第2話 オーシャン領防衛戦 2
天下を取る
「さて、そう決めたなら先ずは目の前の敵を倒さないとな」
俺は立ち上がり部屋の扉を開ける
「カイト様?どうなさいましたか?」
部屋の外に待機していたメイドが聞いてくる
「すまんが今日は何年の何月だ?」
「?……焔暦の143年の5月です」
「そうか、わかった……それとレリスを呼んできてはもらえないか?」
「畏まりました」
メイドはお辞儀をしてレリスを呼びに行った
「さてと……」
俺は部屋に戻り椅子に座る
「先ずは今の状況をしっかり確認しよう」
俺は眼を閉じる
……おっ、意識を集中したらカイトのステータスが浮かんできた
武力 10 F
知性 12 F
カリスマ 7 F
内政 14 F
見事にオールFだな
因みにステータスのランクは
1~20がF
21~50がE
51~70がD
71~100がC
101~130がB
131~150がA
つまり150が最大値だ
しかし例外がある
たまに限界を突破したキャラがいるんだ
例えば作中最強と言われてるキャラは武力が180ある
そんな風に限界を突破している場合はSになる
まあまだその最強キャラは産まれていないのだが……
「143年か……つまりカイトは今16歳なんだな」
若いな……操作可能になったばかりって感じだ
「っと……考えが逸れたな」
さてさて、俺のステータスは最弱だ……パストーレ軍が来るまでに鍛えて勝利ってのは無理だろうな
「鍛えるのはパストーレを撃退してからだな」
なら今の兵力でやるしかない
コンコン
部屋がノックされる
「開いている」
「失礼します」
レリスが入ってきた
「レリス、そこに座れ」
「はっ!」
レリスは俺の向かいの椅子に座る
「それで?どうなされるのですか?」
レリスは座ると俺に聞いてきた
「どうされるかって?」
俺は聞き返す
「戦われるのですか?それとも他の領に援軍を頼みますか?……降伏も考えていられますか?」
「降伏か……」
普通に考えたら降伏か援軍だよな
「レリス、降伏をしたら失望するか?」
「いいえ、それが貴方様の考えなら従います」
「援軍を頼んだら?」
「我々は従います……しかし援軍は厳しいかと……」
そうだな……近い領は他に『カイナス』『マールマール』『ガガルガ』とある
しかしどこも『オーシャン』とは友好的ではない
今回は『パストーレ』が侵攻してきたが……他の領が侵攻してきてもおかしくないんだ
それに援軍が来るかもわからないが来ても間に合うかわからない
更に恩を作るのも良くない……最悪吸収されかねない
だから援軍は無理だ
だったら降伏か?
いーや!それはない……降伏するってことは負けるって事だ……普通なら領地の一部を奪われて終わりだが、『オーシャン』はその一部が全てだ
降伏すれば滅びる……だから
「戦う……それしかあるまい」
「わかりました」
「それで確認をしたい……我が軍の戦力を教えてくれないか?」
「畏まりました」
レリスはそう言うと羊皮紙をテーブルに拡げた
羊皮紙の内容が読める……これはカイトの知識だな
「我が軍の戦力は兵力が5千、将が3人です」
「うむ」
これは俺の記憶と同じだな……んっ?3人?2人じゃないのか?
「将は3人だったか?」
「ええ、『ヘルド』『ルーツ』『オルベリン』です」
「オルベリン!?」
「どうなさいましたか?」
「い、いや大丈夫だ……」
嘘だろ?オルベリンが居るのか!?
そっか……アイツここが初期配置だったんだな……
っとオルベリンっていうのは実質最強キャラなんだ
武力は200
知性も142
カリスマも150
内政は100
と高スペックだ
序盤で彼を所有したらかなり攻略が楽になるんだ
……でも問題もある
それは寿命だ……
オルベリンは80を越えた老兵なんだ……
後5年経つと彼は寿命で死んでしまう……
だから彼に頼り過ぎるわけにはいかない
「……希望がわいてきたな」
しかし今回はしっかり働いて貰おう
彼がいれば兵力5千でも何とかなる!
ヘルドとルーツも普通の将だ
ヘルドは武力96の武力型だ
他のステータスはEだけどな
ルーツは知性が100の知力型
他のステータスはFだったな
彼等にも働いて貰おう
「レリス、城門の前に民を集めてくれ、兵や将も城門の側に集合させてほしい」
「どうされるのです?」
「今回の戦、勝つためには兵だけではなく民の協力も必要だ……だから私は頼むつもりだ」
「民に頭を下げるのですか?」
「それで動いてくれるのなら、何度でも下げるさ」
「…………」
「私は何がなんでも勝ちたいんだ」
「畏まりました、では1時間後に……」
「っと、その前にレリス、パストーレ軍は後何日でここまで来るかわかるか?」
「今の速度なら10日程かと」
「わかった」
10日か……それまでに準備を済ませないとな
・・・・・・・
1時間後
ワイワイガヤガヤ
城門の前に民が集まっている
城門の後ろや塀の上には兵が集い
俺の側にはレリスと3人の将が立っていた
「……すぅ……はぁ」
俺は深呼吸をする
緊張?そんなものしていない
何回もプレゼンとかしてきたんだ……サラリーマン嘗めんなし!
「皆、きけぇぇぇぇ!!」
俺は叫ぶ
「現在我が領地にパストーレの軍が迫っている!!その数は3万!!」
『ザワザワ!?』
民から動揺が見える
「皆、不安になるのはわかる……我が領地の兵力は5千……差は歴然だ!!」
ダン!と俺は地面を強く蹴る
その音が響く
「しかし私は勝つつもりだ!!父上より受け継いだこの領を!民を!兵を!私は守ってみせる!!」
『…………』
民が黙る……全員が俺を見ている
「しかしその為には皆の協力が必要だ!!未熟な領主で申し訳なく思う!……だが!頼む!皆の力を!私に!貸してくれ!!」
俺は頭を下げた
『…………』
黙る民……ダメか?
「カイト様!俺達は何をすればいいんですか!?」
そんな声が聞こえた
「私は何をすれば?」
「年寄りでも力を貸せますか!!」
「僕も手伝う!!」
俺も私も
民が我こそはと声を出す
「後程指示を出す!」
俺はそう言って更に言葉を続けた
「皆!感謝する!!」
俺はそう言って下がった
振り返って居城を見る
「…………」
城と呼ぶには少し小さい気がするが……年月を感じさせる
戦うための城というよりは住むために建てたような城
……城門を越えられたらあっという間に制圧されそうだな
「守ってみせる……必ず!」
・・・・・・
玉座に戻った俺の前に3人の将がひれ伏す
「遂に決断されたか!!」
嬉しそうに叫ぶ中年の男はヘルドだ
「我が知力……カイト様の為に」
若い男はルーツだ
「…………」
オルベリンは黙っている
「ああ、3人にも動いてもらう……特にオルベリンには苦労をかけるが……」
「……老いた身なれど……我が忠誠は貴方様の……為に……」
?なんか言葉がたどたどしいぞ?
「どうしたオルベリン?自然にしていいんだぞ?」
「しかし……」
「いいから」
どうしたんだか
「…………うぉぉぉぉぉぉ!!」
「うぇ!?」
オルベリンが泣き出した
「ワシは、ワシは嬉しいですぞ坊っちゃん!!立派な!立派な宣言でございましたぁぁぁぁ!!」
そう言って駆け寄られて抱き締められた
「いだだだだだだ!?」
「オルベリン殿!カイト様が潰れますから!!」
ルーツが叫ぶ
「全く……」
レリスがやれやれっと溜め息を吐く
「これが泣かずにおれるかぁ!!昔から坊っちゃんは努力されていたのだぁ!ベルドルト様が亡くなり!塞ぎこまれていたのに!こんな!こんな!立派になられてぇぇぇぇ!!」
「いい加減離せって!?」
死ぬ!これ死ぬ!
「オルベリン!喜ぶのは勝ってからにしよう!」
ヘルドがオルベリンを引っ張り俺から離す
た、助かった
「そ、そうであるな!」
「さて、3人には其々やってもらうことがある」
俺は3人に指示を出す
「オルベリンは兵にこの訓練をしてくれ」
羊皮紙を渡す
「?何故このような?」
羊皮紙を読むオルベリンは首を傾げる
「必要な事だ……あーそうだ、オルベリン」
「はっ!」
「3万の兵を追撃するとしよう……お前なら兵を何人連れていく?」
「千人も入れば大将首を取ってきましょう!」
「頼もしいな、なら千人の兵を訓練してくれ」
「はは!!」
俺は別の羊皮紙を取る
「ルーツにはこれだ」
「……ほぉ」
ルーツは羊皮紙を見る
「どれぐらい必要ですか?」
「最低でも10は欲しい……それと矢も大量に……兵に手伝わせろ」
「畏まりました!」
「ヘルド!」
「はい!」
ヘルドに羊皮紙を渡す
「……おお、これはなかなか」
「無理か?」
「いいえ!はたして見せましょう」
「頼むぞ」
皆に出した指示
全員が果たしてくれないとこの戦は負ける
「皆……勝つぞ!」
『おおおおお!!』