第59話 ティンクと観光
翌日
「カイト様、ティンク様、朝ですが……起きられますか?」
「……んっ」
聞き慣れない声
うっすらと目を開くと……露出の多い侍女が居た
……本当にベススの服は露出が多いな……
「んん……時間は何時頃で?」
「朝の7時です」
「……食事会は……」
「13時の予定です」
「そっか……」
俺はティンクを見る……まだ寝てるな
俺も仕事があるわけじゃないし……ベススに来るまで早起きばかりしていたからな……たまには遅くまで眠りたい……
「悪いが9時まで眠らせてもらって良いか?」
「畏まりました、では9時に起こしに参ります」
そう言って侍女は部屋を出ていった
一瞬、廊下にルートゥが立っているのが見えた
さて……二度寝するかな……
お休みグッナイ……
・・・・・・・・・
ーーーアルス視点ーーー
「ふっ! ふっ!」
朝、目が覚めた僕は日課の剣の素振りをしていた
「ふっ! ふっ!」
ヒュン! ヒュン!
剣が風を斬る
これが終わったら槍の素振りだ
「精が出るだなぁ」
ドシン! ドシン!
そんな足音を出しながらチップスが寄ってきた
「鍛練は毎日続けるものだからね!」
ヒュン! ヒュン!
「だなぁ、オラも素振りをするだよぉ!」
そう言ってチップスは巨大な棍棒を取り出した……
で、でかい……僕の身体と同じくらいあるんじゃないのか?
「ふん! ふん!」
ブォン!! ブォン!!
チップスは片手で棍棒を振り回す
あんなので殴られたら即死だなぁ……
「どうしただか?」
「あ、いや……大きな棍棒だなって」
「持ってみるだか?」
「良いの?」
「良いだよぉ!」
チップスが棍棒を地面に寝かせた
「よっ!」
僕は棍棒の持ち手を持って
「ふん!」
持ち上げ!
…………………
「ふん!」
持ち上げ!
…………………
「ふぅん!!」
……上がらない!!
「なにこれ……重い!」
「そうだかぁ?」
チップスは軽々と持ち上げる
それを振り回せるのはあんたくらいだ
僕とチップスは一緒に素振りを続けた
・・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
9時になった頃に侍女に起こされる
起きた俺とティンクは食堂……食堂だよなここ? そこで朝食を済ませる
「起きたか……」
ゼルナがやって来た
「ああ、おはよう」
「おはよう……2人共よく眠れたか?」
「はい!」
ティンクが元気に返事をする
「そうか、それは良かった……」
ゼルナもこれから朝食の様だ
「ナリストさんは?」
「今、食事会の準備で色んな所に顔出ししている」
「そうですか……」
「お前達は食事会までどうするつもりだ?」
「ティンクと一緒に街を見ようかと……誰か護衛に借りるけどいいか?」
「あぁ、ファルンが丁度手が空いてるから……連れていけ」
よし、なら早速……
「待て」
ゼルナに呼び止められる
「どうした?」
俺は食堂を出ようとした足を止めて振り返る
「日焼け止めを塗っておけ」
「日焼け止め?」
「こちらです」
侍女がジャム瓶くらいの大きさの入れ物を俺に渡す
「モックルの実から採れる果汁を加工した物だ、長時間外に居るなら……塗らないと後が酷いぞ」
「わかった、手足に塗れば良いんだな?」
「全身だ」
「……へっ?」
「だから、全身だ……」
「いやいや、流石に全身は……」
「そうだな、カイトの格好なら腰まわりは必要ないだろうが……ティンクの方がな」
「……おぅ」
「?」
俺はティンクを見る
上からマントを羽織っているが……この下はビキニだ
「ならティンクは侍女に塗ってもらえば」
「夫婦なのだからお前が塗れば良いだろ?」
「…………えっ?」
「夫婦は普通は伴侶が塗るのだが?」
そんな、『当たり前だろ?』って顔やめい!
「えっと……カイトさん?」
「あ、いや……あっと……」
「ほら、さっさと部屋で塗っていけ、ファルンには俺から言っておく」
ゼルナに背を押されて食堂から追い出された
……ど、どうする?
・・・・・・・・・
取り敢えず部屋に戻った
「これを塗れば良いんですよね?」
ティンクが俺の持つ日焼け止めを見る
「あ、ああ……そうだな」
「全身でしたよね? じゃあ脱ぎます!」
そう言ってティンクはマントを脱いで、ビキニの上のブラを外そうと
「待った!!」
俺は止める
「はい?」
「その、せめて向こうを向いてくれないか?」
「……? わかりました」
ティンクは俺に背を向けてビキニのブラを外した
……これはこれで危ない
「あの……」
「っと!」
振り向こうとしたティンクの肩を掴んで止める!
「カイトさん!?」
「こっちを向かないでくれティンク!」
「な、なんでですか!?」
まだ13歳の身体とはいえ、色々と耐えている俺がティンクの半裸なんて見たら……事案だ!!
「背中を塗るから……なっ?」
「あ、わかりました!」
納得してくれたティンク
立ったままだとやりにくいからベッドの上に座る
ベッドの上で半裸のティンク……危ない危ない
考えるな俺!
「えっと……日焼け止めを……うわ、ぬるぬるしてるな」
果汁だからベタつくのか?
「これを背中につけて……」
ピトッ
「ひゃん!?」
「っと! どうした!?」
「いえ、冷たくて……ビックリしました」
「ああ、確かに冷たいな……」
さて、背中につけた日焼けを拡げるっと
「んっ……ふぁ」
ティンクの肌……本当に白いな
俺の肌も白っぽいが……何て言うか……雪?
「ひゃ! んん!」
俺や他の奴らは紙みたいな白さだ、なんかクリームぽい色っていうか
「ふぁ……」
純白……って言うのか?
本当に真っ白で綺麗な肌だ……
虐待されていた時の傷も癒えたから本当に綺麗で……柔らかい
「んう……ぁ!」
「さっきから変な声を出すの止めて!」
「だってくすぐったくて……」
本当に勘弁してください!
スルーして冷静でいようとって思ってたけど無理だからな!
「よし、背中は塗ったぞ」
「では前を……」
「前は自分でしてくださいお願いします」
「あ、はい! わかりましたから頭を下げないで下さい!」
その後、立ち上がったティンクの足に俺が日焼け止めを塗った
視線は床に向けながらな……だって目の前にティンクのお尻があると思うと……視線を上がるわけにはいかないっと判断した
そして俺もティンクに背中を塗ってもらったのだが
「よいしょ!」
「うわ、本当に冷たい!?」
手で味わう感触と背中で味わう感触って全然違うんだな
俺はズボンを履いてるから下半身は塗らない
ティンクが残念そうだったが……塗らない!!
・・・・・・・・・
城の出入口にファルンが立っていた
「あ、じゅ、準備出来ましたか?」
ファルンが俺を見る
フードで目は見えないが……多分見てる
「あぁ、待たせてすまない」
「い、いえ……では、行きましょう」
俺達は街に出る
「ティンクは何か見たいのはあるか?」
「えっと、風龍の像を見たいです! カイトさんと!」
何故、俺とを強調する?
「あぁ、夫婦円満の像ですね」
成る程な
俺達は像のある広場に向かう
「……これが、風龍の像か……」
俺は像を見上げる
デカイ……奈良の大仏並の大きさだ
「凄い迫力だな……」
「カイトさん! こっちに!」
「んっ?」
ティンクに手を引かれる
そして像の真っ正面……なんか像に睨まれてるような感じが……
「ここで一緒に像を見上げると、その夫婦は末永く一緒にいられるって話です!」
「夫婦末永くね……離婚とかするつもりは無いんだけどなぁ……」
「あ、それは心配してませんよ? わたしが心配なのは戦とかに出るカイトさんの無事ですよ……」
「ティンク……」
「わたしは戦えませんから、カイトさんの無事を祈ることしか出来ませんから……」
「ティンク……ありがとう」
俺はティンクの頭を撫でる
「う、うぅ……」
恥ずかしそうなティンク
可愛いやつめ
・・・・・・・・
それからも俺とティンクとファルンの3人で街を歩いた
そして今は飲み物屋で休憩してる
「結構まわれたな」
「はい!」
「も、もう少し時間があれば……他にも見れる場所があるんですけど……」
「それは次の機会だな」
もうすぐ昼だ……そろそろ戻らないと食事会に遅れる
「皆への土産とかどうするかな……」
食べ物は保存方法の問題で無理だし
装備品は……重いし、金が……そこまで持ってきてないからな
「やっぱり香辛料か……」
土産としては微妙だな
「悩みますね……」
頭を抱える俺達……
取り敢えず保留だな……食事会が終わったら皆で考えよう
俺達は城に戻った
さぁ、食事会だ!!