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第266話  いざベススへ!!

 

 ーーーアルス視点ーーー


「はぁ!」


「ふぅ!」


 カン!っと木剣がぶつかり合う音が響く


「2人共頑張れー!!」


 ティンクさんの応援の声

 場所は中庭

 僕の相手をしているのはテリアンヌだ


『私を鍛えて下さい!』


 半年前にテリアンヌに頼まれて、僕が休日の時に、こうしてテリアンヌと模擬戦をしている


「もう少し強く踏み込んで! 君は小柄なんだから、普通だと力負けするよ!」

「はい!!」


 テリアンヌは、早速踏み出す力を強めて来る

 うん、いい感じだ


「でもまだ軽い!!」

「きゃあ!」


 テリアンヌの木剣を弾くと、テリアンヌも一緒に吹っ飛んだ


「うーん、木剣だからってのもあるけど……根本的にテリアンヌは軽いんだよ……だから一撃の威力が弱い」

「やはり力が不足してるのでしょうか……」


 テリアンヌが木剣を拾いながら立ち上がる


「いや、力不足って言うよりは……」


 テリアンヌを見る

 昔と比べると成長しているが……平均的な女性の体格と比べたら、やはり小柄だ


「テリアンヌ……体重を増やすか、武器を重くするか、どっちか試したほうが良いかもしれないよ」

「た、体重をですか……」


 女性に言うのは気が引けるけど……ポンッと浮かぶ改善策はこの2つくらいだ


「一撃の重さって大事だよ、斬るって技術も必要だけど、やっぱり力って所があるからね」

「力……」

「剣に拘らないなら、槍とかどうかな? あっちの方が勢いをつけやすいよ……まあ、懐に入られたら厳しいけどね」


 そんな風に話していたら


「アルス様! お休みの所申し訳ありません! カイト様がお呼びです!」


 兵士が駆けつけてきた


「兄さんが? わかった、すぐに向かう」

「執務室に来るようとのことです!」


 そう言って兵士は走り去る


「そんな訳で、テリアンヌ、悪いけど今日はここまで」

「ありがとうございました、アルス君の改善案、試してみます」

「うん、無理はしないでいいからね?」


 僕はそう言ってから、ティンクさんに挨拶して執務室に向かった


 ·······


 ーーーカイト視点ーーー


「皆集まってくれたな」


 執務室に関係者を集めた


 アルス

 レルガ

 メイリー


 そして俺とライアンとレリス


 この6人だ


「兄さん、何があったの?」


 アルスが聞いてくる


「ベススから援軍の要請がきた」

「遂にですか」


 レルガは腕がなるって感じだ


「あっ、レルガはオーシャンに残っててくれ」

「な、何故です!?」

「レルガには他の兵士達を鍛えてて欲しいし、オーシャンに残って軍を纏めてくれたら安心できるから」


 因みにこれはレリスとメイリーからの提案でもある


「他にもゲルドとかにも残ってもらう、いつ西方が攻めてくるかわからないからな」


 俺は1枚の紙を取り出す


「レルガを呼んだ理由は、兵士達の練度を聞きたいのと、この将達を連れて行っても問題ないか確認を取るためだ」

「わかりました、お預かりします」


 レルガは紙を受け取り、目を走らせてる


「それで、アルス、君を呼んだ理由だが」

「うん」

「援軍として送る部隊の総大将を任せたい」

「僕が……総大将……わかった、任せて」


 おっ、戸惑うかと思ったが、自信があるのかハッキリと応えてくれたぞ


「メイリー、簡単に説明してくれ」

「畏まりました」


 メイリーは地図を開く


「アルス様、ベススは現在リールとの戦が始まっております、それに加え、ベススの領内で内乱も起きています」

「内乱? リールと戦ってるのに?」

「使者の方から詳しく聞きました、どうやらナリスト殿に反意を持っていた将がリールに寝返ったそうです」

「あー、ベススを売ったって事か……」

「ゼルナ殿がリールと交戦してる時に、乱を起こしたようで」


 メイリーが地図のベスス領を指差す


「使者からの話では、この地にてリールと交戦、そしてベススの都がここですね」

「遠いね、ゼルナもすぐには都に戻れないね」

「そして都の内側で乱が起こり、ナリスト殿は城内にて籠城しているそうです」

「それなら、先ずはゼルナと合流するべきかな……流石にずっと交戦してるとは思えないから……ここらへんに陣をひいてるか、街に居るか……」


 アルスはパッスルの駒を目印に使う


「いえ、ゼルナ殿はここに布陣してると私は考えています」


 メイリーは、駒を交戦地からかなり離れた場所に置いた


「えっ? 何でここに? 離れ過ぎてるけど?」


 アルスが聞くと


「以前、ベスス領に滞在していた時に見たのですが、ここはオアシスと流砂がありまして、こことここですね」


 トントン、っと駒を置く


「このオアシスが砂漠でも高所にあり、周りの状況がよく見えます、流砂で進軍に手間取るリール軍に襲撃することも出来ます」

「ナリストの助けに向かうとかは無いの?」

「行きたくても行けないでしょう、リール軍を放置したら、ナリスト殿を救援できても、次は都をリール軍に囲まれます」

「それはそうだけど……」

「それに内乱……反乱軍が軍を分けて、ゼルナ殿をリール軍と挟撃してくる可能性もあります、ここなら対処もしやすいのです」

「あっ、そうか、挟撃の事を考えてなかった……」


 アルスとメイリーがそんな風に話している

 ヤバい、俺、そこまで予想とか出来てなかった……


「軍略……教えてもらうかな……」


 俺、今までよく戦えてたな……


「確認が終わりました」


 レルガが俺に紙を渡す

 名前に線を引かれた将を見る

 そして残った名前を見て


「成る程、この将達なら大丈夫って事だな」

「ええ、彼等なら問題ないかと、アルス様も戦いやすいでしょう」


 アルスとメイリーが話が終わるタイミングで、アルスに声をかける


「アルス、一緒に連れていける将達だ」

「あれ? この3人?」

「それと、連れていける兵士は5000人だ 理由は」

「援軍だから目立ちすぎないようにってのと、慣れない砂漠での戦いだから、大人数だと逆に邪魔になるんでしょ?」

「お、おぅ、よくおわかりで……」


 そんな風に話していき、ある程度纏まった


「それで、出発は明朝だ、レルガ! 兵士達に今日は休むように伝えてくれ、思い思いに過ごさせてやれ」

「はっ!!」


 レルガは執務室を出る


「それで、これは俺の我儘なんだが……俺も行こうと思う」

「何を言ってるのですか? 駄目に決まっているでしょ」


 やっぱりレリスに反対された

 今回は援軍だ、領主である俺が出る必要は無い

 わかってる、わかってるんだが……


「レリス、ナリストとゼルナは友人だ、親友と言っても良い、2人が心配なんだ、内乱を鎮めて、2人の無事が確認出来たら、俺は帰還するから……」

「駄目です、危険です、貴方に何かあったらどうするのです? アルス様も行くんですよ? 最悪、お二人に何かあったらオーシャンはどうなるのです? ミルム様が領主の務めに耐えれると思いますか?」

「うぐっ……」


 それ何だよな……


「おいおいおいおい、レリス」

「呼び捨てはやめろって何度言わせる?」

「レリスさんよぉ、俺の事を忘れてないか?」


 ライアンがレリスの前に立つ


「大将は俺が必ず守る、だから行かせてくれてもいいだろ? 俺の強さ、知ってるだろ?」


 ライアンは強い、この2年で俺をしっかりと守ってくれた


「賊を倒すのと戦場は違う、お前が常にカイト様の傍に居る保証はない」

「それでもなあ!」


 2人の舌戦が始まって、ドンドンヒートアップしている

 流石に止めようとしたら……


「レリス様、カイト様も行くべきだと私は考えています」

『!?』


 メイリーがそう言った


「メイリー、理由を聞こうか?」


 青筋立ててるレリス


「先ず、ベススへ印象を与えるのです、ただの援軍ではないと」

「その必要性は?」

「オーシャンはベススを重要視してると思わせます、ベススではオーシャンへの印象は良くありません、今回内乱を起こした将以外にも、不満を持ってる将はいます。しかし、カイト様が援軍として駆けつければ、そういった将達も考えを改める筈です」

「…………」

「それに、反乱軍も戸惑うでしょう、カイト様が居ると言うことは、援軍の兵達は精鋭部隊だと考えます、将達の意志は硬くとも、兵達は違います、旗色が悪くなれば、降伏する可能性も高まります」

「…………」

「それに、アルス様も初めての総大将、しかも不慣れな砂漠での戦いです、慣れるまではカイト様が手本を見せたら、その後の戦いも順調に進みます」

「…………」

「それに、何かあった時の為に、策を用意しておきました、こちらをアルス様にお渡しします。」


 メイリーは3つの小袋をアルスに渡した


「レリス様、カイト様もアルス様も必ず無事に帰ってきます、私はそう信じてます、己の策に自信もあります、レリス様は信じられませんか?」


 メイリーがそう言うと……


「…………お前は人を操る術を持ってるのか?」


 レリスはそう言ってため息を吐き


「わかりましたよ、今回は私が折れます、カイト様、必ず無事に帰って来てください」

「ああ、必ず!」

「大将は俺が守る!!」


 そうして、話し合いが終わった


 ········


 アルスは一緒に連れて行く3人に声を掛けに行った

 俺は中庭に居たティンクと合流して、自室で一緒に休んでいる

 ライアンは明日の為に装備を見直している


 メイリーはレリスに仕事を山程渡された

 俺が居なくなるから、2人の仕事が一気に増えてしまった……そこは悪いと思ってる



「カイトさんもベススに行くのですね」

「あぁ、今度は今までよりも長くなると思う」


 内乱を鎮めるのにどれくらいかかるのか……ベススに向かうだけでも時間がかかりそうだしな 


「ティンクもやっぱり嫌か?」

「はい、カイトさんには傍に居てほしいです……でもナリストさん達が心配だって気持ちもわかりますから……」


 ティンクはナリストと仲が良いからな……


「だから、必ず無事に帰ってきてください、わたし待ってますから……」

「ああ! 絶対に帰ってくる!」


 これは、今までみたいに無茶は出来ないな

 必ず帰ってこないとな


「あの……カイトさん」

「んっ?」

「その、まだ明るいですが……その、えっと……」


 もじもじとするティンク


「さ、寂しいですし、わ、わたしと……」

「よっと」

「っ!」


 ティンクを抱き上げて、ベッドに運ぶ


「これで間違ってないよな?」

「は、はいぃぃ……」


 恥ずかしかったのか赤くなるティンク

 ヤバいな、理性が無くなる


「お、お願い……します……」


 無くなった


 ·············


 翌日


「全軍に告ぐ! これから俺達はベススに向かう! 慣れない砂漠での作戦だ! 敵だけではなく、自然も脅威として襲ってくる! それでも、レルガの過酷な訓練を耐えてきた皆なら乗り越えられると信じている!! 我等の手で! 盟友ナリストを救い! 南方の敵を打ち倒し! 勝利を土産に帰ってくるぞ!!」


『うおおおおおおおおお!!』


 アルスの鼓舞で兵達の士気が高まる


「進軍開始!!」


 こうして、オーシャン軍は、ベススへの援軍として、進軍を開始した


 さて、軍の詳細だが


 総大将 アルス 兵数2000

 レムレ 兵数1000

 ユリウス 兵数1500

 シャルス 兵数500


 オマケ、俺とライアン


 そんな形で編成している

 5000と兵数は多くない、だが間違いなく精鋭部隊だ


 必ず助ける、待ってろよ! ナリスト! ゼルナ!!




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