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第27話 立食パーティー、民への挨拶

「ふぅ……」


 客人の挨拶も終えて俺は玉座に力無く座る

 いやー座ってるだけでも疲れるわ



「お疲れ様です、カイト様」

「次は庭園で立食パーティーだったな?」

「はい、少し時間がありますので休憩されては?」

「そうさせてもらう」


 俺は部屋に戻る



 ・・・・・・・


「あ、カイトさん」

「…………」


 部屋にはティンクが居た……ずっとここに居たのか?

 いや……それよりも


「似合ってるな、そのドレス」

「そ、そうですか?」


 ティンクは青を基準としたドレスを着ていた

 これから立食パーティーだからおめかしだな


「ドレスなんて……初めて着ました」

「……そうか、これからは色々着れるぞ?」


 俺はティンクの側に寄る


「お、おかしくないですよね?」

「さっきも似合ってるって言ったろ?可愛いよ」

「あぅ……」


 ティンクは顔を赤くする


「これから庭園で立食パーティーだ、そこで皆に君を紹介するよ」

「は、はい……えっと、カイトさんの顔に泥を塗らないように気を付けます!」

「そんなに気を張らなくていいからな?」


 意識した方が失敗するんだぞ?



 ・・・・・・・


 さて、メイドに時間を知らされて俺とティンクは庭園に向かう



「お、皆居るな」

「…………」


 ティンク、震えてるな


「……それ!」

「ひゃん!?」


 ティンクの脇をくすぐる


「な、なにするんですか!?こ、こういうのはその……二人っきりの時に……あの……」

「緊張は吹っ飛んだか?」

「あ……はい!」


 俺はティンクと手を繋いで庭園に出た



「おっ!皆さん!カイト様のご到着です!」


 レリスの案内


「御二人ともこちらに」

 ヤンユに案内され、皆の前に立たされる


『………………』


 全員が俺達に注目する


「……コホン!あ~そうだな……新年の挨拶の前に皆に紹介したい!!私、カイト・オーシャンの妻になる……」

 俺はティンクの背中をポンと叩いて合図する


「初めまして……ティンクと申します!不束者ですが……カイト様のつ、妻として……さ、支えていきたいと思います!」


 少しどもったがまあいいか


「彼女はメルセデス・ヤークレンの娘だ!私と彼女の婚姻は両国の同盟の証でもある!」


 ティンクの出自を明らかにして

 この婚姻がオーシャンにとってどういう事か説明する

 ……まあヤークレンとの同盟は最終的には破るつもりだけどな


「取り敢えず今日は紹介だけさせてもらった、正式な式は後日行う!」


 俺はヤンユから水の入ったグラスを受け取る

 怪我人だからな?酒は飲めないんだ


 ティンクも水を受け取る


 ……さて、全員がグラスを持ってるな


「よし、では新年の挨拶だが……うん、さっきも玉座でしたからもういいだろ?今年もよろしく頼む!!乾杯!!」


『乾杯!!』


 挨拶が面倒になった訳じゃないぞ?

 あまり長くなるとダルいだろ?

 校長の話とか、社長の話とか

 だから簡潔に済ませたんだ



 ・・・・・・


 さて、並んだ大量の料理を見る


 サンドイッチにスープにサラダにステーキ

 豚の丸焼きに牛の丸焼き!?こんなんまで用意したのか?


「と、取りましょうか?」


 ティンクが俺に聞く


「いや、大丈夫だ……ティンクも好きなの食べていいんだぞ?」

「は、はい!」


 さて……そろそろかな


「カイトお兄様!!」

「兄さん!!」


 ミルムとアルスが駆けてきた

 そして……


『妻ってどういうこと!?』


 同時に言われた


「先ずは挨拶からだろ?」


 俺がそう言うと


「あ、兄さん今年もよろしく!」

「お願いしますお兄様!」

「あぁ、よろしく」


 さてと……


「どういうことも何もそのままだぞ?俺は彼女を妻として迎える」

「なんで!?」

 アルスが言う


「色々あってな」

「私聞いてません!!」

 ミルムが言う

「まあ言ってなかったからな」


「あ、あの……」


 ティンクが話し掛ける


「は、初めまして、ティンクと申します」


「初めまして!」

「初めまして……」


「えっと……その……いきなりでごめんなさい……カイトさんを責めないでください……悪いのは」

「ティンク、選んだのは俺だ。誰にも否定させないぞ?」


 俺はティンクの頭を撫でる


「兄さんが選んだの?」


 アルスが俺を見る


「ああ、俺が選んだ」

「…………」


 アルスは不満そうな表情だ……しかし


「それなら……いいよ」

 そう言って歩いて行った…………後で話し合うかな


「じゃあ、ティンクちゃんはお義姉様なの?」

「ああ、そうなるな」


 俺は肯定する


「そうなんだ……えい!」

「きゃ!」


 ミルムがティンクに抱きつく


「お義姉様!一緒に食べよ!」

「えっ?あの?ええ??」


 ティンクがミルムに連れていかれた……


「大丈夫なのか?」


 俺はそれを見送った



 ・・・・・・・


「カイト様、新年おめでとうございます……それとご結婚もおめでとうございます」

「んっ?……ああ、レーメルか、ありがとう」


 俺は話し掛けてきた女性を見る

 彼女はレーメル……ルーツの妹だ


 彼女も城で働いている

 彼女の仕事は税金の管理などだ……

 何故兵として働いてないのかと言うと……


「レーメル!久し振りだな!具合は悪くないか?何か問題は起きてないか?困ったことがあったらお兄ちゃんに話してくれよ?」

「……今、兄さんに絡まれて困ってます」


 ルーツが兵になるのを反対したからだ……

 まあ彼女も兵よりは内政の方が向いているだろうから良いんだけどな


「それではカイト様、失礼致します……ほら兄さん、あっちに行きますよ」

「いたたたた!!耳!耳を引っ張らないでくれ!?」


 …………レーメルの方が強いな



 ・・・・・・


 その後も皆が結婚を祝ってくる

 何人かはミルムと一緒のティンクに挨拶していた


 ……顔を覚えてもらおうとしてるな?

 まあティンクは慣れてないからそんな余裕無いみたいだが……そろそろ呼ぶかな?


「んっ?」


 隅の方でルミルとレムレがしゃがんでいた



「?」


 俺は2人に近寄る


「何をしているんだ?」


「ひゃ!?カ、カイトしゃま!?」

 レムレが噛む


「えっと……なんか偉い人が多いので粗相をしないようにはしっこにいます!」


 ルミルが答える


「なんだ、そんなの気にする必要はないんだぞ?この立食パーティーは無礼講だ、ほら、メイド達も料理を食べたりしてるだろ?」


 使用人も参加者だぞ?



「そ、そうですけど……もし服を汚したりしちゃったら……」

「私達じゃ弁償できないですし……」


「ふむ、もしそんな事になったら俺が代わりに出そう」

「ふぇ!?そ、そんなの駄目ですよ!?」


 レムレが目を丸くする


「何故だ?」

「だ、だって国のお金ですし、ぼ、僕達の失敗ですし……」

「……言っておくが俺は俺で金を持ってるからな?」


 使うことが無いから貯まる一方だが


「それに部下の失敗は俺の失敗だ、気にするな」

「う、うぅ……」

「本当に大丈夫ですか?」


 不安そうなレムレと聞いてくるルミル


「あぁ、思いっきり食ってこい!」

「は、はい!」

「行ってきます!!」


 2人は料理を食べに行った


「やれやれ……」


「カイト様、そろそろ時間です」


 レリスがやって来た


「そうか、ならティンクも連れて行かないとな」


 俺はティンクに向かう


「ティンク、そろそろ民への紹介だ、一緒に来てくれ」

「あ、はい!!」


 ティンクはほっとした表情で俺に駆け寄る


「疲れたか?」

「だ、大丈夫です」


 いや疲れてるみたいだが?


「よっ!」

「ひゃあ!?」


 俺はティンクを持ち上げる

 お姫様抱っこだ


「さて行くぞ~」

「あ、は、はひぃ……」


 ・・・・・・・・



 階段を登り、城門の上に立つ

 ティンクを隣に下ろして、俺は下を見る


『ざわざわ』


 お、集まってる集まってる

 へぇ、街の中では屋台とか出てるのか……何の店かは遠くてわからないが……来年は街に出るのもありだな


「さてと……ティンクも何か言うか?」

「む、無理です……」


 緊張してるのか震えるティンク


「そうか……手、繋ぐ?」

「はい……」


 俺はティンクと手を繋ぐ



「あー……そろそろ良いかな?」


 民達が俺達に気付いて見上げてくる

 注目が集まる


「よし……あーあー……うん!」


 俺は息を吸う


「諸君!!新年おめでとう!!」


 俺は叫ぶ


「おめでとうございます!」

「カイト様ぁぁぁぁ!!」

「隣の人は誰ですかぁぁぁ!!?」



 そんな声が聞こえてきた


「先ずは彼女を紹介しよう!!彼女はティンク!私の嫁になる女性だ!!」


 ティンクがお辞儀する


「おー!!」

「ご結婚ですか!!?」

「おめでとうございまーす!!」


 よし、祝福されてるな


 ・・・・・・・


 民への挨拶を終えて俺達は庭園に戻る



「ふぅ……流石に疲れたかな」


 俺は椅子に座る


「あ、お水を飲みますか?」


 ティンクが水を持ってくる


「ありがとう」


 俺は水を受け取り、飲み干す……あー生き返る……


「これで本日の業務は終了ですので……休まれたらどうですか?」


 レリスが提案する


「そうだな……そうさせてもらうか」

 俺は立ち上がる


「わ、わたしもついていきます!」

「んっ?料理はもういいのか?」

「はい!」


 ティンクは元気よく答えた



 ・・・・・・・・


 部屋に戻って服を着替える

 この礼装、肩がこるんだよな……


 着替えを終えてベッドに入ると、ドレスを脱いだティンクが一緒に入る


 こうして新年を迎えた最初の仕事を終えたのだった……


















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