第232話 3つの提案
焔歴148年 9月末
オーシャンのとある部屋
そこには数人の男女が集まっていた
カイト・オーシャンを始めに右に順番に
サルリラ
メビルト
バルセ
ブルムン
メルノユ
レリス
と円卓に座っており
カイトの後ろには護衛のライアン、そして見学のメイリーが椅子に座っていた
ーーーカイト視点ーーー
「さてと、じゃあいつもの会議を始めようと思う」
俺が口を開く
全員の視線が集まる
「先ずは、各々の地方の状況を話してもらおうかな」
俺はサルリラを見る
「ヘイナスの方は大きな変化はないっすね、賊が出たって報告も最近は無いっす」
「マールの方も似たようなものです、公衆浴場の客が少し減ってきたくらいでしょう」
メビルトの報告を聞く
「流石に5年以上も経てば、飽きてくるか……」
まあ、もう主だった目的は果たせたし、客が減っても、国営でやってるから問題はないな
このまま営業は続けよう……何か名物でも考えるか?
「バルセの方は何かあったか?」
「砦の1つが崩れたくらいですね」
「……それ大丈夫なのか?」
「元々古かったので、今は新しく建て直してる所です、来月には完成するでしょう」
ならいいかな……
こんな感じでブルムンとメルノユの報告も聞く
ブルムンの方からは、暫くゲルドとモルスをカイナスに戻してほしいそうだ
兵達のやる気が弱いらしく、2人に喝を入れてもらいたいそうだ
メルノユの方は大きな変化は無いが……近々、海が荒れるから、暫く、漁を休ませるそうだ
何でもこの時期は荒れやすいらしい……それを聞いていたら
「近々嵐が来ると思いますので、対策をした方が宜しいかと」
なんてメイリーが口を開いた
ブルムンが「なんでわかるんだ?」って聞いたら
「気候が例年よりも狂ってますからね、詳しく説明しましょうか?」
っと自信満々に答えてきた
その説明が、長くなると俺は判断して……
「いや、説明は良い、多分俺は理解できないし……どうしても聞きたいなら、会議の後にしてくれ」
俺はブルムンを見る
「なら後で聞きますかね、ヒヒ」
っとブルムンは答えた
そんな感じで定期報告は終わる
「さて、これからが今回の会議の本題なんだが……」
俺は指を3本経てる、人差し指と中指と薬指
「3つ、取り敢えず聞いてもらって良いか?」
皆が頷く
「1つ、全ての都の軍で合同の訓練をしたいと思う」
「それは何故で?」
バルセが聞いてくる
これはアレだな、俺が理由を言いやすくするための合いの手だな
「西方同盟と戦った時に、連携の差を感じたんだ……俺達が各々の軍を動かして戦ったのに対して、西方の連中は1つの生き物みたいに動いてきた……隙が無かった」
1つを退けても次がくる
……ルーツとヘルドが居なかったら……俺は間違いなく殺られていた
「それは自分も思っていた、ヒヒヒ、自分は賛成しましょう」
ブルムンが賛成する
「でも、軍を全部動かすのは無理っすよ?」
サルリラが疑問を口にする
「ああ、いきなり全軍を動かすつもりはない……各々の都から一部ずつ訓練に出して、定期的に交代しながら訓練に参加させるんだ」
100人いるなら20人くらいを訓練に出して
その20人が帰ってきたら、別の20人が訓練に向かう
これを繰り返す事で、都の兵をあまり減らさずに合同訓練に参加できる……はず!!
「ふむ、それなら訓練には参加できるでしょうが……場所はどうするので?」
バルセがまた聞いてくる
「それが2つ目、新しい都を三ヶ所か四ヶ所程、作りたいと思っている……小規模のな? そこを訓練の拠点にするんだ」
「ふむ、その都の収入源は訓練に参加した兵士ってところか?」
「ああ、そのつもりだ……結構な人数になるはずだろ?」
一部ずつとはいえ、全ての都から出てきたら大軍だろ?
「3つ目はなんですか?」
メビルトが聞いてきた
「学舎の件だ、そろそろ、生徒の募集を始めようと思う」
「こちらを……」
レリスがどこからか、貼り紙を取り出した
生徒募集の貼り紙だ
「結構な量で……」
「領内の村とかにも配ってほしくてな、出来る限り用意した」
これが俺が出した3つの提案だ
・・・・・・・・・・
結果を言おう
全部、問題なく通った
合同訓練は、『やるだけやってみよう』となった
まあ、うまくいかなかった時はその時だ
都も候補地を何ヵ所か決めた、ここから更に話し合って決めていくつもりだ
最後に貼り紙だが……誰も何も言わずに受け入れられた
……まあ、今更反対する事はないと思っていたが……
そんな感じで会議は終わったのだった
・・・・・・・・・
そして会議から4日後の朝
「んー……」
いつも通り、眠りから目覚めた俺は、身体を伸ばす
そして、隣で寝てるティンクの頬にキスをしてから、ベッドから出る
「……んっ?」
なんか、窓の外が騒がしい?
そう感じて、俺はバルコニーに近付き、カーテンを開く
「……わぉ」
外は大雨だ、風も凄い
木が揺れまくってる
そして……
ドォォォォン!!
「ひゃぁぁぁ!?」
凄まじい雷の音がした
寝ていたティンクが飛び起きる
「な、何事ですか!?」
パニクってるティンク
「雷が落ちただけだよ……光ってから音が聞こえるまで、結構間があったから大丈夫」
俺はティンクを抱き締める
「そ、そうですか?」
「そうそう」
メイリーが言ってた通り、嵐が来たな
ここまでくると、メイリーの天気予報が凄まじいレベルで不気味だわ……
今度、予報のコツとか聞いてみるかな……
まあ、先ずは……
「うぅ……」
雷に驚いて震えてる、可愛い妻を落ち着かせないとな