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第66話 少女と兵士 1

 身体に走る痛み

 響く怒鳴り声

 抵抗すれば殴られた


 ただ、ただ……終わるのを泣きながら待つだけしか出来なかった……


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「じゃあ、行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ!」


 俺は他の都の視察に向かう

 その為に馬に乗っている


「ほら、ティンク、しっかり手綱を握って」

「はい!」


 俺の前にティンクは座っている

 俺はティンクを後ろから包み込むように抱き締めて支える

 これでティンクが落馬することはないな


「ヘルド、サルリラ、護衛は任せたぞ?」

「お任せを!」

「指一本触れさせないっす!」


 視察のメンバーは

 俺

 ティンク

 護衛としてヘルド

 そしてサルリラ


 この4人だ

 兵達は連れていかない


 何故なら


『お疲れ様です!!』

「あぁ、君達もお役目ご苦労!」


 こんな風に道中で何回も巡回してる兵達に会うからだ

 それ以外にも砦や村にも兵達が待機しているから、救援にすぐに来てくれるのだ


 因みに今回馬車じゃない理由は、単純に移動時間を短縮したいからだ

 ほら、馬車は快適だけど早くないからね?

 普通に馬を走らせたら馬車より1.5倍か2倍くらい速く目的地に着くからな


「カイトさん、視察はどんな風に行うんですか?」

「うん? ああ、主に都を任せてる将と話して、都の様子を見るくらいだ」


 因みに今回の視察の順序は

『マール』でルーツと会う

 そして『マール』の城下町を見回る

 そして1泊したら、『リユ』を目指す


 リユに着いたらヤンカと話してやっぱり城下町を見る


 その後は『ガガルガ』に行って以下省略


 そしてマールに戻ってから、ルスーンの様子を見に行って、またマールに戻って1泊してから帰る


 全て終わる頃には年末だ


 本当はメンバーにはオルベリンやレリスも加えるつもりだったが……


『お供したいですが……ワシはあの者達の訓練もありますからね……申し訳ないですが』


 とオルベリンに言われた……まあヘルドとサルリラが護衛だと知ってるからの発言だろうな……


 レリスは


『マイルスが何か仕掛けてくるかもしれませんから、見張っておきます』


 って言われた

 実の父親を呼び捨てにしたり、警戒したり……レリスがどれだけマイルスを嫌ってるか良くわかるな……


「先ずはマールですね!」

「あぁ」


 ティンクは嬉しそうだ……お風呂が楽しみなのかもしれないな


「風呂がとても広いからな、ビックリするぞ?」

「楽しみです!!」


 俺達は馬を走らせる



 ・・・・・・・


 ーーーヘルド視点ーーー


 サルリラと共にカイト様とティンク様の護衛をする


 賊が出ればすぐに蹴散らす……そんなつもりで務める


「平和だな……」


 カイト様が呟く


「そうですね……」


 ティンク様が答える


 ふむ、お二方は良い仲だ

 結婚された時は正直驚いたが、今は幸せそうで何よりだ


 ……結婚か


 俺は懐を覗く


 小箱が有るのを確認する


 少し前にシャンバルがやって来た時に買った指輪だ

 何故、指輪を買ったのか……それは


「旦那? どうしたっすか?」

「いや、何もないぞ」


 サルリラだ

 ハッキリ言おう、俺はサルリラに惚れている


 最初こそ『生意気な後輩』という印象だったが

 彼女はしっかりと努力して、仲間や民を助けようと一生懸命だとわかってからは『可愛い後輩』と思って接した

 それから共に過ごすうちに……まあ、なんだ……惹かれていってな

 告白するために指輪を買ったのだ


 因みに指輪の理由はカイト様がティンク様に渡したと知って

『何故指輪なのか?』

 と聞いたら

『特別な贈り物って感じないか?』

 と言われた

 それを聞いて『確かに』っと納得したから俺も真似てみようと思ったのだ


 だが……問題もあるんだよな……

 サルリラが『ベル』だった

 ベルは俺がまだ将になる前……兵士だった頃に出会った子だ


『マイルス』という村で生活していて、俺は村の警護をするために派遣されていた

 その時からなつかれていたが……


 知る前ならともかく、知ったあとの告白だと……責任を感じて告白したように思われそうだ……



「どうしたものか……」

「ヘルド? どうした?」

「あ、いえ……何でもありません」

「そうか? 何かあったら話してくれよ?」

「はっ!」


 やはりカイト様は優しい方だ



 ・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 道中の村で宿泊しながらマールの都に到着した


「お疲れ様ですカイト様」

「ルーツも、出迎えご苦労」


 俺は迎えに来たルーツに挨拶する


 さてと……


「ティンク、俺はルーツと色々と話して待たせることになりそうだから、サルリラと一緒に街を見てくると良い」

「えっ? 待ちますよ?」

「良いから良いから!」

「?」


 俺は首を傾げるティンクをサルリラに任せる


「さてと、取り敢えず落ち着いて話せる場所にいくかな?」

「おや? 玉座ではないのですか?」


 ルーツが聞いてくる


「いや、玉座の前に……ヘルド」

「はっ!」


 俺はヘルドを見る


「お前何か困ってるんじゃないのか?」

「な、何を言っておられるんですか?」

「普段と様子が違うんだよ、わかるんだからな?」


 カイトの記憶もあるが……物心がつく前からの付き合いだからな

 部下の悩みを聴くのも上司の仕事だ


「……はぁ、敵いませんな、カイト様には……」


 俺達は落ち着く場所に移動した



 ・・・・・・・・・


 ルーツの執務室

 人払いをして俺達3人だけになる


「それで何を悩んでるんだ?」


 待遇に不満があるのか?


 オルベリンは軍団長のまとめ役だし

 ルーツは都を任されている

 現代で言うなら、オルベリンは顧問でルーツは子会社の社長みたいなものだ


 そろそろヘルドにもそれくらいの役目を任せるべきなのか?

 でも、俺は出来れば今のままの方が助かるんだがな……頼りになるし

 ヘルドはヘルドで頼りにしてるんだぞ?


「実はサルリラの事なのですが」

「えっ? サルリラ?」


 待遇じゃなかったか

 でもサルリラ? 何か問題があったか?

 2人は仲が良かったと思うんだけど?


「なに? 惚れたのか?」


 ルーツが言う


「……まあな」


『マジで!?』


 俺とルーツが同時に反応した


 えっと、ヘルドが今34歳で、サルリラが19歳だから……

 15歳差か!?

 因みにヘルドの誕生月は9月で、サルリラが2月だ


「何でだ!? 胸か!? あの巨乳にハートを射ぬかれたのか!?」

「カイト様、落ち着いてください!」

 ルーツに言われる


「す、すまない……あーびっくりした……それで、本当に何で惚れたんだ?」


「何でと聞かれたら……まあ、長く共に過ごして惹かれたと言いますか……」


 ほほぉ、そう言えば良く一緒に居るな


「なら告白の仕方を悩んでるのか? それとも告白するべきかを悩んでるのか?」


「そうですね、告白するべきかを悩んでいますな」


 そうだよな、歳の差が気になるよな……


「何か事情があるのか?」


 ルーツが聞く

 いや、歳の差だろ?


「実は昔、サルリラが子供の頃に色々有ってな……」


「えっ? サルリラの子供の頃を知ってるのか?」


 俺はヘルドに聞く


「はい、俺が兵士の時に……マイルス村で」

「マイルス村か……ああ、あの時か」


 ルーツが何か思い出したようだ


「そうか、ルーツはその時から雇われてたな」

「ちょうど雇われた直後だ、焔暦134年の……2月頃だったか?」

「そうだ……その時だ……」


 カイトが6歳の頃か……


「あの時……何があったんだ?」


 ルーツが聞く


「正直……話しにくいのだがな……サルリラの名誉にもかかわる」


 ヘルドは言いたくなさそうだ


「話してくれないと何もできないのだが?」


 ルーツが問い詰める


「…………」


 少し……いや、かなり悩んで……


「わかった」


 ヘルドは口を開いた











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