第285話 捕らわれたカイト
ーーーカイト視点ーーー
ガタン!
ゴン!
「っ!」
大きな揺れ
打ちつける頭
その衝撃で目が覚めた
「…………」
意識がまだハッキリしない
動こうとしたが、腕が後ろで縛られている
足も縛られていて動けない
「…………」
うっすらと目を開けて目の前を見る
「で……」
「……なら」
前の方で男女が話している
1人はターバンで頭を覆っていて顔が見えないが、声からして男だ
もう1人は金髪の女性だ
……『戦姫』フランとガルダかよ
俺はコイツらに捕まったのか……
思い出せ、何があった?
………………………
そう、あの時、砂塵嵐がきた時だ
「今頃、アルス達は交戦してる頃かな?」
「恐らく……」
俺は戦術書を読みながらレムレと話す
レムレは弓の調整を確かめながら外を見ている
「来ました」
レムレがそう言って板で窓を防ぐ
そしてすぐに板がガタガタと震え出した
砂塵だ
「もう慣れてきたのか?」
「砂が舞い始めますからね、わかります。」
流石だな
俺はコップの水を飲もうとして、空になってるのに気付く
「貰ってきますよ」
「それぐらい自分でやるんだが」
「カイト様は部屋から出てはいけませんからね」
「はーい、じゃあ頼む」
レムレが水を貰いに部屋を出ようとした時
バン!!
ビュオオオオオ!!
「うおっ!?」
「っ!?」
板が吹っ飛んで砂塵が部屋に入ってきた
板は俺の足下に落ちた
「カイト様!」
「大丈夫! 勢いで飛んだんだろ」
俺は板を拾って窓に近付く
さっさとはめないと砂がヤバい
板をはめようとした時
ガシッ!
「はっ?」
腕が外から伸びて、俺の首元を掴んだ
そして外に引っ張り出された
「カイト様!!」
身体を襲う浮遊感
俺の首を掴む手
窓から飛び出すレムレ
そのレムレの背後に見える人影
「レムレ! 後ろだ!!」
砂が口に入るのも気にせず叫んだ
もうレムレの姿もマトモに見えない
ダン!
着地の衝撃
ギュッ!
「がっ!?」
首を掴む手が力を強めた
一気に意識が遠のく
「レム……レ」
レムレは無事か?
そう思いながら気絶する直前
ヒュン!
ドスッ!!
矢が俺を掴まえてる奴の左肩を貫いた
無事だった……よか……た……
……………………
そして現在に至ると……どれだけ気絶した?
今は何処にいる?
馬車で運ばれてるのか?
「気が付いたようだな?」
フランの声
「…………ぐぐ」
あっ、口塞がられてるじゃないか……
「ふむ、もう外しても問題あるまい?」
「まあ、もうリール領ですし構いませんが」
……リール領!? もうそこまで運ばれたのか!?
フランが俺の口を塞いでいた布を外す
「具合はどうだ?」
「……最悪だな、揺れる度に痛いんだが」
「それは我慢してくれ」
フランはニッと笑う
「先ずは自己紹介だな! 余はフラン·リップ·リールである!」
すっごい笑顔で自己紹介された
どう返すのが正解だ?
「お主がカイト·オーシャンで間違いないな?」
「いいえ、違います、別人です」
「なに!?」
「フラン様、信じないでください」
「いだだだ!!」
ガルダが俺の身体を無理矢理起こす
「その水色の髪で別人が通るか! まあ仮にカイトではなくてもアルス·オーシャンでも構わんがな」
「なんであんた顔隠してんの? 傷跡でもあるのか?」
「…………」
「いだだだだだだ!!?」
抜ける!髪の毛抜けちゃう!!
「ガルダ、あまり乱暴にするな」
「……はい」
「うぅ……」
頭皮が痛い
「それでお主がカイト·オーシャンで間違いないな?」
「その通りだよ、出来れば違う出会い方したかったな」
あーくそ、身動きとれないし、目の前にフラン、すぐそばにガルダ
とてもじゃないが逃げれないな
仮に逃げれても、砂漠のど真ん中だ、間違いなく死ぬ
「フラン·リップ·リール」
「フランで良いぞ? 余もカイトと呼ぶ」
「じゃあフラン、俺を捕まえた理由聞いていいか? 教えてくれるか?」
「教えなくても予想はできるであろう?」
「…………」
まあ、オーシャン軍への牽制だろうな
「言っとくが総大将はアルスだから、オーシャン軍を止めることは出来ないぞ?」
「ほぉ? オーシャンは領主を見捨てるのか?」
「俺が死んだ時の準備はしてるからね、俺だっていつ死んでも大丈夫な用に準備も覚悟も済ましている、嘗めるなよ」
嘘です、準備出来てません
てかティンクとの約束もあるから死にたくありません
だからってそれをペラペラ話す訳はない
「フラン様、やはりさっさと殺して首を送りましょう」
やだ、殺される
「ガルダ、そんな事を言うな」
フランはガルダにそう言ってから俺を見る
「安心しろカイト、お主を殺すつもりは無い、戦が終わるまで捕らえるだけだ、終われば解放する」
フランは優しく俺に言う
「……結構痛めつけられてますが?」
「それは……うむ、すまぬ!」
謝られた……
「城に着いたら手当てしてやるから、それで勘弁してくれ……水飲むか?」
そう言ってフランは俺に水を渡してきた