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第219話 ティンクとの再会

 ーーーカイト視点ーーー



 パルンに入ると数人のパストーレ兵が駆け付けて来た

 ムリシルが兵と話して、馬車はパルン城に向かう


 小窓から都の様子を見てみる

 民達は生き生きと生活しているのが見えた


「流石メルノユだな」

「潮の香りがするな」


 ライアンが頭の後ろで手を組みながら言う


「ここは海の側にあるからな、港もあるぞ」

「へぇ、海か……」

「後で行ってみるか? 海、見たこと無いんだろ?」

「そっちに用があるならで良いよ大将、それよりも嫁さんに早く会いたいんだろ? さっさと会って再会を味わったらどうだ?」

「そうだな」


 ティンク……寂しがってないだろうか?


 ・・・・・・・・



 パルン城に到着

 馬車から降りると城の門が開いてメルノユが出てきた


「カイト! よく来た! 長旅で疲れただろう?」

「ああ、メルノユ、元気そうだな、俺は大丈夫だ……ティンク達はどうしてる?」

「奥方なら今はテリアンヌ達と一緒に港に行っとるよ、ブライとペンクルと共に船で釣りを楽しんでる筈だよ」

「んっ? ペンクルもこっちに来てるのか?」


 彼はリュウリの都を任されてる筈だけど?


「リュウリの方は落ち着いてるらしくてな、よくこっちに来ては釣りをしているか、レムレの訓練に付き合ったりしとるよ」

「へぇ……」


 そう言えば援軍に来たときもレムレの事を気にしてくれていたな

 なんだ? 仲良くなったのか?


「そのレムレは?」

「彼ならもうすぐ来るじゃろ、カイト達が到着したのを教えてくれたのも彼だからな」

「そうなのか?」


 そう話していたら


「お久し振りですカイト様!!」

「あ、ああ、久し振りだなレムレ」


 レムレが駆け付けて礼をして挨拶してきた

 なんか凄い勢いだったから少し怯んでしまった

 てか……なんだ?


「なんか……随分と逞しくなったか?」


 見た目はあまり変わらないけど……なんか雰囲気が違うと言うか?


「そ、そうですか?」


 照れくさそうなレムレ


「あ、そうだメルノユ、都の外に」

「巨大な猪が出た報告ならレムレから聞いたよ、もう兵を送っている、今夜は料理長が腕を振るってくれるだろうな」

「そうか、仕事が早いな」


 ・・・・・・・・


 ーーーレムレ視点ーーー


 カイト様とメルノユ様が城内に入っていく

 これから話し合いをするらしい

 まあ、ティンク様達が乗ってる船はまだ帰ってきてないからね、先に仕事を済ませるみたい


 僕もついていこうかと思ったけど


「よっ、レムレ」

「あ、ユリウス、久し振り、ティールさんも」

「元気そうですね」

「はい!」


 ユリウスとティールさんと久し振りに会ったから話をする事にした

 あれ? あの男の人は?

 なんか僕を睨んでるんだけど?


「なんかゴツい弓だな?」


 ユリウスが竜の弓を見て言う


「あ、これはね」


 僕は竜の弓の事を話す

 2人は最初は信じられないって顔だったから

 矢を1本射ったら信じてくれた


「お前か! 猪を殺ったのは!」

「うわ!?」


 男の人が僕の両肩を掴んで叫んだ

 怒ってる……っていうよりはなんか楽しそうな声だ


「なに!? 誰!?」

「おっと、悪い」


 男の人が手を離す


「俺はライアンだ、この(あいだ)オーシャン軍に入って、大将……カイト様の専属の護衛を任された」

「えっ? カイト様の?」


 それって凄い事じゃないの?

 そんなに強いって事なのかな?


「それでお前は?」

「僕はレムレ、オーシャン軍の小隊長です」


 見た感じは僕より年上だよね?

 取り敢えず初対面だから敬語で話す


「そうかレムレ、あの猪を仕留めたのお前なんだろ?」

「そ、そうですけど……」

「えっ? マジで?」


 ユリウスが驚く


「どうやったんだ! 話してくれよ!」


 ライアンさんが目を輝かせて聞いてくる


「普通に射ぬいただけですから! 揺すらないで!!」


 目が回る!!


「お前強いんだな! 俺と戦おうぜ!!」

「はいぃ!?」


 なんなのこの人!?


「はいはいそこまでそこまで」


 ユリウスとティールさんに掴まれて引き離されるライアンさん


「おい何するんだ!」

「あのな、レムレは弓兵なんだよ、お前とは戦う立場が違うんだ!」

「でも強いんだろ?」

「それでもだ!」


 ユリウスとライアンさんが口論する


「えっと、僕は良いよ?」


 僕がそういうとライアンさんの目が輝く


「良いのか?」


 ユリウスが聞いてくる


「うん、場所を変えよう」


 いつまでも城の前で騒ぐのは駄目だしね


 ・・・・・・・・


 ーーーライアン視点ーーー


 パルンの訓練場に移動する

 事情を聞いたパストーレの兵士が俺に訓練用の棒と木剣を渡す

 レムレの方も訓練用の矢が入った矢筒を受けとる


「じゃあ、始める前に確認するぞ?」


 ユリウスが言う


「レムレの矢が無くなるか気絶したらライアンの勝ち、ライアンの急所にレムレの矢が当たるか気絶したらレムレの勝ち、んで、どっちかが降参したら相手の勝ち」


 レムレが弓兵だから普通の模擬戦だと俺が有利すぎるからこうなった

 因みに急所は頭部と胸元だ

 2ヶ所で良いのか? 股間はセーフなのか?


 俺とレムレは向かい合う

 俺の棒の間合いのギリギリ外に立つレムレ


「お互い、準備は良いな?」


 ユリウスが聞く

 俺もレムレも頷く

 ティールは少し離れた所で俺達を見ている


「じゃあ……始め!」


 ユリウスが合図を出した瞬間


 ヒュオ!


「!?」


 目の前から矢が迫ってきた

 いつの間に射った!?


 俺は頭を動かして矢を躱す

 レムレに視線を戻すとあっという間に俺から距離をとっていた


 素早いな……


 俺は棒を構えてレムレに突っ込む


 3本の矢が飛んでくる

 俺は棒で矢を弾き飛ばして一気に距離をつめる


「ふっ!!」


 俺は棒を振るう


「よっ!」


 レムレは後ろに飛びながら矢を放つ

 矢は俺の左肩に当たる、実戦なら左肩が負傷していたな


 俺は棒をぶん投げる、真っ直ぐ飛んでいく棒は着地したレムレの脇腹を掠めた、少し狙いが外れたか


 俺は木剣を取り出す


 そして一気に踏み込んで木剣を振るう


 ヒュン!


「何!?」


 俺が木剣を振り切った時、レムレが視界から消えた


 ジャリ、と足元から聞こえた音に反応して目線を下に移すとレムレが俺の足元に屈んで弓を構えていた


「うおっ!」


 咄嗟に仰け反ると目の前を矢を飛んでいった

 あのまま気付かなかったらレムレの矢が俺の顎に当たってたな


 俺が体勢を整えてレムレを見ると、数本の矢が放たれていた

 いやいや速すぎるだろ!?


 俺は頭と胸元を庇う

 矢は俺の胴や左脇腹に当たる

 何とか急所は庇えた!

 幸いにも足には当たってない!


 俺は走ってレムレに迫る

 レムレが矢筒から矢を取り出す!

 それが最後の1本なのが見えた!


 俺は木剣を振りかぶる

 その矢を叩き落としてやる!!

 それで、俺の勝ちだ!!


 コツン!


「んあっ?」


 その時、俺の頭に何かが当たった

 その何かは俺の頭上から、俺の目の前を通って地面に落ちた

 俺はそれを見る、訓練用の矢だった


「はいそこまで!!」


 ユリウスが言う

 えっ? 何が起きたんだ?


 俺の頭の中は?でいっぱいだ


「レムレがさっき、足元から放った矢が上から落ちてきたんですよ」


 ティールが説明しながらやってくる


「マジかよ……運悪ぃな」

「いぇ、偶然じゃないですよ、君、レムレに誘導されてましたから」

「はっ?」


 マジで?


 俺はレムレを見る


「僕の矢の残りが1本だと突っ込んでくると思いましたから」


 そう言うとレムレは左腕の袖から隠していた数本の矢を取り出した


「いつの間に隠した?」


 俺が聞く


「さっきです、君が急所を庇った時に、僕から視線を外したでしょ?」


 さっきのはその為の攻撃だったか……


「つまり、俺は完全に手玉に取られた訳か……」


 こいつ、可愛らしい顔してえげつねえぞ!?


「だぁ! 負けた!!」

「なんだ? 随分と素直に敗けを認めるんだな?」

「たりめえだろ!」


 俺を何だと思ってる!


「いや、でもライアンさんも気をつかってくれたじゃないですか」

「あん?」

「左肩に矢を受けてから左腕を使わなかったし、矢が当たった所は本当に負傷した時みたいにしてましたし」

「当たり前だろ? 矢が刺さったって考えたらそうなるだろ?」

「急所だけ気を付ければ良いんですから、そんなの気にせずに戦ってたら僕は勝てませんでしたよ」

「それじゃ卑怯じゃねえか! 怪我したけど全然関係なく動くなんてガキの遊びじゃねえんだからよ」

「お前、妙な所でこだわるよな」

「うるせえ!」


 ユリウスに茶化される


「レムレ! 次は勝つからな!!」

「いいですよ、ライアンさん」

「さんはいらねえ! あと敬語もな!」

「……はは、わかったよライアン」


 ・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー



 何があった?

 メルノユと話終わって、そろそろ船が戻る頃だとメルノユに教えてもらったから城から出たら


「くっ! なんだこれ!!」

「だからライアンには無理だって」


 ライアンがレムレがさっき持っていた弓を手に取って震えていた


「重すぎるだろ!」

「だから認められないと無理なんだって……」

「て言うかお前の剣も大概だからな?」


 ライアンとレムレとユリウスが騒いでる

 いつの間にかライアンとは仲良くなったみたいだ


 あれ?


「ティールは?」

「あ、カイト様、ティールさんなら先に港に向かいましたよ」


 レムレが答える


「そうか、じゃあ俺達も港に向かいたいんだが……良いか?」


 俺は弓を両手に持ってプルプル震えてるライアンを見る


「お、おう……」

「はい回収」


 レムレが弓を取る……あれ? この弓、よく見たら国宝の『竜の弓』だ……

 どうしてレムレがそれを持ってるのか……聞きたいが、今はそれよりもティンクだな、弓の話しはいつでも聞ける


 そんな訳で俺達は港に向かう

 ムリシル達も誘ったが、まだ野営の準備が終わってないらしく、残念そうに断られた



 そして港に到着


「ああ、カイト様、丁度良いタイミングですね」


 先に来ていたティールが俺に気付く


「ティンク達が乗ってるのはあの船か?」


 少し離れた所からこっちに向かってくる船が見える


「らしいですよ、あの船の船長がレストの父親らしいです」

「つまりブライの娘の夫って事か」


 ペンクルがたまに話題に出していた義兄だな

 レストから漁師だとは聞いていたが……一体どんな経緯でブライの娘と結婚したんだ?


「ティンク様、強い人ですよね、カイト様と離れて寂しい筈なのに、ずっと平気な振る舞いをして、逆に皆を励ましたりしてましたよ」

「そっか……」


 レムレが言う

 それだけでティンクがどう過ごしていた簡単に想像できた


「ティンクが降りてきたら、人目も気にせずに抱き締めるからな?」


 俺がそう言うとライアン以外の3人が苦笑した


 そう話していたら船が港に到着した

 俺達は船に近付く


 船から板が出されて、港と船を繋ぐ

 乗客が板を渡って船から降りてくる

 そして、ルミルが姿を見せた

 ルミルは手を差しだし、その手を掴んでティンクが姿を現した

 その後ろにファルと手を繋いでミルム、テリアンヌと姿を現した


 ティンクが港に降りた

 まだ俺には気付いてない、てか格好が大分動きやすそうな格好だ

 まあ、いつもの服じゃ船に乗るのは厳しいよな、動きにくいだろうし、海に落ちたら一大事だし


 俺はティンクに近寄り……


「ティンク!」


 声を掛ける


「!!」


 ティンクが反応して俺を見る

 頬を紅潮させて嬉しそうに目を輝かせる

 そして一瞬駆け出そうとしたが、思いとどまる


 そんなティンクを見て、ミルムが後ろからトンッと背を押す

 俺がそれに合わせて両腕を拡げると……


「カイトさん!!」


 ティンクが俺の腕の中に飛び込んできた


「っと! 元気そうで安心したよティンク」


 俺はティンクを抱き締めながら頭を撫でる


「はい! カイトさんは大丈夫ですか? 怪我とかしてませんか!?」

「大丈夫、無事だよ、全部片付いたから、迎えに来たよ……約束通りな?」

「はい……はい!!」


 本当はキスしたり色々したいが、流石にそこまでは公共の場では出来ないな

 思いっきり愛でるのはオーシャンに帰ってからだ


「お兄様、久し振り」

「ああ、久し振りだなミルム……なんか変わったか?」


 ミルムの様子が何か前と違う

 オーシャンを出る前はアルスの事で落ち込んでいたが……今は大分明るくなったか?

 それと……大人っぽくなった?


「私も成長してるんだよ!」


 胸を張るミルム

 それを見て根本的には変わってないのがわかった


「そっか……そうだな」

「あ、わかってない!」

「いやいや、ちゃんとわかってるよー」

「絶対わかってないよ!」

「騒がしいな」


 ペンクルが船から降りてきた


「よおペンクル」

「なんだ、やっと来たのか?」


 ペンクルはそう言いながら、魚が大量に入れられた籠を持つ


「ああ、来たぞ」

「ならさっさと奥さんとちんまいのを連れて帰れよ」


 そう言って歩き出したペンクルだが、テリアンヌに捕まって「口の聞き方」について怒られた



「お久し振りですカイト様、本当は色々と報告したいですけど、荷物を運ばないといけないので失礼します」


 ルミルは俺に礼をした後、ミルムに礼をして、俺に抱きつくティンクを見て微笑んでから荷物を持って走っていった


 レムレとすれ違う時に何か目で会話してるように見えたが……


「あ、そうだ、ティンク、紹介しなきゃいけない奴が居るんだ」

「えっ?」

「俺の専属の護衛として雇った男でライアンって奴だが……あれ?」


 俺はレムレ達と一緒に居るライアンを見たら……ライアンが居なかった


「うおおおおお! でけぇ!!」


 居た、船の側で船と海を見て叫んでいた……

 自由か!!


「おい! ライアン! こっち来い!!」


 俺が呼ぶと


「おっ! なんだ? もう再会は良いのか大将?」


 ライアンがこっちを見た


「あっ! この人!」


 ミルムがライアンを指差す


「どうしたミルム?」

「前話した人だよお兄様!! ほら、ゼルナ達が来ててファルンを案内した時に会った人!」

「あ、あっ……あー、それね、その時のね……」


 不味い、その時のミルムの話をマトモに聞いてなかったからわからねえ


「……聞いてなかったんだね?」

「……すまん」


 怖い、ミルムが怖い


「んー? あー、道を教えてくれた子か!」


 ライアンがミルムの事を思い出したようだ

 既に会っていたんだな……


「何? ライアン、オーシャンに来てたのか?」

「ああ、お袋と一緒に親父の見舞いにな……」

「……そっか」


 オルベリンの見舞いに来てたんだな……


「んじゃあ紹介は簡単で良いな? ティンク、コイツがライアン、ライアン、彼女がティンク、俺の妻だ、んでこの子がミルム、俺の妹」

「よろしく!」

「あ、はい、よろしくお願いします」

「よろしくねライアン!」


 ライアンが挨拶するとティンクとミルムが返事をする


「ねえライアン、私達、オーシャンで会う前に会ったりしてる?」


 ミルムが聞く


「んっ? 道聞く前にか? いや、会ってないと思うが?」


 ライアンが答える


「そう? なんか懐かしい感じがしたから……」


 あー、それか、わかるぞその感覚


「ミルム、それはライアンが……」


 俺がライアンの事を話そうとしたら


「ほぅ……」

「うお!? なんだ爺さん!?」


 ブライがいつの間にかライアンの側に立っていた

 そう言えばブライも船に乗ってたんだっけ?


 ブライはマジマジとライアンを見る、そして……


「お主、オルベリンの息子か?」

「なんだ? 爺さん俺の事知ってるのか?」

『!!!???』


 ブライとライアンの会話を聞いて、俺以外の全員が驚いた


「オルベリンの若い頃にそっくりじゃ、孫にしては似すぎてるから、息子くらいだと判断しただけじゃよ」

「へぇ、良い勘してるなあ」

「ちょちょちょい待って!! はぁ!? オルベリンの息子ってどういうことだよ!!」


 ユリウスがライアンを問い詰める


「あっ? どういうことも何も、オルベリンは俺の親父ってだけだろ? そんな驚く事か?」

「驚くっつーの!!」


 皆がライアンに詰め寄る

 流石のライアンも戸惑う


 あ、この流れはヤバイぞ


「カイトさん、詳しく聞いてもいいですか?」


 ティンクが俺を見上げて聞いてくる

 皆の視線が俺に向かう


 わぁい、これは長くなるぞー

 ……ちくしょう、早くティンクと2人っきりになりたかったのに





















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