第287話 軟禁生活
ーーーカイト視点ーーー
リールに連れてこられて数日が経過した
俺は脱出手段を色々と考えてみたが
いまだにいい考えは浮かんでいない
「高さが問題なんだよなぁ……」
窓から顔を出す
そして下を見てションボリする
「オルベリンなら、ここから滑り降りたしするんだよなぁ」
昔、オーシャン城の屋上からオルベリンが飛んで降りた話を思い出す
「流石にそんな事出来るのアイツくらいだろ……」
……ライアンも出来たりするのか?
他には食事とかを運ぶメイドを人質にする作戦
正直これはやりたくなかった
戦場なら死ぬ覚悟が出来てる人が相手だから、俺も遠慮せずに色々とやって来た
でもメイドとかは違うだろ?
まぁ、それでも本当に脱出手段が浮かばないから、やろうかと思ったが
『私達も訓練は受けてますから、無駄ですよ』
食事用のナイフを持って、メイドを見た時に、シーツを交換して俺から視線を外してるのにメイドがそう言ってきた
あっ、これ駄目なやつだって思ったね
だから、どっちにしろ人質作戦は無理だった
「……はぁ」
まあ、それより更に問題なのは……
「そんな溜息ばかり吐くでない、余も傷つくぞ?」
「君暇なの?」
椅子に座ってくつろいでる、この女フラン·リップ·リールである
2日に1回はこうやって会いに来る
お前領主だよな?
しかも戦時中だよな?
「余も暇ではないぞ? やる事を終わらせてから会いに来ておる」
「そうかい……」
俺はフランの向かいの椅子に座る
「言っておくが、俺は本当に何も知らないぞ? 他の将達にもそれは言ったろ?」
この数日、毎日交代でリールの将がやって来て、尋問をしていく
俺は何も知らないから、知らないと正直に答えている
意外なことに、将達から暴力を振るわれたりはしなかった
拷問はせずに、ずっと尋問だ
「うむ、尋問の方は他の者に任せた! 余は単純にカイトと話したいのだ!」
そう言ってフランが指をパチンと鳴らす
するとメイドがワインを持って入ってきた
カッコつけてやがる
「呑むぞ!」
「呑まねえよ!」
「何故!?」
敵地で酒飲むわけないだろ!?
取り敢えずワインは下げてもらった
普通に水を持ってきた
水をグラスに注ぎ、フランが水を飲み、何も変な物は入れてないと証明する
グラスに入れてない? って疑ってたらきりが無いから、俺も水を飲む
「それで? 俺と何を話すんだ?」
「そうだな……オーシャン領はどんなところか聞かせてくれぬか?」
「……まぁ、それぐらいなら」
俺はオーシャン領の話をする
実る作物
公衆浴場等の施設
学舎の事とかも話す
別に話しても戦争で不利になる訳じゃないからな
俺の話を聞きながら、フランは目を輝かせていた
「学舎か、それなら民の知識も向上するな……軍師を任せられる者も現れるかも知れぬ!」
「なんだ? リールじゃ軍師は居ないのか?」
この軍師はレリスみたいな軍師じゃなくて
メイリーみたいな戦での軍師の事だろうな
「居らぬ! 居ればベススとの戦もすぐに勝利しておる!」
そんな堂々と言うなよ……
そんな風に過ごしていたら、夕方になった
「むっ、そろそろ戻らぬとな……カイト、また話をしよう!」
そう言ってフランは部屋を出て行った
「…………調子狂うな」
正直、もっと酷い扱いされてもおかしくないのに、破格の待遇だよな……
まあ、それでも逃げるんだけどね
方法を早く思いつかないとな
············
ーーーアルス視点ーーー
「カイトが捕まったと聞いたが本当か?」
ゼルナがやって来た
「うん、事実だよ、恐らくリールの本拠に連れて行かれた」
「お前達が居て捕まったのか?」
「……リールにしてやられたよ」
ゼルナに事情を話す
「……戦姫とガルダか、それならレムレ1人じゃ無理だな」
「丁度いいや、ゼルナ、戦姫とガルダの事を詳しく聞かせてもらえないかな?」
「俺も大した事は知らないが?」
「知ってる事だけで良いよ」
「……わかった」
ゼルナの話を聞く
戦姫は10歳の時から戦場に出ていたらしい
これは戦姫の父、先代のリールの領主が既に弱っており
自分が死ぬ前に、後継者の戦姫に功績を与えるためだったのではってのがゼルナの予想だ
取り敢えず、戦姫は10歳で戦場に出て……最初は敗走を繰り返していたそうだ
リールの都の数も一時期は2つまで減ったそうだ
しかし、戦姫が13歳を迎えた年
彼女が戦場で活躍するようになった
その頃の彼女の隣にはガルダが居た様だ
「ガルダが戦場に立つようになってから、戦姫は戦で勝つようになった」
「それってガルダが強いからじゃ?」
「確かにガルダは強い、だが戦姫も間違いなく強い……それに戦場に慣れたんだろうな……短期間で連勝していった話はよく聞いた……ベススも被害に遭ったな……」
「それで16歳で領主になって、現在に至ると……今何歳なの?」
「………………確か19だったはず」
「若……」
うーん、何処かにつけいる隙があるかと思ったけど……浮かばない
「アルス、もう少ししたら、俺はリールに向かう」
「遂に仕掛けるんだね? でもリールには戦姫もガルダも居るんだよね? 大丈夫そう?」
「まあ、なんとかする……カイトが何処に居るかも探ってみる……無事だと良いんだがな」
「うん……死ぬ様な目にはあってないと思うけど……リールからしたら人質だし」
「そうだな……アルス達も見た感じ仕掛けるようだな」
「うん……そろそろ本格的にやってくよ……奴等に後悔させてやる」
兄さん……もう少し辛抱してくれよ