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第278話 戦姫 舞う

 ーーーゼルナ視点ーーー


 ガンダーに向かって速度を上げる

 俺にしがみつくカイトの腕に力が入る

 飛竜に慣れてる俺達は平気だが、乗り慣れてないカイトにはこの風圧はキツいのだろうな


「カイト! 悪いがもう少し耐えてくれ!!」


 後ろでカイトが頷いてるのがわかる


 振り返って後方を確認する

 飛竜隊は1人も遅れずについてきている


 時間的にはそろそろか?


 下を覗き込む、地上を見る

 見慣れた色を通り過ぎた

 あれはモノトールの部隊だな

 あの位置なら、モノトール達がガンダーに着くのは4時間後くらいか

 俺達が先にガンダーに辿り着くな



 更に飛び続け、ガンダーを目視する


「攻められてる様子はまだないな……」


 ガンダーの上空で停止する

 ブライアンを呼び、隣に並べさせる


「ブライアン、これから密林に向かう、後はわかってるな?」

「はい! リール軍が密林から出ていたら、襲撃して撹乱し、離脱後に投石! 密林に布陣している時は投石して様子見です!」

「投石? ひょっとしてその袋の中身って」

「石だ、拳くらいのな」


 レムレの問に俺は答える


「普通の石も、こんな高所から落ちてきたら凶器だからな」


 カイトが言う、よくわかってるな


「一応聞くが……レムレ、ここから見えるか?」

「見てみます、ブライアン少しズレてもらっても?」

「はい!」


 ブライアンが身体を右にずらす

 レムレはブライアンの左肩に手をおいて、密林側を見る


「うーん……流石に遠すぎますかね……雲も邪魔ですし………………んっ? あれは……旗?」


 見えるのか?


「色はわかるか?」

「望遠鏡使ってみるか?」


 カイトが望遠鏡を懐から取り出す

 レムレは望遠鏡を受け取る


「望遠鏡、使うの初めてですね……うっ!?」


 レムレが望遠鏡を覗くが、ふらついた、ブライアンがレムレを支える


「大丈夫か?」

「だ、大丈夫です、少しクラッとしただけで……」


 レムレは再び望遠鏡を覗く、その間はブライアンがレムレを支える


「……うぅ、なんか、気持ち悪くなってきますね……あ、でも見えてきました……えっと黒、それに赤い炎の絵ですかね?」

「リール軍だな、密林から出ているか?」

「見た感じだと密林の外で布陣してるみたいです」


 レムレは目をパチパチさせながら望遠鏡をカイトに渡す


「それなら、このまま密林に向かい、空中で散開、2方……いや3方から襲撃しよう」


 俺は飛竜隊を見る


「全員! これよりリール軍に仕掛ける! 訓練を思い出せ! 一度仕掛けたら、すぐに離脱! わかったな!!」

『はっ!!』

「カイト、レムレ、お前達はしっかり掴まってろ、行くぞ!!」


 飛竜の再び走らせる、速度を上げていき、密林に向かい

 リール軍が見えてきたところで散開し、一気に仕掛ける!!



 ················


 ーーーフラン視点ーーー


「……来たな」


 余は空を見上げる

 そこには見覚えのない生き物がこちらに向かってくるのが見えた


「なんだあれは!?」


 ラスターが驚く


「全員、構えろ!!」


『デオ』は巨大な鉄球を振り回す


「……フラン様、私の側に」


 ターバンで顔を隠した将が余の側に来る


「『ガルダ』、余の事は気にするな」


 そして、謎の生き物が襲撃してくる

 ほぅ、生き物の上にはベススの兵が乗っているか、何人かの兵達が殺られたな


「空を飛ぶ馬みたいなものか?」


 馬と違って、あの生き物も襲ってくるか、あの牙に噛まれたらひとたまりもないな


 余の方に1匹向かってくる


「とった!!」


 乗ってるのは、見たところ雑兵だな……がっかりである


 スッ


 先ずは生き物の頭を避ける

 横にズレるだけで簡単に避けれる、そこに雑兵の斧が向かってくる

 このままだと余に斧が刺さるな……まあ、その生き物が生きていたらの話だが


 ドスン!

「ぐわぁぁぁぁ!!」


 生き物が地面に落ち、雑兵が吹っ飛ぶ、ボキッと音が聞こえた……受け身も取れぬとは愚か者だな


「むっ、飛んでいくか」


 他の者達が空に向かう

 このまま戦い続けるわけではないか……見たところ、被害を受けたのは兵と物資か

 将達は対応出来たようで無傷だ

 流石、余の将だ


「さてと、恐らくあの1番デカいのに、指揮官が乗っているな」

「フラン様」

「うむ、ガルダ、手を借りるぞ」


 少し、挨拶してやるか


 ················


 ーーーカイト視点ーーー


「くっ、1人殺られたか」


 ゼルナが呟く


「あれが、戦姫か?」


 俺が聞く


「ああ、飛竜を初めてみて、あの落ち着き様……恐ろしいやつだな」


 俺は見た、飛竜の噛みつきを避けると同時に、戦姫……フランは飛竜の首を斬り落とした

 首の下から上に剣を振り、飛竜の首を飛ばしたのだ


「この高さなら大丈夫か、投石を仕掛けるか」


 ゼルナは袋を取り出す


「……っ!」


 なんだ? なんか嫌な感じがする、なんっていうか……これは何度か感じた事がある

 死の予感


「ゼルナ! もっと上に行くんだ!! ここじゃ駄目だ!」

「カイト? どうしうぉ!!?」


 俺達の乗ってる飛竜が突然動いた

 ゼルナが体勢を崩した


「ほう、砂豹(さひょう)が乗っていたか」

「戦姫!?」


 俺達の目の前にフランが現れた、いや俺達より少し高い位置にいる

 コイツ、跳んできたのか!?

 ヤバい、剣を振り上げてる! あれか、跳んで来る時に飛竜の首を斬ろうとして斬り上げたな! 

 飛竜が突然動いたのは、フランの剣を避けたからか!

 そして、今度はゼルナに向けて振り下ろそうとしてる!


「その首をもらおう!」

「っ!?」


 フランが剣を振り下ろす

 このままだとゼルナが斬られる!


「させるかぁぁぁぁ!!」


 ゼルナにしがみついていた俺は、全力でゼルナを引っ張る


「むっ!?」


 ヒュンと剣が風を斬る音が聞こえた

 フランの剣は空振ったのだ


「助かったカイト!! うおおおおお!!」


 ゼルナは長斧を左から右に振るう


 ガキィン!!


「くっ!」


 フランはゼルナの長斧を剣で受ける

 ここが地上なら鍔迫り合いでも始まるだろうが、ここは空中だ

 フランは勢いを殺せずに吹っ飛び、落ちていった


「はぁ、はぁ、全員高度を上げろ!! 今すぐだ!!」


 ゼルナが叫ぶ、皆が高度を上げるが……1人だけ、リール軍に向かって突っ込んでいく


「おい! 止まれ!!」


 ゼルナの静止を聞かずに突っ込んでいく1人、兵士の様だ


「何で突っ込むんだあいつ!?」


 俺が言うと……


「ちっ、アイツはさっき殺られた兵の兄だ、仇討ちだろうな!」


 既に、兵士と距離が離れている、もう止められない

 諦めるしかない


「ゼルナ様、任せてください!」

「ああ、任せたぞブライアン」


 ブライアンが兵を追う


「ちょ!? 間に合うのか!?」

「カイト、ブライアンは以前とは比べられないくらい成長したぞ、見てろ」


 ゼルナはそう言って微笑んだ


 ············


 ーーーフラン視点ーーー


「ふむ、砂豹を仕留めたかったが……邪魔が入ったな」


 しかし、あの男、何者だ?

 水色の髪で、優男って印象だが

 ゼルナを庇った咄嗟の行動力


「今まで見たことない印象だな、少し欲しくなってきたぞ」


 さて、余は現在落下中だが、どう着地するか……

 あの生き物を斬って、落下の時に乗って落下時の衝撃を何とかしようと思ったのだがなぁ


「むっ? 1匹突っ込んでくるか」

「戦姫ぃぃぃぃぃ!!」


 ふむ、空中なら避けようが無いな

 だが、もっと高い時に来るべきだったな


「フラン様、ご無事で?」

「うむ、余は無事だ、仕留めろ」

「お任せを」


 下から跳んできた憂い奴が生き物に向かう

 そして


「はぁ!!」


 憂い奴の拳が生き物の顎にめり込む、首をさらけ出す生き物に憂い奴が蹴りを叩き込む


 ゴキャ!


 骨の折れる音

 生き物の目から光が消えた


「う、うわぁぁぁぁ!!」


 乗ってた雑兵が吹っ飛ぶ、そのまま落下して死ぬだろうな


「フラン様、着地しますよ」

「うむ、任せたぞガルダ」


 憂い奴、ガルダは生き物を蹴って、余を抱きしめ、着地した


 さてと、奴等が仕掛けてきたという事は、マードルードは敗れて、コルールを取り戻されたと見るべきか

 このままガンダーに向かっても無駄になりそうだ


 まあ、得るものはあったな


 余は、ガルダの腕から降りて、先程斬り飛ばした生き物の首を持つ


「私が運びます」

「そうか、なら任せよう」


 そして余は号令をかける


「全軍撤退! 帰るぞ!!」


 そう言って帰ろうとした時に、ガルダの左手を見る


「ところでガルダ、その矢は何だ?」

「空中で射掛けられました、腕の良いのが居ますね」

「ほぅ」


 空を見ると、先程の雑兵が他の者に助けられているのが見えた


「面白くなりそうだな」





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