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第284話 リールの罠

 

 ーーーカイト視点ーーー


 ゼルナの飛竜に俺とレムレは乗せてもらい、アルス達の居る『フライト村』に向かう



「カイト、俺はお前達を送ったらそのまま作戦部隊に合流する、アルスへの説明は2人に任せたぞ」

「あぁ、任された」


 やっぱり飛竜は速いな

 1時間くらいでフライト村が見えてきた


「んっ? 2人とも少し止まるぞ」

「えっ? どうした?」


 ゼルナが飛竜を止める、そして高度を上げていく


「砂塵嵐だ、今近づけば巻き込まれるぞ」

「砂塵嵐?」


 俺は身体をずらして、フライト村を見る

 数秒後に、大量の砂に村がのまれた


「うお!? あれ大丈夫なのか!?」


 建物吹っ飛ばない?


「ちゃんと対策はしている、ここは時期によっては砂塵が多いからな……今がその時期だ」

「うわぉ、レムレ、砂塵の中だと見えるか?」

「流石にあの密度だと見えないですね……近くなら人影の認識くらいは出来ると思いますが……」


 だよなぁ……


「こう、眼鏡みたいな形の砂塵を防ぐ道具とか無いの?」

「無いな、砂塵の中に居るより建物の中の方が安全だ、南方に住んでて、砂塵の時期に村から出るやつは居ないだろうし、もし砂塵にのまれたら動かずに耐えるしかないな」

「そうかぁ……」


 じゃあ砂塵嵐が鎮まるのを待つしか無いのか


「数分もすれば落ち着く」


 ゼルナはそう言うと、袋を取り出して、干した果物を取り出して飛竜の口元に投げる

 飛竜は果物を食べると尻尾を揺らした


 ············


 数分後、砂塵嵐が落ち着いたのを確認して、フライト村の入口に飛竜が着地した


「カイト、出来るだけ建物に籠もってろよ? 砂塵の中に出るなよ?」

「そこまで無謀な事はしないって」

「いや、必要だと思ったらお前はやる」

「うっ……」

「出るなよ?」

「はい……」


 念を押された


 ゼルナは俺とレムレが降りたのを確認した後、飛んでいった

 ゼルナもこれから色々と動くのだから、次に会うのは結構先になるかもな……

 もしかしたら俺が帰るのが先になって、戦が完全に終わるまで会わないかもしれないな……

 俺はゼルナの姿が見えなくなるまで見送った


「カイト様、そろそろ行きましょう」

「そうだな」


 俺とレムレはフライト村に入る

 村の出入口に居たベスス兵や、村の中に居たうちの兵にアルス達の居場所を聞いて向かう

 気を利かせた兵士が走ってアルス達に伝えに行ってくれた


「さっきの砂塵があったからか、建物の砂凄いな」

「でも、壊れたりしてる様子は無いですね……他の都でも思いましたけど、オーシャン……東方とは建物の造りも違いますよね、ここはとくに」

「そうだな」


 東方は基本木材で家建てて、貴族の屋敷とか大きな施設とかは石材だもんな

 ベススとかは基本石材……てかレンガだなあれ、それで造ってるが……ここはなんだ?


「見た感じ……大きな岩をくり抜いたのか?」


 削岩とか色々して、岩に空洞を作って、ドアやら窓やら付けましたって感じだ……そんな技術があったのか?

 こういうと馬鹿にしてるみたいだが、そんなつもりはない

 そんなに優れた技術があるなら、今でももっと色々凄いの作ってるだろ?って話だ


「コルールの隠し通路みたいな古くから造られたものもありますし、ここも長い時間をかけて造られたのではないですか?」

「……なる程な」


 ゲームだとそこまで細かい設定とか書かれてなかったからな……


「その地方の歴史も学んだ方が良いかもしれないな……」


 そこから何かいい作戦浮かんだりするかもしれないし

 ナリストやゼルナは……忙しいだろうな、誰か教えてくれる人紹介してもらうか?

 オーシャンに戻ったらメイリーにも聞いてみるか、色々詳しいし


 そう考えていたらアルス達が居る建物に着いた

 兵士が扉を開ける

 中に案内されて、椅子に座る


「レムレは座らないのか?」

「はい、味方の拠点とは言え前線ですからね、警戒はしませんと」


 そう話していたらアルス達が来た


「取り敢えず、何があったのか聞いていい?」


 アルスは俺の向かいに座り、レムレを見る


「はい」


 レムレはこれまでの事をアルスに話す


「……どう思う?」


 アルスがユリウスを見る


「完全にカイト様を狙ってるな」


 ユリウスがかえす


「俺、大将の護衛に戻るか?」


 ライアンが聞く


「うーん……」


 アルスは少し考える


「兄さん」

「うん?」

「皆から言われてると思うけど、この建物から絶対に出ないって約束できる?」

「本当に皆から言われるな……あぁ、約束するよ」

「何があっても出ないでよ? 絶対に!」

「信用がない……」

「今までの行動を思い出してよ」

「はい……すみません……」


 最近アルスのあたりが強い気がする……


「絶対に出ない、ここでのんびり作戦の成功の報告を待ってるよ」

「それならレムレにこのまま任せるよ、レムレ、兄さんを頼むよ」

「はい、もう目を離しません」


 視線が刺さる!!



 こうして、俺とレムレもフライト村に滞在することが決まった



 ···········


 アルス視点


 兄さんを部屋に案内してから自室に戻る


「どう思う?」


 僕は報告書を読んでいたユリウスを見る


「リールの考えはわからないが、僕達の策がバレてる訳ではないと思う、恐らくカイトを捕まえて、オーシャン勢の動きを制限するつもりかもしれない……それだけでもリールにとっては大きな隙になる」


「正直、これで諦めるとは思えないよね」


 僕がそう言うと、ユリウスは報告書を机に置いて僕を見た


「ここから本気で奪いに来ると思う、どう来るかはわからないが……レムレには更に警戒を強めるように伝えたし、少なくとも、僕達全員が揃ってる今は大丈夫だと思う」


 油断は禁物だけどな、とユリウスは言って水を飲む


「もし、もし兄さんが捕まったらどうする?」

「……アルス、それを決めるのは僕じゃないお前だ、相談にはいくらでものるが、決めるのは総大将だ」

「……そうだね、最悪の状況も考えておくよ」


 そういえば、メイリーから渡された小袋……


『アルス様、ベススが都を落として動けなくなっていたら青の袋を、カイト様に何かあった時は赤の袋を、どう動くか悩んだ時は黄の袋を開けてください』


「…………」


 先に中を見てみようか? 

 いや、やめとこう、それはしない方がいい気がする

 てか、この袋を開けないですむ状況にすべきなんだ



 ············


 数日後


「アルス様、リール軍がこの村に向かってます!」


 伝令が駆け込んできた、僕達が動き出す直前だった


「ユリウス、先にリール軍を追い返そうと思うんだけど」

「そうした方がよさそうだな、規模はわかるか?」

「500ほどかと……」

「500か……兵士の一部と僕達が出ればすぐに蹴散らせるな……」

「よし、ならすぐ動こう、シャルス、ライアン、出るぞ!」

「はいよ!」

「っし!」


「兄さんは部屋に居る?」

「戦術書を読んでいるようです、報告はしますか?」

「うん、しといて」


 僕達は装備を整えて、出撃する


 フライト村から出て、少し進むと、遠くに軍勢が見えてきた


「この速度なら30分後に交戦かな……他に敵勢は居ないんだろうな?」

「索敵させた兵達の報告通りならな……何のために来たんだ? 僕達を討つ為なら規模が少なすぎる」

「嘗められてんじゃないのか?」


 ライアンが言う


「いや、コルールの件で僕達のことも警戒する対象になってるはずだ、それに兵の数も調べずに挑んでこないだろ? 確実に潰すなら最低でも1万は連れてくるでしょ」


 ユリウスはそう言うと、周りを見渡す


「遮蔽物は無し、砂漠だから林とか隠れる場所も無さそうだ……砂の中に埋まってたらわからんが、この暑さで砂の中って隠れられるか?」

「案外そっちのほうが涼しいかもな」


 僕はそう言う、本当に暑いからね、東方よりも軽装になってるけど

 暑い


「伏兵は無さそうだし、何が狙いが……砂塵か?」

「砂塵で動けないところを襲おうとしてるとか?」

「奴らも動けないんじゃないのか?」


 ユリウス、僕、ライアンと続く


「オイラなら動けるぜ」


 シャルスが得意気に言う


「取り敢えず警戒はしとくか、策もなしに真正面からぶつかるのはやめとこう……」


 僕はそう言うと後ろを見る

 連れてきた兵は3000

 500相手に多すぎるかもしれないが、慣れない砂漠での戦闘だ、多いに越した事はない


 残りの2000の兵はフライト村に待機だ

 まあ、村には数十人くらいで、残りは村の外に布陣してるんだけどね……布が飛ばされたり砂まみれになったりで大変らしい……フライト村の人が知恵を貸してくれて、今はなんとかなってるけどね


「ユリウスとシャルスは1000づつで左右に展開してくれ」


 僕とライアンの1軍

 左にユリウスの2軍

 右にシャルスの3軍


 僕達が敵軍と戦ってる間に、ユリウスとシャルスで左右から攻めて、3方から挟撃する

 確実に勝つんだ……


 軍勢を分けて進軍する

 あと数分で交戦する距離まで近付いた


「アルス、一番槍は俺に行かせてくれ」

「大丈夫?」


 僕はライアンに聞く


「任せろ、道を作ってやる」


 ライアンは槍を左手に持つ


「なら、任せるよ」


 もう少し近付いたら、突撃かな……


 そんな時だった


 ブオオオオオオオ!!


 風が吹く

 砂が舞う


「っ!! 全軍止まれ!! 備えろ! 砂塵がくる!!」


 僕が叫ぶと同時に、視界が砂に染まった


 こんな時に! もう少し離れていた時ならまだしも、リール軍が目の前って時に!!


「もぶ! ライ、アン!」

「喋るな! 俺なら大丈夫だ!」


 口に砂が入って喋りにくい


 砂塵が落ち着くまでひたすら耐える

 そして、視界が晴れた


「はっ?」

「なに?」


 砂塵が落ち着き、目の前を見たとき、僕とライアンは戸惑った

 リール軍が遠くに離れてるのだ

 砂塵が吹いてる間に、リール軍は後退したのだ


「奴らは砂塵の中でも動けるみたいだな」

「それなら、何で攻めてこないんだ? 僕達は隙だらけだったろう?」

「………………なあ、あいつら撤退するみたいなんだが」

「…………まさか!」


 僕はすぐに振り返って、馬を走らせる


「どうしたアルス!」

「全軍撤退! フライト村に戻る!」

「なんでだ!!」

「あの軍勢は餌だ!! 僕達を村から離れさせる餌だ!!」

「おい! それってつまり!」

「ああ! 狙いは兄さんだ!! くそ! 兄さんを狙ってるのはわかってたのに!!」

「だがあそこにはレムレも居るし兵も多く居るぞ!」

「村には数十人程度だ! 僕達がコルールでやったみたいに少人数での潜入だったら兵達が気付く前に終わるかもしれない!! それに奴等は砂塵を待っていた! 視界の悪い状態なら、レムレでも見えないし、矢も撃てない!」

「っ! おいそこの! ユリウスとシャルスに伝令! 撤退!」


 ライアンが兵士に伝令を命じた


 僕達は急いでフライト村に向かう



 ············


 急いでも時間はかかった

 フライト村に着いたとき、兵達が慌ただしく動いていた


「アルス様!」


 フライト村に居た兵士の1人が駆け寄ってくる


「どうした!」

「カイト様が! カイト様が捕まりました! レムレ小隊長も重傷です!」

「っ!!!!」


 僕はレムレの場所を聞いて急いで向かう

 医務室に利用されてる建物に駆け込むと、レムレがベッドに寝かされていた

 上半身に包帯を巻かれている


「レムレ!」

「アルス、さま」

 レムレは辛そうだが、僕を見ると起き上がる


「簡潔でいい、何があった」

「やられ、ました……奴等が、砂塵の中でやって来て、カイト様が!」

「捕まったんだな! 奴って誰だ!」

「はぁ、はぁ、1人は恐らくガルダ、この傷も奴に……もう1人は、フラン·リップ·リール! 戦姫が!! ごほ!!」

「!!?」


 吐血するレムレ、肋骨が折れて、多分肺も傷ついてる


「わかった、寝てろレムレ、今は傷を治せ」

「申し訳、ありません、任されたのに…………」

「気にするな、いや、やっぱり気にしろ、そしてそれを闘志に変えろ、完治したら動いてもらうからな」


 僕は医師を見る


「治るんだよな?」

「はい、2ヶ月程かかりますが、命に別状はありません」

「……レムレをお願いします」


 僕は建物を出る


「アルス! 状況は?」


 ユリウス達がやって来た、2人も村にたどり着いたんだな


「兄さんがリールに捕まった、戦姫とガルダがやって来たらしい、レムレは2ヶ月の負傷」

「戦姫とガルダか、ゼルナから少し聞いたけど、リールの領主と最高戦力かよ……レムレ1人だと流石に無理だな……どうする?」

「オイラが今から追おうか?」

「いや、もう逃げられてるし、シャルス1人で行かせるのは危険だ」

「なら向こうの動きを待つのか?」


 ユリウスが聞いてくる


「…………」


 僕は赤い小袋を取り出す


「頼りたくなかったけど……頼るしかない」


 中には青い袋と同じで紙が入っていた


 紙を拡げる


「…………メイリーの奴はどこまで先を見てるんだ?」

「……マジかよ」


 僕とユリウスは紙に書かれた内容を読んで青ざめた

 メイリーの指示、ここまで来たら不気味なんて超えてきた

 もう恐怖しか感じない、味方で良かったと思うべきかもしれないが……


 紙にはこう書かれた


『ユリウス殿の策をそのまま実行してください、そうすればカイト様なら帰ってきます』





















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