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第61話 ベススでの食事会

 食事会が始まった


 皆思い思いに料理を楽しむ

 アルスは初めて見る料理に目を丸くしているし

 ミルムは侍女からオススメされてる菓子を美味しそうに食べてる……こら、餌付けしない!

 ユリウスは……なんか女性と話しているが……ナンパじゃないよな?


 ティンクとティールは俺の側に居る

 ティンクは慣れない場所で知らない人が多いから安心を求めて俺の側に居る

 ティールは護衛だ


 そして俺はというと……


「貴方の噂はよく聞いていますよ」

「あぁ、そうですか」


 ベススの貴族の話し相手をしている

 コイツで5人目だ


 次から次へと挨拶に来て……全く、モテる男は辛いぜ!


「はいはい、そこら辺にしときな!」


 そこにナリストが来て貴族達を追い返した


「ふぅ……良かったので?」

「良いんだよ、ごますりしかしない奴らなんて」


 ごますり……割りと大事よ?


「さっ、カイト達も食べて飲みな! その為に招いたんだから!」

「えぇ、いただきます」


 鶏肉下さい!


 俺達もベススの料理を味わう


「…………」

「むぐ……」


 ナリストの側にはルートゥとファルンが居る

 ゼルナは他の貴族の相手をしている


「ですから我が娘を嫁に」

「そういうのは困る」


 ゼルナはどうやら婚約の話をしているようだ

 まあ領主の弟で、腕も立つ……将来を約束された様な人物だ……権力が欲しい奴等からしたら手に入れたい人物だろうなぁ


 ……腕が立つと言えば


「ナリストさん、ファルンとルートゥとチップスはどんな出会いをしたんですか?」

「なんだい? 気になるのかい?」

「まあ、昨日言ってた事が気になって」


 ナリストはファルン達を信用していると言った

 それってゼルナくらい信用しているって事だ

 よっぽどのストーリーが有る筈だ……気になる!


「うーん……そうと言っても大した事じゃないよ?」

「それでも構いません、酒の肴に……」

「そうだね……ならチップスとの出会いを話そうか」


 お、チップスからか!


「あれは私が領主になった時だね」


 ・・・・・・・・・


 父から継いで領主になった私は先ず領地の街を見ることにしたのさ

 実際に街を見て現状を知るためにね


 3つの街を見終わって、次の街に向かっていた時さ


『むっ、道が塞がっている……』


 そこは狭い道だったんだけど、数日前の地震で大岩が落ちてきて、道が塞がられていたのさ


『ゼルナ、なんとかなりそうか?』

『無理だな……火薬が有れば爆発で壊せたかもしれないが……』

『困ったね……他に道は無いし……時間をかけて壊すしかないかね?』


 私達は途方にくれていたよ

 そこに


『おめぇさん達、何してるだぁ?』

『むっ?』

『んっ?』


 声のした方を見ると大きな男が立っていた


『付近の村の者か?』

 ゼルナが問う


『んだぁ、オラは『ベック』のチップスだぁ』


 ベック……ここなら歩いて数分の所の村だ


『おめぇさん達こそ、誰だぁ?』


 チップスが聞いてくる


『よっ!』


 私はラクダから降りる


『自己紹介しようか、私はナリスト、ナリスト・ベススさぁ! ベススの新しい領主だ!』


『んー? 新しい領主様だっただかぁ?』

 チップスは呑気に答える……

 ひれ伏せとは言わないけど、もう少し驚いて欲しかった


『ゼルナ・ベススだ……チップス、何故ここに? 他の村に用でもあったか?』

『嫌、違うだよぉ』

『えっ? じゃあなんでここに?』


 私は聞く


『あの大岩を処分しにきただぁ』


 チップスは道を塞いでいる岩を指差す


『大岩を? 出来るのかい?』

 私は聞く


『できるだよ!』


 そう言ってチップスはハンマーを持って大岩に近寄る


『離れてるだよぉ』


 チップスが言う、私達はチップスから離れる

 何をするのか?


『いくだよぉぉぉぉぉぉ!!』


 そう叫ぶとチップスはハンマーを持ち上げて回転を始めた


『ふんふんふんふんふんふん!!』


 ブンブンブンと回るチップス


 そして


『だぁぁぁぁぁぁ!!』


 勢いをつけた一撃が……


 ドゴン!


 大岩に炸裂した


 砕ける大岩


『これで通れるだぁ!』


『…………』


 私は目を丸くした


『どうしただか? もう通れるだよ?』

『あ、あぁ……』


 ゼルナも驚いていたね


『…………』


 私はチップスを見ていた

 これ程の怪力を持っているチップスを仲間に欲しいと思った


『なあチップス、私の部下にならないかい?』

『んー?』

『私の元でその怪力を発揮してもらいたいんだけどさぁ!』

『嫌だよぉ……』


 ・・・・・・・・・


「てな感じで誘って」

「断られてませんか?」

「この後、3ヶ月くらい誘い続けてね……村に飢えさせないって約束で誘いに応じてくれたよ」

「3ヶ月……」


 長いなぁ……


「純粋な男だ、だから私はチップスを信用してるんだ」


 クイッとワインを飲むナリスト


 それにしても大岩を一撃で破壊とか……凄いな

 城門とかも簡単に壊せるだろうに


「他の2人は?」

「わ、わたしは……その……」

「ファルンは私が15歳の時に出会った子でね」


 ナリストは今25歳だっけ?

 なら10年前か


「その、私……この姿じゃないですか?」

 チラリとフードの下が見える


 金髪の髪

 青い瞳

 白っぽい肌

 ベススの住人とは対になる様な姿だ


「私の両親は普通なんですが……私だけ皆と違う姿で……それで、その……嫌われてまして」


 俯くファルン


「それで暗い顔をしてたファルンを見つけて、私が彼女の身柄を引き取ったのさ……父に成人祝いとねだってね」

「うん? それって人身売買?」

「同意の上の買い取りだよ、まあ金を出して私がファルンを買ったのさ」

「……買ったってのがなぁ……」


 ひっかかる言い方だ


「あ、ナリスト様は良くしてくれましたよ? わからないことは教えてくれましたし……戦い方も教えてくれましたし」


 あぁ、ちゃんと勉強させたりしたのか

 保護した訳ね


「あと夜の方も……きゃ♪」

「……えっ?」


 俺はナリストを見る


「私はどっちもいける口だよ?」

「…………」


 俺はティンクをナリストから離す


「流石に人妻に手を出さないから、警戒しないでほしいねぇ 」

「冗談ですよ冗談」


 ナリストとファルンが言うが……冗談に聞こえないんだよな……



「あの、ルートゥさんは?」


 ティンクが聞く


「んっ? ルートゥかい? ルートゥは幼馴染だからねぇ、これと言った話は無いよ?」


 つまり、俺にとってのレリスの様に信用してるって事か

 成る程な……


「色々と聞けて楽しかったですよ」

「そうかい、なら次はあんたの番だよ」

「へっ?」


 ナリストがニヤリと笑う


「あのユリウスって子やオルベリンとの話を聞かせてもらおうかねぇ!」


 ガシッと肩に腕を回される

 ギャー!! 捕まったぁぁぁ!


 ・・・・・・・・


 出し物が始まるまで2時間

 俺はナリストに捕まったのだった……

 まあ侍女が料理を持ってきてくれたから食事は楽しめたがね



 そして出し物が始まる


 何でも踊り子による踊りらしい

 さっき見かけた露出の多い女性は踊り子だったのか……

 んっ? これって大丈夫なのか? 胸元とか普通に危ないんだけど?

 踊ったら出るんじゃないのか?


 いや、彼女はプロだ!

 恐らくポロリしない方法があるんだろう

 そうに違いない!


 いやー残念だなー

 俺も男だからねー

 ポロリを期待してたんだがねー

 いやー残念だー




 ~~~♪


 踊り子が踊る


 うん、なんだろ……情熱的って言うのか?

 激しい踊りだ……

 そして……


 プルンプルン


 当たり前のようにポロリしてる

 もう丸出しだ……ねぇ、これって放送事故的なやつ?

 予期せぬトラブルだよね?

 でも彼女はプロだから動じないで踊ってるんだよね?

 そうだと言ってくれ!!



 ・・・・・・・・


「なんだあれなんだあれなんだあれ……」


 アルスが真っ赤な顔で俯く


「いや~眼福で~」


 ユリウスは楽しそうだ


「…………」


 ティールが胸元を虚しそうに見てる


「……サルちゃんの方が凄いもん……」


 ミルム、対抗するな


「はぅぅ……」


 ティンクも真っ赤だ


「ナリストさん、あれって良くあるんですか?」

「あれってなんだい?」

「いや、胸が露出するのが……ベススの人達は動じてないので」

「あれも演出の1つだからね……良かっただろう?」

「驚きの気持ちがでかくて何とも言えません」


 つまりポロリはわざとか……


「おいおい、あの程度の色で怖じ気づいてどうすんだい? 慰安婦とかあるだろうに」

「オーシャンには慰安婦の文化はありません」

「……そうなのかい?」


 意外って顔だ……


「それで良く兵達の性欲を抑えられたねぇ」

「数日くらいなら我慢できるでしょ?」

「……普通は(いくさ)ってのは数ヶ月から数年かかるんだけどね……」


 ……そうか、俺はまだ短期間の戦しか経験してないから……

 数ヶ月、数年って考えたら兵達も辛いだろう……

 暴徒化したりとか、民に乱暴したりとかするかもしれない……


「……必要なんですかね?」

「それは自分で決めることだね」


 ……うーん、あんまりそういう事はしたくないんだけど……

 レリスと話し合ってみるかな……


 ・・・・・・・・


 その後も出し物は続いた


 火吹き芸とか

 蛇を操ったりとか

 ナイフ投げも凄かったな……リンゴのど真ん中にブスリだ


 俺はベススの料理に舌鼓をうちながら出し物を楽しんだ

 ベススの料理はスパイシーなのが多いな、酒が進む進む


 食事会が終わる頃には……俺はほろ酔い状態だった



 ・・・・・・・・


「カイトさん、大丈夫ですか?」

「うーん……歩けるから、大丈夫……だと思うけど……」


 アルスとユリウスに支えられながら会場を出る俺達


「楽しめただか?」


 会場の出口を警護していたチップスに聞かれた


「あー、うん、たのひめた……チップス、お疲れさま……」

「んだ! カイト様も皆もしっかり休むだよ!」


 チップスの後ろでなんか人が大量に倒れてるのが見えたが……気にしないことにした


 ・・・・・・・


 部屋まで運ばれた

 ベッドに座らさせられる


「アルス、ユリウス……ありがとう……」


「うん……酔ってる兄さん初めてみたよ」


 普段、あんまり飲まないからな……


「僕達は部屋を出ますが……ティンク様と2人で大丈夫ですか?」


「んー……」


「これ半分くらい寝てない?」

「主にこれとか言うな!」


 ユリウスとアルスが言い合ってる


「寝る……」


 俺はベッドに倒れこむ


「後はわたしがしますから」

「わかったよ、ティンクさん、無理はしないようにね?」

「失礼しました!!」


 アルスとユリウスが部屋を出たようだ


「はい、カイトさん……着替えましょう?」


 着替え……あ、そうだ……礼装のままだ……


「寝間着に着替えるのが無理なら……脱ぐだけでも……」

「んー……」


 脱ぐ……脱ぐ……脱ぐってなんだっけ?


「もう……わたしが脱がせますね?」

「うん……うん……」


 もう……眠……た……


 ・・・・・・・・・・


 翌朝


「…………」

「んっ……」


 起きたらパンツ一丁の俺と裸のティンクが寝ていた……


 えっ? なにこれ?

 まさか……一線越えてしまった?

 マジで? 酔った勢いで!?


 ガバッ!


 俺は飛び起きる


「…………」


 シーツを見てみる

 少しシワが出来ているが……変に濡れてるとかは無い

 …………ティンクが起きたら聞いた方が良いよな?

 でも、なんか怖いな……記憶に無いってのが本当に怖い

 嫌だよ? 大事な初めてが酔った勢いとか嫌だからな!?



「カイト……さん?」

「あ、ティンク……」


 ティンクが起きた……き、聞くべきだよな……


「ティ、ティンク……昨日は……」

「もう、寒くないですか?」

「……えっ?」


 ティンクが身体を起こす


「その、寝間着に着替えるのが難しくて……服を脱がせたら寒そうにしてたので……その、寒さには人肌が効果的と聞いていたので……」

「裸で暖めてくれていたってこと?」

「はい」


 赤くなるティンク


「そ、そっか……うん、大丈夫だ、もう寒くないから……その、ありがとうティンク」

「い、いえ……」


 それと……


「おはよう」

「おはようございます……」



 うん、挨拶は大事だな!










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