第54話 ゲルドの決意と道中のカイト
ーーーゲルド視点ーーー
カイト・オーシャンから恵まれた食料
それを運びながらゲルナルを目指す
道中で逃げ遅れた者や飢えて倒れていた兵を発見する
見つけ次第食料を与えて休ませる
そうして国境を越える頃には5,000の兵がついてきていた
「ゲルド様……申し訳ありません」
兵の1人が謝る
「何がだ?」
「自分は恐怖に負け、ゲルド様と共に戦うことが出来ませんでした、そんな自分が食料を分けてもらって生き残るなんて……」
「気にするな、小生もこうして生かされている身だ……侵略しようと攻めて、負けて食料を恵まれる……これ程情けない事もあるまい」
だが、小生はそうしてでも生きて償わなければならない
ゲルナルに着いたら、ケーミスト様に意見しよう……もう黙っているのは止めだ
・・・・・・・・
道中で通る村で民に食料を配る……
この程度で償えるとは思えんが……やらない善よりやる偽善だ
そうしていたらゲルナルに着く頃には荷車の食料は無くなっていた……
これでどれだけの民の命が救えたのか……小生にはわからない
「ゲルド様! ゲルド様が戻られたぞ!!」
外壁の兵が小生を見て声をあげる
門が開く
「おかえりなさいませゲルド様!!」
兵達が礼をする
「うむ……ケーミスト様はどこか知っているか?」
「玉座かと思われます!」
兵の1人が答えた
「わかった……」
小生は玉座の間に向かう
・・・・・・・・
玉座の間にケーミスト様は居られた
他にも小生の同僚の将達が居た
「ゲルドか! よく戻ってきた! 戻ってきたと言うことはオーシャンの小僧を仕留めたのだな!!」
嬉しそうなケーミスト様……小生はケーミスト様の前まで歩き
そして膝をつく
「申し訳ごさいません……小生はオーシャン軍に敗北し……多くの兵を失いました……」
「……なに?」
「小生も捕らわれましたが……哀れに思われ解放された次第です……」
「ゲルドォ! 貴様!」
ブン!
パリン!
ケーミスト様は酒瓶を投げる
酒瓶は小生の額に当たる
「……申し訳ありません」
「ふざけるなぁ!! 3万の兵を連れて負けたのか! この無能がぁ!!」
響く怒号
「許さん! おい! こいつを処刑しろ!! 戻ってきた兵もだ!!」
「なっ!?」
処刑……小生はそれも覚悟はしていた
だが兵までとは……
「お待ちくだされ! 敗戦の責は全て小生にあります! 兵の命はお助けください!」
「知るか! 無能はいらん!!」
「ま、待ってください!」
1人の男が小生の前に立つ
「ケーミスト様! 落ち着いてください!
ゲルド様はカイナスに必要なお方です!」
そう言って男……『パーツ』は言う
「3万の兵を連れて負ける無能など必要ないわぁ!!」
「そ、それは仕方ないのでは? ヒヒ!」
ニヤニヤしながら別の男が言う
「なんだと? どういう意味だ『ブルムン』!!」
「ひょ、兵糧もマトモに持たせずに、出撃させるなんて、負けろって言ってる様なものです、ヒッ!」
「貴様もそんなことを言うか!!」
「ワテも反対しますわぁ」
更に別の男が俺の横に立つ
「なんだと……『グラドス』! 貴様も儂に逆らうか!」
「ちゃいますちゃいます! 今ゲルドはんを殺したら後が辛いと思うんでっせ」
「なにぃ!?」
グラドスは話を続ける
「だってゲルドはんがカイナスで1番強いんでっせ? そんなゲルドはんを失ったら……カイナスの戦力は一気に無くなりまっせ?」
「ぬぅ……」
「処刑じゃなくて、他の罰にすることをオススメしまっせ?」
「…………ちぃ、わかった」
3人の将に反対されたからかケーミスト様は苛立ちながらも折れる
「ゲルド! 貴様は鞭打ちの刑だ!! 千回! 」
「わかりました……」
「ゲルド様……こちらに……」
小生は兵に連れられて拷問室に向かった
・・・・・・・・
「ぜぇ、ぜぇ」
肩で息をする兵
「せ、千回……終わりました」
「……………そう、か……」
痛む身体
血が床に落ちる
「おい! 誰か医者を! ゲルド様を診てもらうんだ!!」
兵達が騒ぐ……
むぐ……意識が……
・・・・・・・
目が覚めると小生は全身に包帯を巻かれてベッドに寝ていた
「……そうか、小生は気絶していたのか……ぐっ!」
身体中に激痛が走る
「これは……動かん方が良さそうだな……」
小生はそう判断して動かないようにする
そこに…………
「……義兄者!!」
男が駆け込んできた
「……『モルス』か」
モルス……小生と共にカイナスを守ると誓いあった義兄弟だ……
「鞭打ちされたと聞いたぞ! 大丈夫なのか!?」
「……大丈夫に……見えるか?」
「見えない!!」
…………
「義兄者! 何故ケーミストに従うのだ!」
モルスが小生に問う
「それが前領主『カーレス』様の命だからだ……」
カーレス様……ケーミスト様の兄であり……小生が忠誠を誓った御方だ……
不幸にも病で亡くなられたが……その時の遺言でケーミスト様を支えるように言われたのだ
「それにあの方を放っておけばどうなるかわからん……見ておらんといかんのだ」
「義兄者……しかしこのままでは義兄者は死ぬぞ!」
「…………それは……」
『お前の責任を果たすんだ!!』
カイト・オーシャンの言葉が頭を過る
「死ぬわけには……いかないな……」
「義兄者!」
「……モルス、小生は傷を癒したら行動を起こす、先ずは民の為の食料の確保からだ……手伝ってくれるか?」
「勿論!!」
さて、忙しくなるな……
ケーミスト様にバレないように動かねば……
・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
俺達はルノマレスを目指して移動している
そこでゼルナと合流する段取りだ
ベススは砂漠だからな、慣れてる人間が居ないと死の危険がある
「砂漠! 砂漠!」
砂漠と聞いてテンションを上げてる子供もいるがな……
「ミルム、少し落ち着け、水や食料を大量に用意したとはいえ危険な場所なんだからな?」
「はーい!!」
……わかってるのか?
「カイトさん、砂漠とはどんな所なのですか?」
ティンクが聞いてくる
ティンクは雪国出身だからな、わからないよな
「そうだな……先ず凄く暑い、あまりの暑さに岩が熱した鉄の様になってる」
「そ、そんなにですか?」
「ああ、汗が止まらないから水分はちゃんと取らないとすぐに倒れるぞ」
「は、はい!」
ティンクは水を飲む
いや、まだ早いからな?
「それで夜になると逆に寒くなる」
「寒くなるんですか?」
「ああ、何故か気になるか?」
「はい、とても!」
「僕も!」
「私も!」
いつの間にかアルスやミルムを俺を見ていた
「コホン……先ず砂漠は文字通り砂ばかりの場所だ、草木は殆んど無い……だから太陽の光が直接地面を熱する……これが昼間暑い理由だ、夜は逆に太陽の光が無く、地面の熱はドンドン逃げていくんだ」
「逃げるの!?」
ミルムが驚く
「ああ、普通は草とかが蓋をするように地面を覆っているから熱はあまり逃げない……でも砂漠はその蓋が無いからな……ドンドン逃げていく、それが夜は寒い理由だ」
「へぇ……知らなかったよ」
アルスが感心する
「だから防寒対策もちゃんとしとくんだぞ?」
『はーい!!』
元気に答えるアルスとミルム
「カイトさんは博識ですね!」
腕に抱きつくティンク
「ま、まあな……」
高校の時の教師が言ってた雑学を覚えていただけなんだがな……まあ、皆感心しているし……いいかな
こうして俺達はルノマレスを目指したのだった