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第282話 安全な所など無い

 焔歴150年 8月


 ーーーカイト視点ーーー


 これからの行動を話し合ってから1週間が経過した


 いつの間にか8月になり……ベススは更に暑くなっていた


「うわ、熱気が凄い……」


 俺は城内の客室の窓から外を覗いて呟く

 見るからに地面が熱を持ってるのがわかる

 遠くの方なんてユラユラ揺れてるように見える


「それにしても良かったんですか? ライアンを行かせて」


 椅子に座っていたレムレが弓の手入れをしながら聞いてきた


「まぁ、大丈夫だろ? ユリウスの策だとアルス達と一緒に行かせた方が成功率も高そうだし」


 今ここには俺とレムレしか居ない

 アルス、ユリウス、ライアン、シャルスは別行動だ

 ユリウスの策で動いている

 ついでにチップス達も動いていて、ベススにはナリストとゼルナ、ファルンとルートゥだけが残っている



「それにレムレが代わりに護ってくれるんだろ?」

「はい、命懸けで護ります!」


 張り切ってるね……


「本当は俺もついていきたかったんだがな……」


 俺がそう言うとレムレが何言ってんだって眼で見てくる


「アルス様にあれだけ怒られてまだ言うんですか?」

「いや、流石に反省してるからこうして残ってるだろ?」


 怒ったアルスは本当に怖かった


「でも暇なんだよな……」

「リールとの戦が落ち着いたら、飛竜で送って貰えますし、待ちましょう」


 そう、俺は帰ることになったのだ

 まぁ、元々内乱でナリストとゼルナが心配だったから来ただけだし

 内乱が片付いていたなら、俺は来た意味が無いというか

 援軍としては、俺は戦力になれないから居ても邪魔だし……

 だから今は無理だが、リールとの戦がある程度落ち着いたら、飛竜で俺だけオーシャンに帰ることになった


「あぁ、くそ、ゼルナみたいに戦えたら、俺だって前線に出るのに……」

「例えカイト様が強くても、領主を前線には出せませんよ……小国だった頃とは違うんですからね?」

「そうだけどさぁ……なんか虚しい……」


 てか寂しい

 戦いが好きなわけじゃないけどさ……こう、皆が頑張ってるのに、俺だけのほほんとしてるのは嫌なんだよな


「カイト、居るか?」


 ドアをノックする音がしてゼルナが声をかけてくる


「暇人その1は暇してるよー」


 ドアが開く

 ゼルナが入ってくる


「どうした暇人その2?」

「暇人その2は明日出発する事になってな、その前に雑談でもしようかと思ってな」


 ゼルナはそう言って、持ってた瓶とグラスを机に置いていく


「ワイン?」

「いや、果実の搾り汁」


 要するにジュースか

 オレンジ色の液体がグラスに注がれる


「ほら、レムレも飲め」

「ありがとうございます」


 人数分のグラスに注がれたジュースを飲む

 うん? 見た目はオレンジジュースなのに、味はレモンっぽいな

 でも美味い


「それで? 雑談って何を話すんだ? 積もる話とかはもう済ませた気がするが……」


 酒飲んでる時とかに


「単純に気になってた事だ、カイト、ティンクとうまくいってるのか?」

「ごふっ!?」


 思わずむせる


「な、なんで?」

「お前とティンクが、結婚して数年経つが、子供が出来たって話を聞かないからな……夫婦仲が良くないのかって噂が流れてて気になった」

「あ〜そうですよね、ベススだと御二人の普段の様子なんて伝わらないですよね」


 レムレが言う


「ゼルナ様、安心して下さい、夫婦仲は良好ですよ、オーシャンではカイト様とティンク様の仲の良さは誰もが知ってます」

「えっ? オーシャン中に広まってるの? 俺とティンクの事が?」

「カイト様、たまにティンク様と街に出掛けられた時もティンク様とよく手を繋いでいますし、お茶会やパーティーに招待された時も仲良くされてますから、色んな人が見てますよ」

「やだ、ちょっと恥ずかしい……」


 俺そんなにイチャイチャしてた?


「そんなに仲が良いなら子供もすぐにできるだろうに」

「ゼルナ、子供って授かりものだからな? やることやってはいできましたってならないからな?」

「それぐらいわかる、しかし跡取りをつくらないと周りがうるさいんじゃないのか?」

「確かにうるさいけどさぁ、娘を側室とか言ってくる貴族がやかましい」

「カイト様、ティンク様以外は愛せないとか言ってましたね」

「それで余計な話は無くなるかと思ったら、愛さなくても良いのでとかほざいてくるしだいたいなんだよどいつもこいつも毎回毎回同じこと言ってきてしつこいんだよほんと」

「俺、触れてはいけない事に触れたか?」

「そうですね、この話題になるとカイト様はいつもこうなってしまいますから」


 ·············


 数分後


「いけない、またブツブツ言ってた」


 俺は正気にもどった!


「すまないな、そこまでなるとは思っていなかった」

「いいよ」


 あ〜でもテンション下がったな〜


「何だったら街に出るか? 俺とレムレが居るなら問題ないだろ?」


 ゼルナが誘ってくる


「そうだな、部屋にずっと居ても気が滅入るだけだしな、レムレは大丈夫か?」

「大丈夫です」


 そんな訳で俺達は街に繰り出した


 まあ、野郎3人で出掛けてもそんな楽しい話題出来ないけどな

 適当にぶらついて、屋台で食べ物買って食べて、またぶらぶらして、ベススの民族衣装見てみたりして、またぶらぶらして見世物やってるから見物して……


 …………普通に楽しいな


 そんな訳で、今は市場で色んなものを物色してる


「ゼルナ様、これはなんですか?」

「んっ? これはだな」


 レムレとゼルナが1つの商品を見ている


「そこの人そこの人」

「んっ?」


 向かいの店の人が俺を手招きする


「何だ?」


 俺は向かいの店に行く

 店と言ってもバザーみたいなのだから、仕切りも何も無いから、少し離れてもゼルナ達の姿はしっかり確認できる


「お兄さんこういつのは買わないかい?」

「これは?」


 店主は小瓶に入った液体を見せてくる

 見た感じ普通の水だが


「これはとても貴重な薬でさ、どんな病気もあっという間に治しちゃう薬なのさ!」


 ……うさんくせ


「いや、興味ないや」


 2人のところに戻るか

 振り返ると……


「動くな」


「っ!?」


 店主が俺の左肩に手を置いて捕まえてきた

 俺の腰にチクリとした感触

 ナイフか何かを押し付けられてる?


「刺されたくなかったら大人しくついてこい」

「……何のつもりだ?」

「いいからこい」


 いっ!?

 くそ、ついていくしかないか……


 ·········


 路地裏に連れて行かれた、そこには複数の男がいた

 10人くらいか?


「間違いねえ、カイト·オーシャンだ」


 1人の男が俺を見て言う


「カイト? 誰それ?」


 とぼけてみる、人違いですよー


「てめえ以外にそんな目立つ水色の髪が居るか!」


 アルスだって水色だ!


「ちっ、それで? 何で俺を狙った? 殺すつもりじゃなさそうだが?」


 殺すつもりなら、もうナイフで刺しまくればいいしな


「てめえを買いたい奴が居るんだよ、大人しく売られろ」

「なに?人身売買?」


 てか俺を狙うって……物好きがいるもんだな


「被っとけ!!」

「むぐっ!?」


 口を布でふせがれて、袋を被せられ、全身が包まれた

 足下を縛られる感覚

 手際いいなおい


「ずらかるぞ!」


 担がれて運ばれる感覚

 どこに連れてかれるのやら……


 ドスッ!

 そんな音が近くに聞こえて、一瞬の浮遊感、そして全身に走る衝撃

 いてぇ……


「カイト様、無事ですか!」


 レムレの声

 無事と……言えるか?


「何だこのガキ!」


 男の怒号

 しかし

 ドスッ! ドスッ!


 そんな音が聞こえると


 バタッ! ドサッ!


 そんな音も聞こえる


「ちっ! 逃げるぞ!!」


 そう言って数人が走り去っていく音


「カイト様!」


 レムレが縄を解いて、袋を外してくれた

 自由になった手で布を外す


「助かった、ありがとうレムレ」

「いえ、こうなったのは目を離した僕の責任ですので……」

「いやいや、声をかけずに離れた俺が悪い……ゼルナは?」

「ゼルナ様でしたら……」

「ぎゃあああ!!!」


 男達の悲鳴


「カイトは無事か?」


 ゼルナが血塗れの状態で反対側からやって来た


「俺は無事だ、奴等は?」

「全員足を斬り捨ててやった、このまま牢まで連れて行って尋問だな」


 全員?

 足を?


 ··········


 城に戻った俺達は身体を洗ってから休んでいた

 少ししてから、ゼルナが男達の事を教えてくれた


「奴等何も知らないみたいだ、依頼してきた者に大金を渡されたからやったらしいが……相手は顔を隠していて誰か分からないらしい」

「カイト様を狙ったのは確実なんですよね?」

「あぁ、それは間違いない……しかし困ったな、あんな連中が都に入ってきたのもだが……」

「都で待機も安全とは言えないな」


 ナリスト達は兵が居るから大丈夫だが

 オーシャンの兵は皆アルス達の所だ

 50人か100人は残したほうがいいってアルスが言ってきたが、俺が全員連れてくように言っちゃったんだよなぁ

 ベススで待機する俺より、アルスの方が人手いるだろうし……


「流石に、レムレ1人にずっと護衛させるわけにはいかないよな」

「ベススの兵を何人か借りれませんか?」

「こっちも多くは前線に出ていてな、残ってるのは防衛の兵だけでギリギリでな」


 …………


「あのさ、怒られるだろうけど言っていいか?」

「なんだ?」

 ゼルナが俺を見る


「俺とレムレもゼルナについて行っていいか? 誰かに狙われてるなら、ここから動いた方が安全じゃないか?」

「…………」

「…………」


 ゼルナとレムレが少し考えて


「そうするしかないか……」

「ですね……」

「その残念そうな反応はやめてくれ、泣くぞ」



 こうして、俺とレムレもゼルナに同行することが決まった

















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