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第62話 ベススの秘密兵器

「こっちだカイト」

「ここか?」


 食事会の翌日

 本来なら皆への土産を買ってから帰る準備をしている予定だったが

 ゼルナに誘われて、俺とゼルナの2人だけでベススから少し離れた山を登っている


「俺に見せたいものってここにあるのか?」

「この山の山頂だ、来てみればわかる」


 そう言われて1時間は登ってるぞ?



 馬車とかで登れば速かったと思うんだがなぁ……


「んっ? ゼルナ、行き止まりになってないか?」


 道が途切れている……目の前には大きな崖

 ……まさかよじ登れとな?


「心配するな……」


 ゼルナが崖の前に立つ

 そして目の前に手を出し


『我、ベススの血を継ぐものなり』

 そう言って崖に触れる


 ゴゴゴゴ!!


「うぉ!?」


 目の前の崖に洞窟が現れた

 なにこれ!?


「さぁ、行くぞ……」

「あ、あぁ……」


 俺とゼルナは洞窟に入った

 少し進むと後ろからゴゴゴゴと音がした……入り口閉まった?


 ・・・・・・・・


 洞窟の中は薄暗い

 しかし、全く見えないわけではない……少なくとも目の前のゼルナは見えている


「ここはなんなんだ?」


 俺はゼルナに聞く


「かつて、俺達ベススの祖先が造った拠点だ……秘密基地っと言った方がいいか?」


 秘密基地ねぇ……


「ベススの血を継ぐもの……俺と姉上しかここの入り口は開けない」

「なに? 俺に見せたいのって、そんなに重要な物なのか?」

「あぁ、ベススの秘密兵器だ」

「……はぁ!?」


 そんな重要な物を見せるのか!?


「なんで俺に見せるんだ? 秘密兵器なんだろ? 同盟関係だからか?」

「お前が同盟相手だと言うことも理由にあるが……」


 ゼルナが立ち止まって振り返る

 俺と目が合う


「昔、お前は俺達に兵器を見せただろ?」

「ああ、メリアスト平原の時に」

 メビルトが敵だった時だな……


「あの時、お前は仲間に手の内を見せると言っていた……あの時は理解できなかったが……今ならわかる」

「つまり……」

「俺も姉上もカイトを信用していると言うことだ」

「それは嬉しいなぁ」

「お前も俺達を信用しているだろう?」

「当たり前だろ? じゃないと2人っきりなんてならないっての」

「ふっ、そうだな」


 ゼルナが歩くのを再開した、俺も続く


 ・・・・・・・


 先の方に光が見える

 出口だ!


「この洞窟を出たら、目的地だ」

「いったい何があることやら……」


 本当に何があるんだ?

 兵器なんだよな?

 ……大砲とか鉄砲か?

 いや、そんな技術はまだ無いはず……


 ……虎戦車とか?

 かつて三国志の蜀が南蛮を平定しようと戦をしてたときに諸葛亮の奥さんが造ったと言われてる猛獣避けの火を吐く兵器

 火はかなり強力だ、敵も焼けるし、陣も、町も、城も焼ける

 火計は敵を蹴散らすのにピッタリだからな

 まあ、後の処理が大変だけどね



「もうすぐだ」

「あぁ」


 出口が目の前だ

 俺は洞窟を出る


 さあ、鬼が出るか蛇が出るか!

 虎か? 狼か? 象でも驚かんぞ?


 俺は前を見る


「グォォォォォォォォォォォォ!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 俺は尻餅をついた

 いや、だって……あれって


 えっ? 羽があって? 尻尾があって? 牙もあって? 角もある?

 待って待って待って!!


「驚いたか?」

「ゼ、ゼルナ! あ、あれって……」


 俺はゼルナを見る


「あぁ、竜……ドラゴンだ」


 ゼルナは愉快そうに答えた


 ・・・・・・・・・・・


 竜……八龍とは違う

 龍ではなく竜だ

 俺の知るサーリスト戦記には存在しない生き物だ


 大きさは……東京タワーくらいあるんじゃないのか?

 そんな大きな竜が俺を見下ろしていた


 そして、その竜の周りを小さな竜が飛んでいる

 小さい……ってのは大きな竜と比べてだ

 小さな竜も人間の3倍は大きい


「立てるか?」

「あ、ああ……」


 俺はゼルナの手を借りて立つ

 足が震える


『……ゼルナか』


「うわっ!?」


 きぃぁぁぁぁぁ!! 喋ったぁぁぁぁぁ!!


「あぁ、久し振りだな『バイアス』」

 えっ? なに? 親しいの? 親しい仲なの!?



『その小僧は何者だ?』

「彼はカイト・オーシャン、俺の友人だ!」

『カイト・オーシャン?……あぁ、不死鳥が言ってた者か』

「!?」


 不死鳥……それってフェニックスの事か?

 俺の事を()()()()()と言ったアイツの事か


「不死鳥を知っているのか!?」

『我の友人だよ……たまに飛んでくる』

「アイツに会えないか!?」

『次、あやつが来るのは500年後だ』

「ごひゃ!?」


 えっ、本当に言ってるのか?

 俺、からかわれてない?


「その不死鳥が何者かは知らないが……何かあったのかカイト?」

「いや、別に……」


 話したら異世界のこととか話さないといけなくなる

 流石に信じてくれないだろう


『それでゼルナよ、何故そいつを連れてきた?』

 バイアスが俺を見る


「カイトにベススの秘密兵器を見せたくてな!」

『……良いのか?』

「ああ!」

『……ふむ……お前が認めるのなら良いだろう……おい!』


 バイアスが飛んでる竜を呼ぶ

 すると呼ばれた竜が俺とゼルナの前に着地した


「んっ? これって……」


 俺は目の前の竜を見る……鞍と手綱がついている


「これがベススの秘密兵器だ」


 ゼルナが跳ぶ

 そして竜に跨がった

 ……竜騎士?


「馬ではなく竜に騎乗するか……」

「彼らは飛べる、空を制する者は戦を制する」


 確かに、空中から攻められたら、ひとたまりもない

 籠城も意味がない……空はがら空きだからな


「鱗も頑丈で、並大抵の武器は弾く」

 触ってみると確かに硬い……矢とかは平気そうだな


「これで偵察も戦もやりやすくなる」

「……凄いな、予想以上だ……こんなのどこも真似できないぞ!」


 ベススの……ベススだけの兵器だ

 強力な戦力だ!


「ほら、カイト」


 ゼルナが手を差し出す


「ああ!」


 俺は手をつかみ……引き寄せられゼルナの後ろで竜に跨がる


「俺に掴まっていろ!」

「おぅ!」

「はぁ!」


 ブォン!!


 ゼルナの掛け声と同時に竜が空を飛んだ


「うおおおおおお!?」


 速い速い!?

 もう地上が小さくなってきた


「雲に入るぞ!」

「マジか!?」


 雲に突入する

 飛びながら回転したり、宙返りしたり

 落ちる落ちる落ちる!?


「どうだカイト!」

「怖い怖い怖い!?」

「そうか!」


 止める気ないなお前!!


 それから数分間飛びまくる


 そして雲の上でやっと止まって滞空した


「はぁ、はぁ……」

 叫びすぎてキツい!


「どうだった?」

「ひたすら怖かった!!」

 身体がフワッてなったときの恐怖よ!


「そうか、俺は楽しかったのだがな」

「だろうね!?」


 俺は周りを見る

 雲の上……まさか初めての飛行が飛行機じゃなくて竜だとは……


 空気薄いし……肌寒い……


「ゼルナ、こんな強力な戦力があるのに、何故リールに苦戦するんだ?」

「あぁ、実はまだ俺以外には乗りこなせないんだ」

「成る程な……」


 そりゃあ飛ぶんだ、馬やラクダとは勝手が違うだろ


「今も俺が選んだ者達で極秘の訓練をしている」

「使い物になるには時間がかかると?」

「ああ、何年かかるかわからない……」

「準備が完了したらリールとの戦か」

「その時は援軍を頼むぞ?」

「ああ……そうだ、ゼルナ、これやるよ」


 俺は望遠鏡を渡す


「これは?」

「これは望遠鏡って言って、遠くを見る道具だ」


 俺は使い方と注意点を告げる


「成る程……これなら空からの偵察もやりやすい……感謝する」

「いいよ、俺も良いもの見れたし……てかそろそろ戻らない?

 いい加減限界なんだけど……」


 身体が震えだした


「そうだな……このままベススに戻るか」

「いいのか?」

「他国にはバレないさ」


 ・・・・・・・・・・・・・・


 俺とゼルナはベススの城の屋上に降りた

 竜は俺とゼルナが降りたのを確認すると飛んでいった

 自動で戻るとか……便利だな


「さてと、街に行くか? 土産を買うんだろう?」

「そうだな……皆と合流するか」


 その後、買い物をしていたティンク達と合流して土産を買った



 ・・・・・・・・


 翌朝


「ではナリストさん、またいずれ」

「ああ、東方制圧……応援してるよ!」


 俺はナリストに挨拶をする

 これからオーシャンに帰るのだ


 荷車に乗り込む


『出発!!』


 行きと同じようにゼルナ達が護衛として一緒に来る

 これからまた拠点を転々としながら帰る


「ばいばーい!! またねー!!」

「ありがとうございましたー!!」


 ミルムとティンクが顔を出してナリストに手を振る

 ナリストも手を振る


 こうしてベススへの旅は終わった


 ・・・・・・・・・


 帰りは特に問題なく進んだ

 ルノマレスでゼルナ達と別れて、待機していたオーシャンの兵と合流する


「じゃあなゼルナ!」

「ああ、例の件は俺から話しておく」


 例の件とはモックルの事だ

 荷車は快適だった……温度がちょうど良くてな

 それでゼルナに提案したんだ


 このモックルで作った箱を運搬に使えないか? とね

 冬に積もる雪をこの箱に入れる

 そして春に葉物を入れてベススに運ぶ

 これなら鮮度を損なわずにベススに葉物を運べる!

 ……かもしれない


 雪が溶けないか、葉物は大丈夫なのか?

 それがわからないから試すしかない

 上手くいけばいいんだけどな……




 ゼルナ達と別れた後はヘイナスに向かう

 もうすぐ帰れるぞ!!



 ・・・・・・・


 ーーーヘイナスーーー


 数日後、ヘイナスに帰って来た

 ヘイナスを出発してから1ヶ月は離れてたかな?

 いやー割りと長旅だったな!


「俺はレリス達に帰って来た事を言うから、皆はゆっくり休んでてくれ」

「はーい!」


 ミルムが元気良く返事をする


「でも……いいんですか? 何か出来ることはありませんか?」


 ティンクは遠慮している


「なら使用人達に土産を配っててくれるか? アルス達も手伝ってくれ」

『わかりました!』


 さて、玉座に向かうか……

 それにしてもなんか違和感があるな


 ……あ、レリスだ、いつもなら出迎えてくれるレリスが来ていないんだ


 何かあったのか?



「カイト様!」

「おっ、レルガ! 戻ってきたか!」

「はい、ガガルガはもう大丈夫だと判断しました!」


 速いな、まあバルセは元々善政をしていたからな


「そうだ、レリスを知らないか?」

「レリスなら玉座の間に居るかと」


 レルガに案内される


 そして玉座の間に到着する

 入り口の兵が扉を開く


 そこには……


「…………」


 怒気を撒き散らせているオルベリンと……


「カイト様!」


 居心地が悪そうなレリスが居た


 なんか有ったのか


「坊っちゃん……」


 オルベリンが俺を見る

 少し落ち着いたみたいだが……まだ怒気を撒き散らせている


「オルベリン、帰ってきたんだな……どうしたんだ? 怒ってるようだが?」


 俺、何かやらかした?

 平時とはいえ1ヶ月も領を離れたのはまずかった?


「坊っちゃん……話があります」

「んっ?」


 俺は玉座に座る……あれ、そういえば


「ヘルドとサルリラは? ルミルやレムレは手配した家か?」


 母親と一緒に暮らしてるんだよな?


「ヘルドは負傷した為、休んでおります、サルリラはヘルドの見舞いを……ルミルとレムレはヤンユに慰められています」


「…………えっ?」


 ヘルドが負傷?

 ルミルとレムレがヤンユに?

 えっ? どういうこと?



「何があった?」

「実は……」



 俺はオルベリンの報告を聞く……

 そして……俺は後悔する事になる……




























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