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第64話 シャンバル再び

 焔暦144年 12月


 俺は玉座で報告を聞いていた


「都建設は順調みたいだな」

「はい!」


 俺はレーメルから報告を聞いていた

 レーメルは今は内政の勉強ってことでルスーンの下で都建設を手伝っている


 因みに兄であるルーツが会う機会が減ったと凹んでいたりする


「今は村を2つほど建設しました、そこに流れてきた民や職人を住まわせながら、建設と農業を行っております」

「最初の予定よりも進んでいるな」


 予定では、今から村作りの筈だった


「ルスーンさんの考えが効率的でした! まさか職人を色んな所から連れてくるとは……」


 サーリストでは普通は1つの村の職人達に全てを任せる

 建設も設営も色々を全てだ、だから時間がかかる


 しかしルスーンはそうしなかった

 村の建設をそれぞれ別の村の職人達にやらせて、更に他の村の職人に都の建設をやらせている

 同時進行で行っているのだ


 そりゃあ、効率は良いよ……金はかかるがな

 まあ、予算はバッチリだから許可したのは俺だけど!


「この調子なら146年の4月頃には完璧に完成するとの見立てです」

「そうか、予定よりも4ヶ月も早いな」


 いや~立派立派!

 完成したらルスーンを昇進させよう

 今は小隊長だから、部隊長だな


 因みにバルセとティールは軍団長でボゾゾは部隊長だ

 他の奴らは小隊長の役職だ


「失礼します! カイト様!」


 兵が玉座の間に入ってきた


「なんだ?」

「シャンバルという男がカイト様に会いたいと……」

「お、シャンバルが来たのか! いいぞ! 通せ通せ!」


 シャンバル、ベスルユ大陸の商人だ

 望遠鏡は彼から買ったんだよなぁ


「では私は失礼して……」

「待て待て、レーメルもシャンバルの商品を見ていけって! 役に立つのがあるかもしれんぞ?」

「わかりました」


 ・・・・・・・


「お久しぶりです、カイト様」

「ああ、久し振りだなシャンバル! ……今日は仲間と来たのか?」


 目の前にはシャンバル以外にも5人の獣族が居た

 猿に、猫2人に、犬2人か……


「はい、前回は売り切れてしまったので、今回は様々な商品を多目に持ってきました!」


 そう言えば前回はもっと持ってくるって言ってたな


「そうかそうか! じゃあ商品を見せてもらおうか!」


 俺は玉座から立ってシャンバルに近寄る


 そして商いが始まる



「今回も望遠鏡と砂時計を持ってきましたがどうなさいますか?」

「そうだな、買わせてもらおう」


 ガガルガに送りたいし、新しい都用にも買っておこう


「更に今回はこちらを……おーい!」

「へい!」


 猿の獣人が返事をして樽を取り出す


「これは?」

「ジュラハル大陸で仕入れた調味料です、豆を加工して作った……『シーユ』という調味料ですね」


 シーユ? なにそれ?


「ご確認下さい!」


 猿の獣人が樽を開く

 すると懐かしい香りが漂った


「な、なんだこの香りは!?」


 レリスが驚く

 そうか、嗅ぎ慣れてないとキツいよな


「ふむ……」


 俺は色を見る

 そして……


「少し舐めてみたい、小皿か何かに容れてくれるか?」

「はい!」

 猿の獣人はお玉を取り出して調味料を掬い上げ、カップに注ぐ


 俺はそれを受け取り、指につけて舐める


「あぁ、成る程……シーユね……」


 シャンバルを見る


「カイト様?」

「シャンバル、多分『シーユ』じゃなくて『醤油』と言ったんだと思うぞ?」

「あぁ! それです! そう言ってました! シーユではなくショウユでしたか!」


 まさか醤油を仕入れてくるとは……俺的には嬉しいが……


「うーん……」


 コックがこれを使いこなせるか微妙だな……


「シャンバル、醤油を使ったレシピとかあるか?」

「申し訳ありません……それは手に入らなくて……」

「そっか、お前達はこれを味わったのか?」

「はい! ジュラハルにて焼いた魚にかけたり、煮物というのを食べて、美味と感じたので仕入れたのです」

「そっか……」


 わかる、うん……焼き魚も煮物も美味しいよね


「気持ちはわかるが、他の大陸で売るならレシピもあった方が良かったな、買っても正しい使い方が解らなければ意味がない」

「そ、そうですね……」


 ま、俺はある程度知ってるから……


「まあ、試しだ……ここまで運ぶのも大変だっただろうし……少し買わせて貰おう」

「あ、ありがとうございます!!」


 シャンバルは今回の失敗から学ぶだろうな

 次は期待してるからね? 味噌とかもお願いね?


「ではお次はこれを……おーい!」

「はい!」


 男の犬の獣人が剣を抜いた

 周りの兵が構える


「ひぇ!?」

「あー、まあ剣を抜かれて警戒してるだけだから……」


 怯える犬の獣人に言う


「あ、あの……こ、これを見てもらいたくて……

「変わった形の剣ですね?」


 レーメルが言う


「これもジュラハルから?」

「はい! 『カタナ』と呼んでいました! 切れ味も良くて、是非カイト様に見ていただこうと……」

「ふむ……おい! 誰か将達を呼んできてくれないか!」


 俺は武器の良し悪しはわからん


 ・・・・・・


「カタナ、ですか……」


 オルベリンが刀を見る


「ふむ……斬れるのは片側だけか……」

「反対側は峰と呼ばれておりました、そちらで相手を斬る時は峰打ちと言っていましたね」

「ほぉ……」


 オルベリンは面白そうに見ている


「これは何ですか?」


 ティールが女の犬の獣人に商品を聞いていた


「それは『コンパス』です、磁石と呼ばれる物を利用しておりまして、この赤い針が北を示しているのです」

「へぇ……」


 ティールはコンパスを受け取りくるくる回る


「これは面白い、私が買わせてもらっても?」


 俺に聞く


「構わないぞ?」

「ありがとうございます!」


「これはなんだ?」


 ヘルドが小箱を取り出す


「それは指輪ですね、職人の自信作です」

「ふむ……」


 俺も商品をじっくり見るか


「って、鉤爪があるな……」


 どこの美しい男が使うんだ?


 ・・・・・・・・


「今回も御贔屓にしていただき、ありがとうございます!」


 シャンバルが礼を言う


「いや、こっちも色々と面白いものが見れた」

「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」

「あ、そうだ、シャンバル!」

「はい?」

「まだ先の話だが、今新しい都を作っていてな、どうだ? そこに商館を作ってみないか?」

「よ、よろしいのですか!?」


 商館、それを作ると家との商売もしやすいし、宿を取る必要は無くなる……それに仕入れもしやすくなるだろ


「あぁ、俺はお前を信用しているし、商売も有意義な物だ、俺としても同意してくれると嬉しいのだが……」

「それはとてもありがたい申し出です! ですが……商館を得るための金銭が……」

「まだ先の話だ……それに、賃貸って形で貸してても良いんだぞ?」


 色々と支援するぞ?


「いえ! 私も商人としての意地があります! その時が来るまでに金銭を貯めて買わせていただきます!!」


 よっ! 男前!


「なら、待っているぞ?」


「はい!」


 ルスーンに商館を建てて貰っておこう

 立地の良いところにな!



 ・・・・・・・・


 ーーーシャンバル視点ーーー


 カイト様との商売を終えた翌日

 ヘイナスを出るときにオルベリン様とヘルド様とレルガ様が護衛についてきて下さった


「…………」


 私は馬を操りながら馬車を引く


「おじさん……」


「『シャルス』? どうした?」


 甥のシャルスが私に声をかける


「カイト様って、あんな人なのか? オイラ達を見ても驚いたりしなかった……」


「ああ、豪胆な方だろ? 立派なお方だ」


 私の姿を見ても堂々とされて……対等に接してくださった

 それがどれだけ嬉しかったか……


「そっか……おじさん」

「なんだ?」

「お願いがあるんだけど……」


 シャルスのお願いか……


 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「はっ?」


 シャンバル達を護衛していたオルベリン達が帰って来た

 おまけを連れて


「お願いしますカイト様! オイラを家来にしてください!!」


 玉座に座る俺の前で土下座する猫の獣人の少年


「待て待て待て!? 話が見えない! オルベリン!」


「実はですね……」


 オルベリンから事情を聴く

 目の前の少年、シャルスが俺に仕官したくてシャンバルに頼んだそうだ

 シャンバルからオルベリンにお願いされて……断れずに連れてきたと……


「……シャンバル達は?」

「港にて返事を待つそうです」

「つまり断ったら、シャルスは港でシャンバル達と合流出来るんだな?」

「はい」


「ん~……取り敢えず自己紹介してもらおうか?」


「はい! オイラはシャルスと言います! シャンバルの甥で歳は15です!」


「ふむ……」


 まあ、シャンバルの頼みだし、断る理由はないが……


「3つほど質問しようか?」

「はい!」


「1つ、何故俺に仕えたいんだ?」

「カイト様はオイラ達獣人も平等に扱ってくれるからです!」


 そりゃあ普通の事だろうに……


「2つ、何でベスルユ大陸で仕官しない? その理由だったら自国の方が良いだろう? 文化も作法も違うんだし」

「その……ベスルユは王が……狼族でして……オイラ達猫族は嫌われていて……迫害されていて……」

「仕官出来ないわけか……成る程な」


 それなら他の大陸で仕官するしかないな

 あーだからシャンバルは他の大陸で仕入れて商売してる訳ね


「3つ、何故兵になりたいんだ? シャンバルの様に商人になればいいんじゃないのか?」


 シャンバルが社長みたいだし、甥ならコネでも何でも立派な役職にしてくれるだろ?

 こうやって願いを聞いてくれるくらいには大事にされてるんだし


「商人は……奪われるだけです!」

「んっ?」

「商人は戦えません! オイラは奪われるだけなんて嫌なんです!」


 シャルスの目が燃えている

 何かあったのか?

 理由を……いや、聞かないでおこう、触れてほしくないかもしれないし


「……ふむ、わかった、兵として雇おう」

「やった!!」

「だが!」


 俺はシャルスを見る


「シャルス、色々と覚悟は出来てるんだろうな? 俺は獣人とか種族は気にしないが、他の奴らがどんな風に感じるかはわからないぞ? それに兵として戦う以上、死と隣り合わせだ、いつ死ぬかわからないから、それも覚悟しておけ……お前が思ってる以上に辛いかも知れないからな!」

「望むところです!!」


 力一杯答えるシャルス


「よし、なら明日から新兵として訓練に参加しろ! 兵舎に空きがあるからそこを使わせてもらえ」

「はい!」


 こうして、新たにシャルスを兵に加えた

 さて、どうなることやら……













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