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第221話 船上釣り大会 前編

 

「……んっ」


 窓から僅かに差し込む光で目が覚める


「…………」


 どうやら朝になったようだ


「むにゃ……」


 耳元から愛しい声が聞こえる

 左を見るとティンクが俺の左腕にしがみついて眠っていた


「……」


 久し振りの感触

 左腕に感じる温もりと柔らかい感触

 本能のまま彼女を抱き締めたい衝動が湧いてくるが……


 何とか落ち着かせる


「…………」


 今日の予定を思い出す

 確か、メルノユに誘われて、船の上で皆で釣りをする予定だ

 窓からの光で今日は晴れてるのがわかる

 予定通り船に乗れるだろうな


「んん……」


 ティンクがもぞもぞと動く

 服が俺の腕に擦れてはだける

 ……胸が少し露出した

 まあ、寝室だし2人っきりだし、夫婦だし、何か問題があるわけでは無いが……


「……起こさないように」


 俺はティンクの服を右手で整えて胸元を隠す

 あのままだと俺が我慢できなくなるからな

 流石に(じか)はヤバイ

 そういうのはオーシャンに帰ってからだと決めてるからな

 耐えるぞ俺は!


「……さてと」


 朝だが、起床時間になったらヤンユが起こしにくる手筈になってるから

 まだ眠ってても良いんだが……


「ふみゅぅ……」

「……」


 眠れそうにないな!

 もう完全に覚めたし、元気だし

 かといって起きてベッドから出たら、ティンクを起こしてしまいそうだ


「んっ……ふふふ」


 こんな幸せそうに寝てる彼女を起こすのは申し訳ないな


「……」


 だから、俺は彼女の温もりをこのまま感じることにした

 動けないから仕方ない!



 ・・・・・・・・・


 30分くらいだろうか?

 多分1時間は経ってない、それくらいの時間でヤンユが起こしに来た


 ドアをノックされ、俺が返事をする


「失礼します」


 ヤンユが入ってきてカーテンを開ける

 隙間から差し込んでいた光が、部屋全体を照らす光に変わる


「おはようございます、カイト様」


 ヤンユはお辞儀をしながら挨拶をする


「ああ、おはようヤンユ」

「ティンク様は……まだみたいですね」


 ヤンユは寝てるティンクを見て微笑む

 ティンクは俺が影になってて、光が目に当たってない


「いいよ、俺が起こすからヤンユは皆を頼む」

「かしこまりました、紅茶と朝食を後程持って参ります」

「ああ頼む」


 ヤンユはもう一度お辞儀をしてから部屋を出ていった


「さてと……ティンク、朝だぞ、起きてくれ」


 俺はティンクの身体を軽く揺する


「んん……」


 起きそうなティンク


「起きないとキスするぞ~?」


 ティンクの耳元で囁いてみる


「…………」


 反応が無い


「起きないか、じゃあ仕方ないな」


 俺はティンクの顔に顔を近付けて


「………………」

「………………」

「……起きてるだろ?」

「…………お、起きてません」


 ティンクの頬が赤くなっていく


「へぇ、寝てるなら……それ」

「うひゃう!?」


 ティンクの左の耳たぶをぷにっと摘まむ

 驚いて目を開いたティンクと目が合う


「おはようティンク」

「お、おはよう、ございます……」


 ティンクは恥ずかしそうに起き上がった


「さて、朝食を持ってくるから、その前に服を着替えよう」

「そ、そうですね」


 ティンクがベッドから降りる直前に


「ティンク」

「はい? んむっ…………」


 不意打ちでキスをした



 ・・・・・・・・・


 ーーーレムレ視点ーーー


「ふぅ……」


 朝の訓練を終わらせた僕は食堂で朝食を済ませて、食後のお茶を飲んでいた


「あれ? レムレここに居たのか?」

「? どうしたのユリウス?」


 そこにユリウスがやって来た

 僕を見るとユリウスは首をかしげた


「いや、さっきライアンとすれ違ってな、レムレにリベンジを挑むって言って外に出ていったんだけどさ……レムレはここに居たんだよな?」

「うん、1時間は居るかな?」

「じゃあ、なんでアイツ外に行ったんだ? レムレが朝に訓練してるの知らないよな?」

「話してないからね……もしかしてルミルを見たんじゃないのかな?」

「あー、そっか、僕とかはだいぶ分かるけど……ライアンとかは2人の違いがわからないか……いや、でも昨日会ってるよな? ライアンとルミルちゃん」

「うん、港で会って…………んっ?」


 昨日の光景を思い出す……

 船からルミルが降りてきて……カイト様に挨拶していた時……


「ライアン……船と海に夢中でルミルと会ってなかった?」

「…………」


 僕は食器を返却口に置く


「急ごうユリウス、嫌な予感がしてきた」

「そうだな!」


 僕とユリウスは食堂を飛び出して外に出た


 ・・・・・・・・


 ーーーライアン視点ーーー


 俺はレムレを探す

 目的は昨日のリベンジだ、対策を色々と考えてみた

 早く試してみたくてたまらない!


「こっちに居たよな?」


 俺はパルンの城下街まで来た

 まだ早朝だからか、店は開いてない


「おっ、いたいた!」


 レムレの後ろ姿が見えた、俺は走ってレムレに近寄り


 ガシッ!


 左肩から腕を前に回して捕まえる


「レムレ! 時間は空いてるか? 昨日のリベンジを挑みたいんだが!」


 ムニュ


「……んっ?」


 俺の左腕に柔らかい感触が伝わる


「なんぐばっ!?」


 次の瞬間に顎に強烈な一撃が入った


「ぐっ! おま! いきなり殴るか!?」

「黙れこの痴漢!!」


 俺は数歩後退る


「誰が痴漢だ!」

「あんたよ!! いきなり胸を触るなんて正気?!」

「あっ? 別に触るつもりはねえよ! 偶然当たっただけだ! てか男同士でそんなの気にするか!?」

「よし殺す!」


 レムレが指をポキポキ鳴らしながら近付いてくる

 なんだ? こいつこんな好戦的な奴だったか?

 俺は応戦するために身構える


 レムレが俺に殴りかかろうと踏み込んだ時


「待った! 止まってルミル!!」

「ちょっと! 止めないでよレムレ!!」

「あー、これは間に合った……のか?」

「……レムレが2人?」


 なんだ? どういう事だ?

 誰か説明してくれ!!


 ・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


 ライアンに今にも殴りかかろうとしていたルミルちゃんをレムレが止めた


 そんな2人を見て困惑しているライアンに2人が双子だということを教える

 俺の説明を聞いて理解したライアンは……


「悪かった!!」


 ルミルちゃんに土下座した


「っ!?」

「!?」


 ルミルちゃんもレムレもビックリしている


「お前、意外と素直に謝るよな」

「知らなかったとはいえ、身体に触ったのは事実だからな……これは俺が悪い!」


 そして頭を下げるライアン

 これにはルミルちゃんも毒気を抜かれたのか……


「あ~! もう! わかったわよ! もう良いから!」

「本当に悪かった!」


 立ち上がりながらも謝るライアン


「それで、ルミルちゃんはこんな朝から何処に向かってたの?」

「んっ? 今日は船上で釣りをするでしょ? その為の撒き餌とかを用意しておこうと思ってね、多い方が良いでしょ?」

「なるほどね、じゃあ僕も手伝うかな」

「勿論僕もね」

「俺も手伝おう」


 荷物持ちが3人、ルミルちゃんの仲間になった



 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「それでこんな量になったのか……」

「流石に多すぎでしたかね?」


 ルミルが気まずそうにしている

 俺は目の前にある樽4つ分の撒き餌を見る


「ま、まぁ、余ったら港で釣りをしてる人とかに分ければいいさ、ご苦労様ルミル……それと皆も」

「はい!」


 ルミルは嬉しそうにティンクの傍に駆け寄った


「よし、ライアン、兵士から台車借りてきてこれ運んでくれ」

「あいよ大将!」


 こうして、大量の撒き餌を持って、俺達は港に向かった


 今ここに居るのは……

 俺

 ティンク

 ミルム

 ファル

 ルミル

 テリアンヌ

 レムレ

 ユリウス

 ティール

 ライアン

 の10人だ


 ムリシルや兵達は今日はしっかりと休むように伝えている

 一応何人か釣りには誘ったが……休息を優先した様だ

 まあ、個人の自由だしな、俺はそれを尊重するぞ?



 俺達は雑談しながら港に向かい、到着した


「おっ、来たかカイト!」

「ぶっ!?」


 港に到着して真っ先にメルノユが出迎えてくれた

 ……いやその格好なに!?

 なんかアロハシャツみたいな服着てんだけど!?


「メルノユ……その格好は?」

「んっ? 釣り用の服装だが?」

「そ、そうか……」


 3頭身の男のアロハシャツ……かなりシュールな見た目だ


「ほれほれ早う船に乗れ! 皆待ってるぞ!」


 メルノユに急かされる形で、俺達は乗船したのだった












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