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第281話 暗躍する者

 

 カイト達がこれからの事を話し合っている頃


 リールの領主、フラン·リップ·リールはリールの首都、リールに戻っていた

 兵をデオに任せて、フランはガルダとラスターを連れてリールに素早く戻ったのだ


「さて、どうしたものか」


 フランはリールに居る将を玉座の間に集結させ、語りかける

 彼女の左側にはガルダが立っており

 他の将達は玉座の前で平伏していた


「マードルードは無事なのか?」


 フランが問う


「はい、現在は『ゴウルン』にて待機しているそうです」


 ゴウルンはコルールに近いリールの最前線の都である


「ふむ、ならそのままゴウルンの防衛に参加させるか……」


 フランはグラスに入った水を飲む

 数日前までは上手く事が進んでいたのだ

 コルールを手に入れ、ベススの意識をコルールに向けてる間にガンダーを手に入れ

 コルールとガンダー両方でベススを刺激し、その間に残りの都を落とす

 最後にベススを落とせば、リールは南方の最大勢力になれた


「まさか、オーシャンがここまで速く動いてくるとはな」


 水を飲み干したフランはグラスを置く


「さてと、誰かいい策は浮かんでいるか?」


 フランが将達を見る


『………………』


 沈黙


「ガルダは浮かんでいるか?」

「申し訳ありません、ゴウルンで時間稼ぎをする事しか浮かびません」

「そうか……ふむ、余の将達は武には優れても、策の方は頼りにならんな」


 くくくっとフランは茶化すように笑いながら言う

 別に怒ってるわけではない、彼女自身も大した策は浮かんでいないのだ

 今回行った策も、皆で長く話し合って漸く行ったのだ


 フランは少し焦っている

 今、ベススには勢いがある

 リールの策を潰したのだ

 このまま攻めてこられたら、一気にリールは崩壊するかもしれない


「フラン様、よろしいでしょうか」

「? どうしたラスター?」


 ラスターが顔を上げる


「私も良い策は浮かびません、ただ1人、良い策を授けてくれる人を知っています」

「ほう? 誰だ?」

「ガーンズの領主、『ユーク·ガーンズ』です」

「貴様!」


 他の将がラスターに掴みかかる


「やめい!」

「!!」


 フランが声を張って止める


「ラスター、ユークはアレキスを裏切った男だぞ? 何故その男を頼る?」


 ラスターはフランの眼を強く見ながら答える


「ユークは私の兄です、アレキスを裏切ったのも理由があるからです……私もアレキスを見限ってリールに来たわけですし」

「そういえばそなたはアレキス出身だったか……ユークが兄だとは初耳だがな」

「聞かれませんでしたので」


 フランはフッと笑う

 メイドに水をグラスに注がせて、再び飲み干す


「それで? どうやってユークから策を授かる? 何の見返りも無しには無理だろう?」

「そうですね、交渉材料に今回手に入れた生き物の首を使わせてください、それと念の為、リールはガーンズを数年は攻めないという盟約を戴ければ確実に」


 他の将がラスターに文句を言おうと騒ぎ出す

 しかし、フランから放たれた殺気で黙らせられる


「ラスター、首は解剖が終わり次第持っていけ、盟約の方は策が上手く行ったら結ぶようにしよう、だから必ず策を授かってくるのだぞ!」

「はっ! 必ず!!」


 こうしてラスターは手土産を持って、ガーンズに向かった



 ···········


 数日後


 ラスターはガーンズに到着していた


「相変わらず、ここは枯れているな」


 目の前にあるガーンズの都を見ながら呟く

 ガーンズは都の中に水場があるが、都の周りには草木も水場も無い


「だから、攻められても長くは攻められないって訳か」


 ラスターは馬を走らせてガーンズの門まで向かう


「止まれ!!」


 外壁の上から兵士に呼び止められる


「何者だ!!」


「リールの将、ラスターだ! 領主のユークに会いに来た!! ラスターが来たと伝えればわかるはずだ!!」

「リールの将! 敵将が入れると思うな」


 兵士は弓を構える


「…………」


 ラスターは剣に手を回す


「? いえ、しかし」


 兵士が誰かに声を掛けられたのか振り返って話している

 少しすると、門が開いた


 ラスターは門をくぐる


「お久しぶりです、叔父上」

「お前か『アート』」

 ラスターを迎えたのは『アート·ガーンズ』

 ユークの息子である


「父上にどのような用で?」

「少し頼みがあってな、手土産も用意してる」


 ラスターは馬から降りて、兵士に馬を任せて、アートと共に城に向かう


「『カーマ』はどうした?」

「アイツなら兵達の訓練をしています」


『カーマ·ガーンズ』ユークのもう1人の子供だ

 ガーンズは領主ユーク、軍師アート、将カーマ

 この3人と約300人の兵士で存在しているのだ


「黒牛部隊はカーマが率いているのか?」

「ええ、数日前もアレキスの軍を蹴散らしましたよ」

「ほぅ」


 そう話している間に、2人は城に到着した


「叔父上、談話室でお待ちを、父上を呼んできます」

「わかった」


 ラスターは談話室に通され、メイドが用意した水を飲む


 数分後


「よく来たなラスター」


 ユーク·ガーンズが談話室にやって来た


「久し振りですね兄上、私がアレキスを出奔した時以来ですかね?」

「そうなるな、人を見る目はお前の方が確かだったな」


 ユークは笑いながら椅子に座る


「……アートは?」

「俺の仕事を任せてきた、お前も()()()()の方が良いだろう?」


 ユークがそう言うと、メイドは2人分の水を机に置くと、談話室から出ていった


「さて、それでどんな策が欲しいんだ? 対ベスス用の策か? それとも他の領を攻めるのか?」


 ユークは水を飲みながらラスターを見る


「ただ話をしに来たとは思わないので?」


 ラスターが聞くと


「たわけ、戦時中の将が私用でここまでくるか。 俺の知恵を借りたいのだろ? 交流は全てを片付けてからだ」

「……やはり兄上には敵いませんな、その通りです、対ベススへの策を求めて来ました」

「手土産はその包みか?」


 ユークはラスターの足下の包みを見る


「はい、これはベススの切り札です、この情報は兄上の大きな助けになるかと」

「見せてみろ」


 ラスターは包みを机に置き、拡げる

 中から竜の首が現れた


「ほう、これはトカゲにしては禍々しいな」

「首だけですが、身体は大きく、人を乗せれる程です、これが何十匹も飛んできました」

「飛ぶ? なる程な……まるで空想物の竜……ドラゴンだったか? それと似ているな……空からの襲撃か、ガーンズとは相性が悪いな」


 ユークは竜の首を触る、鱗を触り、肌を触り、断面を触り、牙に触れる


「斬るなら下から上にってかたちか……ふむ、これなら数ヶ月あれば対策出来そうだな」

「その対策はリールにも共通してくれますか?」

「無理だな、お前達は既に戦争中だ、時間が足りんよ」

「それは残念だ」


 ラスターが水を飲むと、ユークはラスターの前に紙を置いた


「…………」


 ラスターが紙を開く


『カイト·オーシャンを捕らえよ』


「……兄上、2つ聞いて良いです?」

「なんだ?」

「まず1つはこれが策ですか?」

「状況を打開したいのだろ? それが1番効果があるぞ」

「2つ目は、カイト·オーシャンの話を私はしてない筈ですが?」

「俺だぞ?」

「…………」


 ユークの一言でラスターは納得した、昔からユークはこうなのだ


「しかし兄上、これだけでは……」

「手土産がこれだけならこれだけだ」

「……こちらを」


 ラスターは盟約の書状を差し出す


「最初から出せ……なる程な上手く行ったらか、まあ良いだろう」


 ユークはもう1枚紙を取り出した

 ラスターは紙を開く


「……これは……ははは、正気ですか?」

「その通りにやってみろ、必ず成功する」


 そう言ってユークは水を飲み干した


「本当に……恐ろしい人だ」


 ラスターも水を飲み干した






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