第240話 アルスの成長・本質
パルンに到着して、馬車がパルン城に到着した
僕は眠ってるテリアンヌを起こす
「テリアンヌ、城に着いたよ」
「んん……ふぁ?」
寝惚けてら……
「城に、着いたよ!」
「あっ……あっ、着きましたか!」
起きたみたい
先に馬車を降りる
「ほら、足下、気を付けて」
「ありがとう、アルス君」
テリアンヌの手を取って、馬車から降りるのを助ける
「さてと、僕はこのまま宿に戻るよ」
「えっ? 城には寄らないのですか?」
「うん、風呂も食事も宿で済ませられるし、それに気になることがあるからね……」
頭にスーの顔が浮かぶ……
あいつ、宿に戻ってるのか?
「わかりました……私は父様の報告してから休みますので……何かあったら話してくださいね?」
「ああ、じゃあここで……」
「聞いたぞアルス? 俺の可愛いテリアンヌとデートしたって?」
「テリアンヌ! 早速何かあったぞ!?」
背後からマーレスが、僕の左肩を掴んできた
いつの間にやって来た!?
「えっ? デート?」
テリアンヌは首を傾げている
「ご、誤解だマーレス!! ただ街を案内して貰っただけで……」
「知ってるかアルス? 年若き男女が、2人っきりで仲良く過ごすのは……しかも買い物をするのは、デートって言うんだよ!! そうだよな! ユルクル!!」
「えっ? 何の話?」
丁度、城から出てきたユルクルが戸惑う
「あ、ユルクル……お兄様が……」
テリアンヌが簡単に説明する
「……ふむ、それはデートなのでは?」
ユルクルはそう答える
「ほらみろ!! アルス! 何か言い残すことはあるか!」
「待て待て待て!? デートって言うのは恋仲の関係で成立するやつだろ!? 僕もテリアンヌも特別な感情は持ってない!! だからこれはセーフだ! デートじゃない! だから剣を仕舞え!?」
僕がそう言うと、マーレスの視線がテリアンヌに移る
ユルクルもテリアンヌを見る
「だっ、そうですが?」
「えっと…………………」
テリアンヌが戸惑う……そして
「……その、えっと……あの…………はぅぅぅぅ……」
そして真っ赤になった
「今、意識したみたいですよ?」
「判決! 有罪!!」
『有罪!!』
「増えたぁ!?」
兵士達がノってきた
「覚悟はいいなぁ?」
「お前テリアンヌ関係だと暴走するよな!?」
「ごはっ!?」
僕は右足を後ろに振り、マーレスの股間を蹴る
マーレスの手が僕を離した瞬間に、全力で僕は逃げる
「後で覚えとけよーー!!」
後ろからマーレスの叫びが聞こえたが、無視する!!
・・・・・・・・・
ーーーテリアンヌ視点ーーー
「くそっ! 逃げられた!」
お兄様が悔しそうにする
「マーレス、悪ノリが過ぎるんじゃないのか? テリアンヌ様もアルスも、救助活動で疲れてるんだぞ?」
ユルクルが呆れた視線でお兄様を見ている
「こうでもしないと引き摺るだろ?」
あ、お兄様なりに気を遣ってたんですね?
「本音は?」
「テリアンヌとデートしたのが羨ましい」
…………
「テリアンヌ様、呆れるのはわかりますが、その目は止めましょう、マーレスが死にかけてます」
「う、うん……」
「テリアンヌ様もお疲れでしょう? メルノユ様への報告は私が代わりにしておきますので、もうお休みください」
「良いの?」
「その為に来たのですから」
偶然では無かったんですね
「では、お言葉に甘えて……あとお兄様……」
「どうした? アルスに何かされたのか?」
「暫く私の側に近寄らないで下さいね」
「ぐっ!?」
「あ、死んだ……」
私はユルクル達と別れて城に入った
…………あ、駄目だ、また顔が熱くなる
「デート……」
そんなつもりはなかったけど……そうなるんだよね?
どうしよう、明日からアルス君の顔、マトモに見れないかも……
・・・・・・・・
ーーーアルス視点ーーー
「はぁ、疲れた……」
マーレスが追い掛けてないか、ビクビクしながら宿に到着した
部屋に戻る前に、浴室で泥を落として、服も着替える
そして……
「やっほー♪」
「やっぱりと言うべきか……何で僕の部屋に居るかなぁ……」
「どうせボクちゃんに用があると思ってね」
「…………」
僕はベッドに座る
そして椅子に座っていたスーを見る
「単刀直入に聞くよ、スーは何者なんだ?」
「前の言ったっしょ? ジュラハル大陸の人間だって」
「ジュラハル大陸で、何をしてたのか聞いてるんだけど?」
「まぁ、軍人だよ軍人、主人に仕えて、戦で戦ってたね」
「一兵士って実力じゃないよね?」
「まあ役職はついてるね、でも、それは言わなくても問題ないよね? ボクちゃんがここに来たのは、本当に偶然なんだから」
「本当に? 偶然嵐にあって、偶然ここに来たって? それを信じろと?」
「信じろとしか言えないね、真実なんだから、ボクちゃんだってそれなりに忙しい身だからね」
そう言うと、スーは天井を見上げる
「正直、直ぐにでも帰りたいんだよボクちゃんは、主人が心配だからね……本当なら、無理矢理船を奪ってでも良かったんだ」
そう言って僕を見る
「でも、そうしたら、君への恩を仇で返すことになる……それは嫌だから大人しく滞在してるんだよ?」
「…………」
その目は、普段とは違う、真剣な目だった……
「……わかったよ、疑ってゴメン」
「どうもね♪」
スーはニヤリと笑った
「じゃあ、もうスーが何者かってのはいいや、話す気も無いんだろ?」
「わかってらっしゃる♪」
「だから別の事を聞きたい、どうやって岩を斬ったんだ?」
「えっ? 普通に斬っただけだけど?」
普通にって……
「普通はそんな事は出来ないんだけど?」
「いやいや、ジュラハル大陸じゃ出来る奴は多いよ?」
嘘だろ……ジュラハル大陸の人間ってどうなってるんだよ……
「ここでも、何人か出来そうな奴は見たけどなぁ? 本人は気付いてなさそうだけど」
「そ、そうなの?」
いったい誰なんだ?
「それで? やり方を聞きたい感じ?」
「まぁ、うん……知りたい」
「といってもなぁ……鍛えてたら自然に出来る事だしなぁ……」
そんな、生き物が呼吸をするくらい当たり前って感じで言われても……
「アルスだって出来そうだけど?」
「無理でしょ」
「試してないのに無理って言うんだ?」
「…………」
スーは椅子から立ち上がる
「身体の方は鍛えられてきてるんだ、何か出来ない理由があるなら……それは精神的な理由かもね」
そう言ってドアに向かう
「心・技・体、心と技術と身体、この3つが交わった時、人間は本来の力を発揮できる……ジュラハルではそう教えてるよ、じゃあおやすみ~」
そう言ってスーは部屋から出ていった……
「心・技・体……」
…………僕は、まだ何か悩んでると言うのか?
自分が弱いって理由以外で?
「…………うーん」
……全然わからない
……わからないよ