第37話 ガガルガ侵攻戦 3
ーーーサルリラ視点ーーー
「これで全部っすか?」
「砦の中にあった武器や兵糧はこれで全部です」
あっしは兵達に砦の中を調べて貰ったっす
「うーん……兵糧は何日分になると思うっす?」
「今の人数でしたら10日分の補充になるかと」
10日分っすか……まあ補充出来るだけマシっすね
「サルリラ」
「あ、旦那」
ヘルドの旦那が声をかけてきたっす
「怪我はしてないか?」
「かすった程度の傷っす!旦那が直ぐに来てくれたから助かったすよ!」
あっしはさっきの戦闘でティールって男と戦ったっす!
実力は同じくらいだったっすけど……経験の差が出て苦戦したっす
「相手がティールだからな、仕方ないだろ」
「あいつ何者なんすか?」
旦那の言い方だとかなりの強敵みたいっすけど
「ティールはガガルガ最強の将だ」
「そうなんっすか?」
「ああ、年齢は確か……」
「23の筈だ」
「あっ、メビルトさんお疲れっす」
メビルトさんが来たっす
「お疲れ」
「そんなに若かったか?」
旦那が聞くっす
「奴の初陣の時に戦ったからな、間違いない」
メビルトさんが懐かしそうに言うっす
「8年で今の地位まで上った男だ、奴は警戒した方がいいな」
「でも旦那なら勝てるっすよね?」
あっしは旦那を見るっす
さっき互角に戦ってたっすからね!
「どうだかな……アイツは本気を出してなかったと思う」
「そうなんっすか?」
「……オルベリンに聞いたんだがな……カイナスの援軍としてガガルガと戦った時に3回戦ったらしい」
「オルベリンさんとっすか!?」
訓練なら兎も角、実戦なら一瞬であっしを殺ろせるくらい強い人っすよ!?
「そして見事に引き際を読んで撤退した……これがどういうことかわかるな?」
オルベリンさんを相手にして逃げる隙を見つける余裕があったって事っすか……
「今回も見事に逃げられたしな……」
「…………」
またティールと戦うときは警戒っすね!!
・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
「はぁ……」
自分のテントで一息つく
「ゲユ砦は落とせたが……マヤハ砦か……」
また布陣してるだろうなぁ……
「また正面からぶつかる事になったら厳しいな……」
マヤハ砦を迂回してリユを攻めるか?
いや、マヤハ砦から兵が出て挟撃される方がキツイ……
「……こういう時こそ冷静に考えるべきだな……」
今のオーシャンの兵力は約19,500人
マヤハ砦には10,000人は兵を配置してるかもしれない
「……軍団を2つにするか?」
第1軍団10,000人
大将 ヘルド
副将 ルーツ、サルリラ
第2軍団9,500人
大将 カイト
副将 レルガ、メビルト
こうして少し離れて進軍すれば……第1軍団が挟撃されても第2軍団で援護できる
例えば第1軍団が東西から挟撃される
西の敵を第2軍団で交戦する
こうしたら第1軍団は東の敵に集中できる
「でもまた別の敵軍が来たら厳しいんだよな……」
やっぱり第3軍団まで編成しとくか……
……あー駄目だ、今日はもう休もう!
明日ルーツと話し合うか……
・・・・・・・・
翌日
ルーツと話し合って第3軍団まで編成したままで進軍する事にした
但し兵力は
第1軍団 10,000
第2軍団 3,000
第3軍団 6,000
となった……俺の軍団が兵が少ないのは第1軍団と第3軍団が敵を止める壁になるからだ
第1軍団が多いのは当たり前だが、後ろからの奇襲を警戒して第3軍団も兵を多目にしておく
「さて……マヤハ砦までは」
「5日ですね」
レルガが答える
「敵はまた布陣してると思うか?」
「可能性はあるかと……」
また布陣していたら……どうやって攻めるかな……
今度はもっと周りを確認しておこう……ゲユ砦みたいに伏兵と遭遇なんて嫌だからな
・・・・・・・
ーーーガガルガの都ーーー
「オ、オーシャンが攻めてきたのか?」
中年の男性が玉座に座りながら報告を聞く
「ええ、どうやらゲユ砦を落としたそうですね」
軍師である『ユール』が報告を書いた紙を読みながら答える
「どうしますか? バルセ様?」
「……」
中年の男性……『バルセ・クッツ・ガガルガ』が顔を押さえる
「……ユリウスは……ユリウスは無事なのか?」
「この報告を読む限りは無事かと……えー、どうやらマヤハ砦の軍備と兵を回収してリユに籠城するそうです、その報告と謝罪ですね」
「そうか……無事ならいい、負けても最後に勝てば良いのだ……」
バルセはゆっくりと言った
「それとオーシャン軍の戦力の報告ですね……どうやらオルベリンを連れてきてないようです」
「そうか! アイツが居ないなら勝機はある!」
バルセは立ち上がる
「ユール! 彼を呼べ!」
「……あの男をですか?」
「うむ! 彼にリユに向かってもらう! ユリウスが籠城してオーシャンを押し止めてる間に後ろから攻めさせる!」
「それは時間がかかりませんか?」
「だから今すぐ動いてもらうのだ!」
「……バルセ様のお考えはわかりました、確かにそれが最善かもしれません……彼は強いですからね……しかしお忘れですか? 彼は元はオーシャンの将だった男ですよ?」
「わかっておる、しかし彼は今はガガルガの将だ、私は彼の忠誠を疑いはしない!」
「……わかりました……ではお呼びします」
「頼む!」
・・・・・・・
ーーー???視点ーーー
「…………」
空を眺める……青い空……白い雲
「…………なにかおこるのか?」
雲の流れが速い
予感……
「ここに居たか『ボゾゾ』殿」
「……ユール」
「バルセ様がお呼びだ」
「……わかった」
……………
玉座の間につく
「ボゾゾ、とうちゃく……」
「よく来てくれたボゾゾ、オーシャンがこのガガルガに侵攻して来ているのは知っているか?」
「……はつみみ」
「そうか、そのオーシャンが侵攻してきた、既にゲユ砦が落とされた、マヤハ砦はもぬけの殻で直ぐに占領されるだろう」
「……リユにくる?」
「うむ、リユを任せているユリウスは籠城するつもりだ」
「……オーシャン……オルベリン……」
「確かにオルベリンが居れば突破されるだろうな、あやつは化物だ……しかし今回はオルベリンは不在のようだ」
「……オルベリン、いない?」
「うむ……ユール」
「はい……確認した敵将はカイト・オーシャン、ヘルド、ルーツ、レルガ、メビルト……それと女の将が居たようです」
「……レルガ?」
レルガがオーシャンに?
なぜ?
「それでボゾゾ、貴殿にこのオーシャン軍を後ろから攻めてもらいたい」
「うしろから?」
「リユを攻略しようと止まっているオーシャン軍の背後に移動し、攻めてもらいたい!」
「…………」
背後にいく……時間をかければ……可能
「わかった……ボゾゾ、でる」
「頼もしいな!」
バルセ様が嬉しそうにする
「……しかし勝てるのか?」
ユールがボゾゾに聞く
「かてる、ボゾゾ……オルベリンの、次に、つよい」
ヘルドにも、レルガにも、勝った
ボゾゾに勝てるの、オルベリン、だけ
…………オーシャン……ベルドルト様には、恩がある……けど、それと、これは……べつ
「カイトの首……とる」
ボゾゾ、玉座の間を出る
・・・・・・・・
ーーーバルセ視点ーーー
「相変わらず何を考えているのかわかりませんね」
ユールが言う
「そんな事を言うな、ボゾゾも慣れない大陸で苦労しておるのだ」
確か『ワードベール大陸』の出身だったな
ノースブリードに来て途方にくれてるのをベルドルトに拾われたと言っていたか
慣れない土地、慣れない言葉、それでもこうやって将として立派に働いている
「私は彼のそういうところを評価しているのだぞ?」
「そうでしたか……」
ボゾゾ……頼んだぞ!!