第277話 駆け抜けろ! 飛竜!
ーーーカイト視点ーーー
「オラオラオラ!!」
「シャルス、あまり無理するなよ〜!」
俺はシャルスが引く荷車に必死に掴まりながら叫ぶ
今、俺達はベススに向かっている
馬で行こうとしたら
『オイラが運んだ方が速い!』
っと、シャルスが荷車を運んできた
その荷車に俺とゼルナ、レムレが乗っている
ライアンはそんな俺達の隣に赤兎馬、ボブルスに乗って並走している
「ゼルナ、ベススに着いたらすぐに向かうんだろ?」
「あぁ、飛竜隊を連れてリール軍に挑む、レムレにも協力してもらうぞ、君の弓の腕は頼もしいからな」
「任せてください!」
「俺と大将は?」
ライアンが聞いてくる
「俺とライアンはベススで待機、シャルスはモノトールと合流して、ガンダーで待機」
「俺とレムレは飛竜隊でリール軍に襲撃する」
「飛竜隊……ブライアンが乗っていたのですよね? 何匹いるんですか?」
「俺の飛竜を含めて50だ、数を増やすのに時間がかかる」
ゼルナの話を聞きながら、俺は初めて飛竜を見たときを思い出す
「あの時も何匹か居たが……あの飛竜達の子供とかなのか?」
「ああ、飛竜の番を何組か作って、産まれた飛竜を育てて数を増やしている」
なる程な、なら数年後には数百匹は居そうだな
「食料とか大丈夫なのか? なんか大量に食いそうな気がするんだが……」
「それなら問題ない、飛竜は雑食だからな、野菜や果物、肉に魚に海藻、何でも食えるから飢えさせることはない、」
「数が増えたら?」
「その時の為に色々と準備はしている、畑や牧場も増やしている、食料の消費が増えるなら、生産も増やすさ」
そりゃそうか、何も対策もせずにポンポン飛竜を増やすなんてことはしないか
「……飛竜が襲ってきたりはしないんですか?」
レムレが聞く
「それも問題ない、飛竜は仲間と認識したものは襲わない」
「……敵と認識されたら襲うって事ですか!?」
「そうなるが、少なくとも人間と種族で一括りにはしない、飛竜は賢い奴等だ、此方が襲わない限り、敵とは認識しない……それに祖であるアイツが許さないからな」
「アイツ?」
レムレが首を傾げる
アイツってバイアスの事だよな?
とても大きな竜だった
てか祖って……
「飛竜ってバイアスの子供なのか?」
「ああ、バイアスの子供……というより子孫だな」
子孫かぁ……その子孫が戦で戦うのって竜的にどんな気分なんだろうか……
あっ、レムレが?マーク浮かべまくってる
「ゼルナ、リール軍を追い返したらうちの将達に飛竜の事を詳しく話していいか?」
「構わない、もともと機会を見つけて話すつもりだったからな」
「ってな訳で、レムレ、リール軍を追い返して、アルス達と合流したら詳しく事情を話すから、今は戦いの方に集中してくれ」
「わ、わかりました!」
···········
そう話しているうちにベススに到着した
……本当に速かったな
「ゼルナ様!」
ブライアンが荷車から降りるゼルナに駆け寄る
「皆は?」
「上空で待機しています!」
「よし、なら行こう」
ゼルナが指を口に当て、ピイイイイイっと指笛を鳴らす
すると、上空から飛竜が降りてきた
ブライアンの飛竜より一回り、いやニ回りは大きな飛竜だ
ゼルナが慣れた様子で飛竜に乗る
そして、レムレを手招きして、飛竜に乗せようと手を貸して……
「ゼルナ、あんたの竜にはカイトを乗せな!」
『!?』
全員が声を掛けてきた人を見る
そこには美女が居た、色々と大きな褐色肌の美女だ
镸い黒髪を揺らしながら美女がゼルナの近くまで歩く
「バイアス、どういう事だ? 何故カイトを乗せる必要がある?」
「えっ? バイアス? えっ? はぁ? はぁぁぁぁぁぁ!?」
今、俺の頭上には、?マークと!マークが飛び回ってるだろう
だってあの竜が美女の姿になってるんだぞ!?
「あんた人の姿になれるのかよ!?」
「久し振りにあって言うことがそれか?」
「あっ、お久しぶりです、元気そうでなによりで……」
って、俺は何律儀に挨拶してんだよ!!
「長く生きてるんだ、人の姿にくらいなれる」
何当たり前の事聞いてんだ?って表情だ
「ゼルナは知ってたのか!?」
「? 知ってるが? 言ってなかったか?」
「初耳だ!!」
「カイト様、落ち着いてください」
レムレが俺を抑える
ライアンとシャルスが俺とバイアスの間に立つ
「話を戻すか」
ゼルナがバイアスを見る
「何故カイトを乗せる必要がある? これから行くのは戦場だ、カイトを危険な目にあわせる気か?」
ハッキリと俺が弱いとは言わないゼルナの優しさ
「ゼルナ、カイトは弱いが、連れて行ったほうが良い、それがあんたの助けになる」
コイツは優しくない
てか俺が助けになる?
どういう事だ?
「…………」
「…………」
黙り込むゼルナとバイアス
俺は両方の顔を交互に見る
「はぁ……わかった、お前が言うなら何かあるんだろうな……レムレ、すまないがブライアンの飛竜に乗ってくれ」
「わ、わかりました!」
レムレはブライアンの飛竜に乗る
「カイト、理由はわからんがお前が必要らしい……必ず守るから、俺と一緒に来てくれ」
「……わかった」
俺も理由は全然わからないが、ゼルナとバイアスの仲だ、ふざけて言ってる訳じゃないだろう
「大将が行くなら俺も行くぜ!」
ライアンが言う
「ライアン、すまないが3人以上乗せれない、安全を保証できない」
「なっ!?」
「ライアン、飛竜は速くて最悪落ちる可能性がある、悪いがシャルスと一緒に行動してくれ、」
「大丈夫なのか大将」
ライアンは不満そうだ
「大丈夫だ、ゼルナが守ってくれるし……それに危なくなったら、お前は駆けつけてくれるだろ?」
「ああ! 必ず助けに行く!」
「だったら安心だ!」
俺はゼルナの手を借りて飛竜に乗る
「ライアン、シャルス! モノトールと合流して彼の指示に従ってくれ!」
『はっ!』
「あとバイアス! 戻ったら色々と説明して貰うからな!」
「俺も気になるな」
俺とゼルナはバイアスを見る
何で俺が必要なのか
てか何でここに居るのか
納得できる理由があるんだろうな!!
バイアスはやれやれって顔で手を振る
「カイト、掴まってろ」
俺はゼルナにしがみつく、レムレもブライアンにしがみつく
2匹の飛竜が空を飛ぶ
あっという間に雲の上に到達した
そこには多くの飛竜が飛んでいた、飛竜の上にはベススの兵士
これが飛竜部隊か……
「飛竜部隊の諸君! すでにブライアンから聞いてると思うが、これからリール軍を襲撃する! 敵軍の中には戦姫もいる! 戦姫を討ち取ればリールとの戦は終わりだ! 行くぞ!!」
『うおおおおおおおおおお!!』
士気高いなぁ…
殺る気も高いなぁ
「飛竜部隊、出撃!!」
ゼルナがそう叫ぶと、飛竜が凄い速度で空を駆け出した
風圧が凄い! ゼルナ達は何で平気なんだ!?
しっかり掴まってないと落ちる!!
速くガンダーに到着してくれ!!
俺はそう願いながら、ゼルナにしがみつくのだった