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第51話 海人とカイト

 

 オルベリン達を見送った翌日

 俺は自室のバルコニーで本を読んでいた


「……ふむ」


 読んでる本は『八龍神話』だ

 このサーリストを創ったと言われる八匹の龍の神話

 カイトの名前もこの八龍神話の水龍から取ったらしい


 さて、普通神話とは空想だったりするのだが……

 この八龍はサーリストでは実在していたのだ


 というのもこのサーリストには『龍神器』と呼ばれる装備が存在する

 八龍の牙や鱗等を使って作られた装備だ


光龍(こうりゅう)レンメル』の盾

影龍(かげりゅう)ダルメ』のナイフ

風龍(ふうりゅう)メーテ』の斧

炎龍(えんりゅう)ボブルス』の戟

雷龍(らいりゅう)ワルコ』の弓

地龍(ちりゅう)ドルルス』の爪

氷龍(ひょうりゅう)アンテス』の槍

水龍(すいりゅう)カイト』の剣


 サーリスト戦記では国宝カテゴリーのアイテム扱いだ

 調査や発掘などをしていたら低確率で手に入る

 更に低確率だが商人が販売したりしていた


 あの時は驚いたな……普通に『良い品あるよ!』とか言ってきて伝説の武器売ってくるんだもん


 話を戻そう、この龍神器は将に渡すことで忠誠心の上昇と武力の上昇効果を与えるのだ


 忠誠心は1発でMAXまで上がるし

 武力も+50される

 オルベリンなんかに持たせたら武力250だ!

 わあ! 誰にも止められない!!


 そしてこの龍神器には更に隠した効果が存在する

 ごく一部の将……『八龍の子孫』と呼ばれる将に持たせると真の力を解放するのだ

 例えば炎龍の子孫に炎龍の戟を持たせると武力が+200されるのだ!

 とんでもない性能だが……先ず両方揃うことが珍しいんだよな……



 生憎、このノースブリードには子孫は居ないけどな……

『水龍』と『氷龍』は子孫さえ何処にいるのかわかっていないし……

 色々と試したが結局見つからなかったんだよな……

 アルスに水龍の剣を持たせたり、氷龍の槍を持たせたり


「……まあ、見つからないものを無理に見つける必要はないか……」


 俺はそう言い聞かせた



「カイト様、紅茶のおかわりはいかがですか?」


 メイドが俺に聞く

 普段はヤンユがやるのだが……なんかティンクを連れていった……また妙なことを教えるんじゃなかろうな?


「ああ、頼む」


 俺はカップを渡す


「では…………あっ、申し訳ありません……お茶が無くなっておりました……淹れて来ますので少々お待ちを……」

「わかった」

「お茶請けも補充しますね」

「ありがとう」


 メイドがバルコニーから部屋に入り、廊下に出ていった


 部屋を出る時も俺にお辞儀をしていった……

 ああいう教育を徹底してるんだろうな……


「なんか入退室のお辞儀って面接を思い出すな……」


 俺は1人になったからそう呟く


「へぇ? 面接の時にお辞儀とかするのかぁ」

「なっ!?」


 後ろから男性の声がした

 俺は驚き振り返る

 今は俺だけの筈だ!?


「よぉ、お前がカイト・オーシャンだな?」


 そこには手摺に寄りかかった体勢で俺を見ている赤髪の男が居た

 ……待て、なんだこいつの格好?

 上半身が裸の上に赤いジャケットで、下半身はジーパンだ……

 待て待て待て!? サーリストではそんな服は存在しない筈だ!?

 少なくともジャケットは無い筈だ!!


「だーーーーーー!?」

「騒ぐなって、危害をくわえるつもりはない」


 一瞬で口を押さえられた

 そして椅子に無理矢理座らされた……ヤバい、動きを封じられた!!


「カイト・オーシャン、落ち着け、俺はお前を傷つけない、話をしたいだけだ」

 男が俺の口を押さえながら言う


 ……なら離してくれないか?


「騒がないか?」

「むぐ!」


 俺は頷く


「なら離そう」


 男が手を離し、手摺に寄りかかる


「……お前……誰だ?」


 俺は男に聞く


「俺か? 俺は『不死鳥』……今は『フェニックス』って名乗ってる」

 不死鳥? そんなキャラはサーリスト戦記には居なかった


「混乱しているな? 取り敢えずお前にはこう言ったらある程度は察するんじゃないか?」


 俺はフェニックスの次の言葉を聞いて絶句した


「『異世界』」

「っ!?」


 なんで!? なんでこいつが異世界の事を!?

 いや、落ち着け! これはブラフだ!!


「あー、失敗したな……益々混乱させたか?」

「お前……異世界から来たのか?」

「俺は違う……とも言えなくないのか?」


 何言ってんだコイツ?


「俺は()()()()なんだ、この世界が産まれる前から生きていた」

「ちょ、ちょっと待て! 不老不死!? 何言ってんだ!?」

「信じてないな?」


 そう言うと男は剣を抜いた……

 えっ!? どこから!?


「危害をくわえないんじゃなかったのか!?」

「お前には何もしないって……ほら」


 ザシュ!


 フェニックスが自分の左腕を切り落とした

 飛び散る血


「なっ!?」


「さぁお立ち会い! よく見とけよ!」


 フェニックスは左腕を拾うとそれを傷口に近付け……



 …………そして


「ほらくっついた」

「嘘ぉ!?」


 俺はフェニックスの左腕を取り、引っ張ったりしてみる……

 か、完全に治ってる……


「これで少しは信じる気になったか?」


「あ、あぁ……」


 普通はくっつかない……この男が不老不死かはおいといて、異常な存在なのは理解できた


 フェニックスが指をパチン!っと鳴らした

 すると飛び散った血が燃えて……血痕は消滅した

 なにこれ……染み抜きとかできるの?


「さて、俺がここに来た理由を話そうか?」

「た、頼む……」


 正直頭が混乱している


「普通に暮らしてたら、去年『異常』な気配を感じてな」


 ……異常はお前だ


「飛べば速いが目立つからな……歩いたり船で移動したりして異常な気配の発生源の所まで来たわけだ」

「……その異常な気配って」

「そう、お前だカイト・オーシャン……ちょっと調べるぞ」

「うぉ!?」


 フェニックスに頭を両手で握られる

 な、なんか頭を駆け巡る感覚!?

 う、うわぁぁぁぁぁぁ!?


「……成る程な……理解した」

「な、何を?」


 フェニックスは手摺に寄りかかる


「お前の過去と記憶と今何が起きてるかを……だな」


「…………」


 本当か?


「疑うのか? 『高橋海人』」

「なっ!?」


 俺の本名!?

 

「お前の過去と記憶を読んだからな……さて、単刀直入に言っておくか、メイドが戻ってきたらややこしくなるし」

「何をだ?」


「お前の今の状態」

「俺の?」


 俺は身体を見てみる

 何もおかしくないよな?


「身体じゃなくて魂の話だ」

「魂?」


 次にフェニックスはとんでもないことを言ってきた


「お前、混ざってるぞ」

「…………えっ?」


 混ざってる? 何が?


「つまり、高橋海人の魂とカイト・オーシャンの魂が完全に混ざっている、今まで何人も異世界の人間を見てきたが……こんなのは初めてだ」


 えっ? 今とんでもないことを言ったよな?


「俺以外にも異世界から来た奴がいるのか!?」

「今は居ない、皆寿命でポックリっと逝っちまったよ、最後に会った奴が死んでから5000年は経ってるしな」


「5000年!?」


 待ってくれ……頭が混乱する……


「まあなんだ、お前は()()であり()()()って事だな」


 訳がわからない

 

「まあ難しく考えるな、魂は混ざってるが、意思は完全に海人だからな……多分カイトは禁術的なのを使ったな」

「もう、何がなんだか……」


 魂が混ざってる?

 俺と……カイトの?

 んっ? 魂?


「俺の元々の身体は?」

「さぁ? お前の魂が全てここにあるってことは……死んでるんじゃないのか?」


 突きつけられる現実

 ……そっか……俺……死んでたのか……


「まぁなんだ、今のカイトとしての人生を楽しめよ、お前は海人だが……カイトなんだからな」

「…………」


 そう簡単にわりきれるか!!


「もう少し話してやりたいが……時間切れのようだな」

「あ、待て!!」


 フェニックスがバルコニーから居なくなるのと同時にメイドが紅茶を淹れて戻ってきた


「お待たせしました……カイト様? どうなさいました?」

「い、いや……大丈夫だ……」


 フェニックス……何者なんだ?


 ・・・・・・・・・


 俺は読書を止めてベッドに倒れこんだ

 メイドは部屋を出ていった


 それにしても頭がぐるぐるするし……疲れた


 ……そこに


「カイトさん?」


 ティンクが戻ってきた



「ティンク?」

「カイトさん、お疲れですか?」


「んっ? まあそうだな」


 フェニックスとの会話でかなり疲れた……

 肉体的にも精神的にも……

 あ、駄目だ、海人としての俺は死んだって聞かされたのがまだショックだな


「そ、それでしたらわたしがマッサージします!」

「へっ?」


 張り切るティンク


「いやそんな事しなくても……」

「やります!」

「だから……」

「やります!」

「…………」



 凄いおしてくる……


 結局やってもらう事になった



 俺はベッドにうつ伏せになる

 俺の背中の腰辺りにティンクが乗る

 ……ティンクの太ももやら尻やらの柔らかい感触が……ゴホン!


「では、始めますね! うんしょ!」


 ティンクの手が俺の背中などを押す

 ……あ、結構気持ちいいかも


「しょ……んっ、えい!」

「へぇ、上手いな……誰かに教わったのか?」

「ヤンユさんに!」


 やっぱりヤンユか……大体ヤンユだな


 それから数分程、背中や腰を揉まれた


「次は肩ですね」

「じゃあ起き上がるよ」

「あ、そのままで結構ですよ」

「えっ?」


 うつ伏せのままだとやりにくくないか?

 普通、座った状態で後ろから揉むんじゃないのか


「よいしょ」

「っ!?」


 ティンクが俺の上でうつ伏せになる

 いや、見てる訳じゃないが……


 フニュ


 背中にある柔らかい感触


「それじゃ揉みますね……」


 耳元で囁くティンクの声

 少し前に乗り出していたのか耳元からは直ぐに離れたが……


「~♪」


 ティンクの鼻歌が近い……俺の頭の直ぐ後ろくらい近い!


「ティ、ティンク……これもヤンユから?」

「はい! こうすれば喜んでくれると!」


 そっか……うん……後でヤンユには説教だ!!

 これ、俺の理性がヤバい!

 耐えろ! 耐えろぉぉぉぉぉ!!





 結局、肉体的には楽になったが精神は更に疲れた……
















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