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第262話 野性の勘

 2日後


 オイラはレイオンに呼び出されて、ロックレッグ島の奥にある森に来た


「レイオン? 来たぞ?」


 指定された場所に行くと……


「おっ、来たか!」


 レイオンが居た

 手に拷問用の兜を持っていた

 それ、商品?


「レイオン、それはいったい?」


 オイラが聞くと


「これは訓練に使う奴だ」


 オイラはレイオンに近付こうとすると


「……」

「っと!」


 レイオンの部下に止められた

 近付くなって事か?


「そこで見てろ!」


 レイオンはそう言うと、兜を被る


 …………


 少ししてからレイオンの部下が手を挙げる


 すると……


 ドン!!


「!?」


 周りから丸太や石や岩などがレイオンに向かって飛んでいった


 レイオンは兜で周りは見えてなさそうだ

 そんな状態だが……


 ガッ! ドン!


 飛んでくる物を避ける、殴り飛ばす



 数分後、レイオンの周りには残骸が転がり

 無傷のレイオンが堂々と立っていた



 ・・・・・・・・


「てなわけで、坊主に今やったことが出来るようになってもらう」


 レイオンが兜を外しながら言う


「今のを?」


 オイラは兜を受け取り、被ってみる


「………………」


 待て待て待て待て!

 目元が塞がってるから、見えないのは予想できてたけど……

 耳も塞がるから何も聞こえないし……穴がないから、呼吸が出来ない!!


「ぶはっ! この兜なんだよ!? 拷問用でもやりすぎだろ!?」

「さっき言ったろ? 訓練用の特注品だ」


 レイオンは兜を受け取る


「坊主、五感ってわかるよな?」

「えっ? 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚だろ?」

「そうだ、普通は戦闘には味覚以外の感覚を使うよな?」

「まぁ、うん」


 相手を見る視覚

 周りの音で状況を確認する為の聴覚

 匂いで相手を見つける嗅覚

 そして、皮膚で感じる触覚



「そんな感じだよね?」

「ああ正解だ、ただ俺達獣族には更に優れた感覚がある」

「?」

「勘だ」

「勘?」


 首をかしげる


「野生の勘、直感とでも言うべきか……どんな時でもふと、何か嫌な予感や良い予感ってのを感じたことはないか?」

「…………ある」


 昔、パレミル平原でカイトの旦那が刺されそうになった時とか

 マーレスと初めて会った時

 そして……


「……」


 カルストと対面した時……


「結構色々合ったみたいだな、その面でわかるぞ」


 レイオンはそう言うと地面に座り込む


「坊主、これからその勘を鍛えていく……しっかりと鍛えたら、さっきの俺がやった事がお前にも出来るようになる」

「それで、オイラはもっと強くなれるんだな?」

「知らんよ、それは坊主次第だ」

「……確かに!」


 オイラは兜を持って、さっきまでレイオンが立っていた所に立つ


 オイラとレイオンが話してる間に、レイオンの部下達が準備を整えてくれていた


 兜をかぶる



 !?

 何も見えない、それは予想できたが

 音が聞こえない

 呼吸もマトモにできない

 匂いも感じられない


 ドゴォ!


 ぐぉ!?


 背中に強烈な痛み!


 バキィ!


 腹部に衝撃!


 吹っ飛ばされるオイラ


「げほっ! ごふっ!」


 兜を外して噎せる


「全然駄目だな」


 レイオンはオイラの側に来ると、そう呟いた


「周りの状況が全くわからないんだけどぉ!?」


 こんなの無理だろ!?


「それを勘だけでどうにかするんだ、俺が手本を見せただろ?」


 見せられたけどさ!?


「最初はこんなもんだ、これから回数をこなせ」


 それから、毎日毎日、オイラは訓練を受け続けた


 何も状況がわからない

 身体に走る衝撃

 吹っ飛ばされて木に打ち付けられたり

 岩にぶつかったり


 身体中が痛くても、骨が折れても毎日受けた


 ・・・・・・・・・・


 焔歴149年 4月


「…………」


 あれから少しは動けるようにはなった

 といっても、最初の仕掛けに反応できるようになっただけだ

 多方向から一気に来る仕掛けには反応できずに吹っ飛ばされる


 今のオイラの身体は、正直立つのも厳しい状態だ

 これ、死ぬんじゃないのかってくらいだけど


「…………」


 レイオンが止めないってことは大丈夫って事だよな


「!?」


 ゾワッて感覚が後ろから来る

 オイラは身体を反らす

 何かが真横を飛んでいった


 これは始まりの仕掛けだな

 これからドンドンオイラに向かって飛んでくる


 次々と飛んでくる

 1個ずつ飛んでくるのはまだ対応できる

 だけど………


「!!!」


 きた、きたきたきた!!

 前後左右、上からも嫌な感じが一気にきた!

 だが、いつもと違う感じもする


 いつもは嫌な感じなのに

 今回は、怖い感じ……

 触れたらいけないって感じが……


 あ、この感じってあれだ……

『死』だ

 昔、マーレスに斬られた時に感じたやつだ

 あれ? ってことは……今、失敗したら死ぬ?


「!!!!!」


 嫌だ、駄目だ、死ぬ訳にはいかない!

 オイラは強くなるために来たんだ!

 強くなって、皆を守れる力を手に入れるんだ!

 死んでたまるか……死んでたまるかぁぁぁ!!



 ・・・・・・


 ーーーレイオン視点ーーー


「やっと坊主も成長したか」


 俺は飛んでくる罠を回避する坊主を見る


「無茶しますね……」


 キャンルルが俺を睨みながら言う


「お前だって知ってるだろ? 危険を回避するための野生の勘は、死にかけの、限界の先にあるってな」

「だからシャルスを、死ぬ寸前まで追い詰めたっと」

「それが手っ取り早いだろ? あの程度の傷なんて、獣族なら一月で治るだろ」

「もし失敗したらどうしてたんで? シャルスが死んだら、貴方団長に殺されてますよ?」

「そん時はそん時だ、坊主は本気で強くなりたかった、俺もそれに本気で答えた」


 俺は坊主に向かって歩き出す


「そして……坊主は成長した」


 俺は全ての仕掛けを避けきった坊主から兜を外す


「はぁ! はぁ! はぁ!」

「良くやった坊主、合格だ!」

「っ…………」

「っと!」


 俺は気絶した坊主を受け止める


「キャンルル、俺は坊主を医務室に連れてく、片付けの指示を任せる」

「その為に呼んだんですか?」

「俺の勘が、そう言ってたんでな」

「やれやれ」



 ・・・・・・・・


 ーーーシャルス視点ーーー


 目が覚める

 医務室のベッドで寝てたのを理解する


「起きましたか」

「キャンルル? レイオンは?」

「彼は仕事に戻りました、私から改めて伝えておきます、レイオンの訓練、合格だそうです」

「っ! よしっ! いだ!?」

「大人しく寝てなさい、ボロボロなんですから」


 オイラは大人しく横になる


「さて、次は私の訓練ですが、先ずは身体を治すのが先です」

「何日後?」

「数日で治るわけないでしょ? 一月後くらいです、完治してからですよ?」

「どんな訓練かは秘密?」

「いえ、大した事では無いので教えます、私との実戦ですよ」



 キャンルルは微笑みながら答えた

 後のオイラはこう語る

 キャンルルの訓練が……一番キツかったってね……





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