第25話 レリス怒る
ベッツ村を出て5日
ヘイナスが見えてきた
「ギリギリ年越しに間に合ったな」
後1日で新年だったよ
「カイト様!!カイト様が戻られたぞ!!」
外壁の上に居た見張りの兵が馬車を見て叫ぶ
門が開く
「お帰りなさいませカイト様!!」
門の周りに兵達が集まっていた
馬車が止まる
「ああ、ただいま、変わったことは無かったか?」
俺は扉を開けて兵に話す
「はい!異常はありませんでした!!」
「それは良かった、見張りを続けていてくれ」
「はっ!!」
馬車は再び走り出す
そしてヘイナス城に着いた
「生きて帰れたな……」
「そうですな」
出発する時は死を覚悟したからなぁ……
まさか同盟を結んで……嫁が出来るとは思わなかった
「カイト様!!」
レリスが城の扉を開けて駆け寄る
「ご無事でしたか!?怪我などはされていませんか!?」
「あ~まあ、一応な?ヘルドとサルリラを寄越してくれて助かったよ」
「いえ、貴方様が生きて帰られて……本当に良かった……」
ホッとして膝をつくレリス……そんなに心配してくれたのか
「ところで……こちらのお嬢様は?」
レリスはティンクを見る
ティンクは俺の後ろに隠れる
「えっと、話せば長くなるから簡潔に言うと……俺の嫁になります」
「…………」
ポンっとレリスが俺の両肩に手を置く
「どういうことでしょうか?カイト様?貴方は何をしにヤークレンに向かわれたのです?」
ヤバい……これキレてる
笑顔なのに目が笑ってない!
怖い怖い怖い怖い!!
「お、落ち着けレリス!」
「私は落ち着いていますよ?」
いたたたたたた!?
肩!肩が握りつぶされる!?
助けて!オルベリン!助けて!!
「…………っ」
駄目だ!!オルベリンもビビってる!!
ヘルド!サルリラ!ヤンユ!!
「……レリスさんって怒ったら怖いんすね?」
「怒ることなんて滅多に無いからな」
「さ、触らぬ神になんとやらです……」
あっ!俺を見捨てやがった!!
「あ、あの!」
ティンクが前に出る
「ごめんなさい!カイトさんはわたしの為に婚約してくれたのです!!」
頭を下げるティンク
「君の為に?…………長くなってもいいので話してくれますよね?」
レリスが俺に聞く
「あ、ああ……取り敢えず中に入らないか?」
いつまでも外にいるわけにはいかないだろ?
・・・・・・・
玉座の間に着いた
ティンクはヤンユとサルリラに頼んで入浴やら休息をさせている
そして玉座の間には俺とレリスとオルベリンとヘルドが居る
レルガは多分見廻りかな?
俺はレリスにヤークレンの出来事を話す
詳しく……誤解が起きないように!
「…………」
少しずつレリスの怒りが静まる
「そんな訳で彼女を妻にすることにしたんだ……やっぱり怒ってるよな?」
「……はあ」
ため息を吐かれた
「つまりメルセデスの策略ではなく貴方様の意思で選ばれたのですね?」
「ああ!それは断言する!」
「ならいいです……許しませんが水に流しましょう」
暫くネチネチ言われそうだな……
「それにしても厄介ですね……カイト様、ティンク様との結婚がオーシャンにどんな影響を与えるかは理解されてますか?」
「例えるなら同盟と言う鎖を繋がれたヤークレンの飼い犬だな……」
ティンクは首輪かな?
「そうですね、何をするにしてもヤークレンに介入されたら引き下がる以外に選択はありません」
「ああ……」
「この大陸の統一はかなり難しくなりますね」
「そうだな……」
「……統一を諦めたのですか?」
「そんな訳ないだろ?」
俺はレリスの目をしっかりと見る
見ながら言葉を続ける
「飼い犬になっても……ヤークレンになつきはしないさ、力を増してから、鎖を引きちぎって!メルセデスの喉元を噛み砕いてやるさ!」
その為には飼い犬でもなんでもなってやるさ!
「……それを聞いて安心しました、この話はここまでにしましょう」
レリスはそう言って周りを見渡し
再び俺を見て
「それで?式はいつ頃になさいますか?」
「……式?」
「ええ、結婚式ですよ、オーシャン領全土に報じなくてはなりませんからね、それに同盟国のベススのナリスト様にもお伝えせねば」
「そ、そんなに大規模でやるのか!?」
「当たり前じゃないですか!カイト様?領主のご結婚ですよ!?」
マジかよ……身内や将達を集めて簡単な宴で済ませるかと思ってた……
「開催期間は1週間程にしますか?」
「開催期間? ま、祭りみたいな事を言うな?」
「祭りですよ? カイト様の結婚式なんですから!」
……うそーん
「レリス」
オルベリンが声をかける
「はい?」
「その話は明日以降にするべきだ……坊っちゃんはこれでも怪我人なのだからな」
これでもって……
「……そうですね、申し訳ありませんカイト様」
「いや、いい……俺の為の提案なんだからな」
取り敢えず疲れたから休もう……
・・・・・・・・
部屋に行こうと玉座の間を4人で出る
「カイトお兄様ぁぁぁぁ!!」
ドン!
「いっっっっっ!?」
ミルムが背中にタックルしてきた
走る激痛
「寂しかったよ!!」
「そ、そうか……取り敢えず離れてくれないか?」
「やだ!」
更に力を込めるミルム
「いだだだだだだ!?」
「ミルム様!? カイト様は背中を刺されたのです!離れてください!」
「えっ!? あ、ご、ごめんなさい……」
ミルムが離れる
「し、知らなかったんだろ? なら許すさ……取り敢えず今日は休むからお話は明日しような?」
「うん!!」
「アルスにも言っといてくれるか?」
「はーい!!」
ミルムは走っていった……元気だな……
・・・・・・・
俺は自室に入る
ああ、久しぶりの自室だ
何も変わらないなー
メイドが掃除をしてくれていたみたいで綺麗だし!
壁に引っかけているベルドルトの槍もピカピカだ!
そしてベッドにはティンクが居る!!
うん?
「ティンク?なんでここに?」
「あ、その……夫婦は同じ部屋で寝るものだとヤンユさんとサルリラさんが……」
「……あいつら」
なに教えてるんだよ!!
あ、でも夫婦でも別室ってのもおかしいのか?
それにティンクは暗いと1人じゃ寝られないし……
これが正しいのか?
「取り敢えず寝よう……ティンクも寝るかい?」
「あ、はい!」
俺がベッドに入るとティンクもベッドに入る
「ティンク、明日は皆に君を紹介するよ」
「はい……」
「弟のアルスと妹のミルムがいてな?アルスは君と同い年だ」
「そうなのですか?」
「ああ、仲良くしてやってくれよ?」
「が、頑張ります!」
こうして話すと彼女も大分、俺に心を開いてくれたな……
……いまだに笑顔を見れてないが……
いつか……かな……らず…………
「カイトさん?……眠られましたか……お休みなさい……」
・・・・・・・・
ーーーレリス視点ーーー
「くそ……マイルスめ……」
カイト様を殺そうとしたか……
昔からカイト様を邪魔者扱いしていたが……とうとう手を出してきたか
「……暗殺するか?」
いや、カイト様が望まれない
「……何か……合法的にアイツを処刑する方法を考えないとな……」
実の父親だが……アイツはカイト様の邪魔になる
情も何もないし、殺すことに迷いはない……
「さて、どうしたものか……」
取り敢えずベススのナリスト様に招待状を出さないとな……文を考えておこう