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第24話 国境にて

 メルクの都を出発して、道中の宿を利用しながら進んで10日経過した


 あの日からティンクは夜寝る時は俺と寝ている

 俺と一緒だと怖くないんだそうだ


 うん……大分気を許してくれてるのは嬉しい

 でもさ……


「あのさ、ティンク?」

「はい!どうしましたかカイトさん?」

「なんで俺の膝に乗ってるの?」

「こうすれば喜んでくれるとヤンユさんが……」


 おいヤンユ、なに吹き込んでんだ?

 こら、目をそらすな!!


「良いではありませんか、坊っちゃんと奥方様は夫婦なのですから」

 オルベリンがヤンユの肩を持つ


「そうだけどさ……」

「め、迷惑でしたか?」

 不安そうなティンク……あーもう!


「構わないよ……」

 全く……この数日で甘えん坊になっちゃって!

 ……いやこれは喜ぶ事か?

 まあまだ笑顔は見れてないんだけどな……


「…………」


 今のティンクの行動も俺に嫌われたくないって気持ちでの行動なんだろうな

 ……そう思われるようになれただけ前進か?


「もうまもなく国境です」


 ヤンユが外を見て言う

 そっか……もう国境まで来たのか……帰りは速いな

 まあ賊の襲撃とか無かったからな


 行くときは何回かあったけど……

 まあ国境を越えたなら安心だろうな、オーシャンは治安良くしてるし

 うん、一安心


「なんだ貴様ら!」


 御者の声

 止まる馬車


「…………」


 俺は小窓から外を見る……よし、国境はまだ越えてないからセーフ!

 まだヤークレンの治安が低いんだって言い訳できる!


「何者だ!」


 俺がそうしてる間にオルベリンが外に出た


「よぉ、この馬車、カイト・オーシャンのだろ?」


 男の声


「んっ?俺が狙いか?」


 どうするか……本来なら馬車に隠れているべきだが……


「…………ぐす」

「大丈夫ですから」


 怯えているティンク

 ……相手が何人いるかわからないが、もし馬車に入られたら危害が加えられるな……

 仕方ない、出るか

 オルベリンもいるから何とかなるだろ



「俺に何のようだ?」


 俺は馬車を出る


「坊っちゃん!」

「悪いな」


 オルベリンが俺の側に立つ

 御者は……よし、無事だな


「あんたがカイト・オーシャンか?」

「いいえ、人違いです」

「そうか……ってさっき返事したよな!?」


 ノリツッコミされた


「はぁ、だから俺に何のようなんだよ?」


 俺は男を見る

 男の周りには5人の男がいる……合計6人か、これならオルベリンが殲滅してくれるな


「あんたに戻られると困る人が居てね……ここで死ね!!」

 そう言って男達は武器を構えた

 

「オルベリン!」

「はっ!」


 オルベリンが素早く剣を抜き駆け出す


「ふん!」

「ぎゃあ!?」

「ぐぅ!?」


 そして男を2人斬り捨てた

 あと4人だな


「ちっ! やはりこの爺が厄介だな……てめえら!出てこい」

 えっ?


 ガサガサと茂みから

 物陰から

 地面の中から……そんなところに隠れてるの大変じゃなかった?



 まあゾロゾロと敵が出てきた


「むぅ!」


 オルベリンが俺の側に戻る


「オルベリン、お前が強いのは知ってるさ!だから100人も人を集めた!」

「たかが100人でワシを倒せると思うのか?」

「いいや? あんたは化物だからな……でも、カイト・オーシャンを殺せば俺達の勝ちだ!てめえら!かかれ!」


 周りの敵が襲いかかってきた


「ふん!」


 オルベリンが剣を振り、3人を同時に斬る


「うぉ!この!」


 キィン!


 俺も剣を抜いて応戦する


「ふん!」

「くっ!はぁ!」


 ザシュ!


「ぐぅ!?」


 目の前の男を斬る

 やった、勝てた……けどヤバい!こんな男に苦戦する俺だぞ?

 周りにはまだ敵が沢山襲ってくるし!

 あ、オルベリンがまた何人か斬った!

 けどうぉぉぉぉ!?ふ、2人がかりでくるな!?


「くぅ!いてぇ!?」


 2人の男の剣を防いだが、衝撃で後ろに下がり、馬車に激突した


「ひっ!」


 中でティンクの驚く声が聞こえた……

 ああ、ヤバい、反対側も守らないと馬車の中の二人が危ない!!

 オルベリンは!?


「邪魔だ!!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 ……20人くらいに囲まれてる!?

 いくらオルベリンでもあれを一気に蹴散らしてこっちに来るのは無理だ!


「死ねぇ!」

「うおっ!?」


 2人のうち左の男が斬りかかってきた


 キィン!

 ガッ!


 剣で弾く

 男の剣が馬車の側面に刺さる


「ぐっ!」

 男は剣を抜こうと引くが抜けない


「この!」

「ぎゃ!」


 その隙に斬る


「てめぇ!」

 もう片方が襲いかかってくる


 ゴン!


「うぎゃ!?」


 しかし頭上に瓶をぶつけられて気絶した


「御者ナイス!」

「は、早く逃げましょう!?」


 御者が言うが……


「抜けれるのか!?」

「…………」


 黙るなよ!?


「きゃあああああ!!」

「!?」


 ティンクの悲鳴

 馬車の扉を開くと反対側から引きずり出されるティンク

 ヤンユが馬車の中で頭から血を流している

 殴られたか!?


「ティンク!!」


 俺は馬車の中を抜けて反対側に出る


「なんだこのガキ?こんなの居たか?」

 ティンクを引きずり出した男がティンクを見ながら言う

「い、いや……」


 ティンクは恐怖で泣いている


「彼女を離せ!」


「……こいつお前の女か?」

 男がニヤリと笑う


「カイト・オーシャン!コイツは人質だ!傷つけられたくなかったら剣を捨てろ!!」

「!?」


 あーくそ!人質にされたか!


 俺は剣を地面に捨てる


「なんだ?あっさり捨てたな?」

「当たり前だろ……」

「…………カイトさん」


 ティンクは泣いている


 さて……どうする?

 オルベリンは反対側の方で囲まれてる

 ヤンユは馬車の中で気絶してる

 ティンクは人質

 御者は戦力としては考えられない


 ヤバい……詰んだか?


 くそ、なんでこんな所に大人数で出てくるんだよ!!

 何か……何かないか?


 ザシュ!


「ぐぅ!?」


 背中に激痛が走る

 前のめりに倒れて後ろを見ると、さっき瓶で殴られた男がナイフを持っていた

 背中を刺されたか?


「よし!これで仕事は終わりだ!!」

 俺の周りに4人……いや5人の男が群がる

 多分、武器を振り上げているな

 くそ、痛くて思考が纏まらない


「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」


 ティンクの叫び……なんだ、大きな声出るんだな……


 ドス!

 ブシュ!


 刺さる音

 血が吹き出る音


 ああ……刺されたのか……そっか……俺……死ぬのか



 ……………ん?

 刺されたにしてはさっきの痛みしか感じてないぞ?

 てか意識はまだあるぞ?

 普通意識なんて無くすよな?

 あれ?


「かっ……ああ?」


 そんな呻き声が聞こえた


「貴様ら……覚悟は出来ているかぁぁぁぁぁ!!」


 怒号

 オルベリンではない……でも聞き覚えのある声


 えっ?なんでここにいるんだ?


「……ヘル……ド?」

「カイト様!!暫くお待ちを!!ぬおおおおお!!」

 ヘルドの槍が賊を貫く


「なっ!?貴様!この女が見えないのか!!」

「はいは~い!女の子を人質にするのは卑怯っすよ?」

「へっ?へぶ!?」


 前を見るとサルリラが男の首を絞めて気絶させた


「カイトさん!!」

 ティンクが俺に駆け寄る

「カイトさん!!カイトさん!死なないで!!」


 泣きながら俺の傷口を押さえる

 血を止めようとしてるんだろうけど

 正直かなり痛い!!


「お嬢さん、それじゃダメっすよ?包帯を巻いとくっす」

「サルリラ、カイト様達は任せたぞ!」

「はいっす!」

「オルベリン!!遠慮するな!暴れるぞ!!」


「むっ!ヘルドか!助かる!!ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 オルベリンの咆哮

 響く賊達の断末魔


「た、助かった……」


 とにかく助かったことだけはわかった



 ・・・・・・・


 ヘルドとオルベリンにより賊は全滅

 リーダー格の男を捕まえた


「答えろ!誰の命令だ!!」

 オルベリンが怒鳴る


 因みに俺とヤンユはサルリラによって止血された

 近くの村に着いたら医者に診てもらうつもりだ


「…………」


 男は黙る


「おい!答えろ!」


「……ごふっ!」

「むっ!?」


 男が吐血する

 ボトッと口から何かが落ちた


「…………舌?」

 俺はそれが舌だと判断した


「ぐっ!ごぶ!ごぼ!」

 男は呻く、血を吐きながら……

「…………」

 絶命した


「舌を噛み切ったか……くっ!」


 オルベリンは悔しそうだ


「取り敢えず村に行かないっすか?」


 サルリラが言った


「ああ、そうしよう……っ!」

 動くと傷に響くな


「カイトさん!」

 ティンクが俺を支える

「悪いなティンク……」


 守るって言ったのにこの体たらくだ


「ところでカイト様、この子供は?」

 ヘルドがティンクを見て言う


「あぁ、俺の嫁」

「ああ……成る程、嫁ですか……」

「カイト様の奥さんっすね!!」

 …………………………

『はぃぃぃぃ!?』


 ヘルドとサルリラの叫びが響いた

 俺の傷にも響いた


 ・・・・・・・・・


『ベッツ村』


 ヤークレンとの国境に1番近くにある村だ


 俺とヤンユ、傷は無さそうだがティンクとオルベリンは医者に診てもらう


 俺は背中の傷を縫われた

 ヤンユは包帯を巻かれた

 ティンクは身体中の傷跡に薬を塗られた

 オルベリンは無傷だった


 そして今は宿でヘルドとサルリラにティンクの事を話していた



「そういうことっすか……なら納得っす!」

「しかし……レリスが怒りますな」

「それは言わないでくれ……」


 俺が1番重傷らしく……最低でも3日は通院しろと言われた

 はぁ……この村に3日も滞在しないといけないな


「それにしても何でお前らは国境に?ヘイナスに居る筈だよな?」


 俺がヘルドとサルリラに聞く


「実は……」


 ヘルドが事情を話す


 レリスの事

 マイルスの事


 ……………


「成る程な、ならあの賊はマイルスの刺客で間違いないな……」

「坊っちゃん、マイルスを処刑しますか?」


 オルベリンが俺に聞く


「いや駄目だ……証拠が無い」

 マイルスが刺客を雇ったのは間違いないが……それを証明できない

 だからマイルスを裁くのは無理だ……くそ!


「まあ、レリスにも感謝しないとな……お蔭で助かった」

 勿論2人にも感謝だ


「まあ今日はもう休もう……流石に疲れた」

「その前に身体を拭かせていただきます」

 ヤンユが俺に言う

 いや良いからね?君も休んでてよ?



 ・・・・・・・


 護衛はヘルドとサルリラがやる事になり、オルベリンとヤンユはそれぞれ部屋に戻らせた


 そして俺は……


「よい……しょ」

「…………」


 ティンクに上半身を拭かれていた

「わたしがやる」と言って断れなかった


「……はぁ」

「カイトさん?どうしましたか?」

「いや、自分が情けなくてな……守るって言ったのに怖い思いをさせてしまった」

「カイトさんはわたしを守ってくれましたよ?」

「……そうか?」

「わたしが捕まった時……カイトさんはすぐに武器を捨ててくれました……わたしの安全を優先してくれました……」


 ティンクが俺の胸元に頭を押し付けて抱きついてきた


「あの時……怖かったけど……嬉しかったんです……カイトさんは……わたしを本当に守ろうとしてくれて……わたしを……わたしなんかを……」

「ティンク……なんかじゃないよ……君は俺の妻なんだ……夫が妻を守ろうとするのは当たり前だろ?」

 まあ情けない方法だったが……俺がもう少し強ければ不意をついてティンクを助けて賊を殲滅できたのに……


「カイトさん……」

「ティンク……」


 …………………


「コホン!おい!サルリラ!覗いてるのバレてるからな!!」

「ひぇ!?すいませんっす!!」


 全く!!

 

「あーティンク、そろそろ休もう」


 俺は服を着る


「そ、そうですね……」


 ティンクは赤くなりながらタオルとお湯を入れていたタライを片付けた


 ・・・・・・・


 3日後、出血も止まって、傷も回復を始めたから医者に許可をもらって俺達はベッツ村を出発した




「……あーティンク?」

「はい!どうしましたか?」

「……なんか近くない?」


 ティンクは俺の膝の上に座っている

 ティンクのお尻が……まあ俺の下半身に触れているのだが……

 べ、別になんも感じてはいないぞ!?

 ただ、なんか距離感が凄く近くないか?


「えっ?妻はこうするものだとサルリラさんが……」

 俺は小窓から外を見て、馬に乗ってるサルリラを見る


「…………」


 おい、こっちを見ろや


「ティンク、本気にするな、こういうのは……あー……うん、二人っきりの時にだな?」

「二人っきりなら良いのですか?」

「あ……いや……そのだな?」

 なんて言えばいいんだ?

 ちょっと!オルベリン!ヤンユ!助けて!!


「……ふふ」

「(ニッコリ」


 笑ってないで助けて!?



 こうして俺達はヘイナスに向かったのだった














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