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第28話 ティンクの悪夢

 ガンガン!


 そんな音が空間に響く


 ああ、今日が始まってしまった


『出ろ!!』


 兵士様に引っ張られて空間から出る


 そして連れていかれるのは牢屋……


 そこには女の人が居た


『さあ、教育の時間ですよ』


 鞭を持った女の人がそう言って笑った



 ・・・・・・・


「っ!?」


 ビクッと身体が震えて目が覚める


「……ティンク?どうした?」


 今ので起こしてしまったのかカイトさんが眠そうな目でわたしを見る


「あ、大丈夫です……ごめんなさい……」

「謝る必要は……ないぞ?…………」


 カイトさんが再び眠る


 そうだ、もう……あそこから出てこれたんだ……

 だから怯える必要は無いんだ……無いのに……


 ん………


 ・・・・・・・


『何度言えばわかるのですか?』


 パシン!

 鞭の音が響く

 私の身体に痛みが走る



『ごめんなさい……ごめんなさい……』


 私は震える


『謝るくらいなら覚えなさい!!』


 痛い……怖い……



 ・・・・・・・


 教育が終われば次はお父様の寝室に連れていかれる


『来たか……』


 裸でお父様がベッドに横になっていた

 側にはお母様が裸で座っている


『そこに座れ』


 いつものようにベッドから少し離れた床に座る……


 そして始まる……わたしの目の前で両親が交わる


 これも教育……わたしに子作りを教えるための教育……


 見たくない……でも見ないと殴られる……

 だから、わたしは見続ける……

 お父様がお母様を犯すところをずっと……終わるまで……



 ・・・・・・・・


「…………」


 目を開く……なんでこんな夢を見てしまうのだろう……

 嫌だ……思い出したくない……

 嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!


「ティンク!」

「っ!?」


 気がついたらカイトさんに抱き締められていた

 ……また起こしてしまったのかもしれない


「カイトさん、ごめん……なさい」

「何がだ?」

「お疲れなのに……起こしてしまって」

「そんなの気にするな……それよりもティンク、何か怖い夢でも見たのか?」

「えっ?なんでですか?」

「いや……ティンクが泣いてるからさ……」


 言われて気づく……わたしは泣いていた


「だい、じょうぶです……」


 わたしは強がる

 本当は大丈夫じゃない……


「おやすみなさい……」


 わたしは眼を閉じる


「…………」


 カイトさんの視線を感じたけど、少ししたら眠ったみたい

 わたしも……ねむ……


 ・・・・・・・


 お父様とお母様の子作りが終わり、わたしは寝室を追い出される


 これで今日の教育は終わり……後はあの暗い空間に戻るだけ……


 兵士様の後ろを歩いていたらこちらに向かって歩く人が居た


『…………』

 

 ヤークレンの第一王子であるカシルナお兄様だ


『お、お久しぶりです、お、お兄様……』


 わたしはすれ違う時に頭を下げてカシルナお兄様に挨拶する


『……ちっ!!』


 ドゴォ!


『っあ!?』


 わたしのお腹に……カシルナお兄様の足がめり込む

 飛んでいくわたしの身体


 ドン!


『げほっ!?ごほっ!けほ!』


 壁にぶつかる

 むせこむ、わたし……


『何度も言わせるな、貴様に兄と呼ばれる筋合いは無い!奴隷の子が!!』


『ごめん……なさい……』


『はっ!』


 土下座して謝るとカシルナお兄様は歩いて行った


 奴隷の子……それがわたしが王族でありながらこんな扱いを受ける理由……


 わたしのお母様は幼い頃にお父様に性奴隷として買われた……

 何度も何度も交わり、堕胎し……お父様の欲を満たしていた


 しかし、戦でお父様が居ない間にお母様の中でわたしが育ってしまった

 お父様が戻ってきたときには堕胎など間に合わず……わたしは産まれた


 女として産まれたわたしを見てお父様は

『他の国との外交に利用できるかもしれんな……』

 と言ってわたしを生かす事を決めたのだ……


 だからわたしは覚えていかなきゃいけない……

 外交の道具として嫁ぎ……夫となる方に身体や知識を使って奉仕し……ヤークレンの役にたたないといけないのだ……


 ・・・・・・・


 その日は突然やって来た


『出ろ!!』


 兵士様に連れていかれる

 また教育が始まる……そう思っていたらいつもとは違う部屋に連れていかれた


『?』


 どうしたのか疑問に思っていたらメイド様に服を脱がされ、高そうな服を着せられた


『……あ』


 なんとなく理解した……わたしはとうとう道具として働く時がきたのだ


 着替えが終わると兵士様に連行される

 その時に相手の名前を聞かされた


『カイト・オーシャン様……』


 ど、どんな人なんだろ?

 以前見た太った男性や中年の男性が頭に浮かぶ


 どんな方でも精一杯奉仕しないといけない……わたしに拒否権など無いのだ


 初めて入る玉座の間


 玉座に座るお父様……その前に立っている男性

 お父様と話してる内容からして彼がカイト様で間違いない


 …………この方に尽くさないと


 わたしは彼に近付く


『ティンク!挨拶しろ!』


 お父様に言われる


『……は、初めまして……ティンクと申します……な、なんでもしますので……可愛がってください……』


 わたしは愛想よく言う……言ったつもりだ


『…………』


 黙るカイト様

 わたしは何か粗相をしてしまったのでしょうか?


『……そういうことか』


 カイト様がそう呟く

 そしてわたしの左手を取り、近づいて……


『ここから出たいか?』

『!?』


 えっ?どうしてそんな事を?

 ここからって言うのはヤークレンの事だと思う


 ……ヤークレンから出たい?

 つまりカイト様と結婚したいかしたくないか聞かれてる?


 ……もしここで『出たくない』と言えばどうなる?

 カイト様は結婚を断る?

 もしそうなったら……わたしは……お父様の怒りをかう……

 そうなったら恐らく処刑される……

 わたしには『出たい』と言う選択しかできない


『……(コクリ』


 わたしは頷いた


 ・・・・・・


 その後、首都であるグレイクを出てメルクという都に着く


 そこでわたしは色んな初めてを体験した


 初めて温かい食事を食べれた

 初めてお湯で身体を洗えた

 ……そして初めて……


 わたしは裸でカイト様に迫った……

 わたしが彼に出来るのは身体で尽くす事だけだから……わたしがお父様の役に立つにはこれしかないのだ



 しかしカイト様はわたしを抱かなかった……毛布を被せられ

 わたしがどうすればいいのか混乱していたら……カイト様がわたしを抱き締めて……



『ティンク、もうメルセデスに怯えるな、ヤークレンの連中に怯えるな……ここには居ないし、これからは俺が君を守る』


 そう言われた


『でも、でもお父様は強くて……』


 わたしが言うと


『それでもだ!俺はもっと強くなって、守ってみせる!もう君を傷付けさせない!』

『っ!!』


 わたしの守る……そんな事……初めて言われた……


『だからもうこんなことはしなくて良いからな?』

『……ごめ、なさ……』

『謝らなくて良いし、泣かないでほしい……ほら服を着て?』


 わたしは服を着る……でも涙は止まらなかった……

 悲しくないのに……涙は出るんだ……



 ・・・・・・・


 その後もカイトさんはわたしを守ってくれた


 国境で賊に襲われたときも……

 そしてオーシャンに来てからも……


 そんなカイトさんの事が……わたしは好きになった


 ……これが『愛』なのかはよくわからない

 でもカイトさんに嫌われたくない……そんな気持ちが日に日に増していく


 もし、わたしが粗相をしたら?

 カイトさんがわたしのお母様の事を知ったら?


 そう思うと不安になった


『君には失望したよ』


 目の前でカイトさんに言われる


『この役立たずが!!』


 お父様がわたしを殴る


 わたしは……わたしが……わたしは………………


『ィンク……』


 ?……声?


『ティンク……』


 わたしを呼ぶ声?


 ・・・・・・・


「ティンク!!」

「……カイト……さん?」


 カイトさんがわたしを起こした


「大丈夫か?凄くうなされていたぞ?顔色も悪い……やはり具合が悪いんだろ?少し待ってろ、今から水を持ってこさせる……」


 わたしにそう言うカイトさん


「だ、大丈夫です」


 わたしが言う


「大丈夫そうにはとてもじゃないが見えないぞ」


 カイトさんが言う……


「いえ、本当に……大丈夫ですから……」


「……はぁ……なあティンク……俺は頼りないか?」

「えっ?」


 カイトさんがわたしの肩に手を置く


「何か悩みがあるんだろ?なんで俺を頼ってくれないんだ?」

「いえ……その……」

「…………」


 カイトさんがわたしをジーと見る


 そしてわたしをいきなり抱き締めて……


「よし、決めた、君が話してくれるまで離さないから!」

「えっ!?あ、あの!?」


 わたしが驚くがカイトさんはわたしを離さない


「俺を頼るまで絶対に離さないからな?」

「うぅ……」


 声から本気で言ってるのがわかる

 ……わたしは……


 ・・・・・・・・


 言ってしまった……

 わたしが奴隷の子だと言うことを


「…………」


 カイトさんが黙っている

 やっぱり戸惑うよね……わたし……嫌われちゃった……


「……はぁ」


 カイトさんがため息を吐く

 ……うぅ……


「なんでもっと早く言わなかった?」

「ご、ごめんなさい……カイトさんに嫌われたくなくて……」


 でも、もうそれも終わりだ……

 わたしはどうなるんだろ?ヤークレンに送り返される?

 それとも奴隷として扱われる?

 ……処刑もあるのかもしれない


 わたしがそう考えていたら


 ギュウ!


「ふぇ?」


 カイトさんに抱き締められていた


「そんな事で悩んでたのか?」

「そんな事って……」

「あー言い方が悪かったか? まあいい……俺からしたら大したことじゃあない」

「……えっ?」


 カイトさんがわたしを見る

 

「ティンク、君がどうして酷い扱いを受けていたかやっとわかった……理由を知った上で言うぞ? 俺は君を守る、何があろうと絶対に! だから安心しろ」


 そう言って微笑まれた


「……良いのですか? わたし……奴隷の子なんですよ?」

「ティンクはティンクだろ?関係ない」

「それに世間知らずで……」

「俺も似たようなものだぞ?」

「わたし……わたし……」

「ティンク」


 カイトさんがわたしの頭を撫でる


「俺が君を守るから」


 全てを知った上での一言……

 それを聞いて……わたしは……わたしは


「カイトさぁぁぁぁん!!」

「全く……」


 彼の胸で泣いた

 カイトさんがわたしを抱き締めて頭を撫でる


 わたしを受け入れてくれた……それが嬉しかった



 そして泣きつかれたのか……わたしはそのまま眠ってしまった


 もう……悪夢は見なかった



 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「すぅ……すぅ……」


 泣きつかれたのか俺の胸で寝るティンク


 全く……こんな子供を酷い目にあわせやがって

 目の前で子作りだ?

 教育として鞭だ?


 ふざけやがって!!


「正直憧れてたんだがな……」


 メルセデス……女癖はともかく領主としてはかなりの実力者

 同じ領主として見習いたい所もあった

 でも、その気持ちはもう無い


「俺の手で……必ずぶっ潰してやる……」


 メルセデス……強大な相手だ

 先ず戦えるようになるまでに何年かかるかわからない

 だが……必ず勝ってやる!!


 そしてティンクに土下座させてやる!!

 覚悟してろよ!メルセデス!!



















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