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第223話 帰ろうよ家まで

 釣り大会の翌日

 ティンクと数名の護衛を連れて、パルンの街を巡った


 メルノユのお勧めの店に行ってみたり、オーシャンに残ってる皆への土産を買ったりしてな


 因みにメルノユは兵士達に指示を出して、昨日ライアンが釣り上げて逃がした鯨の調査をしている


 ペンクルも調査に参加しようとしていたが、流石にリュウリに帰れと……てかリュウリからいい加減帰ってこいと使者が送られてきた

 ペンクルは渋っていたが、メルノユから笑ってない笑顔で『帰れ』と言われて帰っていった


 いや、あのメルノユは怖いわ

 俺も怖かったもん、普段温厚な人が怒ったら怖いよな


 そんなこんなで街を巡っていたら、1日が終わってしまった


 更に翌日


「やはり寂しくなるのぉ」


 メルノユが帰り支度をする俺達に呟く


「流石にそろそろ帰らないとな、今度はレリスから帰ってこいって使者がやってくるよ」

「そうじゃの、護衛は増やさなくても良いのか?」

「平気平気、来る時の面子に、レムレやルミル達も加わったんだ、賊が襲ってきても瞬殺するさ」


 レムレもブライから教える事はもう無いと言われたから、俺達と一緒にオーシャンに帰る事になった

 前よりも頼もしくなったよな……


「じゃあ、俺はもう馬車に乗るから、テリアンヌと話でもしなよ」

「うむ、達者でな」


 俺は馬車に乗る

 馬車の中には既にティンクとミルムとヤンユが乗っていた

 ファルは馬車の上に乗ってる、周りの警戒をするらしい

 中に入ってても構わないんだけどな……


 因みにライアンはルミルやテリアンヌと一緒に馬車の側を馬で並走する事になってる


 これから数日かけてオーシャンに帰る訳だ


 ・・・・・・・・・


 さて、パルンを出発して4日が経過した

 道中、特に問題も起きずに順調に進んでいた

 予定よりも早くオーシャンに帰れそうだと思いながら進んでいたら


「……んっ」

「ティンク? 眠いなら寝てていいぞ?」


 ティンクが船を漕いでいた


「だ、大丈夫です……」

「そんなフラフラしながら言われてもな……ほら」


 俺はティンクの頭を膝に乗せ、ティンクの頭を撫でる

 するとティンクはゆっくりと眠った

 ヤンユが薄い毛布を荷物から取り出してティンクに掛けた

 準備いいな……


「お姉様って強いよね……」

「んっ?」


 ミルムが寝ているティンクを見ながら呟いた


「お兄様と離れて、辛いのにそれを(おもて)に出さなくて、逆に皆を心配してさ」

「優しいんだよ、ティンクは」


 俺はティンクの頭を撫でる


「…………」

「…………」


 無言の俺とミルム、ミルムは何か言いたそうだ

 ヤンユは気を聞かせて耳を塞いだ


「あのね、お兄様」

「んっ、どうした?」


 俺はミルムを見る


「アルス兄様が死んだって聞かされてね……私、大人にならなきゃって思ってたんだ……もう甘えてちゃ駄目なんだって」

「……無理しなくていいんだぞ? 大人になんて、いつの間にか、なってるものなんだからな」

「うん……お姉様にも同じこと言われた……」

「ティンクにも?」

「うん、二人っきりの時にね、無理しなくていいんだよって、周りをもっと頼っていいんだよって」

「……そっか」

「それでね、私、凄く救われたんだ……だから、ゆっくりと大人になっていこうと思うんだ」

「ああ、それがいい……たまには甘えても良いんだぞ?」

「うん……辛くなったら甘えるね、取り敢えず……いきなり抱きつくのはやめとく♪」


 そう言って笑ったミルムは、昔の様な明るい笑顔だった


 ・・・・・・・


 それから2日後

 俺達はオーシャンに到着した


「帰りの方が大分早く着いたな」


 俺はオーシャンの都に着いてすぐに馬車を降りた

 道中では、宿泊の為に村に着いた時以外は座りっぱなしだったからな、身体を動かしたいんだ

 城までは歩いていくと決めたんだ


 俺だけのつもりがティンクやミルム達も一緒に行くと言って一緒に馬車から降りた

 やっぱり座りっぱなしはキツいよな

 ……もう少し大きな馬車でも造るか?


「んっ? レリス?」


 ふと、前を見るとレリスがこっちに向かってきた


「おや、カイト様、戻られましたか」


 レリスは俺に気付くと声をかけてきた


「ああ、その様子だと出迎えって訳じゃなさそうだな」


 いつ帰るって連絡したわけでもないから、レリスが俺達の帰りを事前に知る事は不可能なんだが


「ええ、例の校舎と寮がまもなく完成するそうなので確認をしに……」

「おっ、漸くか?」


 もう1年以上建ってるからな……そうか、そろそろ完成してもおかしくないな

 俺がそう考えてる間にレリスが近くの兵に指示を出して城に走らせた


「今、準備するように伝えたので、城に戻られる頃には休めるようになってる筈です、お疲れでしょうから今日はお休みください」

「ああ、ありがとう、俺も明日から色々と見てみるよ、何か変わったことはあったか?」

「特には……ああ、メイリーが仕事を覚えたので、私に大分余裕が出来たくらいですね、こうやって外に出るくらいには」

「そうか……そういえばそうだな」


 レリスがこうやって現場に直接向かうのってあんまり無かったな


「ではそろそろ私はこの辺で…………」

「んっ? どうした?」


 レリスが俺と話していて止まった

 いや、これは驚いてるのか? 視線は俺の後ろに向いている


 んっ? てか後ろが騒がしくないか?


「あの、カイトさん……」

「んっ?」


 ティンクが俺の右腕をクイッと引っ張る

 ティンクを見ると、俺の後ろの方を見ている

 俺は振り返ろうとしたら……


「兄さん!!」

「っ!?」


 懐かしい声が……もう、聞くことは出来なかった筈の声が後ろから聞こえた

 俺は振り返る


「あぁ、良かった、やっと着いたよ……何かやってたの? 凄い人だけど?」

「あ、えっ?」


 ティンクが俺から手を離した

 俺はゆっくりと歩き出す


「んっ? どうしたの兄さん? そんな幽霊でも見たような顔をして……」


 間違いない、俺が間違うわけがない

 格好は少しボロボロだが、この顔、この声……そして俺を兄さんと呼ぶ人物は1人しか居ない


「アルス? アルスなんだよな?」

「えっ? そうだよ? アルス・オーシャン! 何とか帰ってきたよ!」


 アルスはそう言うと微笑んだ


「アルス……生きて……」

「アルス兄様ぁぁぁぁぁ!!」

「ぐはっ!?」


 アルスを抱き締めようとしたら、2日前にいきなり抱きつくのはやめると言った妹がアルスにタックルした


「ミルム! 痛い! まだ治りきってないから! いたたたたたたた!!?」

「兄様ぁ! 生きてた! 生ぎてたよぉ!!」

「今死にそうなんだが!? こら鼻水! 俺の服で拭くな!!」

「…………」


 さて、どうしようか

 完全に抱き締めるタイミングを見失ったぞ

 てか冷静になってきた、アルスの後ろに居るシャルスとゲルドを認識するくらいには

 この状況で抱き締めるのは恥ずかしいよな……


 ……………………


 知るか!!


「アルス!」

「ちょ!? 兄さんまで!? まっ、あだだだだ!!」



 俺は周りの眼など気にせずに力いっぱいアルスをミルムごと抱き締めた


 生きてた……アルスが生きていた!!








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