第56話 ルノマレスにて 2
ーーーカイト視点ーーー
俺とティンクはゼルナに連れられて屋敷に向かった
「今日は屋敷で休んでもらう……」
ゼルナが言う
「まだ昼頃だぞ?」
「昼では夜も砂漠を歩くことになる、拠点となる場所を途中で用意しているから、明るいうちにそこまで向かうために早朝に出発したい」
「つまり、日の出直前に出発して、夜になる前に拠点に到着するってのを繰り返すわけか?」
「そうだ、そうやって『ベスス』の都に向かう」
「成る程、わかった」
暑いうちに移動するのは大変だとか、移動手段は徒歩なのかとか
疑問が色々浮かんだが、砂漠を越えなれてる彼等にまかせた方が確実だろうから飲み込んだ
ドシン!
「んっ?」
「今、揺れませんでしたか?」
俺とティンクは立ち止まる
ドシン!
「ゼ、ゼルナ……何か揺れてるんだけど?」
「気にするな」
いやいやいや!?
地震とかじゃないのか!?
ドシン!
ドシン!
ドシン!
近い近い!?
ドシン!
ドシン!
ドシン!
ドシン!!
「あぁ~ゼルナ様だぁ! 言われた通り、連れてきただよぉ!」
デブが建物の角から現れた
こいつは『チップス』か……武力が140の力自慢だ
ここまで、デカイとは……
「あ、お兄様!!」
「ミルム!?」
そのチップスの背中からミルムが顔を出した
おんぶされてるのか?
「兄さん!」
角からアルスとユリウスとティールがやって来た
「お、お前達も来たのか」
「はい! チップスに案内してもらいました!」
ミルムが楽しそうに答える
「そうか、礼を言う」
俺はチップスに話しかける
「オラはゼルナ様の言うことを聞いただけだぁ」
照れくさそうに答えた
「カイト、紹介しておこう……こいつは『チップス』……ベススで1番の力持ちだ」
ゼルナがチップスの背中……高さ的には腰だな
そこをバンッと叩きながら言う
「そんな褒めないでほしいだよぉ~」
「へぇ、力持ちか……」
「大きいですね」
俺とティンクはチップスを見上げる
こいつ3メートルは身長があるんじゃないのか?
「照れるだよぉ~」
「……あ、あのぉ」
「うおわぁ!?」
いつの間にかゼルナの隣にフードを被った人間が立っていた……身長的に子供か?
「むっ、『ファルン』、準備ができたのか?」
「は、はい、出来ました……」
ファルンと呼ばれた子が答える
「えっと……」
ティンクが戸惑う
「むっ? あ、そういえばこいつも紹介しないとな……ファルン」
「は、はい」
ファルンはフードを脱ぐ
金髪の幼女だ
「初めまして、ファルンと申します……」
ファルンは礼をする
彼女は知性が100もある将だが……ここまで幼かったか?
「えっと……ゼルナ、彼女はまだ子供じゃないのか?」
「こう見えて年齢は20だぞ?」
「嘘ぉ!?」
俺はファルンを二度見する
「……………」
あ、やべ、睨まれてる……そうだよなぁ、失礼だよな……
「す、すまない……」
「いえ、構いません」
謝ったが……許してくれてはないな
「ふむ、全員揃った事だし……屋敷に入らないか?」
ゼルナがそう言って俺達は屋敷に入った
・・・・・・・・
「メイド達に部屋を案内させる、何か希望はあるか?」
「俺とティンクは同室にしてくれないか?」
添い寝しないとティンクは眠れないからな
「わかった、他には?」
ゼルナが俺の後ろを見る
誰もなにも言わないから問題ないみたいだな
「では案内させよう」
そう言ってゼルナはメイドを呼んだ……
「…………」
「どうなさいましたか?」
俺が見てたからかメイドが聞く
「いや……なあ、ゼルナ」
「なんだ?」
「なんでベススの女性は露出が多いんだ?」
俺はまたメイドを見る
なんか色々と薄い……胸とかの部分なんか白っぽいからうっすらと見え……えふん!
「…………」
ティンク? そんな目をしないでくれ
大丈夫、大丈夫だから!
「露出が多いのは単純に暑いからだ、砂漠を歩くときとかはマントを羽織るがな」
「えっ? なんで羽織るの?」
ミルムが聞く
「砂漠だと火傷する事があるからだ、それくらい太陽の光が当たる……」
「それ、僕達は大丈夫なの?」
アルスが聞く
「お前達には乗り物を用意するから安心しろ……快適な移動を保証する」
それを聞いて安心した
俺も不安だったからな
・・・・・・・
『夕食の時間に呼ぶ、それまで自由にしてていい……街を見るときはチップスを連れていけ』
ゼルナがそう言ってから自由行動になった
そんな訳で俺は案内された部屋にあるベランダに出ていた
「石造りの建物が多いな……」
俺はルノマレスの街並みを見る
なんかアラジンとかアリババとかを思い浮かべる景色だな……
エジプトとかがこんな感じだったか?
「暑いですね……」
ティンクが俺の隣に来る…………うん?
「ティ、ティンク? その格好は?」
「あ、ゼルナさんから頂きました……暑いならこの服を着たらいいと」
ティンクの服は……いやこれ服じゃない
ビキニだ、見た目完全にビキニだ
なんて呼ぶ服かわからないからビキニと呼ぼう
「へ、変ですか?」
「いや、とても似合ってる……」
白いビキニなのは太陽の光をビキニが吸収しないようにしてるからか?
さっきも言ったが白だと胸の先端がうっすらと見えそうで……
てか落ち着け俺! 以前メルクでティンクの裸を見たことあるだろ!
…………いやいやいや!
あの時とは色々と違う!
あの時のティンクは少し痩せぎみで細かったし、弱ってる感じで『可哀想』とか『保護しなきゃ』とかの感情が強くて何も思わなかったが……
今のティンクはちゃんと肉もついてきて、女性らしい体型に成長してきていて、色気も出てる!!
これはヤバい!!
落ち着け……理性をフル動員だ!
一瞬でも気を緩めるな!
俺のランスがゲイ・ボルグしないようにするんだ!!
「あの、カイトさん?」
「な、ななななんだい?」
明らかに動揺してる俺
「やっぱりわたしには似合いませんか……」
落ち込むティンク
「そんな事はない!」
「ひゃ!?」
思わず大声で言ってしまった……
「あ、ごめん……その……とても魅力的だと思う」
太陽の光の反射かわからないがティンクが眩しく見える
「そ、そうですか? 魅力的……ですか?」
「ああ!」
ティンクが成人して両思いとかだったら迷わず押し倒すレベルだ
……だから落ち着け俺!
「それなら良かったです!」
微笑むティンク……
「あ、その格好で人前に出るのか?」
「えっ? ああ、そうなりますね……」
…………なんか嫌だな
「あ、マントも一緒に貰いましたので、部屋を出るときは羽織りますね!」
「それなら安心だな」
……ん、待てよ?
「ティンク、寝るときもその格好か?」
「?……そうなりますね」
……おいおい死ぬわ俺
ビキニやぞ? 殆んど裸やぞ?
最近のティンクは身体に密着してくるんやぞ?
俺……耐えれるかな……
てか耐えたら耐えたで俺のランスに支障は出ないのだろうか?
色々と不安だ
・・・・・・・・
夕方になりメイドに呼ばれて俺とティンクは広間に向かう
そこには見覚えのある料理が並んでいた
「これは……」
「なんでしょう?」
ティンクが料理をマジマジと見る
「茶色ですね」
「だな……」
香ばしい匂い
これは……ああ、1年ぶりだな!
「オーシャンには無かったよな? カリーは」
そう、カレーだ!
器に注がれたカレー!
ライスは無いな……パン……いやこれはナンか? パンよりナンって感じのがある
「ああ、オーシャンには無いな、とても美味そうだ」
俺はテンションが上がる
「うわ、なにこれ!?」
「凄い匂い!」
「茶色!?」
「……ほぉ」
アルス達もやって来た
それぞれがメイドに案内された席に座る
そして食事が始まる
1年ぶりに食べるカレー……
「……はむ」
ピリッと辛味が口に走る
その後に少し苦味が来て……旨味が来る!
「美味い!」
「気に入ってくれたようだな」
ゼルナは微笑む
「……うぅ」
「ティンク?」
ティンクが呻く
「辛い……です……」
涙目で答えるティンク
「こちらをどうぞ」
メイドがティンクに小瓶を渡す
「これは?」
「数滴ほど垂らしてみてください」
言われた通りにするティンク
小瓶からは白い液体が出てきた……なんかココナッツミルクみたいな感じだな
「……あむ」
そして食べる
「あ、甘くなりました!」
「それ私にも頂戴!」
ミルムも手をあげる
どうやら2人には辛すぎたようだな
「それにしてもカリーか……ベススはスパイスが豊富なんだな」
俺はカリーを見る……ドライカレーだな
「砂漠でも育つからな、ベススに着いたらもっと色々出るぞ」
「それは楽しみだな」
カレーが食えて、既に今回来て良かった! って俺は思ってるわけだが……
てか今更な事言っていいか?
「なぁ、チップスの分……大きすぎないか?」
「うめぇだよぉ!」
いやそれはわかるさ!
俺達は器なのにお前の分は鍋じゃないか!! どんだけ食うんだよ!?
・・・・・・・・
食事を終えて、少し早いが就寝する俺達
明日は日の出前に出発だからな!
早寝早起きだ!
「カリー……美味しかったですね」
「そうだな……舌は大丈夫か?」
「大丈夫です」
それは良かった
さて……
「ティンク……」
「はい?」
「なんか近くないか?」
今、ティンクは完全に俺に密着してる
足とか絡ませてきてる……太もも柔らかいな……
「そ、そうですか? 夫婦ですから普通ですよ!」
そう答えるティンク
目が泳いでないか?
「またヤンユから教わったのか?」
「え、えっと……はい」
全く……いい加減にしてほしい
このままじゃ本当に俺のゾウさんがパオーンしてしまう
フニ……フニ……
「…………」
「ふふふ♪」
素肌が触れあう
胸の温もりを感じる
足の柔らかさを感じる
………………………はっ!
危ない危ない!
駄目だ! 手を出すな!
去れ! マーラ!!
・・・・・・・・・・
翌日
「カイト? 眠れなかったのか?」
外に出たらゼルナに聞かれた
「ああ、ちょっとな……」
煩悩には勝てた……
しかしティンクの温もりが……うん、意識しすぎて俺は眠れなかった……
ティンク……恐ろしい子!!