第229話 たまにはのんびり
焔歴148年 9月
ーーーカイト視点ーーー
「……これでどうだ?」
「ではこうします」
「……こ、これは?」
「こうします、王手」
「ぐっ!! 参った、打つ手がない」
「カイト様の3連敗ですね」
今、俺はレリスと中庭で『パッスル』をしていた
以前、パストーレとの戦の時に使っていたテーブルゲームだ
そして俺は3連敗した
「くそ、色々手を変えたんだがな……」
「誘導しやすかったですよ、もう少し相手を疑いましょう」
「兄さん、次は僕がやっていいかな?」
「ああ、じゃあ俺と交代だな」
俺達と一緒に居たアルスと席を変える
ここには俺とレリスとアルス、そしてライアンが居る
仕事が一段落したから、俺達は早めにあがって、ゆっくりしていた所だ
俺は紅茶を飲みながらパッスルの盤上を眺める
パッスルの駒は黒と白で分けられており
マスは横に9、縦に11だ
そしてお互いの最後列のマスは空けた状態にする
ここから更に1つ前の列の真ん中には王様を置く
王様の列から2つ前の列は歩兵を9個並べる
今、盤上には18の歩兵と2つと王様が置かれた
さて、ここからはある程度自由に駒を置ける
王様の居る列と1つ前の列には自由に駒を置けるのだ
駒の種類は色々ある
先ず歩兵
これは将棋で例えるなら『歩』だ
1歩ずつ前にしか進めない駒だ
将棋みたいに成ったりもしない
しかし、重要な駒だ
次に王様
まあ、王様と言ってるが、白の方は領主だ
将棋の王と同じで、8方向に1つ動ける
この駒が取られたら敗けだ
次は騎馬兵だ
これは各々2つずつだ
将棋の飛車みたいに前後左右に一気に移動できる
次に弓兵
これも2つずつ
これは王様みたいに8方向に自由に動けるが
相手の駒を取れるのは2つ前のマスとその左右のみだ
この駒だけは相手の駒が攻撃範囲に居れば、動かさずに取れるという特殊な駒だ
次に槍兵
これは4つずつある
前方3マスまで移動できる
後は左右に1マスずつだな
後ろにも1マスだけ移動できる
次に盾兵
これは1つずつあり
8方向に1マスずつ動けて、前に構えてる盾でどんな敵の攻撃も防ぐ駒だ
この駒だけは向きという概念があり
盾を構えた向きからの敵の攻撃は無効となる
つまり騎馬兵の足止めを出来るし、敵の動きを制限できる
ただし、この盾兵は相手を倒すことが出来ない
それが狂戦士の駒だ
この駒も特殊な駒で、1つずつだ
8方向に1マス動けて、どんな敵も倒せる
この駒の特殊な所は、敵に殺られた時に、相手も一緒に除外することだ
つまり相討ちだな、だから基本的に盾兵で動きを制限するか、歩兵で相討ちにするか、弓兵で倒すかだ
弓兵だけは相討ちの対象外だ
次に捕縛兵
これは1つずつある駒だ
この駒で取った駒は将棋みたいに自分の駒として使える
ただし、狂戦士と盾兵は対象外だ
それと歩兵は初期配置の列から後ろまでしか置けない
この8種類の計21の駒で戦うのがパッスルだ
因みに勝利条件は
1、相手の王様を取る
2、相手の王様以外を倒す
3、相手が降参する
4、歩兵が最後列、相手にとっての最前列に到達する
これのどれかを満たせば勝利だ
駒の配置から戦法まで色々と考えさせられて、割りと楽しかったりする
そんな風に考えていたら
「はい王手」
「うっ!?」
はいアルスの敗け
こんな風に久し振りにのんびりした時間を過ごした
ライアンは暇そうだったがな
・・・・・・・・・
「はい、また私の勝ちです」
「12連敗か、流石に凹むぞ?」
アルスと交代しながらレリスとパッスルを楽しむが
全く勝てない
さっき合流したティンクの前では勝ちたかったんだが……
「パッスルですか?」
「お、メイリー、仕事は終わったのか?」
「はい、漸くですよ」
メイリーは微笑む
メイリーは今はレリスの仕事の半分を任せている
てか、既にそこまで任せられるくらいになったのかよ……
「丁度いい、1局打つか?」
「よろしいのですか?」
「ああ」
レリスに誘われたメイリーを、俺が座っていた椅子に座らせる
俺は、ティンクと一緒に合流したヤンユから紅茶を貰う
「では、どちらにします?」
メイリーが聞く
「どっちでもいいぞ、好きな方にしろ」
「では後手を」
メイリーは黒の駒を取る
そして2人の対局が始まった
ハッキリ言おう、2人のレベルが高過ぎて訳がわからなかった
お互いに攻め方を変えるからか盤上が忙しくなっていた
いやいや、槍兵がそこまで動くのみたことないぞ?
えっ? そこで狂戦士くるのか!?
うおっ!? 盾兵!! ベストポジションに居る!?
・・・・・・・
2人の対局は2時間ほど続いた
そして……
「……ふぅ、間に合わないな、降参だ」
「とても楽しめましたよ♪」
メイリーがレリスに勝った
最終的にメイリーの歩兵が最後列に到達するのを、レリスが防げなくなったのだ
「ここまで長い1局は初めてみたよ……」
アルスが言う
「大体30分くらいだもんな」
俺は、隣で?マークを出してるティンクの頭を撫でる
「さて、もう夕方だし、これで終わりにしとこうか」
俺の一言で解散した
その夜
「わたしもやってみたいです!」
と、パッスルに興味を持ったティンクに、やり方を教えてから1局打った
結果は当然ながら俺の勝ちだった
でも、ティンクが慣れてきたら負けそうな気がする
なんかそんな気がする