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第224話 西方からの脱出 1

 

「怪我人を思いっきり抱き締めるなんて、貴方は弟を殺す気ですか!?」

「はい、ごめんなさい……」


 アルスが気絶手前の状態になってしまったから、急いで医務室に連れていったらレイミルに無茶苦茶怒られた


 今、医務室には俺とアルス、レイミルとゲルドとシャルス

 そして流石に予定を変更して着いてきたレリスと、アルスを運んだライアンの7人だ


 ティンクは嬉し泣きでグチャグチャになってるミルムを落ち着かせる為に別行動だ


「アルス様は1ヶ月は絶対に安静です、よくこんな状態で西方から此処まで来れましたね」


 処置を終えたレイミルがそう言うと今度はシャルスの所に行く


「ちょ、その手にあるナイフはなに!?」


 シャルスが後ずさる


「これ? 治療道具よ……」

「いや、ちょ、まっ……うわぁ!!?」


 レイミルはシャルスの首筋を掴むとスパッと喉元をナイフで斬る


「いっでぇ!!」

「軽く切ったくらいで喚かない! 唾液を塗れば治る怪我ではないんですから!」

「な、なんで斬ったんだ?」


 俺が聞くと


「傷口が化膿していました、患部の切除と傷口の消毒の為に切りました、ほら、暴れない!!」

「オイラやっぱりこの人苦手だぁぁぁ!!」


 シャルスはは半泣きになりながら治療された


「次は……」

「うっ……」


 シャルスの処置を終えたレイミルはゲルドを見る


「…………貴方は無傷の様ですね」

「え、ええ……」

「なら、この薬を渡しときます、多少の疲労回復を促進する効果がありますから、就寝前に飲んでください」

「ありがとうございます」


 ゲルドはレイミルから薬を受けとる


「兄さん、色々と話したい事があるんだけど」


 アルスが起き上がろうとしたら


「絶・対・安・静!」

「……はい」


 レイミルに睨まれた


「話なら横になったままでしてください、それと10分だけです、それ以上かかるようなら明日以降にしてください」

「わ、わかったよ」


 俺はアルスが話しやすいように傍に寄る


「それで? いったい何があったんだ?」

「うん、どこから話すべきかな……色々有ったけど、時間が無いからこれだけ伝えておくね、ジャックスに会ったよ」

「っ!? ジャックスにか!? ど、どこでだ!?」


 ジャックス……かつてはカイトに使えていたが、レルガ達と一緒にオーシャン去った将だ


「ロンヌールにあるロスト村だよ、そこで娘と暮らしていたよ」

「娘? 結婚していたのか?」

「うん、でも奥さんは病で……今は2人で暮らしていたよ」

「そうか……元気そうだったか?」

「うん……幸せそうだったよ」

「そっか……それなら、良かった……それで? ジャックスと何かあったのか?」

「僕とシャルスを匿ってくれていたんだ、それで……おっと」


 アルスが喋るのを止めた

 俺はアルスの視線を追う


「…………(ニッコリ」


 レイミルが笑ってた

 目が笑ってなかった

 あ、10分経った?


「詳しい話はまた今度聞かせて貰おうか、今日はもう休んでてくれ、シャルスとゲルドもな」

 俺はそう言うとレリスと少し話してから医務室を出ようとして


「おっと、忘れるところだった」


 俺は振り返りアルス達を見る

 そして、言うべき一言を言った


「おかえり」


 ・・・・・・・・・・・


 医務室を出てからミルム達の様子を見に行こうと歩いていたら


「カイト様!」

「んっ? どうしたゲルド?」


 ゲルドが追いかけてきた


「詳しい報告は後日との事でしたが、これはすぐに伝えるべきかと思いまして」

「なんだ?」


 俺は一緒に歩いていたレリスとライアンに先に行ってる様に伝える


「先ず、シャルスの機転でアルス様の死を偽装しました」

「ああ、それで、俺もアルスが死んだと思っていた」


 そうか、確認されたアルスの死体はシャルスが用意した偽者だったのか


「それで西方の者達も上手く騙された様でしたが……ここに戻る道中で、カルストと遭遇しました」

「カルスト……あいつか……」

「……その反応だと、どうやら奴の言ってた事は本当みたいですね」

「……何を言っていた?」

「ヘルドを殺したと……」

「……あぁ、あいつがヘルドを殺した……ルーツも俺を逃がすために死んだ」

「そうですか、あの2人が……」

「カルストがアルスの生存を知ったのなら」

「ええ、西方中に知られているでしょう」

「そうか、わかった」


 西方の連中が色々と言ってくるかもしれないな……

 まあ、俺とレリスとメイリーで何とかするか

 引き渡せとか言われても断ってやる!



 ・・・・・・・・



 レムレ視点


「良かった……アルス様もシャルスもゲルドさんも無事で……」


 僕はカイト様達に運ばれるアルス様達を見送る


「あいつらがそう簡単にくたばるわけないだろ?」


 ユリウスが言う


「そうだね、ルミルの言ってた通りだね」


 僕はルミルを見る


「良かった……良かったよぉ……」

「よしよし」


 ルミルはティールに抱きつきながら泣いていた

 そんなルミルをティールとテリアンヌが慰める


「さてと、あの様子だと会えるのは暫く先になりそうだし、長旅の疲れをとるためにしっかりと休もうぜ」


 ユリウスが言う


「それ無理だと思うよ?」


 僕が答える


「んっ? なんでだ?」


 ユリウスがそう言った瞬間

 ガシッ! と僕とユリウスの肩を後ろから掴んできた手

 僕とユリウスは振り返る


「よぉ、帰ってきたんなら明日から働け、俺は休む」

『りょ、了解です』


 そこには疲れきったレルガさんが居た

 僕達が居ない間、ずっと兵達の訓練をしていたみたいだ


 うーん、アルス様に会えるのは本当にだいぶ先になりそうだ


 ・・・・・・・・・


 カイト視点


 レリスと明日の予定を確認してから、俺はミルムの部屋に向かう

 流石に心配だからな……


「あ、カイトさん」

「ティンク……ミルムは?」

「泣きつかれて眠りましたよ、穏やかな寝顔でしたから、もう大丈夫ですよ」

「そっか……なら良かった……」


 それならっと自室に戻ることにした


 自室に入り、扉を閉めた


「カイトさん」

「んっ?」


 すると、ティンクが両腕を拡げてきた


「ティンク?」

「ここにはわたしとカイトさんだけです……もう我慢しなくても良いんですよ?」


 そう言ってティンクは微笑む

 そっか……そうだな、もう限界出しな


 俺はティンクを抱き締める


「良いのか? 自分で言うのもあれだが……カッコ悪いと思うぞ?」

「良いんです、わたしはカイトさんの全てを受け止めたいんです」


 そう言って、ポンッポンッっとティンクの手が俺の背中を優しく叩く


「それじゃ……遠慮せずに……」


 俺はティンクを抱き締める力を強くして、ティンクの右肩に顔を埋めて……


「~っぅ!」


 泣いた……

 アルスが生きてたことが嬉しくて、嬉しくて嬉しくて嬉しくて

 涙が溢れる


「良かった……本当に良かった……」

「はい、アルス君……生きてました……」


 ティンクの声も震えている

 そして俺を抱き締める力が強くなった


 俺とティンクはお互いに落ち着くまで抱き締めあった



 ・・・・・・・・・・・


 翌日、いつの間にか寝ていたみたいで

 目が覚めたらティンクと2人でベッドに入っていた


「…………」


 俺はベッドから出て、服を着替える

 そして寝ているティンクの頬にキスをしてから部屋を出る


 そして医務室に向かい

 扉に面会謝絶と書かれた貼り紙が貼ってあるのを確認し

 昨日の事が都合の良い夢ではなかったと確認する


「……よし」


 取り敢えず昼過ぎにアルスと会う予定だ

 それまでにしっかりと仕事を終わらせるか!!


 ・・・・・・・・


 アルス視点


 久し振りに料理長の料理を堪能する


「あー、美味い……これからは調味料を本当に常備しておこう」

「そんなにキツかったのか?」

「あ、兄さん」


 兄さんがいつの間にかベッドの隣に居た


「飯食えなかったのか?」

「ううん、幸い獣を狩ったりしたから飢えたりはしなかったよ……ただ、味付けがね……塩も胡椒も無かったから仕方ないけど……」

「鳴る程な、最初はともかく、何回も続いたらキツいか」

「そうなんだよ……本当にキツかった……」


 そう話していたらレリスがやって来た

 それと見知らぬ男が2人


「兄さん? その人達は?」

「ああ、紹介しよう、こいつはメイリーと言って軍師として雇った」

「よろしくお願いします」

「あ、うん……」


 軍師? レリスは?


「んで、こいつはライアン、俺の護衛として雇った」

「兄さんの護衛?」


 僕はライアンを見る……んっ? どっかで会った気がするぞ?


「さてと、体調は大丈夫か?」

「うん、平気平気」

「じゃあ、何があったのか聞かせてくれ……辛くなったら言えよ?」

「うん、わかってるよ」



 こうして、僕は語り始める

 あれから何かあったのかを……














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