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第236話 忘れてたけど貴族です

 ーーーレムレ視点ーーー


「……えと、あの……」


 どうしよう、僕は今、凄く困ってます



「レムレ殿、家の娘はどうですか?」

「いえいえ、家の子とぜひ!」


 カイト様の護衛の1人として、パーティーに参加したんだけど……

 数人の貴族の方達が、僕に身内の女性を紹介しようとしてくる


「す、すいません、僕はまだ未熟ですので……」


 後退る……怖い……


 チラリと視線を動かして周りを見る

 誰か助けて欲しい……


「そう言わずに! さぁさぁ!」


 押しが強い!!


「はいはいそこまでそこまで、行こうぜレムレ」


 困ってたら、ユリウスがやって来て、僕の手を引いて、貴族から離してくれた


「た、助かったよユリウス……急になんだったんだろう?」


 平民の僕にあんなに話し掛けてきて……

 そう思っていたら、ユリウスがニヤリと笑いながら僕を見た


「知らないのか? お前がカイト様に重宝されてるのと、国宝を持ってるって話が広まってて……将来性があると見られてるんだぜ?」

「な、なんでそうなるの?」

「僕が聞いた感じだと……レムレは今は平民だけど、後々、かなりの立場の人間になると思われてるってさ」

「かなりの立場って?」

「ん~? レルガみたいな将とか? もしくは都を任される太守とか?」

「僕は……そんな立派な人間にはなれないよ」

「そうか? 僕はなれると思うぞ? 10年20年くらい先かもしれないけどな」

「そう……かな?」

「自信持てって!」


 そう言うとユリウスは手を離して、人が群がる所に突入していった……


「……自信、少しは持ったつもりなんだけどね……」


 もっと強気になるべきなのかな?



 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 ルーデル卿のパーティーにやって来た

 メンバーは

 俺

 ティンク

 レリス


 俺の護衛として

 ライアン

 レムレ

 ユリウス


 ティンクの護衛として

 ルミル

 ティール


 この8人だ

 ティールはまだ来てないっぽいがな


「それで、こちらが……」

「成る程、これは素晴らしい!」


 因みに、今、俺はレリスとルーデル卿が話している所をレリスの隣で聞いているだけだったりする


 ルーデル卿が芸術品を御披露目してるのだ

 絵とか、彫像とかなら、俺もそれなりにわかる……わかってる筈……

 しかし、壺とか皿はサッパリだ!

 うーん……何が違うんだ? 模様?


「これは綺麗ですね、あの蒼が他の色を強調してて、狙ったのでしょうか?」


 ティンクも普通に会話に混じってる!?


「流石奥方様! この蒼こそ、作者が何年も工夫を重ねて編み出した色でして……」


 ルーデル卿の眼が輝く

 ……帰ったら、レリスとティンクに芸術を教えて貰うかな


 てか、そろそろ本題に入って欲しい


「父上……そろそろ良いですか?」

「おっと、来てたのか?」

「ええ、数分前に」

「なら声を掛けてくれ」

「楽しそうに話されていたので……」


 ルーデル卿に青年が話し掛ける

 会話でルーデル卿の息子だとわかるが……この子が例の?


「カイト様、この子が『ムドーナ』、私の四男坊です」

「お初に御目にかかります、ムドーナと申します」


 ムドーナは礼をする

 綺麗な姿勢で行われた礼から、彼の教養の高さを知らされる


「初めまして、カイト・オーシャンです、こちらは妻のティンク・オーシャン」

「初めまして、ティンク・オーシャンです」


 俺とティンクも挨拶する

 礼儀には礼儀で返す、当たり前である


「……」

「どうされました?」


 ムドーナは少し驚いた表情をする

 俺が声をかけると、直ぐに表情を笑顔に戻す


「いえ、自分みたいな者にも丁寧な対応をされたので……失礼ながら、少し驚いてしまいました」

「普段はもう少し砕けた風に接してますがね、君の綺麗な礼を見たら、ついね?」


 苦笑して返すと、彼も苦笑していた


「それでしたら、普段通りで自分にも接してください、来年からは、自分もお世話になるかもしれないので……」

「そうかい? ならそうさせてもらおうか」


 そんな訳で、今からは普通に彼と接することにする


「ルーデル卿から君の事を聞かされていたけど、教員に立候補したそうだね?」

「はい!」


 ムドーナとこうして会う理由

 それは、彼が学校の教員に立候補してきたからだ

 8人程、用意するつもりで、既に5人決まっている


「理由を聞いても?」

「はい、長くなると思いますので、彼方の方で話しましょう」


 ムドーナの案内で、会場の端の方に移動する

 ティンクをルミルに任せて、ついでにライアンにもティンクの護衛に着かせた

 悪い虫が寄らないようにね?


 ルーデル卿も、他の貴族の相手をしてもらう

 そんな訳で、俺とレリスとムドーナの3人だけになる


 メイドが椅子を持ってきたので、それに座り、振る舞われたワインを受け取り……レリスにワインをブドウジュースに交換された


「あ、禁酒されてましたか?」

「以前やらかしてしまってね、ルーデル卿から聞いてないのかい?」

「ええ、何も……」


 どうやら、ルーデル卿は、俺の失態を秘密にしてくれていたみたいだ

 ルーデル卿への好感度が5上がった


「じゃあ、話をしようか」


 てか、面接だなこれ


「はい! では先ず……私が教員に立候補した理由ですが……」


 そして、俺とムドーナの面接が始まった



 ・・・・・・・・・・


 ーーーライアン視点ーーー


「ティンク殿! 是非お話を……」


 脂ぎった男が大将の奥さんに話し掛ける

 俺は遮るように立ち、睨む


「し、失礼しました~」


 大将から頼まれたからな、しっかり悪い虫を追い払ってやらぁ!


「凄いですね、ライアンさん」

「んっ? そうか……そうですか?」


 危ない危ない、敬語気を付けろって、レリスに言われたんだよなぁ


「ええ、わたし達だけだと、追い払えないので……」


 奥さんが苦笑いする

 ルミルも悔しそうだ


「まぁ、美女が3人並んでたら、声を掛けるもんでしょう」


 普段は、奥さんとルミルとテリアンヌの3人なんだよな?

 3人とも、美人だから声掛けまくられてそうだしな!


「あら? それって口説いてるんですか?」

「まさか、大将に怒られる」


 奥さんが冗談を言う、結構信用されてるみたいだな、俺

 てか、ルミルが睨んできてるんだが?

 口説いてないぞ? いや本当に!!


「それよりも、ティールさん、遅いですね」


 ルミルが、俺と奥さんの間に立ちながら言う


「そうですね、ヤンユさん、張り切ってましたから……色々してるんでしょうね」

「あ~……」


 ?

 ティールがどうしたって?

 ヤンユって、あのメイドだよな?

 大将か奥さんのどっちかの側に良く居る


「あの~……」

「んっ?」


 声を掛けられる、振り向いたら貴族の女性が、俺を見上げていた


「初めまして、私」


 貴族の女性が自己紹介を始める

 ……いや、いきなりなんだ?

 あれか? 大将か奥さんに話す為に俺を利用しようとしてるのか?


「貴方のお名前を、教えてくださいませんか?」

「あっ? 俺の?」


 なんで?


「貴方の勇ましいお姿に魅了されました、私とお話しをして頂きたく……」

「はぁ……」


 えっ? どうすればいいんだ?

 俺が声を掛けられた時の対処法なんて、聞かされてないぞ?

 これが男だったら、最悪殴るとかで避けれるが……女を殴るって……

 やったら怒られるし、お袋とかが悲しむよなぁ……

 どうする? 適当に話を合わせるか?

 しかし、そうなったら奥さんと離れないといけないよな?

 大将に頼まれてるのに、離れるわけには……


「お嬢さん、そいつは今仕事中です、良ければ僕が話し相手になりますよ?」


 いつの間にかユリウスが側に居て、貴族の女性に話し掛ける


「あら? 貴方は?」

「初めまして、ユリウス・ウィル・ガガルガと申します」

「まぁ! 貴方がユリウス様ですか!」

「おや? 僕の事をご存知で?」

「ええ! とても活躍されていると! 御会いできて光栄です!」

「それは嬉しいですね、どうです? 僕とあちらで話しませんか?」

「ええ喜んで!」


 ユリウスが女性を連れて行った

 その時に、一瞬目が合った

 そしてウインクされた


 ……助けられたな


「次からは、上手く出来るようになったら?」


 ルミルに言われる


「練習に付き合ってくれるか?」


 そう言ったら嫌な顔された





 ・・・・・・・・


 ーーーティール視点ーーー


 ああ、なんでこうなったのか……


 いつものように男装して、ティンク様達の迎えに行ったら……


『たまには女性の格好にしない?』


 なんてルミルに言われて……

 いつの間にか後ろに居たヤンユに捕まって……


 ああ、恥ずかしい、気が重い

 ここに来るまでに、なんか注目されたし……

 ……帰りたい


 慣れない化粧で落ち着かないし

 この服も動きにくい……


「…………」


 なんとか、乗りきるしかない……


 屋敷の執事が会場の扉を開く

 そして、私は会場に入る


 ティンク様とルミルを探さないと……

 ……なんですか? なんで皆見てくるんですか?

 私の格好がおかしいんですか?

 ……大丈夫ですよね?

 ……不安になってきた


 ・・・・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


 会場の扉が開く音がした

 その時、僕と話していた女性の目が丸くなった


「?」


 ふと、周りを見ると、殆んどの人が入口の方を見ていた


「なんだ?」


 気になって見てみる


「……」


 そこにはティールが居た

 普段の男装とは違う……ドレスを着て、化粧もしている

 とても似合っている……けど、なんか不安そうだな


「なにやってんだあいつ?」


 なんでドレスを? 今日も男装してくると思ってたけど……

 何か心境の変化でもあったのか?

 いや、違うな、ティンク様とルミルちゃんが嬉しそうにしてる

 あの2人が何かしたのかな?


 てか、ティール……固まってるな

 ……はぁ、仕方ない


「ではお嬢さん、そろそろ僕は失礼させて頂きます」

「あ、はい……」


 お嬢さんはティールに見惚れてる……


 ……さてと


 僕はティールに近付く

 ……どう接するかな?

 普段通りにするべきか……


 いや、折角ティールが女性らしい格好になってるんだ

 ここは合わせるべきだな


「……」

「あ、ユリウス様……」


 僕を見て、ほっとするティール……


「麗しいお嬢さん、お手を拝借」

「へっ? あの?」

(良いから合わせろ)

(は、はい!?)


 ティールが僕の手を取る


「さぁ、こちらへ……」


 僕はティールの手を引いて、彼女をティンク様の元までエスコートする

 さてと、2人には詳しく事情を聞かせて貰おうかな



 ・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「成る程ね」


 ムドーナの話を聞いて、俺は納得する

 このムドーナは現在20歳

 15歳の時にルーデル卿の手伝いで、色んな所を巡ったらしい

 そこで、文字の読めない民の苦労を知り、少しでも多くの者に知識を与えたいと思ったそうだ

 実際、田舎の村で民に文字を教えたりしていたそうだ


 しかし、ムドーナ個人では限界がある

 それで、父親であるルーデル卿を頼ったら、学校の話を聞かされたそうだ

 そして教員の話を聞いて、立候補してきたと……

 うーん、立派だねぇ


「実際に、教えていた経験があるなら、こっちとしても助かるな……」

「では!」

「でも、ハッキリ言って、君はまだ若い……もう少し経験を積むべきだと思う」

「そう……ですか……」

「だから、1年、実習生って事で、教員の助手をして貰えるかな? 勿論給金は出すよ」

「助手、ですか?」

「うん、傍で教員の仕事を学ぶんだ、そして、時には教員の代わりに授業をしてみたりして、経験を積む……そうしたら、1年後には本格的に教員として雇う……ってのはどうかな?」


 勿論、君が良ければだけど?

 っと伝えておく


「……」


 ムドーナは少し考えて……そして


「よろしくお願いします!」


 この話を受けてくれた

 よし! これで話は終わりだ!


「こちらからも、よろしく頼むよ」


 俺とムドーナは乾杯する

 そして、グラスの中身を飲み干す


 ふぅ、これで今回の仕事も終わりだな

 キリが良いところで、帰らせて貰うか


「じゃあ、戻ろうか?」

「はい、そうですね」


 俺とレリスとムドーナはパーティーに戻る

 そして、ティンクの側に戻ったら……


「♪」

『…………』


 笑ってるけど、笑っていないユリウスと

 ションボリしているティンク達の姿があった


「なに? これどうしたの? てかティール、その姿は?」

「ああ、カイト様、実は……」


 ユリウスから事情を聞かされる……

 あー、それは、まぁ……


「なんか無理強いしたみたいだな、悪かったなティール」

「い、いえ……」

「すいません、ティールさん……」


 ティンクも謝る、ルミルも謝る


「でも、ティールさんには、たまには可愛らしい服を着て欲しかったんです……その、可愛いんですから」

「そ、そうですか?」


 ティールが照れる

 まあ、確かに……普段とのギャップが凄いな

 綺麗だと思うよ? まぁ、俺はティンクの方が可愛いと思うがな!!(惚気)


「まっ、それは本人の気が向いたらにしましょう」


 ユリウスがそう言って、話を終わらせた


 こうして、パーティーは問題なく終わった



 ・・・・・・


 ーーーティール視点ーーー


 パーティーが終わり、皆で帰路につく


「それで、ドレスを着た感想は?」


 ユリウス様が隣で聞いてくる


「そうですね、慣れない……というのが1番の感想ですね……それに、貧相な胸元を改めて実感させられましたね……」


 私が着ているドレスは、胸元を隠している

 だから、他の人達みたいに、谷間が見えたりとかはない

 そもそも谷間が無い


「そうか? 胸元とかはともかく、全体的に見ると、とても綺麗だと思うぞ? 会場の視線を集めるくらいには」

「えっ? あれって私がおかしくて見てたのでは?」

「なんでそうなる……」


 ユリウス様が私の右手を掴む


「ティール、普段の男装も良いが、今みたいな格好も綺麗だ……もっと自分の見た目に自信を持て」

 そう言って微笑むユリウス様……


 いつの間にか追い越された背丈、私が少し、彼を見上げている

 そんな状態で微笑まれたら……


「は、はひ……」


 ヤバイ、心臓がバクバクいっている

 お、落ち着かないと、悟られる訳にはいかないのだから!!


 ・・・・・・・・


(ティール、なんでアレでバレないと思ってるんだろう……)


 ルミルはティールを見ながら、そう思うのだった









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