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第222話 船上釣り大会 後編

 メルノユに押される形で乗船した



「お、来たか」


 甲板にはペンクルが釣竿を持って立っていた

 ナルールやユルクルの姿もあった


「まあ、居るのは予想できたが……お前、仕事してんのか?」


 俺はペンクルに疑問をぶつける

 こいつ何日リュウリを空けてんだよ


「有能な部下が居るからな、問題ねえよ」

「……その有能な部下は苦労してそうだな」


 まあ、俺もあまり人の事は言えないか


「そうだ、カイト、あそこで船員に指示を出してる男が居るだろ? あれが船長な、挨拶しといたら?」

「そうだな……ちょっと話してくるか、ティンク、少し待っててくれ」

「あ、はい!」


 俺はティンクをルミルとテリアンヌに任せて船長の所に行く


「どうも、初めまして」

「んっ? おお、貴方がカイト様で?」


 船長は見た目は優男って印象だ


「ええ、カイト・オーシャンです、今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします、レストがお世話になってるようで」

「んっ?」


 なんでレストの話題が?


「あれ? ペンクルから聞いてませんでしたか?

 私はレストの父親です『モック』と申します」

「あ、ああ~」


 そう言えばレムレが言ってたな……


「いやいや、レストにはこちらが助けられてますよ、彼女は兵士達をしっかりと纏めてくれてますよ」

「そうですか、それなら良かった……」


 ティールがオーシャンに居ない間はレストが女性の兵士達を纏めている

 良く働いてくれてるよ



 俺はモックと少し会話をした後、皆の所に戻った


 既に準備が終わってる様で、俺が案内された場所に座ると船が出港した


「うおおおおお!!」


 海を見てテンションが上がってるのか叫ぶライアン

 そんなにはしゃいでると……



 ・・・・・・・


「がふ……」

「言わんこっちゃない……」


 出港して数分後、ライアンは船酔いでダウンした


「ほらライアン、酔い止めのハーブ、噛んだら少しはマシになるよ」

「サンキュー……」


 レムレが酔い止めをライアンに渡す、ライアンは青い顔をしながらハーブを噛る


「今の時期だと何が釣れたっけ?」

「『マリユドゥ』とか『ペシタリン』とかじゃなかった?」


 ナルールとユルクルの会話が耳に入る

 それって魚の名前だよな?


「お前に釣りが出来るのか?」

「……何が言いたい?」

「ボウズになって恥をかく前に、ユリウスの御守りに集中してた方が良いんじゃねえの?」

「しばくぞ」

「落ち着けティール! いや本当に落ち着け!」


 ペンクルがティールを無茶苦茶煽る

 何故喧嘩を売る!?

 ユリウスがティールを落ち着かせる

 何かいつの間にか釣りバトルする事になった様だ


「どうじゃ? やはりお見合いとかは……」

「やっぱりまだ早いと思いますよ?」


 メルノユがテリアンヌに見合いを勧めていた

 親としては子供の事だから心配だったりするんだろうな

 ……今する話かって疑問だが


「えっとこうで、こうで、こうでしたよね?」

「そうです、ここをこうして」


 俺の右側でティンクはルミルと仕掛けの付け方を復習しているみたいだ

 ミルムとファルも一緒に話を聞いていた


 平和だ……


 ・・・・・・・


 それから少しして、船が止まる

 どうやら釣れるポイントに到着したようだ


「よし! それでは釣り大会を始める! 1番の大物を釣ったものには賞品があるぞ!!」


 メルノユがそう言うと皆が一斉に釣りを始めた


 俺とティンクも糸を海に放つ


「さあて、何が釣れるか……」

「楽しみですね!」


 ティンクは楽しそうだ

 さっきの竿を振る動きといい、かなり慣れてる様だ

 パルンに居る間、良く釣りをしたと言っていたが……なるほどな


「よしきた!」


 おっ、ユルクルが魚を釣り上げた


「ペシタリンですか、まあこんなものか」


 ユルクルはペシタリンを水を入れた樽に入れた


「えいや!」


 今度はテリアンヌが釣り上げた

 ユルクルのペシタリンよりも大きな……ペシタリン……だよな? パッと見じゃよくわからん


「あ、きた!」


 レムレも釣り上げる

 皆上手いなぁ……


「っと、俺のもきたか」


 俺の持ってる竿がグイグイ引いてくる

 俺はタイミングを合わせて竿を引き……


「よし!」


 釣り上げた

 ペシタリンではなさそうだが……なんだこれ?


「あ、それマリユドゥです!」


 ティンクが教えてくれる


「へぇ、これが……」


 さっきナルールとユルクルが話してたやつか

 見た目は……カサゴに似てるな


「あ、わたしもきました!」


 ティンクもマリユドゥを釣り上げる


「お揃いですね♪」

「そうだな」


 嬉しそうに笑うティンク

 あー可愛い


 そんな風に惚気ていたら……


「ほりゃ!! どうじゃ!!」


 メルノユが何かデカイ魚を釣り上げた……

 その体格でよく釣れたな……


「おお、マリノシタ!」


 ユルクルが感心する

 マリノシタか、それなら何回かオーシャンで食ったことあるぞ

 ステーキが美味かった……パンに挟んだりしてな


「これは優勝は私かもしれんなぁ!」


 メルノユの上機嫌だ


「まあ、大物だったら間違いなくこれだな」


 俺はマリノシタを見る


「そうじゃろそうじゃろ!」


 上機嫌なメルノユ


「でも、量だったらあいつらじゃないか?」


 俺は少し離れた所を見る

 そこにはユリウスとティールとペンクルが釣りをしていた

 ユリウスは普通にしてるが、ティールとペンクルは何かドンドン釣ってる

 釣り針が海に入ったと同時に釣り上げてる

 どうなってるんだあれ?



「むむ、これは負けられるん!」


 メルノユが闘志を燃やして釣りを再開する


「……なんだかなぁ」


 おっと、ミルムとファルも釣ってるな

 仲良く釣りを楽しんでいる……

 ミルムがまた笑顔を見せてくれて良かった……


「俺もやるか……」


 お、ライアンが船酔いから復活した……少しふらついてるが

 釣り竿を受け取って振る

 飛んでいく針


「…………」


 だがなかなかこないようだ


「あれ、カイトさん? 引いてますよ?」

「おっと!」


 ティンクに言われて俺は竿が引いてるのに気付く

 竿を上げるとペシタリンが釣れた……さっきのより小さいな


 こうして皆思い思いに釣っていく


 ・・・・・・・


 2時間後


 俺とティンクは樽に数匹ずつ釣れた

 メルノユは大物を中心に釣っていた

 皆もドンドン釣っていたな

 ティールとペンクルは樽から溢れていた……少しは自重しろよ……


 ただ……


「……こねえな」


 ライアンだけは1匹も釣れてなかった


「殺気を出してるとか?」


 レムレがライアンに言う


「そんなつもりは無いんだがな……川釣りとかは普通に釣れるんだが」


 そう言って海面を見つめるライアン


 もうすぐ港に帰るとモックが言っていたから時間も無い


「てか皆大漁だが……これどうするんだ?」


 俺はメルノユに聞く


「ブライに言って、港に人を集めておる、このまま港で宴会じゃ!」

「そうか、消費しきれるんならいいや」


 釣るだけ釣って残しました

 なんて勿体ない事はしたくなかったからな



 そう話していたら


「そろそろ港に戻るぞぉ!」


 モックが叫ぶ

 俺も含めて皆が片付けを始める


「結局釣れなかったか……」


 ライアンはそう言って竿を片付けようと竿を引いた瞬間


 グイッ!


「んっ?」


 ライアンの竿の先端が海に向かって曲がる、魚が針に食いついたようだ


「あ、やっときた?」


 レムレが気付く

 他の皆も注目する


「結構重いぞ……よっ!」


 ライアンはそう言いながらも軽々と竿を振り上げた

 すると……


『ブォォォォ!!』


 海からバカデカイ魚……魚? これ鯨だよな? 鯨が飛び出した!?


 バキィ!


「うぉ!? 竿が折れやがった!」

「全員! 船にしがみつけ!!」


 俺が叫ぶと同時に鯨が海に戻る

 その衝撃で海が震え、船は激しく揺れた


「ティンク! しっかり掴まってろ!」

「は、はい!!」


 俺は右手で船に掴まりながら、左腕でティンクを必死に抱き締めた


 船は暫く揺れた後、何とか転覆せずに落ち着いた


 俺は周りを見渡す、幸い、落ちた奴は居ないようだ


「なんだいまの……」


 最初に言ったのはナルールだった


「私も初めて見たな」


 メルノユも驚いている


「今の……魚なんですか?」


 ルミルが呟く


「わ、わからない」


 ユルクルも驚いている


「し、死ぬかと思った」


 ミルムは震えていた


「やべぇ、竿折れたんだけど……」


 ライアンは竿の事を気にしていたのだった



 ・・・・・・・・・・・


 船は急いで港に戻った

 そして大量の魚を港で待っていた料理人達に渡して、宴会が始まった


 話題はさっきの鯨で盛り上がっていた


 メルノユも見たこと無かった生き物

 実際には釣れなかったが、珍しいものが見れたってことで、釣り大会の優勝はライアンって事になった


「いいのか? 釣れてないぞ?」

「構わん構わん」


 そう言ってメルノユは賞品を渡す

 賞品は魚の干物だった



 俺はその様子を見ながら、貰った酒を飲む

 そしてこう思ったのだ……


 ライアン、相当馴染んできたな


 ってな



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