、僕は兄さんみたいになれるか、とか考えるときが多い

 来年、成人してから僕も軍に所属するんだ、それを考えると尚更比べる様になってきた


「己と向き合うか……わかった!」

 やってやる!


 僕も滝の下に入る

 いたたたたたたたたた!!


「シャルスは……ふむ、はっきり言ってまだなんもわからん、取り敢えずやっといて損は無いぞ?」

「でも耳が……」

「タオルがまだあるから巻いておけ」

「あ、そうなの?」


 シャルスはタオルを取りに行く

 そして頭に巻いて戻ってきた


「これならなんとかなるかな?」


 そう言って滝の下に入る


「あ、痛くは無いけど……タオルが重い!!」

「耐えるのだ!」

「はいよ!」


 こうして僕達は滝に打たれる


 ・・・・・・・


 どれくらい時間が経ったのか……滝に打たれる痛みにも大分慣れてきた


「そういえば!」

 ユリウスが叫ぶ


「オルベリンは! なんで! カイト様を! 坊っちゃんって! 呼んでるわけ!? アルス様と! ミルム様は! 普通なのに!」


「なんだ? 気になるのかぁ!」


 オルベリンが答える

 正直僕も気になる


「とてもね!」

 ユリウスが叫ぶ


「ふむ、そんな大した理由は無い!! 幼い頃の坊っちゃんの世話を! 良くしていた名残だ!」

 へぇ、そうなんだ……


「世話! してたのか!?」


 ユリウスが叫ぶ


「良く! 刺客に! 襲われたからな! 護衛と! 世話係も! していたぁ!」


 兄さんが狙われまくったって話なら聞いたことがある

 領主になるまではずっと狙われてたとか……

 誰が送った刺客かわからないって言ってたけど……

 多分わかってるんだろうな


 ・・・・・・・・


「よし! ここまで!」


 オルベリンの一声で僕達は滝から出る


「あぁぁぁ! 寒い!」

「ひ、冷える!」

「あばばばばばば!」


 ユリウスとレムレとシャルスが震えながら川から出た


「ふぅ……」

「アルス様、向き合えましたか?」


 僕も川を出るとオルベリンが聞いてきた


「うーん、良くわからない……まだまだ時間がかかりそうだ」

「これからもやりますから、そのうち向き合えますぞ」


 また、やるんだな……


「てか、今更だけど……オルベリンの身体凄くない? 本当に老人か?」


 ユリウスが言う

 僕はオルベリンの身体を見る


 確かに……鍛えまくったのか筋肉はムキムキだし

 身体のあちこちには古傷がある


「その傷痕はやはり戦で?」


 レムレが聞く


「うむ、未熟だった頃の物から仲間を庇った時の物もあるな」

「背中も逃げ傷があるな」

 ユリウスが言う


「なんだ? 逃げるのは恥ずべき事ではないぞ?」


 オルベリンが言う


「えっ?」

 僕はオルベリンを見上げる

 意外だった、てっきり『逃げるのは戦士として恥ずべき事だ!』って言うかと思っていた


「ふむ、ならはっきり言っておこう」


 オルベリンは岩にもたれ掛かる


「勝てないと思う相手と会ったら逃げてもいいのだ、確かに『臆病者』等の汚名を着よう、しかし生き残れば汚名などいくらでも晴らせるのだ、強くなればいいのだ」


『…………』


「ただし、主の身が危険な時は例外だ……主の身を守るために……我々は時に敵を止める壁に、時に攻撃を受け止める盾になるのだ……良いな?」


「それが、オルベリンの考えなんだね?」


 僕が言う


「はい、これが、ワシの考えです」


 …………


「わかったよ、僕も見習ってみる」

 勝てない相手には逃げる……簡単な事だ


「ぼ、僕も……」


 レムレは自信がなさそうに言う


「僕は汚名を着たくないな……でも死ぬのは……うーん」


 ユリウスは悩む


「逃げるのは得意だ!」


 シャルスが答えた


「ふむ……では話は終わりだ、そろそろ服を着よう」

 言われて裸なのを思い出した


 ・・・・・・・・


 山頂に向かうように言われて山頂に行く


 すると


「あ、丁度出来てますよ!」


 ルミルが鍋をお玉で回していた

 ティールが皿を持っている


「オルベリン、これは?」

「猪のスープです、休憩の間に狩ったので2人に調理を頼みました」


 頼み事はこれか


「はいアルス様! ほらレムレも!」

 ルミルからスープを受けとる


「ルミルちゃん! 僕にも! 君の愛情と一緒に貰いたいな!」

「はいはい、愛情(ブラックペッパー)入れとくから」


「シャルス君もどうぞ」

 ティールからスープを受けとるシャルス


「あざっす!」


 尻尾を振っているシャルス

 視線はスープを見ている


「皆受け取ったな? ではいただきます」

『いただきます!!』


 滝行で冷えた身体に……スープの温もりが心地よかった


 ・・・・・・・・・・


 こうして1日の訓練を終えたアルス達

 部屋に戻った彼等は気絶するようにベッドに倒れ、熟睡したのだった



 その頃カイトは


「…………」

「すぅ……」


 ガガルガにてティンクと添い寝しながら煩悩と戦っていた

 ある意味滝行が1番必要なのはカイトなのかもしれない





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