第230話 馬に乗り
ーーーカイト視点ーーー
「よっと!」
今、俺はオーシャンの都の外で馬に乗っている
なんでそんな事をしているかって?
それは…………
「メイリー! もっと踏ん張れ!」
「は、はい! ととと!?」
メイリーに乗馬を教えているレルガ
彼等の様子を見るためが1つ
「あー、やっぱり馬は楽だね……」
「ほっ! よっ!」
レイミルから、乗馬までなら良いと言われた
アルスのリハビリの付き添いが1つ
それと……
「♪」
「どうした? 随分と積極的だなティンク?」
「だって久し振りなんですもの、嬉しくて嬉しくて♪」
ティンクとの相乗りデートだ
俺的にはこれが1番の理由だ
まあ、メイリーにはレルガがついてるし
アルスにはライアンを付き添わせたし
都の周りではユリウスとレムレが兵達の訓練で走り回ってるから、比較的安全だし
たまには羽を伸ばしたいんだ!!
因みに、ルミルとテリアンヌには休みを与えた
普段はどっちかがティンクの護衛としてついてる
だから、たまには2人とも同時に休ませようとね
そんな訳で、俺達は思い思いの時間を過ごしている
「レルガ、メイリーの様子はどうだ?」
「漸く、落馬をしなくなった所ですね」
俺はレルガの近付いて聞く
「奴は頭が良すぎる、理屈から入るタイプですから、身体が馬の動きについていけてないんですよ」
メイリーを見ると、止まってる馬の上でフラフラしていた
「……体幹とか鍛えた方が良いんじゃないのか?」
「腹筋4回で倒れましたよ」
「おぅ、ならもう慣れるしかないな」
乗馬って、慣れてないと結構キツいからな
下手な筋トレよりも鍛えられたりするし
普通じゃ使わない筋肉使うしな……
「それじゃあレルガ、俺は少し都の外周を走ってくるよ」
「わかりました、何かあれば……」
「直ぐに都に避難するさ、行ってくる」
俺はティンクに、しっかりと掴まるように言って馬を走らせる
・・・・・・・・
少し走ってから、馬を止めて、俺はティンクを俺の前に移動させる
「この方が景色とか見えるよな?」
「はい! それにカイトさんに包まれてて、安心感があります」
そう言って、ティンクは手綱に掴まりながら、俺に寄り掛かる
背中から、温もりと柔らかさを感じていたさっきもよかったが、この状態も良いなと思いながら馬を走らせる
「あ、あれはレムレ君達ですよね?」
「そうだな、丁度新兵達の訓練をしてるな」
訓練大事!
「そういえばカイトさん、オーシャンの都にサルリラさん達を呼んでるんですよね?」
「あぁ、各々の地方を任せてる将達をな……色々と話し合わないといけなくてな」
学校の事とか
それと……ある提案をするつもりだ
「決まったら、また暫く忙しくなると思う、もしかしたら俺はまた他の都に出掛けるかもな」
「そう……ですか、仕方ないとは言え……寂しいですね」
「…………」
ふむ、まあ、なんだ……出掛けると言っても、打ち合わせに走り回るくらいだし……
「なんだったら一緒に来るか?」
「良いんですか!?」
「あぁ、別に戦いに出るわけでもないし、護衛もしっかりつけるし……それに……」
新婚旅行とかしなかったからな
その代わりにオーシャン領を巡るってことで
「まあ、本格的に決めるのは、会議で決まってからな」
出張しなくても済むかもしれないし
その時はその時で、ティンクと何処か旅行でも行こう
・・・・・・・・・
「あ、あれが学舎ですか?」
「ああ、後は寮が完成したら完成だ」
オーシャンの東側、商人街がある方向に学校を建てた
ここなら、生徒が商人街でのバイトをする時も、近いからって話だ
「もし、何か不便な事があったら、後から増築したりするつもりだ」
オーシャン城の城門みたいにな
最初は作ってなかったが、やっぱり城門はあった方が良いって話になってな
「本当は制服とか用意したかったんだが……」
「制服?」
「生徒が着る、お揃いの衣装って所かな、まあ予算や手間の都合で、腕輪になったがな」
だってサイズの問題とかあるし
何より金がかかる! 貴族はともかく、平民には用意するには厳しいだろうって事でな
腕輪ならサイズもあまり関係ないし、卒業したら学校に返却って事で使い回せるしな
・・・・・・・・・
オーシャンの北側に着いた
「……静かですね」
「そうだな……」
朝方とか夕方はここも人通りが多くなるが、今は珍しく静かだ
「…………ふぅ」
「ひゃあ!?」
ちょっとイタズラしたくなった
ティンクの左耳に息を吹きかける、勿論、落馬とか事故が起きないように気をつけてからやった
「カ、カイトさん!!」
ティンクは左耳を押さえながら、俺を見上げる
「んむ!」
そんなティンクにキスをする
少ししてから唇を離す
「い、いきなりですね……」
赤くなりながら言うティンク
「なんか無性にしたくなってな……寝室以外で二人っきりなのが久し振りだし」
「もう! これ以上は駄目ですからね!」
「ああ、わかってる、これ以上は……寝室でな?」
「!!」
ボフッ!
ティンクが俺に強く寄りかかった
・・・・・・・・・
西側に到着!
こっちでは、ユリウス達が新兵達と狩りをしているようだ
「何で訓練に狩りをするんですか?」
「兵糧の消費を出来るだけ少なくするためだ、魚とか獣とか獲れたら大分変わるからな」
猪を1頭でも獲れたら、肉を1切れ追加できるしな
それで士気が結構上がったりするし
肉は偉大!
「ここらへんだと、猪がたまに出たかな」
「猪ですか?」
ティンクが西を見る
「カイトさん、あの……こっちに向かってるのって」
俺は望遠鏡を取り出す
「猪だな、狩りから逃げてるのか、俺達を獲物に決めたのか」
俺はティンクを包むように抱き締める
「よし、逃げるか!」
「はい!」
そして馬を全力で走らせる
ここからなら、都に入るよりも、皆と合流した方が早いな!
・・・・・・・・・
皆が居る南側に到着する
猪はまだ追って来てる
「お、大将! 活きが良いのを連れてきたな!」
俺が呼ぶ前にライアンが気付いて駆け寄ってくる
「任せて良いか?」
「ああ!」
すれ違う時にそんな会話をする
ライアンが猪に向かって、少ししてから
バキッ!
そんな音が後ろから聞こえた
振り返ると、ライアンが猪を殴り倒していた
えっ? 素手? 素手で殺ったの?
・・・・・・・・
「はい、それでは血抜きと解体の説明をします」
その後、ユリウスやレムレ達と合流して
今はレムレが猪や兎の解体を新兵達に教えている
そして、その横でライアンが、さっき仕留めた猪を丸焼きにしていた
「それで状況は?」
俺はアルス達を見る
「僕は普通に乗馬をしていたよ」
「メイリーも歩きなら問題なく、後は走った時の安定が課題ですね」
「…………」
そのメイリーは、地面にぶっ倒れて虫の息になっていた
「カイトさん」
「んっ?」
ティンクが俺の手を握りながら言う
「また一緒に走りましょうね!」
「ああ、またな!」
今度は森の中とか良いかもしれない
そう考えていたら
「うぉ!? 肉が燃えたぁ!?」
ライアンが焼いていた猪が燃えていた
「やり方を間違えると、ああなるから気をつけてね、はい開始!」
レムレの合図で解体と調理が始まった
その後、皆で肉を食べてから、都に戻ったのだった