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第253話 アルスの見合い、それと結婚

 焔歴148年 11月


 ーーーアルス視点ーーー



「うーん……」


 僕は、自室で目の前の束を眺めている


「……多いなぁ」


 この束……全部が僕宛に送られていた縁談の申し込みらしい


「領主の弟って立場の重要性……前にマーレスが言ってた事はこういうことか……」


 そりゃあ、女性にプレゼントとかしたら、ああ言われるか


「てか、殆んどが貴族の次女か三女か……長女はあまりない感じ?」


 別に長女が良いって訳ではないけど……よくわからないけど、これも何か理由があるのかな?


「うわ、西方の貴族のもあるよ……」


 この間、戦をしてたっていうのに……


「ヤークレンの方の貴族からもあるのか……」


 ……こういう他の地方の貴族と婚姻したら、兄さんみたいに同盟とかの関係になるのかな?


「まぁ、ティンクさんは領主の娘だからってのもあるのか」


 領主じゃない貴族の娘とかなら、同盟とかの話は無いかな?

 いや、軍に所属してるとかなら、また別かもしれない……


「困ったな……こういう恋愛とか経験は無かったから、何を基準に選べば良いのかわからない……」


 見た目?

 家柄?

 年齢?

 好み?


「あぁもう!! 悩んでいても仕方ない!!」



 こんな時は相談だ!!

 人に頼る!!



 ・・・・・・・・


「そんな訳で、来たんだけど……大丈夫? 忙しくない?」


「気にするな、今、丁度一段落したとこ」


 僕は、執務室で仕事をしていた兄さんに相談する


 その場に居たレリスや、紅茶を淹れているヤンユも聞いている


「うーん、ティンクと直ぐに結婚した俺が言うのもアレだが……悩みすぎじゃないか?」

「だって結婚だよ? 悩むでしょ?」

「いやいや、見合いしたらすぐ結婚って訳じゃないんだぞ? 実際に会ってみて、合わなかったら断る……それで良いんじゃないのか?」

「……相手に失礼じゃない?」

「見合いなんだから、相手も理解してるだろ? なぁレリス?」


 兄さんがレリスを見る


「えぇ、これがアルス様から申し込んだ見合いなら、礼に反すると言われますが……今回アルス様に渡したのは相手からの申し込みです、何だったら全員会ってみて、全員断っても問題ないんですよ?」

「そ、そうなの? それって女性から見てどうなの?」


 僕はヤンユを見る


「? 問題ないのでは? 別に複数の女性と関係を持つわけでも無く、会って断るだけですよね? それなら、出会って友好を深めましたって話で終わりですよ」


 そう言ってヤンユは僕に紅茶を渡す


「そうだ、結婚と言えば……レリス、お前もそろそろ相手を見つけないのか?」


 兄さんが言う


「おや? 私ですか?」

「あぁ、今までは忙しくて考える時間も無かったんだろ? 今はメイリーも仕事を任せられるし、レリスもそろそろ考えてみても良いんじゃないか?」


 ……そう言えばレリスも25歳、貴族なら結婚しててもおかしくない年齢だよなぁ

 軍師って立場だし、そう言う話は多いんじゃないの?


「……ふむ」


 レリスは少し考えて……


「そうですね、そろそろ所帯を持つべきでしょうね」


 そう答えた

 レリスも見合いとかするのかな? 参考にさせてもらおうかな?


「そんな訳で、ヤンユ、結婚してくれ」

「ええ、良いわよ」

「はい、決まりました」


『………………はぁ!?』


 僕と兄さんは同時に驚いた


「ちょまっ!? えっ? はっ?」


 兄さんがレリスとヤンユを交互に見る


「おや? カイト様、気付いてなかったんですか?」


 レリスが言う


「気づっ!? いや、ちょ……待って、ちょっと茶を飲むわ」


 グイッと紅茶を飲み干す兄さん

 そして、大きく深呼吸して……


「ふぅ……よし、落ち着いた……それで? 何時から付き合ってたわけ?」

「ヤンユが成人してすぐですよ」

「私の方から話してて、その日から関係を持ってましたね」

「……あっ、だからティンクに……成る程、納得した……」


 兄さんは何かわかったって顔してる

 なに? 思い当たる事でもあったの?


「幼い頃から知った仲ですし、気心も知れてますし、四六時中会える環境でしたから」

「でも、なんかこう……事務的な感じに感じるんだけど?」


 兄さんがそう言うと


「カイト様、レリスは2人っきりだと情熱的ですよ」

「ヤンユ、余計なことを言うな」

「あーそういう、因みにどんな感じ?」

「それはむぐっ!?」


 レリスがヤンユに駆け寄って口を塞いだ


「ヤンユ、親しき仲でも知られたくない事ってのはあるんだ……頼むから黙っててくれ」

「むーう」


 ヤンユが両手を挙げる

 レリスが手をはなす


「そんな訳で、内緒です」

「そっか、残念だ、からかうネタにしたかったが……」


 これだけで2人の仲、てか相性が合うのはなんとなくわかった


「うーん、参考にならないなぁ……」


 幼なじみ……そういう関係なら、僕もヤンユくらいしかいないし……


「まぁ、試しに何人かと会ってみるか? それで何かわかってくるかもしれないし」

「それしかないかなぁ……」


 仕方ない、それでいこう……


 ・・・・・・・・・


 そんな訳で、僕はレリスと相談して、見合いの日程を決めていった


 その後、レリスとヤンユの婚姻も発表された


 ……そう言えば、レムレは昔、ヤンユに惚れてたよな?

 大丈夫かな?


 そう思ってたら


「えっ? 確かに好きでしたけど、もう振られて大分経ちますし、吹っ切れてますよ? それに……相手がレリスさんなら納得できますし」


 って言ってた

 強いなぁ……


 そして僕は見合いに挑戦していく


 レリスが同行してくれて、相手方と会い、その後、僕と相手だけで少しの間、2人っきりで過ごす


 そんな感じで数件の見合いをした



 結果は……


「なに? 全部断ったの?」


 ユリウスが言ってくる


「うん、駄目だった」

「理由は?」

「何だろ……魅力的な人達だったけどさ……彼女達は僕を見てなかったんだよね」

「うん?」

「アルス・オーシャンって言う、カイト・オーシャンの弟を見てて……アルスって個人を見てくれてないって感じたんだ」

「あー、そういうあれね」

「見合いは僕には合わないってのがわかったよ……」

「結婚した後に、愛情が生まれるって話も聞いたことあるぞ?」

「絶対じゃないでしょ?」

「結婚に夢見すぎ」

「そう言われても……僕だって、結婚するなら兄さん達みたいに仲の良い夫婦関係になりたいからね」

「そうかい……あ、結婚と言えば、レリスとヤンユの新婚さんってどんな感じよ?」

「? 今までと同じ風に感じるけど? 今までも同じ屋根の下に住んでたんだし、結婚しても変わらないみたい……変化なんて同室になったくらいじゃないの?」


 僕がそう言うと、ユリウスはニヤリと笑った


「観察が足りないなアルス」

「へっ?」


「1つ、何時も夜中の3時には起きて仕事を始めていたレリスが、最近は5時くらいから起きてるらしい……警備の兵士が言ってたぞ」

「……」

「2つ、ヤンユの表情が普段よりもかなり柔らかいらしい……メイド達から聞いた」

「……」

「3つ、レリスの手首近くに……キスの跡があった、あれは相当よろしくしてるな」

「ユリウス、そこまでいくと気色悪いよ?」

「僕も言ってて思ったよ……だけど、2人が仲良し夫婦なのは間違いないだろ?」

「まぁ、うん」

「そんな訳だ、あんまり悩まずに出会いを待ってみたら?」

「出会いね……」


 そんなのあるのかな?



















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