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第241話 アルスの成長・別れ

 翌日


「……んん?」


 廊下が騒がしくて、眼が覚める


「なんだ?」


 僕は部屋の扉を開ける


「???」


 宿屋の廊下には兵士達が数人立っていた

 更に、ブライがスーの部屋から出てきた


「な、何事?」


 僕がブライに声を掛ける


「ジュラハル大陸からの迎えが来た」

「えっ? もう連絡がとれたの? 随分早いね?

 」

「いや、まだ連絡はとれていなかった、どうやら、向こうはずっとスーを捜索してたようでな……気になるなら港に行ってみろ、儂らはスーを連れていく」


 そう言われて、気になった僕は港に向かった



 ・・・・・・・・・


 港に着くと、見慣れない船が見えた

 これが、ジュラハル大陸の船なのは良く分かった


「でっか……これがジュラハルでは普通の船なのか?」


 港に停められてる、パルンの船の倍はある……


 ジュラハルの船の側では、メルノユがジュラハルの者と思う人と話をしているのが見える


「あれ? テリアンヌ?」

「!?」


 船に近寄ると、テリアンヌの姿が見えた

 ……なんで昔みたいに鎧を着込んでるんだ?


「ア、アルス君! お、おはようございます!!」

「おはよう……どうしたの? その格好……」

「えっと、これは……その、ほら、ジュラハルの人に嘗められないようしてるんです!」

「そんなことしなくても、大丈夫だと思うけど?」


 まぁ、本人が気にしてるんなら、仕方ないか


「それにしても……本当にデカイ船だな」


 近くで見ると……圧倒されそうだ


「見てください、船の底の方を、多くのオールが見えますよね?」

「ああ、びっしりと船内から出てるな」

「どうやら、あれで漕いで、風に逆らって進めるみたいです」

「へぇ、あの大きさなら1本を動かすのに人手が必要だろうに……いったいどれだけ乗ってるんだ?」

「100は越えてると思いますよ」

「……」


 そんな風に船を眺めていたら


「やっほー! ご両人!」


 スーがやって来た


「スー、これは君の迎えで間違いないの?」

「間違いないね、見知った顔が多いし」


 スーがそう言って船を見上げると、甲板からジュラハルの兵士がスーに手を振っていた

 スーは手を振り返す


「じゃあ、お別れだね」


 数日くらいの付き合いだけど、別れるとなると、少し寂しく感じる


「まあ、生きていたらまた会えるって!」


 スーはそう言って笑う


「おお、ここに居ったか」


 メルノユがやって来た


「スーよ、確認がとれた、お主への迎えで間違いないぞ」

「ええ」


 スーがメルノユに向き合う

 そして、スーの雰囲気が変わる、いつものふざけたような態度から、真剣な表情になり……


「メルノユ・パストーレ殿、貴方にはとてもお世話になりました……感謝しております」


 そう言って頭を下げる


「よいよい、困った時はお互い様じゃからな、またいずれ会おう」


 そう言ってメルノユは城の方にあるい歩いて行った


「さてと……ボクちゃんもそろそろ行くかね……あ、2人とも一緒に船の側まで来る? 皆に紹介しようか?」

「そうだね、スーの仲間か……少し気になるし、会うだけ会ってみようかな」

「わ、私は……その、遠慮しておきます……」

「そうかい? じゃあアルス!」


 僕はスーと一緒に船に更に近寄る


「貴方と言う人は!! 何をやっていたのですか!!」


 いきなり怒鳴られた

 さっきまで、メルノユと話していた人がスーに怒る


「ルマっち、そんな怒らないでよ、これは事故でね?」

「1人で出掛けるなとあれほど言いましたよね? 貴方の脳味噌はどんな構造をしてるのですか? 1度その頭を開きましょうか?」

「いだだだだ!?」


 男性がスーの頭に手刀を連続で叩き込む


「おや? そちらの方は?」

「んっ? アルス、ボクちゃんの命の恩人」

「アルス・オーシャンです」

「これはご丁寧に……私は『ルイマルド・パスタルオス』この馬鹿の部下になります」

「馬鹿って言った!?」

「うるさいですよ馬鹿」

「酷いぞルマっち!?」


 このやり取りを見て、この2人の仲の良さが良く分かった


「この馬鹿の相手は大変でしたでしょう? 色々と苦労をお掛けしたかと」

「いえいえ、そこまでは……」


 ……スーの信用が無さすぎる


「それで? ルマっちが迎えに来てくれたんだよね?」

「いいえ、私だけじゃありませんよ?」

「えっ?」


 ルイマルドがそう言うと、甲板から何かが飛び降りてきた

 僕とスーの目の前に着地する

 その瞬間、スーとルイマルドが、飛び降りてきた……人に向かって跪いた


「ま、まさか、貴方様が動いてくださるとは……」

 スーが跪きながら言う

 僕は目の前の人を見る……


 ……男性? 女性? 中性的な人だった

 歳は……若いと思う、成人したばかりか、まだしてないのか……


「よい……友の身を案ずるのは、当たり前のことだ」


 あ、男だ……声でなんとかわかった


 それにしても、なんだこの感じ……

 威圧感……っていうか、なんか凄みがあると言うのか……


「彼が世話になった様だな……礼を言わせて貰う」


 彼がそう言って、右手を差し出す


「対したことはしてませんよ」


 僕はその手を握って、握手する


「何か、感謝の品を授けたいのだが」

「いえ、結構ですよ」


 僕はなにもしてないし……


「あ、それならボクちゃんから……ちょい待ちよ」


 スーはそう言うと跳んで船に乗った

 そしてすぐに戻ってきた


「これこれ、アルス、受け取ってくれ」

「……刀?」

「それは国宝『チヌラシ』、ボクちゃんの趣味で集めてた刀の一振り」

「そんな立派な物を受け取れるわけが……」

「いやいや、受け取って貰わないと困るんだって! アルス、君が思ってるよりも、ボクちゃんを助けた事は、ジュラハルの……『アズマ』にとっては大きな恩なんだよ」


「……アズマ?」

「ボクちゃんが仕えてる国、ほら、受け取って」


 そう言われて、無理矢理渡された

 ……なんだこの刀……なんか重い……なのに、妙に手に馴染む


「それじゃあ、そろそろ……」

 ルイマルドと男性が船から降ろされた縄梯子を……無視して跳んで船に乗った

 いや、縄梯子を使えよ……


「じゃあアルス……お別れだ」

「うん、じゃあ……さよな……いや、またね、スー」

「ああ! またな! 昨日、ボクちゃんが言った事、忘れるなよ? 君なら出来るさ」


 そう言ってスーは縄梯子を……無視して跳び乗った

 だから縄梯子……ほら、兵士がションボリしてる!!


 船が動き出す

 スーが甲板から手を振ってる

 僕も手を振る


 船が離れていく

 そして、見えなくなっていった



 ・・・・・・・・・


 ーーースー視点ーーー


「お前がチヌラシをやるとはな……余程、あの男が気に入ったのか?」


 ボクちゃんに彼が話しかける


「ええ、とても才能を感じたので……」


 そしてボクちゃんは彼に跪き……


「改めて……四神(ししん)朱雀(すざく)……これからも帝に忠義を尽くします」


「うむ、期待している、我が友、朱雀……スーと呼ばれていたのは朱雀からとったのか?」

「はい、流石に朱雀と名乗るわけにはいかないので」


 まあ、本名を名乗っても良かったけど……四神・朱雀を襲名してからは捨てたからね……



「ところで帝、ボクちゃんを貴方様が迎えにきたのは、心配していたって理由だけじゃないですよね?」

「うむ、身を案じていたのは事実だが……対に魔王が動くようだ」

「なるほど、いよいよ決戦ですか……魔王を打ち倒し、ジュラハルを手に入れましょう」

「そうだな、そして……ジュラハルに平和をもたらそう……」


 ・・・・・・・・・・



 ーーーアルス視点ーーー


「さてと、そろそろオーシャンに帰る準備をしなきゃね」


 マーレスとテリアンヌの休みもそろそろ終わりの筈だ

 帰る準備をしなきゃ



「…………」


 僕はチヌラシを見る


「……帰ったら、訓練に復帰できる筈だ……強くなってみせる……」




 僕は決意を新たにして、宿に戻るのだった








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