第273話 コルール解放戦 2
ーーーゼルナ視点ーーー
牢の鍵は、予想通りの場所に仕舞われていた
「これで、鍵を開けれるな……んっ?」
近くには数本の剣が置かれていた
恐らく、見張り用の装備だろう
「これも持っていくか……」
ライガンや兵達は丸腰だ、彼等も戦う為に武器は必要だ
鍵と剣を持って、レムレと合流する
ライガンと話していたのか、人差し指を唇に当てて、静かにするように合図していた
「レムレ、ライガンは無事か?」
「ゼルナ様、見たところ大きな怪我は無さそうです」
「ぜっ!? …………」
ライガンが俺を見て叫びそうになり、すぐに口を閉じてこらえた
「久し振りだなライガン、今開ける」
俺は牢の鍵を開ける、周りを見渡すと、兵士達も他の牢に囚われてるのがわかる
「レムレ、俺はライガンに状況を説明する、君はこの鍵で他の牢を開けてくれ」
「わかりました」
レムレに鍵と剣を渡す
ライガンの牢に入り、彼の拘束を外す
「ゼルナ様、何故ここに?」
「救出班の案内をする為にな、それにお前の無事を確かめたかった」
拘束を外しながら、腕や足の状態を確認する
折れてる様子は無さそうだ
「動けるか?」
「はい、問題ありません」
ライガンは多少ふらつきながら、立ち上がる
その間に状況を簡単に説明した
「ライガン、俺達はこのままコルールを解放する、お前はどうする? 一緒に戦うか? 先に脱出するか?」
「勿論、戦います」
ライガンは俺から剣を受け取る
「無茶はするなよ?」
「この程度、無茶の内に入りませんよ」
ライガンは微笑むが、痩せ我慢してるのは見え見えだ
「ゼルナ様、兵の解放完了しました」
レムレが牢の前に戻って報告してきた
彼の後ろには、解放されて手足を伸ばしながら集合する兵達の姿があった
俺とライガンは牢を出る
「諸君、これからコルールを解放する、先ずは何をするかわかるか?」
俺が聞いてみる
兵の1人が手を挙げる
「このまま、敵将を捕らえに向かうのですね?」
兵がそう言う
「いいや、違う」
俺はそれを否定する
本来ならその考えは正しいが、ライガンや兵達は解放されたばかりで弱っている
それに、敵将がどれだけの兵力を街や城に残しているかわからない
その状態で捕らえに向かっても、失敗する可能性が高い
「先ずは城を出て、外壁に向かう、すでに先行してる者達が居るから、彼等と合流して、門を開く」
そう言って俺はライガンを見る
「そして、外に布陣してる軍をコルールに突入させる……そういう事ですか?」
「そういう事だ」
こうして、ライガンと兵達に次の行動はどうするか、理解させる
「さて、早速行動にうつりたいが……1つ確認させてもらおう、捕われてる者達はこれで、全員か?」
見たところ、30人ほどだが……念の為だ
兵達がお互いに話して、確認している
「間違いありません、全員です」
1人が代表として答えた
「そうか、数ヶ所に分けて捕らえてると思っていたが、嬉しい誤算だ……レムレ、確認するがもう敵兵は始末しても問題ないか?」
「そうですね、死体が見つかって騒がれても、敵が集まる前に脱出出来ると思います、それに……この人数だと隠れる方が難しいですね」
それはそうだな
「でも、出来る限り静かに移動するべきです、敵の不意をつきたいですから……1番は敵に見つからずに外の軍を呼び込んで、夜襲を成功させることですね」
「敵に見つかって、騒がれた場合は?」
「急いで脱出して、アルス様達と合流、外の軍を呼び込んでからの反撃ですね。」
結局は見つかっても、チップスやロンドベルト達をコルールに入れられれば、俺達の勝ちということだな
「よし、では行動に移ろう、レムレ、済まないが先頭を頼む」
「はい、ユリウスとも合流しましょう」
こうして、俺達は移動を開始した
············
ーーーアルス視点ーーー
レムレ達と分かれて、僕達は外壁に向かっていた
「ここは、城と外壁が直接繋がってるんだな」
ゼルナに言われた場所に向かうと、外壁の屋上部に出られた
太い道が左右に分かれている
恐らく、反対側も同じ作りで、このまま門の方まで行けるようになってるんだろう
「オーシャンとは違う造りだな」
ライアンが言う
因みにシャルスは反対側だ
「オーシャンは都を囲うように造ってるからね……これはこれで、兵の交代や備品の輸送とか考えて、こんな造りにしてるんだろうね」
城内から直接物資を運んだりするんだろう
「それで? このあとどうする?」
「右に行って、門の周りの兵を無力化する、その後、レムレの合図を待ってから門を開く」
「じゃあ、もう隠れずに敵を殺していっていいんだな?」
「ああ、死体は外壁の外側に落としてくれ、少しでも発見を遅れされる」
隠れる場所が無いから、もう敵を始末するしかない
僕とライアンは走り出した
「誰だがぁっ!?」
走る僕達に気付いた敵兵が叫ぶ、まあ言い終わる前にライアンの槍で貫かれて、外に落とされた
その敵兵の近くに居た、別の兵が騒ぐ前に、僕が刀で斬り捨てた
「二人一組で配置されてるみたいだね、都合がいいや」
斬り捨てた敵兵を外に落として、僕は呟く
「さっさと終わらせようぜ」
ライアンはそう言って走る
僕も走る
二組目、三組目
四組目、五組目
門が見えてきた
「んっ?」
「あっ?」
「2人共遅いぞ? もうオイラが始末したぞ?」
シャルスが胸壁に座って待っていた
「反対側は終わったのか?」
「数分前にね、こっちに来ても2人が居ないから、退屈だった」
「お前が早すぎるんだからな?」
僕はそう言って周りを見回す
うん、誰もいない
「じゃあ、僕はレムレへの合図をしておくから……ライアン」
「んっ?」
僕は望遠鏡をライアンに渡す
「それで本陣の方を覗いてみてよ、多分兄さんの事だから、望遠鏡でこっちの様子を見てる筈だから」
本陣で大人しくしてる人じゃないからね
「なんだ? 普通総大将ってのは本陣で待機するもんだろ?」
ライアンはそう言って望遠鏡を覗いて……
「マジかよ大将、何で本陣から離れてんだよ、あっ? 隣にデケえのが居るな……誰だったか……」
「チップス?」
「ああ、確かそんな名前だったな」
兄さんはチップスと一緒に望遠鏡でこっちの様子を探ってるみたいだ
ライアンが兄さんに気付いたのなら、兄さんも僕達に気付いた筈だ
キィン!!
僕が掲げていた剣に何かがぶつかり、火花が散った
足元に落ちた何かを松明の明かりで確かめる
「矢だね」
「矢だな」
「しかも2本同時に剣に当たったな」
シャルスが2本の矢を拾いながら言う
「レムレの合図で間違いないな」
2本の矢を同時に放って、目標に同時に当てれるのは、彼しか出来ない
「よし、じゃあ兄さん達に合図してみるか、ライアン望遠鏡」
「はいよ」
ライアンから望遠鏡を受け取り、本陣を覗く
兄さんが見える、兄さんもこっちを見てる
僕が持っていた松明を掲げる
兄さんがチップスから松明を受け取って掲げる
僕はライアンに松明を渡して、手招きする
兄さんはチップスに何か話して、本陣に入って行った
チップスが慌ただしく動き始めた
ちゃんと伝わった様だ
「よし、伝わった、シャルスはレムレ達と合流してここまで連れて来て」
「アルスとライアンは?」
「僕達は下に降りて、門を守ってる兵達を始末する、出来そうなら門も開けたいけど……」
多分オーシャンと仕掛けが違うだろうから、開けれるかわからない
ゼルナと合流して、一緒に開けよう
「じゃあ、行ってくる!」
シャルスが一瞬で視界から消えた
「速えな……」
ライアンが呟く
「さて、ライアン……ここからは派手に暴れるぞ」
「もうコソコソしなくていいんだな?」
「ああ! いくぞ!!」
僕とライアンは外壁の内側に飛び降りた