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第30話 ステータスと別大陸と商人と

 焔暦144年 2月



「んっ……」


 朝、俺は目を覚ます

 隣ではティンクが熟睡している

 時計を見る……5時か


「早起きは昔の癖かな……」


 社畜時代を思い出す……

 深夜まで残業して、帰って寝て、5時に起きて6時には出勤……

 労働法?そんなのブラック企業が守るわけないだろ?


「まあ……今はそのお蔭で時間に余裕が出来るわけだが……」


 俺はティンクを起こさないようにベッドを出る


 服を着替え、身だしなみを整え


 玉座の間に向かう


 ・・・・・・


 玉座の間に着く


「そんな俺よりお前は早いよな……」

「何がですか?」


 玉座の側にはレリスが既に立っていた……俺が言うのもあれだが、もっと休んでていいんだぞ?


「今日の予定は?」


 俺は玉座に座る


「ケーニッヒ殿から砦が完成したとの連絡があったのでその報告と……レルガ殿が深夜に帰還されたので後程挨拶に伺うと言伝てがありました」


「わかった」


 それなら昼には暇になりそうだな……今日もオルベリンに鍛えてもらおう……


 ……しかし問題があるんだよなぁ


 俺は目を閉じて意識を集中する


 頭に浮かぶのはカイトのステータス


 武力 20

 知性 20

 カリスマ 20

 内政 20


 全て20から伸びなくなった……いや酷くない?俺頑張ってるんだぞ?


「はぁ……」


「お疲れでしたらもう少しお休みになられては?」


 ため息を吐く俺にレリスが言う


「あぁ、いや、大丈夫だ……」


 しかし困ったな……

 このステータスは本当に酷い……


 例えば武力

 これは文字通り戦闘に影響する


 オルベリンみたいなキャラだと無双してくれるだろ?

 ヘルドも強いしサルリラも強い

 単純に将の強さの数値だ……一騎討ちとかで大きな影響がある


 ……のだが現実は少し話が違うようだ

 例えばマールの都を攻めたときにヘルドとメビルトが一騎討ちしただろ?

 ヘルドの武力は96

 メビルトの武力は103

 ヘルドが多少強くなったと考えてもメビルトには勝てる可能性は低かった


 あの時はかなり心配したな……


 そんなヘルドは苦戦はしたが鎧を脱いでからはメビルトを圧倒した

 後で聞いたら

『負けられないと思ったら力が湧いたのですよ!』

 と言われた


 精神的な影響なのかな?

 物語の主人公とかが仲間のために限界を超えた力を発揮したり……多分そんな感じだ

 つまり多少の差なら精神的な影響で結果を覆せるって事だ


 流石にオルベリンみたいに圧倒的な相手には勝てないだろうが……10……いや20くらいの差なら勝てるのかも……

 それは敵にも言えることだ……これからの戦いで『負けられない!!』って必死な相手が現れると思う……そんな奴を相手にしたら数値では上でも負けるかもしれない


 ……気を付けないとな……数値だけで考えるのはもう止めよう



 次に知性だが

 これは主に策に影響する

 高いと策を成功させやすいし、相手の策を看破摩る事も出来る

 ……それに今の時代には無いが、魔法にも影響する


 魔法……火を出したり水を出したりするあれだ

 サーリスト戦記はファンタジー世界を舞台にしているから当然存在する


 これが世界的に広まるのは焔暦150年だ

 ナハール大陸……そこは将を育成しやすい大陸だ

 剣に優れた者

 槍に優れた者

 策に特化した者

 そんな風に色んな風に育てられる

 そして魔法を扱う者も存在する唯一の大陸だ


 その魔法を使える者が他の大陸に移動する

 そして移動した大陸で才能がある者に魔法を伝授する

 そうして魔法を使える者が増えていくのだ


 あれだ、戦国時代に鉄砲が広まる様なものだと思えばいい


 実際ゲームでも鉄砲みたいな扱いだし

 威力は高いが使える者が少ないのだ


 最低でも知性が80は必要だしな


 まあその魔法を習得する事で武力が低いが知性が高い将も一騎討ちで勝てるようになるのだ


 ……ルーツとかに是非とも習得してもらいたいものだ……



 次にカリスマだが

 これは領主と将で影響に差がある

 領主なら敵だった者を登用する時の成功率に影響する……高ければ滅ぼさなくても配下に出来るのだ

 ……俺は低いからマールマールの時は滅ぼさないと誰も配下にならなかっただろ?


 そしてこれは将と共通だが……軍団の攻撃力や防御力に影響する

 要するに兵をまとめる力だな


 武力や知性が低くてもカリスマが高ければ多くの兵を指揮させる事で戦で活躍できる


 例えば武力100の将の兵力が1万の軍と

 カリスマ100の将の兵力が8000の軍なら

 カリスマの高い将の方が勝てたりする


 兵を上手く操ることで敵を追い詰めれるんだな


 ……俺のカリスマ低すぎ……


 そして内政だが……

 これは高ければ高いほど農業や商業の効果を上げれる

 例えばマールの都にいるクンツァとメットがいるだろ?

 クンツァに農業等の指示を出すと効率が良い方法を考えて、実行して、結果を出す

 メットはその方法を考えるのに時間がかかるし結果もあまり良くはない


 そんな風に内政が高い将なら効率よく領の収益を増やしてくれるのだ


 それに砦や村や都の建設も早く完成させれる



 ………俺じゃ駄目だけどな

 なんか悲しくなってきたぞ……

 いいさ!めげずに努力するさ!いつか報われる!!


「っと……どうやら皆集まった様だな」


 いつの間にか警護の兵やメイドが玉座の間に到着していた


 さあ、今日も頑張るかな



 ・・・・・・・


 レルガの挨拶、ケーニッヒの報告を聞いて昼になる


「ふぅ……」


 俺は玉座の間を出る


 さて、昼飯だ!

 今日は天気も良いし……ティンクやミルムやアルスを誘って外で食べるかな……

 ……最近アルスがよそよそしいし

 結婚の事を知ってからどうも避けられてるような……なんとかしないとな


「んっ?」

「こっちだ!!」


 兵達が走っていく、何かあったのか?


 俺は気になったから追いかける


 どうやら城門での騒ぎみたいだな

 基本城門は開けている、門番も居るし……緊急の連絡の時とかあるし


 そしてその城門で兵達が集まって騒いでいた

 ……いや、誰かを追い返そうとしてるのか?


「ですからカイト・オーシャン様に会わせてほしいのです!!」

「駄目だ駄目だ!何処の誰かもわからん者を入れるわけにはいかない!」


 声からして男か?フードを深く被って後ろに荷車を置いている

 そんな人物が兵に入れてくれと頼んでいた


「入れないのでしたら不躾ですが呼んで下さいませんか?絶対に気に入ってもらえると思うのです!」

「カイト様は忙しいのだ!帰れ!」


 ……ゴメン、俺、今、暇なの……


 このまま傍観するのも悪いし……兵も居るから会っても大丈夫かな?


「何の騒ぎだ?」


 俺は兵達の側に行く


「カ、カイト様!? いえ、怪しい者がカイト様に会わせろと……」


 兵の1人が俺に礼をしながら説明をする

 他の兵は男と俺の間で壁になる


「俺にね……何者だ?」

 俺は兵の壁越しに問う


「は、初めましてカイト・オーシャン様! 私はベスルユ大陸からやって来た商人でございます!」


 ……へぇ、ベスルユ大陸から


「それは長い旅だったろう?」


 船で移動したり、港からここまで移動したり


「は、はい……」


「商売の話か?」


 商人がそれ以外にやって来るとは思えない


「左様でございます! ベスルユ大陸から商品を持ってきました!!」


 ……成る程ね

 ベスルユ大陸だったら納得だ……あそこは内政が上がりやすい……つまり技術力も高いのだ

 ……だが


「簡単にそれを信じるわけにはいかないな……」

「そ、そうですか……」

「3つ質問するから答えてもらおう」

「は、はい!!」


 俺は人差し指を立てる


「1つ、何故この俺を商売相手に選んだ?」

「その、最初にカイナスに行ったのですが……門前払いされまして……」


 …………ふむ何となく察したぞ


 俺は中指を立てる


「2つ、ベスルユ大陸の何処から来た?」

「『メキリ』という都です!」


 メキリ……ベスルユ大陸にある都の1つだ

 うん、嘘はついてないな!


 彼がベスルユ大陸からの商人なのはわかった……だけどこれを聞かないといけないよな

 これを答えたら……いや答えるではないな……やってくれたら確実にベスルユ大陸の者だとわかる


 俺は薬指を立てる


「3つ、そのフードを取ってもらおうか」

「っ!? そ、それは……」

「出来ないのか?」

「……わかりました」


 男はフードを取る

 そして素顔があらわになる


 その瞬間


「ば、化物め!?」

 兵の1人が叫び、全員が剣を抜いた


「っ!」


 男がたじろぐ……

 彼の素顔は猫だった……耳、髭、顔……全てが完全に猫だ

 多分隠しているが尻尾もあるのだろう


「お前らやめろ!!」

 俺は兵を押し退け男の前に立ち、兵を止める


「カイト様!?危ないですよ!そいつは化物です!!」

「そうですよ! ね、猫ですよ?猫の化物ですよ!?」


 兵達が必死に俺に言う


「馬鹿か!!彼は獣人という種族だ!!剣を仕舞え!!」

「しかし……」

「仕舞え!!」


 兵達が渋々剣を仕舞う


「すまなかったな、部下が失礼なことをした」


 俺は頭を下げる


「い、いえ……この大陸に来てからずっとなので慣れてます、だから謝らないでください」


「しかし……いや、なら商売の話に移ろう」

 いっぱい買うからな?


 しかしそっか……獣人はここだと化物扱いか……

 ベスルユは獣人の大陸だからな……彼も化物扱いで驚いただろうな……


 ・・・・・・


 さて、彼……『シャンバル』を玉座の間に案内する


 シャンバルを見てレリスが


「だ、誰か!くせ者だ!!であえであえ!!」


 なんて悪代官みたいな事を叫んで騒ぎになったが

 うん、シャンバルには本当に申し訳なかった



「では品を見せてもらえるか?」

「はい!では床を失礼して……」


 シャンバルは床に敷物を敷いて商品を並べて床に座る


 どれもこれもノースブリード大陸では珍しい物だ


「な、なんだこれは?」


 レリスが目を丸くする

 周りの兵やメイド達も見たこと無い物に驚く


「ほぉ……お、これは砂時計か」

 俺は少し大きな砂時計を手に取る


「あ、ご存知でしたか?」

 シャンバルが俺を見上げる


「砂時計?」

 レリスが俺の持つ砂時計を見る


「中に砂が入ってるだろ?これを逆さにして……」

「ほぉ、砂が落ちていきますね……これが全て落ちる時間が時計の役割を果たしていると?」

「その通り」


 察しが良いな


「これは何分くらいだ?」

「それは30分ですね、10分と5分の砂時計もあります」


 いいなこれ……ノースブリードでも時計はあるが……建物の中とかで訓練所や庭園とかには置いてないから困ってたんだ

 これなら訓練の時に

 素振り30分!!

 とか出来るな


「値段はいくらになる?」

「5分が1000f(フラン)、10分が2000f、30分が4000fになります」


 f(フラン)……それがサーリストの通貨の名称だ

 まあ円と同じだと思ってくれれば良い


「ふむ……なら30分のを5つ買おう」

「ありがとうございます!」


 シャンバルが30分の砂時計を別の敷物を敷いて上に乗せる

 この砂時計は訓練の時とかに使おう


「……んっ?」


 俺は並べられた商品から筒を手に取る


「これは……」


 俺は筒を見る……両端にレンズがあって……

 カチン、カチン、カチン

 4段階伸びた……筒の中から少し小さい筒が出てくる感じだ


「望遠鏡か」

「それもご存知でしたか!」


 シャンバルが感心する


「なんですそれは?」


 レリスが並べられた望遠鏡を手に取る


「望遠鏡だ……小さい筒の方から覗くと……」

「?…………うぉ!?」

「おっと!」


 レリスが望遠鏡を覗いて驚き、望遠鏡を落とす

 シャンバルは落ちてきた望遠鏡をキャッチした


「なっ、なっ!?カイト様の目が目の前に!?」


 俺の目で驚いたのか……


「まあそんな風に離れたものがよく見える道具だ……シャンバル、少し借りて良いか?」

「どうぞ!」


 俺は玉座の間を出て屋上に向かう



 ・・・・・・・


 屋上に出て望遠鏡を覗く


 先ずは1番短い状態

 ……ふむ、これは虫眼鏡程度の拡大率だな……


 カチン


 1段階伸ばす


「お、庭園の様子が良く見えるな」


 ミルムとティンクが話している……最近はああして過ごしているな

 嫁と小姑が仲良くする……うん良い傾向だ


「次は2段階と」

 カチン


「おお、結構拡大するなぁ……街中が良く見える」


 お、サルリラ!買い物か?


 レルガも見廻りをしているな


 おっ!ヘルドは盗人を捕まえたか!


「いいなこれ」


 俺は更に伸ばす


 カチン


「おお!?メリアスト平原の砦か!?」


 凄いぞこの望遠鏡!?

 こんな遠くまで見えるなんて……これは警備の役にたつ!!


 ・・・・・・


 俺は玉座の間に戻りシャンバルの前に立つ


「これ高性能だな!!いくらだ!」

「1つ5万fです!」

「何個ある?」

「20程ありますが……」

「全部買おう!」

「えっ!?ちょ!?」


 レリスが驚く


「レリス、これはかなり使えるぞ!戦でも物見でも!」

「そ、そんなにですか?」

「ああ!」


 俺は断言する


「そこまで言ってもらえるとは……嬉しいですね」

 シャンバルは照れくさそうに笑う


「よし!カイト様のその言葉に感謝して……4万fで売りましょう!!」


 おお!シャンバル!!お前良い奴だな!!


「良いのか!!」

「その代わりこれからも御贔屓にしてもらえますか?」

「勿論だ!!」


 こんなに便利な物が買えるなら大歓迎だぞ!!


 その後も色んな商品を見た


 まあ使えそうなのは砂時計と望遠鏡くらいか

 兵やメイドやレリスが個人的に気に入った物を買ったりしていた

 そのうちオルベリンやヘルド達が戻ってきてシャンバルから買ったりしていた


 最終的に……


「まさか売り切れになるとは……」

 シャンバルは驚いていた


「それだけ良い品だったということだ」

 さて、もう外は暗い……


「シャンバル、どうだ?良ければ城に泊まっていくか?」

「あ、いえいえ!お気持ちは嬉しいですが宿を取っていますので!!」

「そうか……ふむ……明日出発するのか?」

「はい、少し街を見てから帰ろうかと……」

「ならその時にまた顔を出してくれるか?港まで護衛をつけよう」


 今のシャンバルは賊から見たら葱を背負った鴨だからな


「そこまで良くしてくださるのですか!?」

「また来てもらいたいからな」

「次はもっと良い品を持ってきます!!」


 うん、ベスルユの商人であるシャンバルと繋がりが出来たのは大きいぞ!

 他の領よりも有利に事を進められるからな!!



 翌日、シャンバルが顔を出したので護衛としてオルベリンとレルガをつけた


 オルベリンは強いし、レルガは自分から志願した……シャンバルと良く話していたから仲良くなりたいのか?


 まあそうしてシャンバルはヘイナスを出発していった



 数日後、無事に船に乗って行ったのをオルベリンとレルガが報告した


 この数日の間に砦やマールの都に砂時計と望遠鏡を必要分送った


 望遠鏡を使うときは太陽を絶対に見ないように警告も一緒にした

 下手したら失明するからな


 …………まあ、何人か試して大惨事になったが……

 うん、前例があると皆気を付けるよね

 運良く失明はしなかったけど……本当に気を付けてくれよ?

















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