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第52話 カイナスの現状とレリスの提案

 

「俺が何で怒ってるかわかるよな?」


「え、えぇ……」


 俺は今、自室でヤンユと二人っきりで話している

 てか説教してる


「ティンクに妙なことを教えるな!」

「しかし、円満な夫婦生活の為には」

「いやいや、なんか変な感じになってるからな?」


 新婚のラブラブ夫婦がやるかどうかもわからないような事だぞ?

 やるか? やるのか?


「ヤンユ、お前が俺達の事を想って言ってくれてるのはわかる、だが流石に目に余るからな?」

「はい……」


 落ち込むヤンユ


「でもカイト様、何故ティンク様を抱かれないのです?」

「……何故知ってる?」

「ティンク様に相談されましたので」


 ティンク……ヤンユに相談してたのか……

 あぁ、だからヤンユも色々と言うのか……


「あー、それはだな……」


 ティンクの事を妻っていうよりは保護した女の子って見てるから……とは言えないよな

 うーん……何か良い建前は……


 そうだ!


「ティンクの為だ」

「ティンク様の?」

「そうだ、彼女を抱く……つまり子作りをするとするだろ?」

「はい」

「当然妊娠する」

「それが目的ですからね」


 避妊具なんてサーリストには無いから妊娠する確率はかなり高い


「それだとまだ幼いティンクの負担が大きいんだ」

「……あっ」


 察してくれたようだ


「ヤンユもわかるだろ? 子作りも、妊娠も、出産も……女性の負担が大きい、命の危険もある」

「確かに……まだティンク様は13歳……」

「13歳の女の子をそんな危険な目にあわせる事は出来ない……わかってくれるだろ?」

「わかりました……確かにティンク様の事を想えば抱かないのも理解できます」

「わかってくれたな! 良かった!」


 よし、これでもう妙なことを教えないな!


「では彼女が成人された時のために色々と教えておきましょう!!」

「………」


 ……だめだこりゃ



 ・・・・・・・・


 4日後

 オルベリン達が帰って来た


 ゲルドと数十人の兵を捕縛して



「坊っちゃん、ただいま戻りました」


「3人ともお疲れ……ゆっくり休んでくれ」


 玉座で3人を迎える


「さて……」


 俺は縛られてるゲルドを見る


「……ゲルド? なんかやつれてないか?」

「…………」


 ゲルドは以前見た時より痩せて、白髪も増えていた……苦労してるんだな


「ゲルド? おーい!」

「…………」


 俺の呼び掛けを無視するゲルド


「おい! カイト様を無視するな!」


 ヘルドが怒鳴る


「…………」


 それも無視するゲルド


「…………」


 あ、やっと俺を見た


「……さっさと殺せ」


 疲れきった一言


「おいおい……何言ってんだ」


 俺は頬杖をつきながら言う


「…………」


 だんまりか……

 死にたいって事か?

 でも俺はゲルドを死なせたくないんだが?


「あー、ゲルド……なんで死のうとしてるのかは聞かない、俺が聞きたいのは別の事だ」


「…………」


 ゲルドが俺を見る

 聞く気はあるんだな


「ケーミストなんか見捨てて俺の配下になってくれないか? お前ならそれなりの待遇を約束するぞ?」

「……小生を部下にしたいと?」


 ゲルドの目に光が戻った……気がする


「あぁ、俺もオルベリンもお前を評価しているんだ、是非とも部下に欲しいと思ってる……どうだ?」


 カリスマが0のケーミストより

 カリスマ20の俺の方が良いぞ?


「……小生は……」


 ようこそオーシャンへ!!


「断る……」


「…………」


 断られた……


「何故だ?」


 俺は聞く


「小生の主は……ケーミスト様のみ……」

「…………」


 嘘だな、目が泳いでる……ように見える


「それは本音か?」

「…………」


 何かあるな……


「なんだ? 人質でもとられてるのか?」

「…………」


 無反応


「給料が良いのか?」

「…………」


 無反応


「わかった! カイナスに想い人が居るんだな!」

「…………」

「違うか……」


 これも無反応


「あとは……民?」

「……っ」


 お、今動揺したな


「カイナスの民か?」

「…………」


 だんまりだ……しかし顔を俺からそらした

 間違いないな


「カイナスの民が心配なのか……」

「…………」


 うーん、埒があかない


「あ、あの……」

「んっ? レムレ? どうした?」


 レリスに荷物を渡してから玉座の間を出るタイミングを逃していたレムレが手をあげる


「その、マイル村も元はカイナス領だったので知ってるので、ですけど……」

「……」


 俺はレムレを見る


「お金や、食べ物の徴収? って言うんですかね? それが酷くて……」

「どれくらい酷い?」

「お金も、食べ物も殆んど持っていかれました、マイル村は近くに森や山があったから果物や山菜で何とか飢えをしのげましたけど……」

「他の村はそうはいかないっと……」


 俺はゲルドを見る


「そういえばカイナスは今年不作だったよな? 売った食料はどうしたんだ?」

「………」


 俺は玉座から立ち上がってゲルドの前に立つ

 そしてしゃがみこんでゲルドの顔を掴み、目を合わさせる


「答えてくれ」

「……買った食料は、ゲルナルに運ばれ……ケーミスト様と貴族の手に渡った……」

「お前はそれを黙って見てたのか?」

「…………」

「ゲルド!!」

「小生は……何も出来なかった……民が苦しんでるのを知っていて……それでも何も出来なかった」

「っ!」


 カイナス……そこまで酷い有り様だったか……


「…………」


 俺は玉座に戻る


「それで? お前はそんな民を見捨てて死ぬつもりか?」

「っ!」

「そうやって逃げるのか?」

「逃げたなど……」

「逃げてるだろうが! お前は死んで全てを見捨てるつもりだったんだ!」

 だから死を望んだ


「…………」


 黙るゲルド


「……気が変わった、お前を登用するのは止めた」

「では……」

「処刑もしない、解放する」

「なっ!?」


 驚くゲルド


「ゲルド、お前はカイナスに戻ってケーミストの悪政を止めるべきだ」

「そんな事出来るわけ……」

「出来る出来ないじゃない、やるんだよ!! それがお前が果たすべき責任だ!!」

「…………」

「レリス!」

「はっ!」

「荷車に食料を積んでゲルドに渡せ」

「っ!?」


 ゲルドが目を見開く


「食料を恵んでやる、それでカイナスまで戻れ」

 てか渡さないと道中で餓死するだろ?


「そしてお前の責任を果たすんだ! いいな?」

「……はい」


 ゲルドは頷いた……


 ・・・・・・・・・


 一緒に解放された兵と食料を運んで去っていくゲルド


「ゲルドは大丈夫だと思うか?」


 俺は外壁の上で見送りながらオルベリンに聞く


「わかりませんな……しかし、ゲルドも今回の事で思うところはあるはずです」

「…………」

「心配ですか?」

「少しな……追い詰めすぎた様な気もする」

「それくらいせねばならなかったのでしょう?」

「……まあな」


 しかしカイナス……そんな状態なら病も流行るわな


「カイナスの民が心配だ……」

「カイナスを攻めますか?」

「…………まだ()()が万全じゃないんだよな……」


 アレが万全なら……カイナスとの戦は100%勝てる

 今は勝率は70%くらいか?


「攻めずとも民の一部を救う方法ならありますよ?」

「レリス?」


 レリスが外壁を登ってきて言う


「なんだそれは?」

「こちらをご覧下さい」


 レリスは地図を拡げる


「……んっ? この赤丸は?」


 カイナスとオーシャン……ギリギリオーシャン側の方の領地に赤丸が書き込まれていた


「そこに新たに都を作るのです」

「都を?」

「以前から、オーシャンの勢力も大きくなってきましたので、ヘイナスでは色々と手狭かと考えておりました。」

「まあ、確かにな……それで、それがカイナスの民を救うことに何故なるんだ?」

「ここに都を作ります」

 赤丸を指すレリス


「そして密偵をカイナスの村中に送り、こう噂を流します『オーシャンの新たな都は全ての人間を受け付ける』っと」

「民に引っ越しさせるって事か?」

「そうです、後は傭兵に扮した兵を村に派遣し、民を護衛させれば」

「民は道中も無事……」


 それならオーシャンがカイナスの領土を奪うわけでもないし

 カイナスの民も救える!!


「更に、兵に食料を運ばせれば……」

「今、飢えてる民を救える!!」


 お前最高かよ!!


「その案採用!!……あ、どれくらい時間かかる?」

「既にルスーンに話をして見積もりをしてもらいました……ルスーンの話では1年で人が住めるように、2年で都として機能させられると」

「民が暮らせるのは1年後で……」

「カイト様達が暮らして、首都にするのは2年後になりますね」


 2年か……流石にそれだけ時間をかければ()()も万全な状態になるよな?


「レリス! 今すぐ手配だ!」

「はっ! ではルスーンに指示を送ります」

 ガガルガに居るルスーン……彼ならしっかりとやってくれるな!


「それと密偵と兵を動かしましょう」

「密偵には何を言わせるんだ?」

「『オーシャンが新しく都を作るらしい』……この噂を流します、半年後に『住む人を求めてる』と噂を流し……更に半年後に『新しい都が出来てきた』と」

「その間は傭兵に扮した兵に食料を運ばせて」

「民の飢えをしのぎます、完成しても民が餓死してました、なんて笑えませんからね」


「よし! なら早速頼む!」

「はっ!」


 レリスは外壁を降りていった


「ふむ、ではカイナス攻めは2年後になりますかな?」

「だな……もし()()が完了したらもっと早くなるが」

「なかなか首を縦に振りませんか?」

「あぁ、強情な奴だよ」

「問題はパストーレですな」

「そうだな……停戦の条約の期限が切れるからな」


 まあ、バルセに警戒させてるから期限が切れても暫くは大丈夫だと思うが……


「2年後……忙しくなりますな」

「そうだな……」

「それまでに坊っちゃんも鍛えませんとな」

「……お手柔らかに頼む」



 明日からまた訓練の日々だな……


















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