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第42話 ガガルガ侵攻戦 8

 ーーールーツ視点ーーー


 我々は夜の間にリユから離れてガガルガを目指す


「しかし意外だな、ヘルドがこの作戦を認めるとは……お前も反対してくれると思ったが」


 私はヘルドを見る


「さっきも言ったろ? カイト様は考えを変えるつもりはなかった……それに俺もいい加減に決着(けり)をつけたい」


「へぇ……しかし、カイト様は大丈夫だろうか……」


 カイト様は兵を5,000人を率いている

 我々は12,000人の兵を率いている


 負傷者は数えてない


「大丈夫っすよ! カイト様、自信ありそうだったっす!」


 サルリラが答える


「お前はもう少し後方に居ろ」


 ヘルドがサルリラに言う


「は~いっす」


 ここには私とヘルド、サルリラにレルガ……そしてメビルトも居る


 メビルトは簡易的な荷車を作り、寝かせて運んでいる

 本当は動かさない方がいいのだが……本人が


『負傷した筈の我輩が出れば、ボゾゾも戸惑うだろ?』

 と言って同行している


 戦わせるつもりはない


 サルリラもだ、彼女も負傷しているのだから戦いに参加させるつもりはない


 あくまでガガルガ軍を怯ませるために連れてきただけだ


「もうすぐ夜も更ける、各員! 警戒を怠るな!!」


 私は兵達に指示を出す

 望遠鏡を持たせた兵達に周りをしっかりと警戒させる


 リユの兵に見つかってしまったら、この策は失敗だ

 見つかるわけにはいかない



 ・・・・・・・


 ーーーバルセ視点ーーー


「そうか……」


「めんもく、ない」


 私はボゾゾの報告を聞く


 メビルトを負傷させたが、兵を壊滅させてしまったか……


「構わぬ、失敗は次に生かせば良いのだ!」


 しかし、距離はしっかりと離していた筈……何故オーシャン軍に挟撃がバレた?


「……これ」

「むっ?」


 ボゾゾが見たこともない筒を取り出した


「オーシャン、へいし、もってた」


 オーシャンの兵が持ってた物か……


 私は筒を受けとる


「むむ? この両端についてるのはガラスか?」


 いや、ガラスにしては軽いような……


 カチン!


「ぬぅ!? 伸びた!?」


 カチン!カチン!


「なんだこれは!? 小さな筒が出てきた!?」


 私は筒を見回す


「むっ?」


 小さな筒についてるガラスを見たときに何かを感じた

 ガラスを覗いてみる


「ぬぉ!?」


 ボゾゾの顔が目の前に!?


 私は筒を目から離す


「?」


 ボゾゾは首をかしげている……そこにずっと居たのだよな?


 私はもう一回覗く


「これは……遠くを見る道具か!?」


 私は窓から外を見る

 うむ、遠くの景色が近い!



「こんな物をオーシャンは手にいれていたのか!」


 これ程の道具なら見張りもしやすいだろう

 ……この道具でボゾゾは見つかったのかもしれんな……


「バルセ、さま、ボゾゾ、また、でる」


「むっ? もう出るのか? 少しは休んでも構わないのだが?」

「オーシャン、まだ、いる、ボゾゾ、オーシャン、たおす」

「しかし、ボゾゾ……お主も怪我をしたのではないか?」

「むきず」


「そうか、それならば……うむ、任せる!!」

「わかった」



「バルセ様!!」


 兵が玉座の間に駆け込んできた


「どうした?」

「オ、オーシャン軍です!! オーシャン軍がこのガガルガの南方に現れました!!」

「なにぃ!?」


 私は城を出て外壁に向かう


 ・・・・・・・


 外壁を登り、外を見る


 ……確かに軍団が居る


 私は遠くを見る道具を覗く


「……あれは、ルーツか……」


 何か指示を出してるルーツが見えた

 ルーツが居るなら、オーシャン軍で間違いないな


「何故ここに……まさかリユが……ユリウスがやられたのか?」


 私は軍を覗く


 ヘルド……レルガ……

 女? 格好からして将か?

 ……カイト・オーシャンは……居らんのか?

 見たことないから誰かわからん……


 ユリウスが捕まっている様子はないな……

 ……リユを迂回して来たのか?


「ボゾゾ、出れる」


「ふむ……任せてよいか?」


「まかせろ」


 では任せよう



 ・・・・・・


 ーーーヘルド視点ーーー


 ガガルガから少し離れた所に布陣する


「さて、これからどうするか……」


 ルーツはガガルガを見ながら呟く

 どう攻めるか決めてなかったな


「正面突破は無理か?」


 俺が聞く


「厳しいだろうな、あの門を壊せる自信あるか?」


「…………」


 ガガルガの都を守る門

 その頑丈さは伝説として良く聞かされた


 どんな事をしても壊せない門

 難攻不落の都……


 ベルドルト様もガガルガ攻略は諦めていたな……


「落とすならやはり精神的に消耗させるか?」


 精神的に消耗させる?


「どうやってだ?」

「例えば『リユ』は落ちたと嘘を言うとか」

「奴等がそれを信じるのか?」

「そこが問題なんだよな……」


 やれやれ


「……むっ? おい、ルーツ」

「どうしました?」

「あれ、門が開いてないか?」

「えっ?……!?」


 ガガルガの門が開き始めていた


「望遠鏡!」


「はっ!」


 近くにいた兵から望遠鏡を受けとる


 俺はガガルガの門を見る


 ………………


「どうやら厄介な事になったみたいだぞ」

「なに?」

「ボゾゾが出てきた……」

「……もう出てきたか」


 リユでは兵を壊滅させただけだからな

 ボゾゾは無傷だ……


「こっちに来るか?」


 ルーツが聞いてくる


「来ているな」


 こっちに真っ直ぐ向かってくる

 こっちも出陣しないと、突っ込まれるぞ?


「ヘルド、勝算があるか?」

「……無いな、俺とレルガの2人がかりでもな」

「それでもやるしかないぞ?」

「だよな!!」


 ・・・・・・・


 すぐに動ける兵を連れてレルガと共に出陣する


「……ボゾゾ」

「ヘルド、レルガ」


 少し進んだ所でボゾゾに接触した


『…………』


 にらみ合う俺達


「2人、とも、こうふく、しろ」


 ボゾゾが言う


「断る」


 レルガが言う


 勿論俺も断る


「そうか、ざんねん」


 ボゾゾが斧を構える


「レルガ!」

「あぁ!」


 俺とレルガは左右に分かれる


「はさみうち?」


 ああ、そうだ

 これしか浮かばねえんだよ!


 キィン!


 俺とレルガは左右から槍でボゾゾと戦う


「これ、ボゾゾ、とくい」


 俺とレルガの槍を余裕な表情で捌くボゾゾ

 やっぱり慣れてるな!


「ふん!」


 レルガが槍を突く


「ぬん!」


 ボゾゾが斧の持ち手の部分で槍を弾く


「はぁ!」


 俺が槍を振る


「ふっ!」


 ボゾゾが槍の先端を斧の刃で受け止める


「ボゾゾ、つよい」


 ブン!とボゾゾが斧を一気に動かした


「ぐっ!」

「うっ!」


 俺は後ろにのけ反り

 レルガは前のめりになった


「ふん!」


 ボゾゾはレルガを狙った

 ボゾゾの斧がレルガの首を狙う


「っ!」


 レルガは身体を起こして斧を避けようとするが


 ザシュ!


「ぐぁ!?」

「レルガ!!」


 ボゾゾの斧はレルガの胸元を切り裂いた


「がっ! ぐぅ!」


 溢れる血

 重傷だ、すぐに止血しなければ死ぬのは間違いない


「退けレルガ! ここは俺がやる!」

「だ、だが!」

「今のお前は足手まといだ!! さっさと戻って止血しろ!!」

「……すまない」


 レルガは傷口を押さえながら戻る


「これで、一騎討ち」

「……くっ!」


 旗色が悪い


 ボゾゾが振るう斧を槍でそらすが……一撃一撃が重い


「ぐぅ!」


 勝てない……

 その事実が頭をよぎる


「っ!」


 一瞬、ボゾゾが俺の後ろを見て反応した


 なんだ? 何かあったのか?


「ヘルドォ!!」


「うぉ!?」


 後ろからメビルトの声が聞こえた

 起きたのかあいつ!?


「安心しろ! お前が負けても我輩がいる!!」


 お前、怪我人だろうが!?

 いや、これはブラフか!!

 ボゾゾを動揺させるためのブラフ!

 重傷な筈のメビルトが元気に叫んでるんだ


「なぜ? たおした、はず?」


 こんな風に動揺する

 この機を逃すわけにはいかない!


「旦那ぁー!! あっしも居るっすよー!!」


 サルリラァ!?

 お前も怪我人なんだから動くなよ!?

 って俺が動揺してどうする!


「うぉぉぉ!!」

「むぅ」


 ボゾゾはメビルトの方に意識がいってるみたいだ

 さっきより反応が遅い


「はぁ!」

「!!」


 俺は槍を振る

 ボゾゾが斧を振る


 バキィ!


「っ!?」


 俺の槍が真ん中から折れる

 くそ、耐えられなかったか!


「とる」


 更に斧を振るボゾゾ


 キィィィ!!


 俺は剣を抜いて受け流す

 目の前に火花が散った


「ぬぉぉぉ!!」

「うぉぉぉ!!」


 ボゾゾが左に斧を振りかぶり

 勢いをつけて振る


 俺も左に剣を振りかぶり

 持てる技術を全て使って振る


 バキィン!


 俺の剣が折れる

 だが負けてはいない

 ボゾゾの手から斧が離れた


 飛んでいく斧


「うっ!」


 斧に意識がいくボゾゾ


「サルリラァァ! 投げろぉぉ!!」

「っす!!」


 何をとか

 どこにとか

 そんな事は言わない

 お前なら何を何処に投げればいいのかわかるだろ?


 ひゅんひゅんと風を切りながら近付く音


 俺はボゾゾに近寄りながら右腕を振り上げる


「終わりだ! ボゾゾ!」

「!?」


 ボゾゾは俺を見る

 そして俺の振り上げる右腕を見て首をかしげる

 だがすぐに俺の後ろから飛んでくる物を見て気づく


「う、うぉぉぉぉぉぉ!?」


 離れようと身体をのけ反らせるボゾゾ

 その程度では避けれないぞ! その為に近付いたんだ!!


 パシッと物をキャッチする

 そしてそのまま右腕を振り下ろした


 ザシュ!


「っっっっ!?」


 物……剣がボゾゾの左肩を斬った

 食い込む剣……吹き出す血


 ドサッ!


 落馬するボゾゾ

 意識を失っている……


「ボゾゾ様が殺られた!?」

「に、逃げろ!!」



 ボゾゾと共に出撃して戦っていたガガルガの兵達が逃げ出した

 ……ボゾゾは放置か


「はぁ、はぁ……ふぅ、勝ったぞ、ボゾゾ」


 俺は気絶しているボゾゾに向けて言った

 まあ、周りの手助けがあったから一騎討ちとは言えないがな


 ・・・・・・・・


 ーーールーツ視点ーーー



 ヘルドがボゾゾに勝った


 それは朗報だった


「ボゾゾは?」

「今、軍医に傷を診せている」


 まあボゾゾなら肩を斬られようと死にはしないでしょうが……


「ガガルガ軍の兵はガガルガに戻った、どいつもこいつも真っ青な顔をしていたぞ」

「でしょうね……」


 恐らくガガルガに居る将で1番強いのがボゾゾだったのでしょう

 ティール以外に武勇に優れた将の話は聞いたこと無いですし


「ガガルガの奴ら、降伏すると思うか?」

「あと一手、必要ですね」

「あと一手?」

「ええ」


 そして、その一手は先程手にいれました


「ヘルド、これを見てください」


 私は懐から紙を出す


「なんだ? …………これは!? パストーレからの文書か!?」

「ええ、パストーレからの『同盟を結ぶ、援軍を送るゆえ、耐えられたし』と書かれた文書です」

「何故お前が持っている!?」

「貴方がボゾゾと戦ってる間に、兵が不審な男を捕まえましてね、調べたらこれを持っていたのですよ」


 いや~運が良かった

 これがバルセの目に入れば、ガガルガの士気は上がり、我等の勝ち目は無くなっていた


「んで? これがその一手なのか? パストーレの援軍が向かってるって情報がか?」

「いえいえ、この文書の存在が一手なんですよ」


 私はもう1枚の紙を取り出す


「私も貴方が戦ってる間に準備をしました」

「?」


 ヘルドが紙を受け取り読む


「……『同盟を結ぶのは拒否する、自力で乗り越えてみせよ』……偽物を用意したのか?」

「ええ、これを……来なさい!」


 1人の男を呼ぶ


「お前は?」

 ヘルドが男を見る


「彼は我等の兵の1人ですよ、着ている服は捕らえた男の服です……彼にこれを渡してガガルガに行ってもらいます」


 それで……終わりです


「うまくいくのか?」

「大丈夫ですよ」


 私、今回の策はかなり自信があります


 ・・・・・・


 ーーーバルセ視点ーーー


「ボゾゾがやられた!?」


 その報告を聞いて私は驚く

 そんな……ボゾゾが……


「生死は不明です……」


「そうか……」

「バルセ様……」


 ユールが私を見る


「大丈夫だ……まだパストーレとの同盟がある……そろそろ返事が来るはずだ……」


 援軍さえ来れば……まだ勝てる!!



「バルセ様! 使者が帰ってきました!!」

「おお! 通せ!」


 送ってきた使者が玉座の間に入る

 ボロボロだな


「申し訳ありません……オーシャンの兵に見つかり……なんとか逃げ切りましたが……」


 負傷してしまったか


「いや、構わぬ……良く戻ってきてくれた」

「こちらがパストーレからの文書になります」


 使者から文書を受けとる


「うむ、お主は休め……」


 私は文書を読む


「…………っ!?」


『同盟を結ぶのは拒否する、自力で乗り越えてみせよ』


 そう文書には書いていた

 同盟を拒否?

 援軍は……来ない?



「…………」


 私は玉座に力無く座る


「バルセ様?」


 ユールが私を心配そうに見ている


「…………」


 援軍はこない

 このまま籠城していれば今回は耐えきれるかもしれない

 だが、また攻められれば?

 いや……オーシャンが退いてもカイナスが攻めてくれば?

 カイナスは大軍だ……疲弊した今では耐えきれずに敗れる


 …………


「バルセ様……オーシャンから降伏せよと使者が参られました」


「……そうか」


 駄目だ……どう考えてもガガルガは滅ぶ

 意地で戦いを選べば……兵の犠牲が増す……そして民も苦しむ



 …………終わりだな


「……降伏だ」

「バルセ様!?」


 ユールが驚く

 止めても無駄だぞ? もう……決めたからな


 ・・・・・・・



 ーーールーツ視点ーーー


 ガガルガの門が開いた


 平時の服を着て男がこちらに来る


 バルセだ


「お初にお目にかかります、私はオーシャンの将を務めるルーツと申します」

「お初に……私はバルセと申す……」

「こうして出てこられたと言うことは?」

「察しの通り……降伏致します」



 さて、カイト様に知らせないとな




 こうして『ガガルガ』は落ちたのだった












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