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第255話 カイトの判断

 数日後


 俺は医務室から自室で過ごす許可が出た

 それでも、毎日医務室に通わないといけないがな


『食事は今まで通り、ぬるいスープです……固形物はまだ避けてください、それとキスとか行為はまだ禁止ですからね?』


 なんて釘を刺された


 そんな訳で、俺は隣で眠るティンクの温もりを感じながらも

 彼女にキス出来ないのである

 ……寂しい


 気を取り直して着替える

 そして、医務室で舌に着けてるカエルの胃袋を交換して、玉座に向かう


 現在、玉座の前には机が運んである

 舌が痛くて喋れない俺は、必然的に筆談になるわけで

 その為の机だ

 俺が紙に書いて、レリスが読み上げる

 それで今は何とかしてる


 舌の痛みは前よりはマシだ

 我慢すれば喋れる気もするが……素人判断は怖いから

 医者に従おう


「おはようございますカイト様」

「……」


 レリスに手を挙げて答える


 俺が玉座に座ると、俺の隣にライアンが立つ

 ライアン……あれから責任を感じてるのか、俺が自室を出てからずっと居る

 さっきから後ろをついてきていた

 気にしなくて良いんだけどな……


『今日の予定は?』

「今日は話も纏まってきたので、エーリス家への制裁を決めることになってます」


 いよいよか……クルーキ殿は1度だけ医務室に見舞いに来たが、凄く申し訳なさそうだった

 てか、入室するなり土下座された


『どんな罰も受けます、ですので娘の命だけは! 私はどうなっても構いません!!』


 なんて言われたしな……それからは追い出されて、出禁にしたらしい


 正直、俺はそこまで怒ってない

 媚薬を使ってのミーアの行動はやりすぎだが

 舌を噛んで死にかけたのは、俺の自業自得だしなぁ


 かといって、不問にしたらそれはそれで問題らしいし

 何か罰を与えないといけない……


『いつ頃来る?』

「昼過ぎの予定です」

『ミーアの様子は?』

「あの小娘は泣いて過ごしてるそうですよ」


 わぁ、レリスが怖い……


「やっぱり処刑にするのか?」


 ライアンが聞く


「カイト様の判断です、私は処刑も妥当だと思いますがね」


 レリスの中では、完全に俺への暗殺未遂って認識みたいだ


『そういえば、メイリーが色々調べたんだよな?』

「そちらにある束が報告書です」


 これか……ふむふむ、あの館に居た全員に事情聴取をしてるのか

 まあ、殆んどが何が起きたのか理解してないって話みたいだな……そうだよな、皆偶然居ただけだし、現場になった部屋には俺とミーアしか居なかったし


 それと、メイリーが部屋を調べて何が起こったのか推理した仮説が2つ

 それとミーアや俺の話から纏めた事実が書かれていた


 てかメイリーの仮説の片方が、完全に事実を書いてるんだが……名探偵か?

 メイリーに崖に呼び出されたら、全ての悪事を暴かれたりするんだろうか?


 うーん、制裁ねぇ……

 レリスは極刑を望んでいる

 ミーアとクルーキの処刑、エーリス家の取り潰し

 それが良いと言ってるが……重すぎる気がする


 かといって、軽くしすぎると……うーん、難しい

 報告書を良く読みながら考えるか……


 ・・・・・・・・


 そんな訳で、あっという間に昼過ぎ!!


 目の前にはクルーキとボロ布を着せられて、手錠をかけられたミーア


 2人が跪く……


「これより、罪人ミーアによる、カイト・オーシャンへの暗殺未遂について判決をくだす!」


 レリスが叫ぶ

 暗殺未遂って言ってる!?


「罪人ミーア! 貴様はカイト様へ毒物を飲ませ、害しようとした! 間違いないな?」


 レリスが問う


「わ、私は……」

「答えろ!!」

「ひっ!?」


 レリス、怒ってるからってそれはちょっと……


 俺は、ライアンにレリスを隣に連れてくるよう、指で合図する


「落ち着け、ほら下がれって」


 ライアンがレリスを連れてくる


「申し訳ありません、罪人を見たら怒りが湧いてきまして」

『落ち着いたな? なら進行を続けてくれ』

「はっ!」


「もう一度問う! 罪人ミーア! 貴様はカイト・オーシャンを害しようとした、間違いないな?」

「ま、間違い……ありません……」


 ミーアは罪を認める

 多分、否定しても媚薬や迫った事が害した事になるから、それで論破されただろうなぁ


「こちらが調べた限り、これは罪人単独により行われた暴走行為である。しかし、それを止められなかったエーリス家にも責任があると判断される」


 レリスはそう言ってクルーキを見る


「クルーキ殿、異議はあるか?」

「ありません……」


 クルーキも異議を唱えずに進んでいく

 ……弁護士とか居ないと一方的だな

 弁護士ってシステムも無いけど……


「それでは、カイト・オーシャン様により、判決をくだす!!」

「…………」


 いやいや、重い!

 空気が重い!!

 くっそ! まだ妥当な判決を決めてないのに!


 これが戦後処理なら、まだ判断材料が多いから決められるけど!!

 これは厳しいって!!


 でもなぁ、決めないとなぁ……

 どうするかなぁ……


 俺は窓の方を見る


「……カイト様?」


 レリスが声を掛けてくる

 待って、本当に待って!!


「……すぅ……はぁ」


 深呼吸!


 あっ、そうだ!


『レリス、ミーアはある程度の教養はあるよな?

 』

「? ええ、その筈ですが?」

『それならさぁ……』

「はい? いやそれは……しかし……ですが!」


 数分ほど、俺とレリスは話し合う


『頼む、これで納得してくれ』

「…………わかりました」


 渋々だが、折れてくれた


 レリスは俺から紙を受け取る


「罪人ミーアへの判決!『5年間、学舎への無償による労働』を言い渡す!」

「……えっ?」


 ミーアが顔を上げる


「今回の件は、媚薬を盛る暴挙はあれど、舌を千切ろうとしたのはカイト本人の意思で行った事、それゆえ、暗殺未遂での罪では無く、暗躍での罪とする、没収するのは金ではなく時間、5年間学舎にて、教員として無償で働くように!!」


 レリスはそう言って紙を仕舞う

 うわ、怒ってる……


「次にエーリス家への制裁を伝える!」


 レリスが紙を拡げる


「今回の件は、エーリス家の監督不行き届きと判断する。よって、財産の10分の1を没収する!」


 その没収したお金は学舎の経営に使わせて貰う

 レリスは納得してないが、これなら立派な罰になるんじゃないだろうか?

 それに、学舎の方の運営に大きな益になると思うし


「以上で! エーリス家への判決を終える!」


 そう言ってレリスは、ミーアとクルーキを玉座の間から、兵を使って追い出した


 ・・・・・・・


『ほら、レリス、機嫌を直してくれ』

「カイト様! 甘過ぎます!! ここは徹底的に潰すべきです!」

『いやいやいや、今回のは事故みたいなものだし、やり過ぎると良くないぞ?』

「しかし……」

『それに、エーリス家にはまだ色々と手伝って貰いたいからさ、これくらいが良いんだよ』

「……はぁ、わかりました」

『すまないな、俺の為に怒ってくれてるのに』

「いえ……」



 さて、これでエーリス家関係はけりがついたか??

 舌が治ったら、本格的に話を進めにいこう……


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