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第235話 我が愛馬、そしてパーティーへ

 嵐から4日経った


 嵐は2日くらいで去っていった

 いやー激しかったなぁ……


 それで昨日、アルスはマーレスとテリアンヌ……それと、パストーレ出身の数人の兵士達と一緒に、パルンに向かって行った


 普通に馬で……

 俺の馬車を使っていいよって言ったんだけど

『早くこの子に慣れたいからね』

 そう言って、オーシャンに帰ってから乗るようになった馬に乗っていった

 ……アルスの愛馬、アルスが10歳の時から乗っていた相棒

 あの馬は崖から落ちたアルスを護ってくれた

 偶然なのか、狙ったのかはわからない……

 でも、護ってくれたのは事実なんだ


 感謝しかない……

 亡骸を回収出来なかったのは痛いが、せめて冥福を祈ろう


 そう思ったら、俺の馬も長い付き合いだよなぁ……


「これからもよろしく頼むな?」


 俺は馬小屋で、相棒に人参をあげながら撫でる


「ブルルル!」

「…………」


 鼻を鳴らされてそっぽ向かれた……

 えっ? 実は俺嫌われてる?

 それとも前に上でティンクとイチャついたの怒ってる?


「機嫌治してくれよ~長い付き合いだろ~?」


 俺は相棒を撫でる


「ほら、アクア、人参好きだろ? 良いの選んできたんだぞ?」


 アクアとは相棒の名前だ

 正式には『アクア・マークス』

 両親の名前から1つずつ貰った名前だそうだ

 母親の『アクア・メロウ』

 父親の『マークス・クロウス』

 余談だが、アクア・メロウはアルスとミルムの母の愛馬で

 マークス・クロウスはベルドルトの愛馬だった

 どっちも今は天寿を全うしたがな……


「ブル!」

「あいた!?」


 人参を持っていた右手を腕ごといかれた

 手首いてぇ!!


「何してるんですか?」

「お、レリス? どうした?」


 馬小屋の入口にレリスが立っていた

 俺はアクアの口から手を引き抜く


「もうすぐ時間なのに、貴方が居ないから捜してたんですよ」

「おっ、もうそんな時間か、悪いな」

「アクアがどうしたんですか?」


 レリスが俺の側に来てアクアを撫でる

 アクアは気持ち良さそうに撫でられる……こいつ……


「いや、アルスの馬の事を思ったらな……アクアとも長い付き合いだから……いてぇ!?」


 アクアを撫でようとしたら鼻先でどつかれた


「あぁ、マグナですか……惜しい馬を亡くしましたね」


 アルスの愛馬『マグナ・マークス』……アクアとは異母姉弟だった

 姉弟である、つまりアクアが雌でマグナが雄だった


「だろ? だからアクアが愛しくてな……だからいい加減機嫌を治してくれ! 頼むから!」

「ふむ……それは良いのですが、アクアももう引退ですよ?」

「……えっ?」


 俺はレリスを見る


「アクアも15歳ですし、そろそろ戦場は厳しいでしょう……」

「そんな……まだ走れるのに……」

「無理をさせて、貴方の身に危険が迫るなんて、アクアも嫌でしょう?」

「…………」



 でもなぁ、寂しいだろ?


「はぁ、別に屠殺する訳じゃないんですから、平時の時に散歩とかすれば良いじゃないですか」

「あ、そっか、その手があったか!!」


 俺はアクアにしがみつく


「まだ乗れるぞ! やったなアクぐぁ!?」


 顔を振り回されて投げられた……


「気が済んだら行きますよ、時間が押してるんですから、身体を清めて着替えて……ほら急いでください」

「わかった、わかったって! アクア、人参入れとくからな!」


 俺はエサ入れに人参を入れてからレリスを追い掛けた



 ・・・・・・・・


 ーーーアクア視点ーーー


 全く! 何よあの子ったら!

 昔は私にベッタリだった癖に!!

 領主になったら忙しいからってあんまり来なくなって!


 いつの間にか結婚して、私の上でイチャイチャ盛って!

 失礼しちゃうわ!!


ブルルルル!(全く!)

ヒヒン?(ママ?)

ブル?(あら?)


 娘の『アクア・ダリヤ』が向かいから話し掛けてきたわ


ヒヒン?(今のがカイト?)

ブルル(そうよ、貴女の主よ)

ヒヒン(元気な人だね)


 アクア・ダリヤが笑う

 違うわよ、あれは空元気って言うの

 凄く辛いのに、無理して元気な振りをしてるのよ


ブルルル(まだまだ半人前ね)

ヒヒーン?(えー?)


 思い出すわね、初めてカイトと会った頃を……


 2歳だった私に乗って、はしゃいで落ちたりして……

 ベルドルトに連れていかれて、初陣を経験した時は震えてたわね

 それがいつの間にか先導して走るようになって……


ブルル、ヒヒン(アクア・ダリヤ)

ヒヒン?(なに?)

ブルル!(頑張りなさい!)

ブル!(うん!)


 私はもう一緒に戦えないけど

 この子に、カイトを託すわ……





 ・・・・・・・・・・



 ーーーカイト視点ーーー


 入浴よし!

 着替えよし!

 身だしなみ、よし!!


「おかしいところは無いよな?」

「いつも通り格好いいですよ?」


 ドレスを着ているティンクが俺に言う


「ティンクも綺麗だよ」

「あぅ……」


 俺はティンクの格好を褒める

 普段も可愛いが、うん、綺麗だ

 黒のドレスがただでさえ雪の様に白いティンクの肌を際立たせている、それに普段あまり化粧をしないティンクだが、今回はヤンユの手で化粧をされて、あー、良いねぇ、ピンク色の唇、キラリと光る目元、青い瞳が宝石の様に輝いて見える、ドレスからチラリと見える脚も細く、白く、触ると柔らかいのがわかる、雪の様に溶けてしまうんじゃないかと思ってしまうほどで、このまま抱き上げてベッドまで運びたい、照れて頬を赤くさせるティンクに耳元で愛を囁いてそのまま

「カイトさん? 大丈夫ですか?」

「おっと、ゴメン、見惚れてて思考がおかしくなってた……」


 自重しろ俺……今日はルーデル卿のパーティーだからな

 以前、俺が酔っぱらってやらかした人のパーティーだ


 ルーデル卿は貴族の中でも、俺と話が合う方だから、俺も嫌いではない

 やらかした時も笑って許してくれたからな……


 それで、今回のパーティーの目的は、来年開校する学校の説明と、生徒と教員を募集しているって話を貴族連中にするためだ


 貴族の中には家督を継がせない三男と四男とかを、入学させようって思う奴が居るらしい

 家庭教師を雇うより安いのと、俺に借りを作れるって考えだ

 ……借りっていうか、家の愚息をよろしくって感じなんだろうな


 んで教員の方は、貴族の生徒が『平民から何を学べと?』なんて騒ぐのが目に見えたから、貴族から雇おうと考えたわけだ

 勿論、生徒が貴族だろうが平民だろうが平等に接する人間を選ぶつもりだ


 そしてゆくゆくは平民からも優秀な人材を集めて……よし! 頑張ろう!



 あ、でも酒は飲まないようにしよう

 またやらかしたから怖いし……またレリスに怒られるのは嫌だし……

 キレたレリス……怖いんだよなぁ……









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