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第261話 獣の力

 焔歴149年 5月


 ーーーカイト視点ーーー


「そう言えば、シャルスはどうしてる? 無理してないか?」


 俺は品を運んできたシャンバルに聞く


「無理は……していますね、あの子の年齢を考えると、今やってる特訓自体が無茶です」


 シャンバルはハッキリと答えた


「そ、そうなのか?」

「しかし、無謀ではありません……己の限界を越えるまで鍛えてますが、死にかけるような事はしてませんよ」

「そうか……それなら大丈夫そうだな」


 俺はほっとしながら、シャンバルが運んできた品を見る


「特訓自体はどこまで進んでるんだ?」

「既に最終段階ですね、最後の特訓を任せてる者から、順調だと聞いてます」

「それなら、次来る時は、シャルスも一緒に帰ってくる感じか?」

「そうですね、恐らくそうなるかと」


 シャルス……どんな風になってるんだろうか……



 ・・・・・・・・・


 焔歴148年 12月


 ーーーシャルス視点ーーー



「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ」


「ふむ、鉄板を砕くのはまだ無理みたいだなぁ」


 エレファンが、オイラの割った鉄板を眺めながら言う


「ど、どうやったら砕けるんだよ……」


 何枚も何枚も鉄板を割ってる

 割れるだけでも凄いことなのでは!?


「シャルスはまだ身体を使いこなせてないんだなぁ、力が腕で止まってるんだなぁ」


 エレファンは割れた鉄板を放り投げて


「それだけだと、まだ駄目なんだなぁ!」


 ズドン!


 鼻で2枚の鉄板を貫いた


「こんな風に、鉄板を破壊できないんだな、重要なのは力を放つ事なんだなぁ」

「それがよくわからないんだって!!」


 放つってなんだよ!!

 殴るのは違うの!?


「言葉で表すのは難しいんだなぁ、本来なら自然に覚えていくものなんだなぁ」


 エレファンはそう言うと、割れた鉄板を集めた


「今日は休むんだなぁ、おいはこれをまた加工して貰ってくるんだなぁ」


 エレファンはさっさと歩いていった


「……はぁ」


 くそ、最初の段階で躓いてる……


 ・・・・・・・・・


 次の日も、また次の日も鉄板を砕けない



「割れるだけなら精度が上がってるんだなぁ」


 エレファンが苦笑する


「鍛え方が足りないのか?」


 オイラが聞くと


「身体は充分鍛えられてるんだなぁ、シャルスが力を使いこなせてないだけなんだなぁ」


 その力を使いこなすってのが、よくわからないんだよなぁ……


「いっ!?」

「今日はここまでだなぁ、シャルスの腕も限界だぁ、傷が治るまで休むんだなぁ」

「そんな時間無い! ただでさえ手間取ってるってのに!」


 ドゴォ!


「ぐあ!?」


 エレファンの鼻で殴られた


「シャルス、無理すると、その方が時間がかかるんだなぁ、腕を壊した方が治療に時間がかかるんだなぁ……レイオンとキャンルルの特訓はもっと厳しいんだなぁ」

「…………」

「あっ、強く殴りすぎたんだなぁ、気絶してる……」



 ・・・・・・・・


 懐かしい夢を見た


 数年前、アルスやレムレ達と一緒にオルベリンに鍛えられていた時の夢


 崖を全員で登ろうとした時に、大岩が上から降ってきて


『ふん!!』


 ドゴォン!!


『うそぉぉぉ!?』


 オルベリンが拳で大岩を砕いた


『…………』


 あの時、オイラはオルベリンの近くにいた

 大岩が目の前に来たときに、オルベリンの足から身体を通り、拳に何かが集まったように感じた


『…………これだったのか』


 いつの間にか、オイラの身体は現実と同じ姿になっていた


 また大岩が降ってくる


 オイラは大岩を………



 ・・・・・・・・



「…………」


 目が覚めた

 外は明るい

 拳の傷を見ると、数日は寝てたみたいだ


「……こうしちゃいられないな」



 オイラはベッドから降りて、訓練場に向かう

 勿論鉄板を持っていく



「…………」


 鉄板を取りに行った時にエレファンと合流した

 一緒に訓練場にやって来た


「エレファン、見ててくれよ」

「わかったんだなぁ」


 オイラは、鉄板を思いっきり上にぶん投げる

 そして構える


 わかる

 脚に何かが集まってくる

 地面から吸い取るみたいに集まってくる

 これだ

 これを使うんだ

 地に脚をつけて、身体で(くう)を斬り、腕で勢いをつけて!!


 目の前に鉄板が迫る


「うおおおおおおお!!」


 オイラは拳を放つ

 力をぶつける

 力をぶちまける

 駆け巡らせる

 弾けとばせる



 パァン!!


 鉄板が砕けた、いや弾けた


「おぉ!」


 エレファンが驚く


「はぁ……はぁ……で、出来た?」


 ・・・・・・・


 結局、砕けたのは最初の1枚だけだった


「1枚でも出来たのなら充分なんだなぁ」


 エレファンは愉快そうに言う


「でも少なくないか?」

「1度でも出来たのなら、すぐに慣れて、使いこなせるようになるんだなぁ」


 エレファンはそう言うと、屋敷を見る


「それに、あと2人の特訓を終えた頃には、嫌でも使いこなせてるんだなぁ」


 屋敷を見ると、レイオンが愉快そうに俺達を見ていた


 レイオンが駆け寄ってくる


「見たぜ、エレファンの課題は達成できたな」


 ガシガシとオイラの頭を撫でる


「次はレイオンの課題なんだなぁ」

「すぐにやろう!」


 オイラが言うと


「2日待て、準備しておくからシャル坊は休め」

「さっきまで充分休んでたけど!?」

「準備に時間がかかるんだ」

「……わかった」




 こうしてオイラは1つ目の課題を終わらせたのだった











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