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第250話 バルバルバでの騒動

 ーーーバルバルバーーー



 西方の領であるバルバルバ

 バルバルバの首都である『コムラン』の城

 そこの資料室に彼は居た



「おっと、これだこれだ」


 そう言って、彼は……シャリオンは探していた資料を手に取る

 バルバルバの軍師である彼は、やることが多いのである


「ふぅ、随分時間がかかったな」


 シャリオンは資料に眼を通しながら、資料室を出る

 そして、自分の執務室に向かって歩く


「よぉシャリオン!!」


 そんなシャリオンに向かって、大男が声をかける


「おや? ブランク殿? どうされたので?」


 シャリオンはブランクを見る


「いや、歩いていたらお前の姿が見えたからな! 声をかけてみた! 相変わらず小さいな!! 飯食ってるか?」

「貴方から見れば、どんな人間も小さいでしょう?」


 シャリオンはそう答えると、資料に視線を戻した


「なんだ? 随分と素っ気ないな?」

「貴方が失礼なことを言うので、気分を害しただけです」

「なんだ怒ったのか? 飯奢ってやるから機嫌を直せ!」

「結構です」


 そんな風に歩いていると


「あっ!! ブランクさん居たぁ!!」


 1人のメイドが駆け寄ってくる


「ブランクさん! 訓練の時間ですよ! 兵士の人達が待ちくたびれてますし、『ピックン』さんが怒ってます!」

「っと! もうそんな時間か! マズイマズイ! じゃあなシャリオン! 今度一緒に飯を食おう!」

「遠慮します」


 ブランクは走っていった

 シャリオンは冷ややかな眼で見送る


「シャリオンさん! 何か必要な物はありますか?」


 メイドが聞いてくる


「ああ、今はとくに……いや、紅茶を執務室に運んできて貰おうか」

「はい! わかりました!!」


 断ろうとしたが、張り切ってるメイドを見て、シャリオンは紅茶を頼んだのだった


 ・・・・・・・・


 執務室でシャリオンは資料を読みながら紅茶を飲む


「ふぅ……」


 そして、窓に視線を移す

 穏やかなひととき……平和な時間


「…………なんか妙に兵が走り回ってるな」


 外を見ていると、走り回る兵が眼に入る

 訓練をしてるようには見えない


「ここに居たか」

「……父上」


 シャリオンの執務室に、前軍師であるシャンクルが入ってきた


「んっ? この間のイーリアス盆地の資料か?」


 シャンクルはシャリオンの読んでいた資料を見る


「ええ、少し引っ掛かってまして」

「ほぅ? 何がだ?」


 シャンクルはシャリオンを見る、その眼を愉快そうだ


「……」


 シャリオンは『試されてる』っと感じて、一度深呼吸をしてから話し出す


「先ず、この洪水です……イーリアス盆地は山が多いですが、3万の軍勢を飲み込む程の洪水なんて、起こる筈がありません」

「実際に起きてるが? それにこの日は数日にかけて大雨だったのだ、洪水が起きても不思議ではあるまい?」

「確かに大雨でした、しかし、イーリアス盆地程の広さがある場所なら、1つか2つ川が決壊しても、洪水になんてなりません……木々に止められ、勢いを無くしますからね……土砂崩れも滅多に起きる地盤でもありません」

「しかし、実際に『洪水が発生した』この事実が有る限りはそれが全てだろう?」

「私は洪水が起きたことを否定はしませんよ……私が言いたいのは、これは自然に起きた天災ではなく……人為的に起こされた『人災』だと思っています」

「ほぉ~」


 シャンクルは満足そうに聞く


「しかし、それをカイト・オーシャンがやったとは思えないんですよね……戦の時の彼の指揮は無駄が多く、軍は混乱してましたから」


 シャリオンは紅茶を飲み干す


「洪水を起こすには3つの条件がありますし」

「3つの条件、『水』『森』」

「そして『タイミング』……水は大雨が解決し」

「水や土砂を止める森は、伐採する事で解決した」

「しかし、タイミングですよ……全ての川を同時に決壊させないと……3万の大軍を流せません……どんなに計算しても、不可能だと思うんですけどねぇ」

「お前には出来ないか?」

「今の私には無理です、まだそんな領域ではありませんから……父上なら出来るのでしょうね、なんせ『三賢者』ですし」


 三賢者……人知を超えた才を持つ3人の賢人

 昔は、誰か1人でも配下にすれば、天下が取れるとまで言われていた


 1人は北方の何処かに住んでいるらしい……人を思うように操るらしい

 1人は南方で暮らしている、天候を自在に操るとか……


 そして最後の1人は……


「昔の事だ、今はただの老いぼれだ」


 多くの軍略を身に付けた『生きる策』と呼ばれたシャンクル

 しかし、主であるメーリスは野心が無く……天下を取るために動こうとはしなかった


「でも、出来るでしょう?」

「まあな」


 シャリオンは溜め息を吐く


「しかし、シャリオン……もう1人居るだろ? それが出来る人間が」


 シャリオンは眼を丸くした

 そして、懐かしい兄弟弟子の名を出した


「……まさか、メイリーですか? 彼がオーシャンに居ると?」

「間違いないだろう、私の教えを全て吸収したあの子なら……出来る」

「そんな……いや、でも……そうか、戦の後に仕官したなら……」


 ブツブツと呟きながら考えを整理するシャリオン


「そうか、それなら全部納得できる……メイリーがオーシャンに……」

「辛いか? お前、可愛がっていたからな」

「いえ、寧ろ嬉しいですよ……あの子と軍師として知恵比べが出来ますからね……父上以外に、あの子に太刀打ちできそうなのは、私くらいでしょう」

「そうかそうか」

「……ところで父上、その為にここに来たわけでは無いのでしょう? 何用ですか?」


 シャリオンはシャンクルに問う


「おお、そうだった、メーリス様が隠居されたから、その話をしに『はぁ!?』……なんだ? 聞いてなかったのか?」



 シャリオンの平和な時間は終わりを迎えたのだった












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