第274話 コルール解放戦 3
ーーーカイト視点ーーー
アルス達を見送った俺は、本陣で暇をしていた
「…………」
何か手伝おうとしても、遠慮され、ロンドベルトに幕の中で大人しくしてろと怒られた
「っても暇すぎる!!」
いつもだったら俺が総大将で責任者だったから、色々調べたり、指示を出したり、報告を聞いたりと忙しいのが……
今の俺はただの援軍のおまけ……正直居ても居なくても良い存在……
「コルール取り戻したら帰ろっかな……」
元々は、内乱でナリストとゼルナが心配だったから来ただけだし
内乱が片付いたなら俺が居る意味無いんだよなぁ……
「はぁ……」
俺は幕に用意されてた簡易ベッドに横になり、不貞寝する
目が覚めたら、外が暗くなっていた
「あっ、結構寝ちまった……アルス達はどうなった?」
俺は幕から出る
本陣の様子は落ち着いたままだった
「特に進展はなしか?」
コルールの様子でも見てみるか?
幕に戻って、望遠鏡を荷物から取り出す
ここらへんから見えるか、わからないが試して損はしない
「本陣からあまり離れないようにしないとな……」
俺は兵士達に声をかけてから、移動する
兵士達がついて来ようとしたが、訓練してるみたいだし、そんなに離れないからと断った
「本陣から出てすぐに敵に襲われるとかはないだろうしな」
そんな事があったら、見張りや警戒してる兵達は何を見ていたんだって話になるからな
………………………
本陣を出て、コルールの都を望遠鏡で見てみる
松明を持った兵士が見える
「まだ、何も起きてない感じか?」
アルス達は無事にコルールに入れたのか?
「なぁにやってんだぁ?」
「コルールの様子を見てた」
チップスがやって来た
「持ち場を離れて大丈夫なのか?」
「カイトを1人にする方が問題だぁ」
「本陣からそんなに離れてないだろ?」
後ろを見れば本陣がある
走れば1分以内に駆け込める程度の距離だ
「それでもだぁ、砂漠は敵だけ警戒すればいいってもんじゃないだよぉ」
「そんなのか?」
「そうだぁ、そこの赤いサソリなんか毒持ちだぁ」
そう言ってチップスは俺を持ち上げる
そして、俺の足下に居たサソリを蹴り飛ばした
「そうか、すまない、少し砂漠を甘く見てた」
「これから覚えていけばいいんだぁ」
チップスが俺を降ろす
「んっ? 今、松明が揺れたか?」
降ろされた時、コルールの灯りが揺れたように見えた
「そうかぁ?」
「気の所為……じゃないな、消えた」
遠くに見えてた灯りが1つ消えた
望遠鏡で覗いてみる
丁度、人影が松明を点けた
シャルスだ
「おっ、どうやらアルス達はコルールに入れたみたいだな」
「見えるだかぁ?」
チップスに望遠鏡を渡す
チップスが覗く
「おお、カイトの所の奴だなぁ」
チップスが望遠鏡を俺に返す
「しかし、シャルス1人か?」
俺は再び、望遠鏡を覗く
シャルスが胸壁に座っていた
少しすると、シャルスが視線を動かした
俺もシャルスが向いた方に望遠鏡を動かす、アルスとライアンがやって来た
「良かった、どうやらアルス達も無事みたいだな」
全員上手く進入出来たようだ
何か話してるな……アルスは剣を掲げて何してるんだ?
おっ、ライアンが望遠鏡でこっち見てる
うおっ!? アルスの剣から火花が散ったぞ!?
「何だ何だ!?」
「どうしたぁ?」
「いや、俺もよくわからん……」
望遠鏡を覗く
アルスが望遠鏡でこっちを見ている
そして、いつの間にか持っていた松明を振ってきた
「チップス、その松明貸して」
「んん~?」
チップスから松明を借りて振る
アルスが松明をライアンに渡して、手招きした
あ、なる程な
「チップス、どうやらアルス達はやる事全部やったみたいだぞ」
「全部? 進入とライガン達の救出だよなぁ? 全部だか?」
「ああ、こっちに手招きしてるって事は、外壁の門を開けるから、突入しろって事だろ」
「よし、ならすぐに動くだよぉ!」
「よし! 俺も一緒に!」
「カイトは留守番だぁ! 約束だろぅ?」
「……だよなぁ」
本陣に戻って、ロンドベルトに状況を伝える
半信半疑だったロンドベルトだが、チップスの説得で動き出した
ロンドベルトとチップスが兵を連れて本陣を出た
俺はオーシャンの兵士と、残りのベススの兵や将と留守番だ……
············
ーーーマードルード視点ーーー
「……っ!」
目を覚ます
眠っていたが、違和感を感じた
「……静かすぎる」
城内を警備してる兵の足音が聞こえない
いや、微かに聞こえるが、いつもより少ない
急いで鎧に着替える
部屋を出て、廊下を歩く
「…………やはりおかしい」
兵士とすれ違わない
「っ!!」
嫌な予感がする、すぐに地下牢に向かう
「マードルード将軍!? どうなさいました!?」
道中で2人の兵士と会う
「お前達、他の兵を見たか?」
「えっ? そういえば……」
「見てませんね……」
「……お前達は警鐘を鳴らしにいけ」
「えっ?」
「侵入者だ!! 走れ!!」
『は、はい!!』
気の所為なら気の所為で良かったのだが……
地下牢に辿りつく、見張りの兵が居ない
階段を駆け下りて、中に入る
「やはりか……」
牢の中にライガンの姿は無かった、捕虜の姿も無い
代わりに、見張りの兵の死体が入っていた
「ちっ! いつ、何処から侵入してきた!」
裏切り者という考えも浮かんだが、それならもっと早く事を起こすはずだ
「どれだけ時間が経った……奴等はまだコルールに居るのか?」
地下牢から出る
カンカンカン!っと警鐘が鳴り響く
「とにかく外壁の様子を……ええい! 時間が惜しい!!」
道中を走りながら、会う兵士達に指示を出す
そして、外壁の上に出ると……
「なっ!? 門が開いてる!?」
左手側の門が開いてる
あっちにはベススの軍が……
「やられた!」
侵入者の目的はライガンの救出だけじゃない!
コルールの解放も目的だったか!
「どうする、今から門を閉めに行けるか? 間に合うか?」
いや、侵入者が何者か、何人居るかもわからない
それに、容易くここまで事を進めたんだ、俺1人が向かったところでどうにもならないかもしれない
「…………ちぃ、外壁の兵は全滅したか!」
姿が一切見えない!!
「まだ、ベスス軍は来てないみたいだな!」
俺は外壁を飛び降りる
「マードルード将軍!? えっ!? 今飛び降り!?」
下には門を守っていた兵士達が居た、こいつらは無事だったみたいだな
「貴様ら! 今すぐ門を開け!!」
「はい!?」
門を守っていた兵士達が驚く
「見えないか! 反対側の門が開かれている!」
「えっ? ここからじゃ見えませんが……」
確かに、下からだと建物が邪魔をして、門が見えない
「外壁の上からなら見えた!」
こいつらを責める訳にはいかんな
「今すぐ門を開き、ヤンマ達の陣に向かえ!」
「マードルード将軍は!?」
「俺は他の兵士達に指示を出してから向かう! 急げ!」
俺は走る、道中の兵士達に同じ指示を出し、他の兵に伝えるように伝えた
そして、牧舎に向かい、馬に跨がる
コルールは捨てる!
ここまでされたのなら、もう守るのは無理だ!
「その前に、一目見させてもらおうか!!」
侵入者の姿をな!!