第279話 暫しの休息
ーーーカイト視点ーーー
フランが率いるリール軍は撤退していった
ゼルナ達は投石して追撃するが、リール軍は被害を軽微に抑えて撤退した
「くっ! 仕留められなかったか……」
悔しそうなゼルナ
「どうするんだ? 密林に入るか?」
「いや、木が邪魔で仕掛けにくい、それに視界も悪い……悔しいが、俺達も撤退だ……ガンダーに入ろう」
ゼルナの指示で飛竜隊は移動する
しっかりと、戦死した兵士と飛竜の遺体を回収した
········
ガンダーに入る、飛竜から降りると飛竜達は飛んでいった
「飛竜達は何処に行くんだ?」
「ここから東に小島がある、そこに飛竜達を住まわせている」
「呼ぶ時とかどうやってんの?」
「あぁ、飛竜と乗手は何て言うべきか……繋がっていてな、来て欲しいと願ったら来てくれる」
「へぇ〜」
テレパシー的な? 以心伝心?
「それでこれからどうする?」
「モノトール達が来るまで休息だ、来たら彼にガンダーを任せて、俺達はベススに帰還して、姉上の帰還を待つ」
「わかった、じゃあ1時間くらいは自由時間かな?」
「まあ、それくらいだな……言っとくがカイト、1人で行動させないからな? 何かあったらアルスに顔向け出来ない」
「わかってるって」
ゼルナは全員に休息の指示を出す
「えっと……」
レムレはどうするべきか困ってるようだ
俺の側に来る
「レムレ、腹減ってないか?」
「そう言えば少し……」
「よし、何か食おうぜ! ゼルナ! 飯が美味い店教えてくれ!」
「んっ? あぁ良いぞ、俺も少し食うか……ブライアン! 予定が無いならお前も来い! 3人共奢ってやる」
マジかよゼルナ太っ腹!!
そんな訳で、俺達はゼルナおオススメの店に入る
俺とゼルナはメニューを軽く見てから注文する
レムレは知らない料理だらけだからか、ブライアンに聞きながらメニューを選んだ
「それにしても、凄まじかったな戦姫」
俺が呟く
「そうだな、まさか跳んでくるとはな……カイトがいなかったら右腕がやられていたな」
「俺も必死だっただけだからな、無事に済んでよかったよ」
「あの、良いですか?」
「んっ? どうしたレムレ?」
レムレがゼルナを見る
「あの顔を布で隠した敵将は誰なんですか?」
「ターバンを巻いてた奴か? あそこの客が被ってるような」
「そうです、あの布……そのターバン? それを巻いてた将ですけど、戦姫を腕でこう、打ち上げて」
レムレがバレーのレシーブの様な構えをする
「その後、自分の脚だけで跳んでいたんですよ」
「そいつはガルダで間違いないな、戦姫の側近だ」
「レムレさんの矢を掴んで止めてましたね」
ガルダか、確か武力と知力がAの将だな
フランも殆んどのステータスがAだから、両方厄介な将だ
ゲームならこの2人を一緒に行動させてるだけで、かなり戦果をあげるんだよな
「他の2人の将は誰だったんだ? 俺確認できてないんだが」
ゼルナに掴まるのに必死だったな
「鎖で大きな鉄球を繋いだ物を持ってた人と何か髪がツンツンしてた人が居ましたね」
「鉄球の方はデオだな、もうひとりは恐らくラスターだろう」
デオは武力はBくらいの将だな
ラスターは内政がBくらいの将なんだが、武力はDくらいだったはず……
「飛竜の襲撃に完全に対応してましたね」
レムレはそう言うと、ブライアンにテーブルの上の香辛料の事を聞きはじめた
「……そうなんだよな、俺の考えが甘かった、戦姫を討ち取れなくても、敵将の1人くらいはとりたかった……それが結果はあのざまだ」
「あれは正直戦姫が異常なだけだろ?」
俺がフォローする
実際、フランの行動は予想外過ぎた
跳んでくるか普通?
「戦姫がいなかったら、兵の多くは殺すか怪我させるかは出来てたろ」
フランが飛竜を斬ったところで、完全に流れを掴まれたっていうか……
「いや、ガルダも居たから、駄目だったろうな」
ゼルナ? なんか凄く凹んでる
あれ? 俺が感じてるよりも落ち込んでる?
「いやいや、あれはガルダもおかしいって、あんな跳んだり、素手で飛竜殺ったり……あいつ素手だったよな?」
あれ? 飛竜の鱗って硬かったよな?
普通に殴ってたよな?
「俺も詳しくは知らん、昔から戦姫に仕えていたって事くらいか……」
「昔からって子供の頃から?」
「ああ、10年ほど前に父とリールの先代が話し合いをするのについて行った時に会っていてな、その時も隣に居た気がする」
「気がするって、昔の事だから覚えてないのか?」
「いや、昔から顔を隠していたからな……ガルダ本人なのかわからん……そう言ったら今回のもガルダ本人なのかって話になるがな」
顔を隠してるから、誰なのか分からないってことか
「まあ、あんな風に顔を隠しているのはガルダくらいだから、本人だと思うが……」
…………
「てかさ、今更だけど思った事言っていいか?」
「?」
俺が本気のトーンでゼルナに言うと、ゼルナは水を飲みながら俺を見る
「……戦姫の露出多くなかった? あれ鎧の意味あるの?」
「ゴフッ!」
ゼルナが咽る、レムレとブライアンがこっちを見る
「お前、真剣な顔で何を聞いてるんだ! ゴホッゴホッ!」
「いやだって見ただろ? 胸元と腰くらいしか守ってないぞあれ! 何の意味があるんだよ!? 腹隠せよ! 胸元も全体隠せよ! ってならないか!?」
フランの格好はビキニアーマーっていうのか? ブラみたいな胸当てと、パンツみたいな履き物、その履き物にミニスカートみたいな感じで布が付いてた
それだけだ、腕も腹も脚も丸出しだ!
あれ鎧の意味あるのか!?
「はぁ……はぁ……東方じゃ確かにあれは珍しいかもしれないが、南方だとあんなものだ……まあ、普通よりも露出が多いがな」
ゼルナは口元を拭って答える
「そもそも、普通の鎧だと砂漠の熱で焼けるぞ、蒸し焼きになって倒れる、俺達も東方と比べて軽装だろ?」
「それでも、あんなに露出はしてないじゃないか」
「それは戦姫の趣味だろ、知らんよ」
ゼルナはそう言って、店員が持ってきた布巾を受け取り、テーブルを拭く
「言っとくが、姉上の鎧も似たような物だぞ、流石にあそこまで露出は無いがな」
「ナリストもあんな格好するのか!?」
「いちいち驚くな、カイト、昔ベススに来た時に色々見ただろ? ティンクに着せた服は何だった? 食事会の時の余興は何だった?」
「…………あ〜」
そういえばそうだった、ティンクに着せたのはビキニだったし、余興は色々と見えるダンスだった
「南方の文化だ、受け入れろ……受け入れるのが無理なら慣れろ」
「わかった、頑張って受け入れていくよ」
··········
その後、運ばれた食事を楽しみ
レムレがスパイスの辛さに悶絶し
ゼルナは笑いながらミルクを渡したりとかしていた
「君は酒には強いのに辛味には弱いのか?」
「いえこれは辛すぎますよ……」
「慣れれば美味いぞ」
俺は肉を齧る、うん、1から10で言うなら8くらいな辛さだな
食事を終えて、店を出たあと、レムレはブライアンに連れられて飛竜に乗ってどっかに行った
レムレは本当は俺の側に居ようとしてたが、ゼルナが俺を守るから任せろと言って見送っていった
「2人は何処に行ったんだ?」
「飛竜の幼体を見せに行った、丁度ブライアンが餌やりに行くからな、見せたかったんだろう」
「あの2人仲いいもんな」
ちゃんと交友関係が拡がってて、俺は嬉しいよ
ルミルとレムレは2人が幼い頃からの付き合いだからな、ある意味弟や妹みたいなもんだ
「俺達はどうする? まだモノトール達が来るのに時間がかかるだろ?」
「そうだな、20分くらいか? まあ街中を適当に歩いていればすぐだろう、色々と案内してやるよ」
「おっ、嬉しいね……女性が喜ぶお土産とかある?」
「それはわからん、ティンクの好みはお前が知ってるだろ? 店だけなら色々と紹介してやるよ」
「ありがとう親友!」
ゼルナに案内された店で、ティンクへのお土産を買う、香水と花の種だ
香水は以前ティンクとベススに来た時に、ティンクが気に入って物と同じやつ、花の種は東方でも夏なら育てられる南方の花だ
「花か」
「ティンクは園芸が趣味だからな、こういうのも喜んでくれると思ってね」
そう話していたら、兵士がやって来た
「ゼルナ様、モノトール将軍が到着しました!」
「わかった、先に城に向かわせてくれ、俺達もすぐに向かう」
「はっ!!」
こうして、俺達の休息は終わった
城に着いたら、レムレとブライアンも戻って来ていたのだった