第260話 学舎始動
焔暦149年 3月31日
ーーー???視点ーーー
「こ、ここがオーシャンだべかぁ!!」
オラは乗合い馬車から外を見る
「で、でかい、都会だぁ」
今日から1年間、この都で暮らすのかぁ
『『ムート』お前は村で1番賢い、この村で終わらせるには勿体ない』
『村長、でもお金が無いべ?』
『村の皆で集めた、これで学舎に通える』
『村長……皆!』
オラ、絶対に結果を残すべ!!
・・・・・・・・・
馬車から降りて、都を見渡す
「う、うわぁ……」
た、建物がこんなに……ここから見えるとこだけでも、村の10倍はあるべ!!
「えっと……学舎はどこに行けばあるんだべ?」
村に来ていた兵士さんに、書類は渡したから、後は学舎でお金を渡せば良いって聞いたけど……
ドン!
「うわぁ!?」
「おっと!」
「あっ!ごめんなさい!!」
男の人とぶつかってしまったべ!
「いや気にしなくて良いよ、何か周りを見渡してるけどどうしたの?」
あっ、この人に聞いてみよう!
「すいません!学舎はどちらにありますか?」
「んっ? 君も学舎に? 丁度良い、俺も今向かってる所だったから、案内するよ」
「あ、ありがとうございます!」
良かったぁ!!
オラは男の人に着いていく
「君、どこの村から来たんだい? 少し訛りがあるけど……それはガガルガ地方の方かな?」
「は、はい! 『ベーリン村』です!」
「ベーリン村……随分遠くから来たな」
ガガルガでも更に北東の端っこの村
ここまで来るのにとても時間が掛かったべ
「んっ? ベーリン村……君はひょっとしてムートかい?」
「オラの事知ってるんですか!?」
「まあね、資料で見て、強く印象に残ってたからね」
オラと同じ生徒かと思ったけど……先生側の人だったべ?
「さてと、そこの門から外壁を出たら、左に建物が見えるから、そこが学舎だよ……出入口に兵士が立っているから、話し掛けたら中に案内してくれるから」
「ありがとうございます!」
「良いよ、君も頑張って」
男の人はそう言うと、外壁に沿って歩いていき、外壁にある扉を入っていった
「オラも行かなきゃ!」
オラも学舎に向かう
・・・・・・・・
「おっ、学舎の生徒だね? こっちこっち」
兵士の人に案内して貰って、建物に入る
建物の中に居た女性に書類を渡すように言われて、言われた通りに渡す
「第2学級ですね、えっと……ムートムート……あった、こちらが貴方の名札です、こちらが学舎と寮の案内図で……こちらが寮の部屋の鍵です」
「ありがとうございます!」
「それとこちらが学舎の決まり事ですので、良く目を通しておいて下さい」
「わかりました!!」
オラは必要な荷物を受け取って、寮に向かう
・・・・・・・・・
「こ、個室だべ……凄いべ……」
あまり広くはないけど、普通に暮らすには充分すぎるべ!!
「えっと……決まり事は……」
オラは荷物を仕舞って、決まり事を書かれた紙を読む
『全ての生徒は皆平等である』
その1文から始まった
内容自体は迷惑をかけないって当たり前の内容だべな
あと門限も書いてるべ……
ええと……あっ、お金に余裕が無い人は働けるお店が紹介されるって書いてるべ!
これは助かるべ……家に仕送り出来るべ!
「ご飯も寮で食べれるんだべか……今日も食べれるんだべ!?」
楽しみだべ!!
・・・・・・・・・・・・・
翌日
ーーーカイト視点ーーー
「ふぅー、少し緊張してきた」
「普段演説してるんですから、これくらい平気ですよね?」
俺が呟くとレーミルが苦笑しながら答えた
「なんか気分的にね……書類忘れてないよな?」
俺は手元の書類を確認する
「全て揃っていますよ、それでは先に行ってきます」
レーミルは目の前の扉から中に入っていった
今、俺達は学舎の多目的ホールの前に居た
中には既に生徒が集まっている
今日はここで、入学式をやるわけだ
練習したし、大丈夫大丈夫
・・・・・・・・・
ーーームート視点ーーー
広い部屋に集まるように言われて、オラは指定された椅子に座っていた
周りに色んな人が座ってるべ
オラよりも年下の子や、大人の人もいるべ
「んっ? 君も第2学級?」
隣にオラと同じくらいの男の人が座ったべ
「そうだべ! オラムート! よろしくだべ」
「よろしく、僕は『ガンル』」
「よろしくガンル!」
ガンルと簡単に挨拶をしていたら
ガチャ!
前の方で扉が開いて女の人が入ってきた
べっぴんさんだべぇ
「初めまして、学級主任を任されているレーミルと申します」
レーミル先生は挨拶を済ませると、説明を始めたべ
オラが座ってる席は第2学級の生徒達が集まっていて
オラから見て左側には、文字や簡単な算術を教わる第3学級
右側は高度な授業を受ける第1学級の生徒が座ってるそうだべ
そして、昨日渡された書類に書いてあったことを改めて説明されたべ
「皆さんには1年、この学舎で学んで貰います……1年後、第2学級と第1学級の生徒は卒業試験がありますので、確りと学んでください」
「卒業試験に落ちた場合はどうなるのですか?」
他の人が質問するべ
「次からは挙手してくださいね、質問への答えですが、1度不合格になった生徒は、再試験を受けて貰います……再試験に合格したら卒業……不合格の時はもう1年通うか退学を選んで貰います」
た、退学って……なんだべ?
「ふむ……退学とは学舎を辞めて貰うって事です」
レーミル先生はオラ達を見渡した後に言ったべ
「厳しいと感じる人も居ると思いますが、学舎を卒業するというのは大きな利益になります、真面目に学ばなかった者には、不当に益を与えるわけにはいきません」
他の生徒が手を挙げる
「どうぞ」
「大きな利益とは何ですか?」
「そうですね、先ず第3学級……こちらは文字の読み書きを完璧にこなせるようになります、私達がしっかりと教えます……第2学級は商店等の就職に有利になります、成績が優秀な生徒は此方から懇意にしてる商人に紹介したりしますよ」
オ、オラでも頑張れば商人になれるって事だべ!?
「そして第1学級ですが、此方も商人への紹介ですが……有能な人物なら城の方で文官として雇います……この意味がわからない人は居ませんよね?」
ぶ、文官!?
貴族しかなれないんじゃなかったべ!?
「さて、それでは次に教師を紹介しましょう」
レーミル先生がそう言うと、数人の男女が入ってきたべ
簡単な自己紹介……そして第2学級の教師は誰か紹介されたべ
キレレット先生とコーラン先生とミーア先生
第3学級はパナーシ先生とミミアン先生
第1学級はムドーナ先生、マーメルク先生
レーミル先生は全ての学級を担当するらしいべ
それからも説明は続いて言ったべ
・・・・・・・・
「さて、説明も一通り終わりましたね」
レーミル先生が周りを見渡す
「次は特別な人から挨拶があります」
レーミル先生がそう言うと、ミミアン先生が扉を開くべ
「私達の主であり、オーシャン領の領主、カイト・オーシャン様です」
『!?』
皆が驚く
そして男性が入ってくる
「諸君! 初めまして! カイト・オーシャンです!」
そこには、昨日学舎まで案内してくれた男性が立っていた
えっ? 領主様だったべか!?
オラ……無礼なことしてないべな?!
「さて、レーミルから説明はあったから、私の話す内容は特に無い……あえて言うなら、皆に大事にして欲しいことだけを言おう!」
カイト様は全体を見渡す
「ここには色んな人が居る、貴族だったり平民だったり、昨日渡した紙に書いてたと思うが、全ての生徒は平等である! 立場とかは気にしないで欲しい! 言い替えるなら……立場ではなく、相手の人柄……人物を見て欲しい、普通だったら出会わない人が、同じ建物で共に学ぶ仲間となる! 関わっていくことで新しい世界が拡がっていく!!」
すぅっとカイト様は息を吸う
「是非とも! この出会いを有意義な物にしてくれ! そして、君達にとって、最高の結果を掴みとってほしい! それがめぐりにめぐって! オーシャンへの助けとなる!!」
カイト様はそう言うとまた、オラ達を見渡し……一人一人の眼を見ている?
「期待している!! 以上!」
そう言うと、退室していったべ
「それではこれで解散です、明日から授業が始まりますので、今日は確りと休んでください」
レーミル先生がそう言って、退室していった
・・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
「ふぅ……あー緊張した」
「お疲れ様です」
レーミルから労われる
「明日から、本格的に学舎が始動する……レーミル、期待しているからな?」
「ええ、お任せ下さい」
それにしても、生徒達の眼が凄かったなぁ……皆燃えてた
「1年後が楽しみだ」
俺は心を踊らせながら、城に戻る
その頃、俺の執務室には……大量の書類が積まれているとは知らずに……